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第一章
第51話 ヘイワ……
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「……よし! ルラナも生き返らせる方法が分かった。すぐに帰ろうぜ」
ステインが立ち上がって声をあげる。泣きはれた顔を拭って僕も頷いて立ち上がる。
「おっと、そうやすやすと帰してはくれないか?」
ザザッと音が聞こえるとそこには複数の兵士達が現れた。僕らを見回してアルテナ様を見ると、
「アルテナ様! よくぞお戻りに!」
跪いて声をあげる隊長っぽい兵士。身構えていた僕らはホッと胸を撫でおろす。
「ただいま戻りました。この方々は皆私の友達です。手を出さないように」
「はっ! ど、ドラゴン!?」
「ドラゴンさんも私達の友です。オルソナルによって閉じ込められていたようです」
「は、はあ……」
アルテナ様の言葉に兵士達は冷や汗をかきながら納得していく。普通なら怪しむところだけどな。
『人間達。今まで私に捧げられてきたものを解放する』
アルテナ様達の動向を見ているとサファイアが口から光の球を吐き出す。複数の球の中には獣人が入っていた。
『オルソナルが餌として私に与えていたものだ。人を食う趣味はなかったから、守っていたのだ』
「サファイアって人よりも優しい子だね」
『人に助けてもらった恩があったからな。これからはお前達の為に生きようと思う。いいだろうか?』
サファイアが優しい視線で獣人達を見つめる。僕が話すと仲間になりたいと言って来た。と言ってもこの地下から出られるのかな?
『人化の術でダンジョンとやらにも入れるはずだ。だめか?』
「なるほど、それでこの地下に入れられていたんだね」
サファイアの言葉にミーシャがポンと手を叩いて納得する。彼女も僕と同じような疑問を抱いていたみたいだ。
「来るのはいいんだけど、ダンジョンは人数制限があるからな」
みんなの顔を見渡して話す。6人しか入れない、ルラナになったアルテミス様も一緒に来てくれそうだから人数は変わらないんだよな。
「……ふむ、ここは老体が席を外すべきかの」
悩んでいるとワジソンが俯いて語りだした。
「金も手に入った。鍛冶屋に戻る時がきたのかもしれん」
「ワジソンはそれでいいの?」
「ガハハ、儂の夢は知っておるだろ? キスタンに鍛冶屋を持つことじゃぞ」
「……そっか、ワジソンがいいなら一番いいね」
ワジソンの言葉にリーシャとミーシャが微笑む。
「何じゃ? わしがいないと寂しいか? 親離れせんとヒューイに笑われるぞ」
「べ、別に寂しいわけじゃないし~」
親離れ? ワジソンの言葉に首を傾げる。ミーシャが恥ずかしそうに声をあげてる。
「ワジソンは捨てられてた私達を育ててくれたんだ。一人前の冒険者にしてくれた育ての親ってやつなんだよ」
首を傾げてるとリーシャが答えてくれた。
「ガハハ、育てたとは言いすぎじゃろ。拾って飯を食わせただけじゃよ」
「それが育てたってことでしょ」
ははは、ワジソンとミーシャがじゃれ合って話してる。いつもならこんなじゃれ合いに冷静にツッコミを入れるルラナがいる。
今はただ微笑む、彼女の姿をしたアルテミス様がいるだけ、悲しいな。
「とにかく皆さん。こんな地下からは出ましょう。兵士の皆さん、皆さんをお城にお通ししてください」
アルテナ様の声に兵士達が動き出す。僕らはそのままお城の応接室へと案内された。
ーーーー
「オルソナル様の分身体がやられた?」
「ゲヒ、やべえやつらだな」
お城に通されるヒューイ達を遠巻きに見つめてドラッグとルベジャンが呟く。オルダイナ王国、王都を一望できる丘から望遠の魔法を使う彼ら。オルソナルに言われた通り、手を出さない様子だ。
「住民の洗脳も解けているようですね」
「ああ、あの様子じゃ。孤児院も終わってそうだ。逃げてくるんじゃねえか?」
アルテナとアルテミスによって放たれた光の柱の波動。それによって洗脳、催眠の類の魔法はすべて無効化された。更に結界の効果も付与され、オルダイナ王国での操る魔法の類は効果を及ぼすことはなくなった。
【孤児院】の所業は魔法や薬によって子供たちを教育するもの、そのすべてが無効化された。【シスター】と言われる女は逃げる準備をしているだろう。
「あの結界は魔族を通さないでしょう。我々に出来ることはないですね」
「ゲヒヒ。あ~あ。オルソナル様のせいでうまい飯にありつけなかったぜ」
「何を言ってるんです。あんなところにいたら消し炭になっていましたよ。そうじゃなくても、あのヒューイとかいうやつらの手で死んでいました」
ルベジャンがきびすを帰して去ろうとするとドラッグがため息交じりに話しだす。その言葉にルベジャンが呆れる。
オルソナルにも届きうる力を持っているヒューイの力その一端を感じた二人であったがドラッグはうまいものとしか認識しなかったようだ。
「とにかく、国境のオルソナル様に合流しましょう。といっても戦争は終わりでしょう」
「へ? なんでだよ。戦場で人間食うんだろ?」
「何を言ってるんです。先ほどの波動が国境まで行ったんですよ。我々ですらこんなに弱っているのに兵士達の洗脳が解けていないはずがありません」
戦場になりかけていた国境ではルベジャンの言うように混乱が起きていた。
なんでここにいるんだ? といった兵士達が首を傾げていたのだ。タリウス率いるテスラ帝国は砦からそれを見てホッと胸を撫でおろしたとか。
「では行きますよドラッグ」
「納得いかねえな」
走り去る二人。力を取り戻して彼らはまた混乱を起こすつもりだろうか。はたまた、ヒューイの前へと姿を現すのだろうか。
ステインが立ち上がって声をあげる。泣きはれた顔を拭って僕も頷いて立ち上がる。
「おっと、そうやすやすと帰してはくれないか?」
ザザッと音が聞こえるとそこには複数の兵士達が現れた。僕らを見回してアルテナ様を見ると、
「アルテナ様! よくぞお戻りに!」
跪いて声をあげる隊長っぽい兵士。身構えていた僕らはホッと胸を撫でおろす。
「ただいま戻りました。この方々は皆私の友達です。手を出さないように」
「はっ! ど、ドラゴン!?」
「ドラゴンさんも私達の友です。オルソナルによって閉じ込められていたようです」
「は、はあ……」
アルテナ様の言葉に兵士達は冷や汗をかきながら納得していく。普通なら怪しむところだけどな。
『人間達。今まで私に捧げられてきたものを解放する』
アルテナ様達の動向を見ているとサファイアが口から光の球を吐き出す。複数の球の中には獣人が入っていた。
『オルソナルが餌として私に与えていたものだ。人を食う趣味はなかったから、守っていたのだ』
「サファイアって人よりも優しい子だね」
『人に助けてもらった恩があったからな。これからはお前達の為に生きようと思う。いいだろうか?』
サファイアが優しい視線で獣人達を見つめる。僕が話すと仲間になりたいと言って来た。と言ってもこの地下から出られるのかな?
『人化の術でダンジョンとやらにも入れるはずだ。だめか?』
「なるほど、それでこの地下に入れられていたんだね」
サファイアの言葉にミーシャがポンと手を叩いて納得する。彼女も僕と同じような疑問を抱いていたみたいだ。
「来るのはいいんだけど、ダンジョンは人数制限があるからな」
みんなの顔を見渡して話す。6人しか入れない、ルラナになったアルテミス様も一緒に来てくれそうだから人数は変わらないんだよな。
「……ふむ、ここは老体が席を外すべきかの」
悩んでいるとワジソンが俯いて語りだした。
「金も手に入った。鍛冶屋に戻る時がきたのかもしれん」
「ワジソンはそれでいいの?」
「ガハハ、儂の夢は知っておるだろ? キスタンに鍛冶屋を持つことじゃぞ」
「……そっか、ワジソンがいいなら一番いいね」
ワジソンの言葉にリーシャとミーシャが微笑む。
「何じゃ? わしがいないと寂しいか? 親離れせんとヒューイに笑われるぞ」
「べ、別に寂しいわけじゃないし~」
親離れ? ワジソンの言葉に首を傾げる。ミーシャが恥ずかしそうに声をあげてる。
「ワジソンは捨てられてた私達を育ててくれたんだ。一人前の冒険者にしてくれた育ての親ってやつなんだよ」
首を傾げてるとリーシャが答えてくれた。
「ガハハ、育てたとは言いすぎじゃろ。拾って飯を食わせただけじゃよ」
「それが育てたってことでしょ」
ははは、ワジソンとミーシャがじゃれ合って話してる。いつもならこんなじゃれ合いに冷静にツッコミを入れるルラナがいる。
今はただ微笑む、彼女の姿をしたアルテミス様がいるだけ、悲しいな。
「とにかく皆さん。こんな地下からは出ましょう。兵士の皆さん、皆さんをお城にお通ししてください」
アルテナ様の声に兵士達が動き出す。僕らはそのままお城の応接室へと案内された。
ーーーー
「オルソナル様の分身体がやられた?」
「ゲヒ、やべえやつらだな」
お城に通されるヒューイ達を遠巻きに見つめてドラッグとルベジャンが呟く。オルダイナ王国、王都を一望できる丘から望遠の魔法を使う彼ら。オルソナルに言われた通り、手を出さない様子だ。
「住民の洗脳も解けているようですね」
「ああ、あの様子じゃ。孤児院も終わってそうだ。逃げてくるんじゃねえか?」
アルテナとアルテミスによって放たれた光の柱の波動。それによって洗脳、催眠の類の魔法はすべて無効化された。更に結界の効果も付与され、オルダイナ王国での操る魔法の類は効果を及ぼすことはなくなった。
【孤児院】の所業は魔法や薬によって子供たちを教育するもの、そのすべてが無効化された。【シスター】と言われる女は逃げる準備をしているだろう。
「あの結界は魔族を通さないでしょう。我々に出来ることはないですね」
「ゲヒヒ。あ~あ。オルソナル様のせいでうまい飯にありつけなかったぜ」
「何を言ってるんです。あんなところにいたら消し炭になっていましたよ。そうじゃなくても、あのヒューイとかいうやつらの手で死んでいました」
ルベジャンがきびすを帰して去ろうとするとドラッグがため息交じりに話しだす。その言葉にルベジャンが呆れる。
オルソナルにも届きうる力を持っているヒューイの力その一端を感じた二人であったがドラッグはうまいものとしか認識しなかったようだ。
「とにかく、国境のオルソナル様に合流しましょう。といっても戦争は終わりでしょう」
「へ? なんでだよ。戦場で人間食うんだろ?」
「何を言ってるんです。先ほどの波動が国境まで行ったんですよ。我々ですらこんなに弱っているのに兵士達の洗脳が解けていないはずがありません」
戦場になりかけていた国境ではルベジャンの言うように混乱が起きていた。
なんでここにいるんだ? といった兵士達が首を傾げていたのだ。タリウス率いるテスラ帝国は砦からそれを見てホッと胸を撫でおろしたとか。
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「納得いかねえな」
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