テーラーボーイ 神様からもらった裁縫ギフト

第二章 悪しき影

第五十七話 情報収集

「じゃあ、ギルドに行きましょうか」

　僕とシーナはサーシャさんを伴ってギルドに向かう。彼女は強い人を探しているのでドランさんに合わせるのが一番早いんだ。って探しているのは僕なんだけどね、そこはドランさんにうまくやってもらおう。

「しもべが少なくなって寂しいけれどね」

　操られていた人は元居た場所に戻って元に戻るんだってさ。便利な能力だな～、自分よりも弱い人を操る事が出来るなんてさ。

「それにしてもあなた達は魔族を見ても何も反応しないのね？」

「えっ？　ダメなんですか？」

「ダメって言うわけじゃないけど、普通はほらっ」

　サーシャさんは周りを見渡した。僕らは普通に大通りを歩いているんだけどすれ違う人のほとんどがサーシャさんを見ていく。魔族の人って特別、目を引くのかな？　僕的には美人さんだからってだけだと思っていたけど。

「私達は田舎者だから大丈夫なのかも」

「あら、そうなの？　今でも魔王様が人族の町を狙っているって言われているからね。しょうがないのだけど、みんな意識し過ぎなのよね。うちの魔王様は全然そんなことないのに」

　僕らは特別、他の種族の人を敵視したことない。田舎には行商人として他種族の人が来ていた。魔族の人は、初めてだけど獣人さん達はしょっちゅうあっていたよ。獣人の国はスパイスが豊富で美味しいお肉の料理が有名、村では結構高かったけど、無理してでも買いたいものの一つだったな～。アイリさんは結構スパイスを使った料理を使ってくれて美味しかったな～。思い出しただけでお腹がなっちゃうよ。

「魔王？」

「そうよ。うちの魔王様は温厚派って言われているわ。本人曰く、侵略しようとするから魔王になるのであって、しなければ表裏一体の勇者は現れないんだってさ。ほら、水の勇者以来、勇者は現れていないでしょ？　それが何よりの証拠よ」

　へ～、魔王って言うのは侵略する事しか考えていないと思っていたけど、今の魔王は違うんだな～。ってうちの魔王様って言っているけど？

「サーシャさんはその魔王の？」

「そうよ。四天王の一人、ミスラ様の右腕って言われているわ。これでも四天王の方々には意見が通るのよ」

「こんな往来で言っていいんですか？」

「ダメだけれど。あなたへの誠意ってやつかしら」

「ええっ！？」

　サーシャは話ながら体を絡ませてきた。僕はされるがままです。

「ちょっと、アレクに触らないで！」

「あんっ、乱暴ね」

　驚いて動けないでいるとシーナが引きはがしてくれた。シーナは僕を呆れた顔で見つめてきています。しょうがないじゃないか、こういう事は初めてなんだからさ。

「それよりも着いたよ」

「ここにいるのね。元Ｓランクの冒険者ドランって言ったかしら？」

「はい、ドランさんはとても頼りになる人ですよ」

　僕の為に色々してくれている人だからな～。







「アレク君、帰ってきてたのね」

「ウーナさんただいま戻りました」

　ギルドに入ると受付嬢のウーナさんが僕らを見つけて迎えてくれた。

「その魔族の方は？」

「私はサーシャ・ブラウニー。ある人物を探している」

「サーシャ・ブラウニー・・・って四天王の側近！？」

「ほ～、知っているのか。優秀だな」

　サーシャさんが名乗るとウーナさんが数歩下がって腰に手を回す。短剣に手が伸びているのを見ると警戒しているのが分る。

「ちょっと待ってください。サーシャは人を探しているだけですよ。それに今の魔王は侵略を考えていないそうです」

「・・・アレク君が言っているのだから信用出来ると思うけど、警戒しない方が可笑しいわ」

　僕の言葉を聞いてウーナさんは少し短剣から手を離したけど、まだ警戒を解いていない。それだけ、四天王って言う言葉が強烈なのかな？

「クードを覚えていますか？」

「あの大商人？　それがどうしたの？」

「彼が行方不明になっているのも知っているかしら？」

「確かに冒険者ギルドにも依頼が回ってきたわ。・・・まさか？」

「そうよ。クードは死んでいるわ。その犯人を捜しているわけ」

「・・・」

　サーシャさんの言葉にウーナさんは僕に視線を泳がせる。僕は少しだけ頷いて視線を送るとウーナさんは視線をサーシャさんに戻した。分かってくれたみたい。

「じゃあ少し待っていてください。マスターに相談してきます」

「・・・ふむっ。物分かりがいいな」

　サーシャさんはもうちょっと時間がかかると思っていたみたい。ウーナさんは頭の回転も早いからな～。僕の合図だけで理解してしまったみたいだよ。