レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)

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第二章

第53話 因果応報

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 ウェインを担ぎながらグランドクロスで開けた穴から這い出る。グレンさん達にも手を貸して街を見回す。

「これが毒沼か……」

 町の道路を紫色の水がべったりと占領してる。さっきまで人々が暮らしていた町が静まり返ってる。

「ピ~!」

「スーム! ビシャスさんは?」

 ビシャスさんに預けておいたスームが声をあげた。肩に乗ってきて指をさすように体を変形させて場所を示してくれる。

「はっ! この! どれだけいるのよ!」

 スームが示す方向へ走ると声が聞こえてくる。ビシャスさんの声だと思って速度をあげる。

「あっ! ティル様!」

 ビシャスさんが大小さまざまな蛇と戦ってた。狭いお店の中で立ちまわって自分の有利な戦い方をしてる。短剣使いだから狭いところの方がいいもんな。

「手伝うよ。エリンは?」

「エリンも奥にいます。魔核を取り除いて弱くなってしまったので休ませていました」

 魔核か……取り除くことには成功したんだな。でも、強さをなくしてしまったわけか。
 今は騎士じゃないエリンってことか、なんだか可哀そうだな。
 蛇をみんなで片付ける。ウェインは黙ってちゃんとついてきてるな。なんだか大人しすぎて怪しい。

「なんだ? 俺の顔に何かついてるか?」

「大人しすぎない? 何か企んでる?」

「あ? 俺はお前に負けた。負けたんだから大人しく従うだろ?」

 当たり前のように僕の質問に答えるウェイン。

「こいつなりの正義みたいなものかもしれないな」

「正義? そんなもんじゃねえよ。ただ、ティルの底が知れないから見てみたいと思っただけだ」

 グレンさんが呟くと反論してウェインが答える。

「ということはティル君のファンということかな?」

「なっ!? そ、そんなんじゃねえし……」

 クランロード様がニヤニヤして話すと顔を赤くしてウェインがそっぽを向いた。なんで顔を赤くする!

「お兄様……」

「エリン! 大丈夫?」

「はい、何とか……ごめんなさい」

 エリンがビシャスさんの後ろから出てきて泣きそうに話した。僕に謝ると涙が頬を伝って地面に落ちていく。

「クランロード様、ごめんなさい。私、わたし……」

「いいんだよエリン。クランロード様も分かってる」

「ビシャスさんを傷つけて、それでも体が言うことを聞かなくて、うっ……うう」

 エリンが僕に胸に顔をうずめて泣きじゃくる。エイクテッドで抱き着いてきた時と違って力が弱く感じる。魔核がなくなって弱くなったって言うのは本当みたいだ。

「エリンお姉ちゃん! 私と一緒に強くなろ! お兄ちゃん達と一緒に戦って私も強くなったんだよ! エリンお姉ちゃんもすぐに強くなれるよ」

「リルムちゃん……ありがとう」

「えへへ」

 リルムちゃんが慰めて話す。エリンは優しい眼差しで彼女を見つめて頭を撫でる。

「さて……、当初の目的通り」

「黒幕、エペックをぶっ倒しますか!」

 泣きじゃくるエリンを見てグレンさんとクランロード様が声をあげた。
 それに呼応するようにスームやリルムちゃんが声をあげた。もちろん、僕もね。
 妹を泣かすやつはお兄ちゃんが容赦しない。城でふんぞり返ってるであろうエペックを懲らしめてやる。

「おい、この腕輪壊さなくていいのかよ? 情報が筒抜けだぜ?」

 僕らが歩き出すとウェインが声をあげてきた。僕らは振り返って、

「あ? 筒抜けなら迎えてみろって伝えとけ」

「首を洗って待ってろってね」

 グレンさんとクランロード様がそう伝えてる。なんだか兄弟みたいだ、羨ましい。

『クックック。分かりました。迎えてあげましょう。ヒュドラの王がね!』

 腕輪から声が聞こえてくる。少しするとゴゴゴゴゴ、と地震が発生して家々をなぎ倒してヒュドラが姿を現した。

『ヒュドラキング。かつて魔王をも食べたと言われる最強災厄の魔物。大賢者であるティルでも倒すことはできない! さあ、せいぜいあがきなさい』

 凄い楽しそうなエペックの声、勝手に僕の事を大賢者って言ってきてるよ。まだ、大賢者に転生したわけじゃないんだけどな。

 おっと、そんなことを考えてるうちに三つ首の一つが火のブレスを吹きかけてきた。ビシャスさん達は建物の中に逃げて僕らは武器を構えてヒュドラへと前進する。

「やっ! はっ!」

「ピピ~!」

 リルムちゃんとスームがヒュドラの足へと攻撃。目にも止まらぬ殴打、そして、聖なる水球。少し足の位置がずれる程度でヒュドラの強さがうかがえる。スームの水球は毒沼を浄化できるから整地を重点的にしてもらおう。

「ラインキャリバー! お前の力を見せやがれ!」

「【ファイア】! はっ!」

 グレンさんとクランロード様も別々の足へと攻撃を加える。流石はヒュドラの王。二人の攻撃でも少し傷がつくくらいだ。
 四足のヒュドラの王は動きが遅いから攻撃は躱しやすいけど、その分、体が硬くて頑丈。普通の攻撃じゃびくともしないな。

「気をつけろ。中央の首のブレスは石化になるぞ」

「ウェイン!?」

 ウェインが声をあげる。なんで敵である僕らに忠告を?

「おいおい、なんだ? どういう心境の変化だ?」

「さっきも言っただろ。ティルの力が見てみたいってな。石化なんてつまらねえことでそれを止められちゃ困るんだよ」

 グレンさんがニヤニヤして聞くと顔を赤くしてウェインが答えた。なんで赤くなるんだ!

「来るぞ!」

『!?』

 ウェインが叫ぶ。ヒュドラの真ん中の首が灰色の火を口に灯し始めた。そして、僕らに向かって灰色の火を噴きかけてくる。
 灰色の火にあたった建物がことごとく石になっていく。問答無用で石にされるみたいだな。
 僕らに当てるには速度が足りないな。

『クックック。石化して死んでしまえ!』

 ウェインの腕輪と城の方向から声が聞こえてくる。同時に聞こえてくるからエコーみたいになってる。

「あそこか」

 声の方向を見ると城のテラスからこっちを見てる人が見える。家の屋根へ飛び乗ってブレスを回避してるから普通に見えた。

「死ね! 死ね~! みんな死んでしまえ!」

 エペックは子供みたいに同じことを繰り返し叫んでる。

「じゃあ君が石化する?」

「へ? ぎゃ、ぎゃ~!」

 城のテラスに降り立ってエペックの首根っこを掴んでヒュドラの前へと降り立った。そして、ブレスが来るのを待ってエペックを置き去りにする。素っ頓狂な悲鳴をあげてブレスをまともに受けるエペック。見事なエペックの石像の出来上がりである。

 
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