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第二章 悪しき影
第八十二話 魔王ブルゼルと魔王ゼットトゥース
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ドルドランから普通に歩いてくると二日程の距離まで来たところでビナンを救助。
「ありがとうございます..」
「大丈夫だよ。もう大丈夫」
ビナンはシーナに抱きしめられて涙してる。傷もなくてよかったよかった。
「アレク様、申し訳ありません。折角、指当ても頂いたのに」
「いや、しょうがないよ。スラッシュはそれ以上の強さだったんだから」
一個の指当てじゃそれほど強くならないって事が今回の事でわかったよ。これからは指当てを五個は用意してやるぞ。
「スラッシュは?」
「猛毒を吸って、気絶しているよ」
僕の作った縄でしばりつけたスラッシュを見て、ビナンが聞いてきた。
猛毒は回復しておいたけど、後遺症みたいな感じで気を失ってるみたい。本当に凶悪な毒だね。
「じゃあ、帰ろうか」
「は~い」
僕とシーナはそれぞれ、スラッシュとビナンを担いでドルドランに帰る。そう思ったんだけど、
「プキュ、プキュキュキュキュ」
「えっ?」
「この匂い! 勇者の匂いプキュ」
担いで帰ろうと思った時、背後から声が聞こえてきた。僕とシーナが振り返るとそこには膝程の大きさの膨らんだカエルの様な魔物が宙に浮いて僕を見ていた。
「プキュキュキュキュ。懐かしい匂いプキュ。殺してやった勇者の匂い」
「「!?」」
勇者を殺した!?
この魔物の言う事が本当なら!
「[ホーリーアロー]」
幾百もの聖なる矢が魔物に降り注ぐ、シーナの容赦のない魔法が魔物を襲った。
奴の言う事が本当の事なら、こいつがブルゼルだ。シーナも気づいて魔法を放った。彼女も隙はないみたい。
「プキュ~、聖なる巫女もいるプキュ。これは僥倖プキュ」
聖なる矢で作られた土煙の中から声が上がる。歓喜に似た声が僕らに圧をかけてきた。
「距離を取って戦わないと」
「でも、ビナンとスラッシュを担いだままじゃ」
「大丈夫、僕らのステータスならこなせるよ」
ドルドランに駆けながら戦う事となってしまった。
「アレク様! 僕らを降ろしてください」
「ビナン、大丈夫だよ。絶対に助けるから」
ビナンが邪魔になると思って声を張り上げた。僕とシーナは笑顔で答える。あんなカエルみたいな奴に負ける気はないよ。それに、あいつは僕のお父さん、お母さんの仇だ。
「プキュキュキュキュキュ~」
「毒!」
「ビナン。息を止めて!」
「わっぷっ」
僕らを追いかけながらブルゼルが毒霧を吹きかけてきた。かなりの速度で走っているのに追いついてくるなんて、やっぱりお父さん達を倒しただけはあるみたい。反則級の僕のギフトでも、厳しいのかな。
「[ウィンドプッシュ]」
「!? プキュ~」
僕はブルゼルへと風魔法を唱える。
風が一瞬で霧を吹き消して、ついでにブルゼルを大きく吹き飛ばす。魔法の強化は大きくブルゼルに勝っているように感じる。だけど、シーナの魔法では倒せなかった。もっと強力な魔法が必要だね。
「アレク!?」
「えっ? サーシャさん? なんでこんなところに?」
ブルゼルを吹き飛ばしてドルドランに走っていると不意に声をかけられた。声の聞こえた方向を見るとサーシャさんと背の高い男の人が立っていた。魔族だって言うのは分かるけど、何だか強そうな人だね。
「ほ~。お前がアレクか。中々強そうだな。どれ? 少し手ほどきをしてやろうか」
「魔王様、今はそれどころでは」
「そうだったな[ダークプリズン]」
ウィンドプッシュで土煙が舞う方を見たサーシャさん達。魔王と言われた人が手をかざして上級魔法の結界魔法を唱えた。黒い幕が魔王の手から先を広範囲に覆った。
「皆は早く逃げろ。魔王と魔王の衝突を結界魔法で長時間防ぐことはできん」
「分かりました!」
「亀裂が入ってるよ..」
「なに!」
魔王の作った結界魔法に亀裂が走ってる。
「プキュキュキュキュ。この好戦的ではない魔法、覚えがあるプキュ。ゼットプキュね」
「久しぶりだな。ブルゼル」
結界の中からブルゼルが目を光らせて魔王を見据えてる。サーシャさんが連れてきた魔王はゼットって言うみたいだ。
「サーシャ、すぐに撤退しろ。私はこいつを足止めする」
「わかりました。アレク、離れましょ」
「いえ、サーシャさんとシーナだけ逃げてください。二人を連れて」
「えっ!?」
奴は僕の両親の仇だ。顔も知らない両親だけど、僕らの為に命をなげうってくれたんだ。その仇が目の前にいる。僕が倒さないといけないんだ。
「じゃあ、シーナも残る!」
「ダメだ。危ないじゃないか!」
「それはアレクも一緒でしょ。それに、私は巫女なんだよ。勇者の為に巫女は存在するの。そう、私はアレクの為に存在しているんだよ」
「シーナ...」
シーナが涙目で僕を見つめる。僕の身勝手な行動でシーナを危険な目に合わせたくないけど、彼女も頑固だからな~。
「相変わらずお熱いわね。仕方ないから、私だけでこの二人を運ぶわ。でも、無理しないでね。危なくなったらすぐに撤退する事!」
「「はい!」」
「私も二人を町に戻したらすぐに戻るわ。あなた達よりは遅くなるかもしれないけどね」
「アレク様、無事に帰ってきてくださいね!」
サーシャさんはウインクをして、ビナンとスラッシュを担いで街道を走っていく。ビナンは担がれて僕らに声をあげた。僕とシーナは親指を立てる。僕らは絶対に負けない。
「ありがとうございます..」
「大丈夫だよ。もう大丈夫」
ビナンはシーナに抱きしめられて涙してる。傷もなくてよかったよかった。
「アレク様、申し訳ありません。折角、指当ても頂いたのに」
「いや、しょうがないよ。スラッシュはそれ以上の強さだったんだから」
一個の指当てじゃそれほど強くならないって事が今回の事でわかったよ。これからは指当てを五個は用意してやるぞ。
「スラッシュは?」
「猛毒を吸って、気絶しているよ」
僕の作った縄でしばりつけたスラッシュを見て、ビナンが聞いてきた。
猛毒は回復しておいたけど、後遺症みたいな感じで気を失ってるみたい。本当に凶悪な毒だね。
「じゃあ、帰ろうか」
「は~い」
僕とシーナはそれぞれ、スラッシュとビナンを担いでドルドランに帰る。そう思ったんだけど、
「プキュ、プキュキュキュキュ」
「えっ?」
「この匂い! 勇者の匂いプキュ」
担いで帰ろうと思った時、背後から声が聞こえてきた。僕とシーナが振り返るとそこには膝程の大きさの膨らんだカエルの様な魔物が宙に浮いて僕を見ていた。
「プキュキュキュキュ。懐かしい匂いプキュ。殺してやった勇者の匂い」
「「!?」」
勇者を殺した!?
この魔物の言う事が本当なら!
「[ホーリーアロー]」
幾百もの聖なる矢が魔物に降り注ぐ、シーナの容赦のない魔法が魔物を襲った。
奴の言う事が本当の事なら、こいつがブルゼルだ。シーナも気づいて魔法を放った。彼女も隙はないみたい。
「プキュ~、聖なる巫女もいるプキュ。これは僥倖プキュ」
聖なる矢で作られた土煙の中から声が上がる。歓喜に似た声が僕らに圧をかけてきた。
「距離を取って戦わないと」
「でも、ビナンとスラッシュを担いだままじゃ」
「大丈夫、僕らのステータスならこなせるよ」
ドルドランに駆けながら戦う事となってしまった。
「アレク様! 僕らを降ろしてください」
「ビナン、大丈夫だよ。絶対に助けるから」
ビナンが邪魔になると思って声を張り上げた。僕とシーナは笑顔で答える。あんなカエルみたいな奴に負ける気はないよ。それに、あいつは僕のお父さん、お母さんの仇だ。
「プキュキュキュキュキュ~」
「毒!」
「ビナン。息を止めて!」
「わっぷっ」
僕らを追いかけながらブルゼルが毒霧を吹きかけてきた。かなりの速度で走っているのに追いついてくるなんて、やっぱりお父さん達を倒しただけはあるみたい。反則級の僕のギフトでも、厳しいのかな。
「[ウィンドプッシュ]」
「!? プキュ~」
僕はブルゼルへと風魔法を唱える。
風が一瞬で霧を吹き消して、ついでにブルゼルを大きく吹き飛ばす。魔法の強化は大きくブルゼルに勝っているように感じる。だけど、シーナの魔法では倒せなかった。もっと強力な魔法が必要だね。
「アレク!?」
「えっ? サーシャさん? なんでこんなところに?」
ブルゼルを吹き飛ばしてドルドランに走っていると不意に声をかけられた。声の聞こえた方向を見るとサーシャさんと背の高い男の人が立っていた。魔族だって言うのは分かるけど、何だか強そうな人だね。
「ほ~。お前がアレクか。中々強そうだな。どれ? 少し手ほどきをしてやろうか」
「魔王様、今はそれどころでは」
「そうだったな[ダークプリズン]」
ウィンドプッシュで土煙が舞う方を見たサーシャさん達。魔王と言われた人が手をかざして上級魔法の結界魔法を唱えた。黒い幕が魔王の手から先を広範囲に覆った。
「皆は早く逃げろ。魔王と魔王の衝突を結界魔法で長時間防ぐことはできん」
「分かりました!」
「亀裂が入ってるよ..」
「なに!」
魔王の作った結界魔法に亀裂が走ってる。
「プキュキュキュキュ。この好戦的ではない魔法、覚えがあるプキュ。ゼットプキュね」
「久しぶりだな。ブルゼル」
結界の中からブルゼルが目を光らせて魔王を見据えてる。サーシャさんが連れてきた魔王はゼットって言うみたいだ。
「サーシャ、すぐに撤退しろ。私はこいつを足止めする」
「わかりました。アレク、離れましょ」
「いえ、サーシャさんとシーナだけ逃げてください。二人を連れて」
「えっ!?」
奴は僕の両親の仇だ。顔も知らない両親だけど、僕らの為に命をなげうってくれたんだ。その仇が目の前にいる。僕が倒さないといけないんだ。
「じゃあ、シーナも残る!」
「ダメだ。危ないじゃないか!」
「それはアレクも一緒でしょ。それに、私は巫女なんだよ。勇者の為に巫女は存在するの。そう、私はアレクの為に存在しているんだよ」
「シーナ...」
シーナが涙目で僕を見つめる。僕の身勝手な行動でシーナを危険な目に合わせたくないけど、彼女も頑固だからな~。
「相変わらずお熱いわね。仕方ないから、私だけでこの二人を運ぶわ。でも、無理しないでね。危なくなったらすぐに撤退する事!」
「「はい!」」
「私も二人を町に戻したらすぐに戻るわ。あなた達よりは遅くなるかもしれないけどね」
「アレク様、無事に帰ってきてくださいね!」
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