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第六章「黄昏に暮れる病室」1
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私にも責任がある
真奈ちゃんは私にとっても、大切な家族だから
だから、いくら動揺しても、いくらそれが迷惑なことでも
真奈ちゃんが苦しんでいるなら、私には真奈ちゃんのことを大切に守る責任がある
それで二人の関係を壊してしまっても、それは、“仕方のないことでしょう”?
*
———浩二と羽月が遊園地で楽しい時を過ごしていた頃、唯花は。
昨日、真奈ちゃんが微熱を出していたことを思い出して私は昼食時に真奈ちゃんの様子を見に行った。
「ちゃんとご飯食べてるといいけど……」
一人だと体調崩したままだと食事も摂れていないかもと思い、樋坂家に入ると案の定お昼時にもかかわらず台所には誰もいなかった。私は静かな家の様子を見て違和感を覚えた、恐らく私の心配は当たっている、私は嫌な予感を感じた。
早々にはやる気持ちを押さえられず、手すりを掴み階段を急いで登っていく。自然と心臓の鼓動が早くなっていくのを感じた。
「―—―—真奈ちゃん!!」
私は自分でも驚くくらいの大きな声を出して、真奈ちゃんの部屋に入った。
そこにはベッドの中で眠りながらもびっしょりと汗を掻いて苦しそうにしている真奈ちゃんの姿があった。
その様子を見た私はたまらずに真奈ちゃんを起こした。
「大丈夫?! 真奈ちゃん?!」
元気のない、苦しそうな真奈ちゃんの姿を私は見たくなかった。
いつも元気いっぱいで、色んな言葉で私たちを笑わせてくれて、元気づけてくれる、かけがえのない存在。
「おねえちゃん……」
唯花がやってきたことに気づき、目を覚ました真奈ちゃんは唯花のいる方に首を動かして、か細い声で一言そう言った。
「ごめんね、一人で苦しかったよね、大丈夫、私が付いてるからっっ!!」
ベッドに駆け寄り、切実な状況に思わず悲痛な声を出しながら、自然と涙が零れていた。
「だいじょうぶなの、おねえちゃん、泣かないで……」
真奈ちゃんは布団から出したか細い腕を伸ばして、そっとその小さな指で私の涙を拭ってくれる。
まだ生まれて間もない頃から真奈ちゃんのことを見てきた私には、その優しさはとても心の奥の奥にまで響くものだった。
私は感極まって、その優しい気持ちをお返ししたくて真奈ちゃんの頭を撫でた。
「くすぐったいよ、おねえちゃん」
心配させないように、明るく笑顔を浮かべた真奈ちゃん。その優しさに余計に私は責任を強く感じた。
「汗でベッドも濡れちゃってるみたいだから、一旦私の家にいこっか?」
私は真奈ちゃんは昨日から一日ずっとここで寝込んでいたんだろうと思い、心痛察するまま真奈ちゃんを抱きかかえて、自分の家に一旦連れていくことにした。
「ありがとう、おねえちゃん……」
いつもの元気な声ではなかったが、おんぶした背中から真奈ちゃんの言葉を私は聞いた。
ずっと部屋で我慢してきたことだろうと思うと、心が締め付けられるようだった。
「風邪はちゃんと静養して治さないとね。風邪は万病の元なんだから」
「うん、早く治して、おにぃを心配させないようにしなきゃ」
真奈ちゃんは浩二に心配かけないように、苦しくても演技をしていたのかもしれない、そう思うとさらに私は複雑な心境になった。
「いいんだよ、私がそばにいるから。我慢しないで」
私が声を掛けると真奈ちゃんは小さく「うん」と返事をして、私の背中に頭を預けた。
まだ小さな身体の真奈ちゃんを背中に抱えながら、熱のある真奈ちゃんのために自分のベッドを貸すことにした。
隣にある私の家の玄関をくぐり、慌てないように私の部屋まで向かった。
「おねえちゃんのベッド、いい香りがする」
私の部屋まで真奈ちゃんを連れていき、私のベッドに寝かせると真奈ちゃんは安心したのか、そっと身体の力を抜いて、年相応の笑顔を浮かべた。
私はすぐさまエアコンの電源を付け暖房をかけると、真奈ちゃんに布団を掛けた。
「真奈ちゃん、ちょっと我慢してね、濡れタオルと着替え持ってくるから」
「うん、ありがとう、おねえちゃん」
枕に頭を載せてくれた真奈ちゃんを見て、私は自分の責任を果たせたようで少しだけ安心することが出来た。
「どうしたの、真奈ちゃん?」
真奈ちゃんはこちらにじっと視線を送るのを見て、反射的に私は聞いた。
「”だいすき”」
「”私も、大好きだよ”」
その会話一つで思わず涙が零れそうになるのをグッと堪えた。
これ以上、真奈ちゃんに気を遣わせるわけにはいかなかった。
真奈ちゃんの無邪気で優しい声を聞くと、なんでもしてあげたいと思った、言葉一つで元気と勇気をいっぱいくれた。
私は今は自分に出来ることをしようと部屋を出て、濡れタオルと着替えを取りに急いだ。
真奈ちゃんは私にとっても、大切な家族だから
だから、いくら動揺しても、いくらそれが迷惑なことでも
真奈ちゃんが苦しんでいるなら、私には真奈ちゃんのことを大切に守る責任がある
それで二人の関係を壊してしまっても、それは、“仕方のないことでしょう”?
*
———浩二と羽月が遊園地で楽しい時を過ごしていた頃、唯花は。
昨日、真奈ちゃんが微熱を出していたことを思い出して私は昼食時に真奈ちゃんの様子を見に行った。
「ちゃんとご飯食べてるといいけど……」
一人だと体調崩したままだと食事も摂れていないかもと思い、樋坂家に入ると案の定お昼時にもかかわらず台所には誰もいなかった。私は静かな家の様子を見て違和感を覚えた、恐らく私の心配は当たっている、私は嫌な予感を感じた。
早々にはやる気持ちを押さえられず、手すりを掴み階段を急いで登っていく。自然と心臓の鼓動が早くなっていくのを感じた。
「―—―—真奈ちゃん!!」
私は自分でも驚くくらいの大きな声を出して、真奈ちゃんの部屋に入った。
そこにはベッドの中で眠りながらもびっしょりと汗を掻いて苦しそうにしている真奈ちゃんの姿があった。
その様子を見た私はたまらずに真奈ちゃんを起こした。
「大丈夫?! 真奈ちゃん?!」
元気のない、苦しそうな真奈ちゃんの姿を私は見たくなかった。
いつも元気いっぱいで、色んな言葉で私たちを笑わせてくれて、元気づけてくれる、かけがえのない存在。
「おねえちゃん……」
唯花がやってきたことに気づき、目を覚ました真奈ちゃんは唯花のいる方に首を動かして、か細い声で一言そう言った。
「ごめんね、一人で苦しかったよね、大丈夫、私が付いてるからっっ!!」
ベッドに駆け寄り、切実な状況に思わず悲痛な声を出しながら、自然と涙が零れていた。
「だいじょうぶなの、おねえちゃん、泣かないで……」
真奈ちゃんは布団から出したか細い腕を伸ばして、そっとその小さな指で私の涙を拭ってくれる。
まだ生まれて間もない頃から真奈ちゃんのことを見てきた私には、その優しさはとても心の奥の奥にまで響くものだった。
私は感極まって、その優しい気持ちをお返ししたくて真奈ちゃんの頭を撫でた。
「くすぐったいよ、おねえちゃん」
心配させないように、明るく笑顔を浮かべた真奈ちゃん。その優しさに余計に私は責任を強く感じた。
「汗でベッドも濡れちゃってるみたいだから、一旦私の家にいこっか?」
私は真奈ちゃんは昨日から一日ずっとここで寝込んでいたんだろうと思い、心痛察するまま真奈ちゃんを抱きかかえて、自分の家に一旦連れていくことにした。
「ありがとう、おねえちゃん……」
いつもの元気な声ではなかったが、おんぶした背中から真奈ちゃんの言葉を私は聞いた。
ずっと部屋で我慢してきたことだろうと思うと、心が締め付けられるようだった。
「風邪はちゃんと静養して治さないとね。風邪は万病の元なんだから」
「うん、早く治して、おにぃを心配させないようにしなきゃ」
真奈ちゃんは浩二に心配かけないように、苦しくても演技をしていたのかもしれない、そう思うとさらに私は複雑な心境になった。
「いいんだよ、私がそばにいるから。我慢しないで」
私が声を掛けると真奈ちゃんは小さく「うん」と返事をして、私の背中に頭を預けた。
まだ小さな身体の真奈ちゃんを背中に抱えながら、熱のある真奈ちゃんのために自分のベッドを貸すことにした。
隣にある私の家の玄関をくぐり、慌てないように私の部屋まで向かった。
「おねえちゃんのベッド、いい香りがする」
私の部屋まで真奈ちゃんを連れていき、私のベッドに寝かせると真奈ちゃんは安心したのか、そっと身体の力を抜いて、年相応の笑顔を浮かべた。
私はすぐさまエアコンの電源を付け暖房をかけると、真奈ちゃんに布団を掛けた。
「真奈ちゃん、ちょっと我慢してね、濡れタオルと着替え持ってくるから」
「うん、ありがとう、おねえちゃん」
枕に頭を載せてくれた真奈ちゃんを見て、私は自分の責任を果たせたようで少しだけ安心することが出来た。
「どうしたの、真奈ちゃん?」
真奈ちゃんはこちらにじっと視線を送るのを見て、反射的に私は聞いた。
「”だいすき”」
「”私も、大好きだよ”」
その会話一つで思わず涙が零れそうになるのをグッと堪えた。
これ以上、真奈ちゃんに気を遣わせるわけにはいかなかった。
真奈ちゃんの無邪気で優しい声を聞くと、なんでもしてあげたいと思った、言葉一つで元気と勇気をいっぱいくれた。
私は今は自分に出来ることをしようと部屋を出て、濡れタオルと着替えを取りに急いだ。
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