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第一章
第13話
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「ルラナ! まだか?」
「【汝の器をこの身に宿し、力を賜るため……】」
「ちぃ! まだか、あれが本体ってことはさっきよりもやばいんだろ。どうすんだ!」
ステインの声が聞こえてくる。ルラナはそれに答えられない状況のようで詠唱の言葉が聞こえる。
苛立ちを見せてディアボロスを見るステイン達。僕もやつを見上げる。いつの間にか天高く上がって行っていた。あれじゃ攻撃できない。
『おかしいな~』
天からそんな声が降ってくる。脳に直接話しかけてくるような響く声だ。
そんな声を聞いていた刹那の瞬間、体に違和感を感じた。
「痛! 足に針?」
地面に縫い付けるように針が刺さっていた。感覚を研ぎ澄ましていても気づかない程の速度で針が足に刺さっていた。
針の角度からやつが放ってきたのは予想できるけど、こんな速い攻撃攻撃避けられないぞ。
「みんなには……。攻撃してない。よかった」
みんなの様子を見ると攻撃を受けた様子はない。
「ヒューイ。あんたはいらない」
「この役立たず」
「え!? ミーシャ、リーシャ? 何を」
つかつかと近づいてくる二人が聞きたくない言葉を放ってきた。
「お前役に立たないな」
「うむ、役立たずはいらんな~」
「ステイン……。ワジソン」
二人もまた耳を塞ぎたくなるような言葉を言い放ってきた。
「あ~、早く帰りたい。こんな役立たずと一緒にいたくないもん」
「そうだね。早く体洗わないと。ヒューイ菌が移っちゃう」
ミーシャとリーシャ、みんなの声が聞こえる。耳も目も塞いでるのに聞こえてくる。
役立たず、仲間じゃない、そんな言葉が幾重にも重なって聞こえてくる。
「やめろ。やめろ~!」
強化している耳、塞いでも簡単に言葉を通す。
悲鳴にも似た声をあげると不意に温かく包み込む、温かい太陽のようなそんな光を感じた。
「大丈夫だよ。ヒューイは役立たずじゃないよ」
耳元で囁かれるようなそんな優しい声が聞こえてくる。
「目を覚まして、あなたは幻覚を見させられてるんだよ」
「リーシャ」
声のする方向を見る、しかし、何も見えない。さっきまでいたステイン達もいなくなってる。
「幻覚……。リーシャは僕の隣で声をかけてくれてるのか。幻覚だとわかれば簡単だ」
意識へと強化を施す。幻覚を与えているものを除去すれば覚醒するはずだ。
「やっぱり、足か」
最初の針の痛みは本物だった。幻覚の毒が回ったんだ。すぐに体を回復させる。
「ヒューイ……。よかった」
「リーシャ、ありがとう」
目覚めるとリーシャが抱きしめてくれていた。涙する彼女の背中を摩るとやつの姿が空に見えた。睨みつけると目玉と口だけのディアボロスが口角をあげているのが見えた。
本当に”人”を見下しているやつだ。いつでもとどめを刺せる。そんな雰囲気を感じる。
「ヒューイ!」
やつを睨んでいるとミーシャとワジソンが駆けてきた。ルラナは狙われていないのが分かってきてくれたみたいだ。だけど、危険だ。奴の攻撃はみんなじゃ。
「仲間は一緒に戦うものだよ。ヒューイばっかりにかっこつけさせない」
「そうじゃぞ。それにな、子供ばかりに前に出られては歳をとっておる儂の沽券にかかわる」
ミーシャとワジソンが僕の言いたいことを察して二カッと笑う。
「おっと、ゆっくりと話すことも許してくれんらしい」
ディアボロスが黒い炎を口に溜め始めた。ブレスが来る。
「儂らを舐めるな!」
ブレスが放たれて黒い炎が僕らに覆いかぶさってくる。
ワジソンは声をあげ、大きな斧を振り回してブレスを分散させる。
「だ~、儂の自信作が!」
ブレス一発で大斧が腐食していく。それでも原型をとどめてるから使えそうだけど、ワジソンが泣き出した。
「ワジソン! 泣いてる場合じゃないでしょ!」
「分かっておるが息子のように大事にしておったんじゃぞ」
「それなら貸して! とりゃ~!」
「あ!? ああああぁぁぁぁぁぁ!!」
ミーシャが泣いてるワジソンから斧を奪ってディアボロスへと放った。見事に突き刺さる斧、腐食が効いているのかディアボロスのやつ、低空に落ちてきた。
「今!」
矢継ぎ早に矢を放つリーシャ。どれも雷が宿ってる。着弾と共にバリバリと音を放つ。
更に落ちてくるディアボロス。今までの形状で一番弱いんじゃないか?
「これでも喰らえ」
僕は地面に埋まっていた大きな岩を持ち上げて投げ放つ。岩に埋まるディアボロス。
これで終わらせるはずもない。更に攻撃しようと岩に乗って殴りつける。
「らぁぁぁぁぁ!!! これで終わりだ!」
岩が割れてディアボロスの目が見えた。拳を突き入れて魔石を手に取る。
これで本当に終わりだ。そう思った瞬間、体が重くなっていく。
「な、なんだこれ……。」
頭がガンガンする。
頭に直接言葉が浮かんでくる。
おかしい、おかしいよ、こんなのおかしい。
「ぐっ! おかしい? そんなの知るか」
言葉を否定する。それでも言葉が頭に入ってくる。これは魔石から直接入ってきてるのか。
こ、こんなもの!
「握りつぶす!!!」
あああぁぁぁぁ! 手に力を込める。
……込める? おかしいよ。そんなことしちゃうのはおかしい。あれ? 僕は何を、何がおかしいんだっけ?
「ヒューイ!」
「しっかりしてヒューイ!」
僕の両肩を優しく支えてくれる姉妹。おかしくておかしくて笑いがこぼれる。
「魔石が同化し始めちょる!」
「どうにかしないと!」
ワジソンとリーシャの焦るような声。魔石が僕の手に入り込もうとして来てる……。
「……ヒューイ! 我慢だよ!」
「お姉ちゃん!?」
ザクッ!
そんな音が聞こえて、激痛が走る。
「ぐあぁぁ!」
「ヒューイ!」
僕の手を悲痛の顔で切断したミーシャ。涙目で僕を抱きしめてくれる。
「ごめんね。ごめんね」
「だ、大丈夫。すぐに回復するよ」
泣いて謝るミーシャ。彼女のおかげで意識が回復していく。切断した手もすぐに光り輝いて回復していく。
しかし、現状はかなり悪くなった。
「おかしいな~。人のくせにこんな力持ってるなんて。絶対におかしいよ~」
僕の力を少し得たようだ。奴は人の姿になって普通に声をあげ始めた。
「凄い再生能力だ~。おかしいよ~。人の分際でさ~。それになに? 僕の体を引きちぎるなんて……おかしいな~」
血管が紫に輝く人の姿。首を傾げながら僕らの周りを一周する。
「まあ、いいか。どうせここでしんじゃうもんね。けけけけけ」
耳まで口を開いて笑い出すディアボロス。でも、そのおしゃべりのおかげで僕も回復した。
やつの腹を僕の腕が一瞬で貫く。
「凄い速さだ。だけど、わざと当たったんだよ」
ニヤッと笑ったディアボロス。体が溶けていって僕に覆いかぶさっていく。
「取り込むつもりか!」
「させない!」
ワジソンとミーシャの声が聞こえる。ダメだ! この体は危ない。触っちゃダメだ。
「熱い!」
「ダメじゃ、スライムのように纏わりつきよる!」
「そ、そんな……」
絶望にも似た声が聞こえてくる。
「【大丈夫、わたくしがいます】」
僕も終わりを感じた次の瞬間。温かい言葉が僕らを包んだ。
そして、すべてが光に覆われていく。
「【汝の器をこの身に宿し、力を賜るため……】」
「ちぃ! まだか、あれが本体ってことはさっきよりもやばいんだろ。どうすんだ!」
ステインの声が聞こえてくる。ルラナはそれに答えられない状況のようで詠唱の言葉が聞こえる。
苛立ちを見せてディアボロスを見るステイン達。僕もやつを見上げる。いつの間にか天高く上がって行っていた。あれじゃ攻撃できない。
『おかしいな~』
天からそんな声が降ってくる。脳に直接話しかけてくるような響く声だ。
そんな声を聞いていた刹那の瞬間、体に違和感を感じた。
「痛! 足に針?」
地面に縫い付けるように針が刺さっていた。感覚を研ぎ澄ましていても気づかない程の速度で針が足に刺さっていた。
針の角度からやつが放ってきたのは予想できるけど、こんな速い攻撃攻撃避けられないぞ。
「みんなには……。攻撃してない。よかった」
みんなの様子を見ると攻撃を受けた様子はない。
「ヒューイ。あんたはいらない」
「この役立たず」
「え!? ミーシャ、リーシャ? 何を」
つかつかと近づいてくる二人が聞きたくない言葉を放ってきた。
「お前役に立たないな」
「うむ、役立たずはいらんな~」
「ステイン……。ワジソン」
二人もまた耳を塞ぎたくなるような言葉を言い放ってきた。
「あ~、早く帰りたい。こんな役立たずと一緒にいたくないもん」
「そうだね。早く体洗わないと。ヒューイ菌が移っちゃう」
ミーシャとリーシャ、みんなの声が聞こえる。耳も目も塞いでるのに聞こえてくる。
役立たず、仲間じゃない、そんな言葉が幾重にも重なって聞こえてくる。
「やめろ。やめろ~!」
強化している耳、塞いでも簡単に言葉を通す。
悲鳴にも似た声をあげると不意に温かく包み込む、温かい太陽のようなそんな光を感じた。
「大丈夫だよ。ヒューイは役立たずじゃないよ」
耳元で囁かれるようなそんな優しい声が聞こえてくる。
「目を覚まして、あなたは幻覚を見させられてるんだよ」
「リーシャ」
声のする方向を見る、しかし、何も見えない。さっきまでいたステイン達もいなくなってる。
「幻覚……。リーシャは僕の隣で声をかけてくれてるのか。幻覚だとわかれば簡単だ」
意識へと強化を施す。幻覚を与えているものを除去すれば覚醒するはずだ。
「やっぱり、足か」
最初の針の痛みは本物だった。幻覚の毒が回ったんだ。すぐに体を回復させる。
「ヒューイ……。よかった」
「リーシャ、ありがとう」
目覚めるとリーシャが抱きしめてくれていた。涙する彼女の背中を摩るとやつの姿が空に見えた。睨みつけると目玉と口だけのディアボロスが口角をあげているのが見えた。
本当に”人”を見下しているやつだ。いつでもとどめを刺せる。そんな雰囲気を感じる。
「ヒューイ!」
やつを睨んでいるとミーシャとワジソンが駆けてきた。ルラナは狙われていないのが分かってきてくれたみたいだ。だけど、危険だ。奴の攻撃はみんなじゃ。
「仲間は一緒に戦うものだよ。ヒューイばっかりにかっこつけさせない」
「そうじゃぞ。それにな、子供ばかりに前に出られては歳をとっておる儂の沽券にかかわる」
ミーシャとワジソンが僕の言いたいことを察して二カッと笑う。
「おっと、ゆっくりと話すことも許してくれんらしい」
ディアボロスが黒い炎を口に溜め始めた。ブレスが来る。
「儂らを舐めるな!」
ブレスが放たれて黒い炎が僕らに覆いかぶさってくる。
ワジソンは声をあげ、大きな斧を振り回してブレスを分散させる。
「だ~、儂の自信作が!」
ブレス一発で大斧が腐食していく。それでも原型をとどめてるから使えそうだけど、ワジソンが泣き出した。
「ワジソン! 泣いてる場合じゃないでしょ!」
「分かっておるが息子のように大事にしておったんじゃぞ」
「それなら貸して! とりゃ~!」
「あ!? ああああぁぁぁぁぁぁ!!」
ミーシャが泣いてるワジソンから斧を奪ってディアボロスへと放った。見事に突き刺さる斧、腐食が効いているのかディアボロスのやつ、低空に落ちてきた。
「今!」
矢継ぎ早に矢を放つリーシャ。どれも雷が宿ってる。着弾と共にバリバリと音を放つ。
更に落ちてくるディアボロス。今までの形状で一番弱いんじゃないか?
「これでも喰らえ」
僕は地面に埋まっていた大きな岩を持ち上げて投げ放つ。岩に埋まるディアボロス。
これで終わらせるはずもない。更に攻撃しようと岩に乗って殴りつける。
「らぁぁぁぁぁ!!! これで終わりだ!」
岩が割れてディアボロスの目が見えた。拳を突き入れて魔石を手に取る。
これで本当に終わりだ。そう思った瞬間、体が重くなっていく。
「な、なんだこれ……。」
頭がガンガンする。
頭に直接言葉が浮かんでくる。
おかしい、おかしいよ、こんなのおかしい。
「ぐっ! おかしい? そんなの知るか」
言葉を否定する。それでも言葉が頭に入ってくる。これは魔石から直接入ってきてるのか。
こ、こんなもの!
「握りつぶす!!!」
あああぁぁぁぁ! 手に力を込める。
……込める? おかしいよ。そんなことしちゃうのはおかしい。あれ? 僕は何を、何がおかしいんだっけ?
「ヒューイ!」
「しっかりしてヒューイ!」
僕の両肩を優しく支えてくれる姉妹。おかしくておかしくて笑いがこぼれる。
「魔石が同化し始めちょる!」
「どうにかしないと!」
ワジソンとリーシャの焦るような声。魔石が僕の手に入り込もうとして来てる……。
「……ヒューイ! 我慢だよ!」
「お姉ちゃん!?」
ザクッ!
そんな音が聞こえて、激痛が走る。
「ぐあぁぁ!」
「ヒューイ!」
僕の手を悲痛の顔で切断したミーシャ。涙目で僕を抱きしめてくれる。
「ごめんね。ごめんね」
「だ、大丈夫。すぐに回復するよ」
泣いて謝るミーシャ。彼女のおかげで意識が回復していく。切断した手もすぐに光り輝いて回復していく。
しかし、現状はかなり悪くなった。
「おかしいな~。人のくせにこんな力持ってるなんて。絶対におかしいよ~」
僕の力を少し得たようだ。奴は人の姿になって普通に声をあげ始めた。
「凄い再生能力だ~。おかしいよ~。人の分際でさ~。それになに? 僕の体を引きちぎるなんて……おかしいな~」
血管が紫に輝く人の姿。首を傾げながら僕らの周りを一周する。
「まあ、いいか。どうせここでしんじゃうもんね。けけけけけ」
耳まで口を開いて笑い出すディアボロス。でも、そのおしゃべりのおかげで僕も回復した。
やつの腹を僕の腕が一瞬で貫く。
「凄い速さだ。だけど、わざと当たったんだよ」
ニヤッと笑ったディアボロス。体が溶けていって僕に覆いかぶさっていく。
「取り込むつもりか!」
「させない!」
ワジソンとミーシャの声が聞こえる。ダメだ! この体は危ない。触っちゃダメだ。
「熱い!」
「ダメじゃ、スライムのように纏わりつきよる!」
「そ、そんな……」
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「【大丈夫、わたくしがいます】」
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