何もしてないなんて言われてクビになった 【強化スキル】は何もしていないように見えるから仕方ないけどさ……

カムイイムカ(神威異夢華)

文字の大きさ
56 / 56
第一章

第55話 お帰り

「おい、あれ」

「ああ、【砂漠のオアシス】の方々だ」

 ダンジョンへの扉の前に着くと冒険者達が口々に僕らの噂を話す。
 オルダイナ王国とテスラ帝国の戦争を止めた英雄、ダンジョンを45階までクリアしたSランクチーム。どれも僕には荷の重い称号だ。

「ん、ジューダスとスカイの教え子たちか」

「あっ。ほんとだ。今日はルッコが教える日かな?」

 ステインが子供達のチームを見て声をあげた。ルッコを見てミーシャが微笑ましく話す。
 スカイ達は孤児を集めて学校を作ったんだよな。ジューダスの提案で最初は何か悪いことを考えているんじゃないかと思ったんだけど、そんなことはなかった。
 ブルームちゃんも通っているんだけど、悪い大人に利用されないように常識とダンジョンのことについて教えてるみたいだ。ブルームちゃんは生徒の中でも特別優秀でついてこれるのはクロとかいう少年だけらしい。
 ブルームちゃんとは特別仲がいいみたいで連携がうまくいくとか何とか、彼女にも友達が出来てなんか嬉しいな。

「宗教に入れるんじゃなくて良かったよ」

「最初はそのつもりだったらしいがな。子供達と接していて心変わりしたんだろう」

 僕の呟きにステインが答えてくれた。子供によってジューダスの心が変わったってことか。

「そういえば、最近ジューダスの姿を見ないわね」

「ルッコさんが言っていたけど、【孤児院】の【シスター】に会いに行くって言ってたらしいよ」

「ええ!? 大変じゃない!?」

 ミーシャが噂を話すとリーシャが報告してきた。流石の情報にミーシャが驚いてる。
 孤児院のシスター、オルダイナ王国にあるって言われていた施設。
 子供を洗脳して【入心】と言われる人格をいれる魔法を使って暗殺者を教育していた。
 その親が【シスター】と言われる女性、そんな人のもとにジューダスが行ったってことは関係を持っていたのかもしれない。
 僕らもその人には借りがある。手を貸したいけど、今はルラナが先だ。すぐにでもルラナを元に戻さないと。

「今はダンジョンだよ二人とも」

「あっ。うんそうだよね」

「分かってるよヒューイ。それにジューダスなら自分で何とかするでしょ」

 二人の頭をポンポンして話すと二人は答えてくれる。ちゃんと分かってるみたいだ。

「よし。俺達の順番だ。入るぞ」

 ステインの声でダンジョンへの扉を見据える。とうとうルラナを元に戻せる。
 真っ暗な扉の中へと入って行く。一瞬で風景が雪山に変わり寒気を感じた。

「ひゃ~、雪山だ~」

「みんな毛皮のコートを」

 闇の収納から毛皮のコートを取り出す。僕の強化スキルである程度の温度変化にも対応できるんだけど、流石に限界がある。元々環境変化に対応できるように装備は潤沢にしてある。このくらいは大丈夫だ。

「おっと、ホワイトウルフか」

「ふふん、このくらいの魔物なんか!」

 真っ白な雪山に真っ白な狼が群れで現れた。
 寒さを耐えしのいで狼たちと戦闘に入る。
 縦横無尽、ミーシャと僕が暴れまわる。
 ワジソンがいなくなってミーシャは僕の肩から飛び上がって切り込むのが定石となった。
 サファイアがドラゴンの姿になるとそっちから飛び上がることもあるけど、人型の場合は槍での牽制をしてくれるサファイアと僕らは並んで戦う。数で優る狼に圧勝していく。

「よし! 終わり終わり~。次行くぞ~」

 まるで酒場を梯子するかのようにステインが声をあげて次の扉へと入って行く。

 僕らは何の問題もなく環境変化に対応して50階に到着した。
 そして、王の称号を持つ魔物達と対峙することとなった。

「……おいおい」

「王とは聞いていたけど。この数……」

 ステインとリーシャが声をあげて視線を向ける。視線の先には王と名のつく魔物が数種類、恐ろしい数だ。

「最初から本気で行くぞ!」

「私も!」

 サファイアがドラゴンの姿に変わる。ミーシャが背に乗って空へと飛んでいく。
 草原での戦いなのはやりやすくていいけど、敵の数に圧倒される。

「俺達ならやれる! 二人に続くぞ!」

「絶対にルラナを元に戻す!」

 ステインの声に答えてサファイア達に続いて魔物の列へと駆け走る。
 リーシャの弓が数体のゴブリンキングを屠り、アルテミス様の聖なる光がオーガキングの群れを消し去る。
 王の称号を持つ魔物しかいない群れ……想像以上に険しいボスだ。
 それでも、僕らは諦めない。魔物からの魔法が轟、傷ついてもすぐに回復していく。
 幾重にも繰り広げられる魔法と矢、戦場は激しさを増していく。

「絶対に! 絶対に僕たちは!」

「「諦めない!」」

 魔物達を切りつけながら叫ぶとミーシャとリーシャが呼応した。
 倒しても倒しても湧いてくる王の名を持つ魔物達。リザードマンキングを倒し、スライムキングを倒す。それでも次々と湧いて出てくる。終わりのない群れと戦っているような気持ちになってくる。
 体は僕のスキルのおかげで万全、終わりの見えない戦いのせいで心がすり減っていくのを感じる。

「!? 数が減ってきています! 皆さんあと少しです!」

 サファイアが空から辺りを見回して声をあげる。そうか、倒しても倒しても減らなかった魔物の群れが減り始めてるのか。
 あと少しあと少しだ。

「ハァハァ」

 精神疲労で息が切れてくる。最後の魔物、キングデーモンを前にディアボロスを握る手に力が入る。

「これで最後だ」

 チャージを使いマナがディアボロスにたまっていく。横なぎに払った刃がデーモンの持つ鎌と一緒に胴体を上下に切り分ける。
 デーモンは何の抵抗も出来ずに絶命していった。

「やったぞヒューイ!」

「これで、これでルラナが!」

 感動のあまり抱き着いてくるステイン、僕も涙して声をあげる。
 その時、天から光が差し込んできて光が濃くなっていく。
 視界が真っ白になると体が宙に浮いていく。僕らは困惑してされるがまま、と言うか体が言うことを効かない感じだ。みんな同じ方向に飛んでいてしばらくすると何か見えてきた。

「椅子?」

 6人分の椅子と机が見えてくる。宙を浮いたまま椅子に座らされる僕ら。一体何が?

「おめでとう」

 宙に浮いている椅子に座って辺りを見回していると声がかけられる。とても柔らかい声で勝手に涙が溢れ出てくる。

「だ、だれ?」

「私はそうね。あなた達の言うところのコアってやつね」

「コア?」

 声だけ聞こえてきてミーシャが声をあげると答えてくれた。コアってダンジョンコアかな?

「長い間、人間が来てくれなかったから退屈していたけど、あなた達が来てくれて嬉しいわ。特にヒューイ」

「え?」

「あなたは特別な存在だもの。来てくれて嬉しい」

 ふわっと頬に風が触れる。嬉しそうな声に答えるような優しい感触。

「ふふん! ヒューイはやっぱり特別な存在なのね!」

「うん! ヒューイは凄いもんね」

 ミーシャとリーシャが自慢げに褒めてくれる。嬉しいけど恥ずかしいな。

「アルテミス様も来てくださるとは思いませんでしたけどね」

「ふふ、私もこんなに長い間地上にいるのは初めてです」

 コアの声に嬉しそうに答えるアルテミス様。一応、神だもんな。

「では、50階クリアの皆さんには報酬を捧げますね。何がいいですか? ソウルジェムやエリクサー、魔族に効く聖水なんかもありますよ」

 コアの声に僕らは顔を見合って大きく息を吸う。そして、

『ソウルジェム!』

 というと空から黄色に輝く水晶が落りてきた。

「こちらがご所望のソウルジェムです」

「これが……」

 代表して僕が手を伸ばす。届くところまで水晶が近づいてきて握ると光が収まっていく。

「どうすれば?」

 使い方がわからないで声をあげるとソウルジェムが花咲いていく。まるで蕾が開いていくように開くとアルテミス様に光が集まっていく。

「ではお別れですね。この一年、とても楽しかったです」

 少し寂しそうに微笑むアルテミス様。予め別れの挨拶をしていたとはいえ別れは悲しいな。

「皆さんのことは見ていますからね」

 最後の言葉を紡ぐと光が収束していく。彼女の中に光が入って行くと表情が変わっていく。目を閉じていって開くとキョロキョロとあたりを見回していく。

「あれ? ここは? 僕……」

「……おかえり」

『お帰りなさいルラナ!』

 彼が……彼女が返ってきた。僕らは歓喜して声をあげる。ルラナはなにが起こったのか分かっていない様子。記憶があの時から進んでいないんだろう。
 
「じゃあ、皆さん。感動の再会をしたいと思うので帰しますよ」

 コアの声と共に視界が変わっていく。ダンジョンの入口の洞窟に変わると僕らは一斉にルラナを抱きしめた。

「み、みんな。どうしたの?」

 泣きじゃくる僕らに疑問を感じているルラナ。困惑するルラナを他所に僕らはただただ泣きじゃくる。

ーーーー

 どうもカムイイムカです
 最後まで見てくれてありがとうございました
 これからヒューイ達はキスタンの生ける伝説となっていきます
短い話となりましたがここで終わりを迎えたいと思います
 皆様本当にありがとうございました
感想 40

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(40件)

yana
2022.01.11 yana

更新有り難う御座います。

おぉっと!? 最終回でしたか……。
まだ、これから面白くなりそうな(謎を残した)感じでしたが……。

一先ずは完結、お疲れ様でした。

2022.01.11 カムイイムカ(神威異夢華)

感想ありがとうございます

最後までありがとうございました
そこそこ力入れたのですが力及ばずといった感じでしょうか
次はもっとがんばるぞ

解除
hyperclockup
2022.01.11 hyperclockup

完結ですか!?
毎回楽しみだったので残念です。
アフターや番外編とか期待したいです。
でもとりあえずはお疲れ様でした。

2022.01.11 カムイイムカ(神威異夢華)

感想ありがとうございます

最後まで読んでいただきありがとうございます
今の所予定はないですが次回作鋭意制作中ですので投稿の際はお楽しみいただければ幸いです

解除
yana
2022.01.09 yana

更新有り難う御座います。

一年後!?

2022.01.10 カムイイムカ(神威異夢華)

感想ありがとうございます

進む😆

解除

あなたにおすすめの小説

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!

しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。 けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。 そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。 そして王家主催の夜会で事は起こった。 第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。 そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。 しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。 全12話 ご都合主義のゆるゆる設定です。 言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。 登場人物へのざまぁはほぼ無いです。 魔法、スキルの内容については独自設定になっています。 誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~

白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」 マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。 そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。 だが、この世には例外というものがある。 ストロング家の次女であるアールマティだ。 実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。 そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】 戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。 「仰せのままに」 父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。 「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」 脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。 アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃 ストロング領は大飢饉となっていた。 農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。 主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。 短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。