8 / 10
3章 Are You Ready
7話
しおりを挟む
~~~~~~~~~~~~
よろよろとあの場から離れ、俺達は元の宿に戻ってきていた。リーナはまだしも、俺はジャケットに大穴を開けているのだ。何か聞かれたらヤバいからさっさと部屋に戻らないと。
「(大丈夫です、追手はいません)」
「(……ああ)」
リーナが前方にのみ視線を巡らせてから、俺にそう伝えてくる。実際、誰かから視線を感じることは無い。リーナも言っているなら大丈夫だろう。
俺は一つ頷いてから、中の気配を探る。あの……雰囲気が怖い店長? とやらがいなければいいんだが。
宿屋の中に入る。この宿屋は幸い、出入口が人目につかないようになっている。理由は分からないが、今に限ってはとてもありがたい。
「あら、どうされました?」
受付のおばさんが俺たちに気づく。ジャケットに大穴を開けて、埃塗れになっている青年が『なんでもない』と言ったら、そっちの方が怪しいだろう。
かと言ってただ転ぶだけでもこんなことにはならない。だから、そうだな……
「公園で遊んでたら木に引っかけたんだ。この歳で恥ずかしいけどよ」
「あら。よろしければ裁縫道具と薬箱をお貸ししましょうか?」
「いいのか? 頼む」
俺がそう言ってその場に立ち止まると、おばさんはカウンターの下から小箱を二つ取り出した。
それを受け取り、今度こそ部屋に戻ろうとすると――
「あ、ちょっと待ってください!」
「……なんだ?」
再び呼び止められた。ああ、返すタイミングについてだろうか。
「貸衣装はどうされますか?」
「は?」
貸衣装? 何のために。
「何で貸衣装が必要なんだよ」
あまりに不釣り合いなセリフに、つい応えると、おばちゃんはニコニコと屈託がなく、それでいていやらしい笑みを浮かべる。
「いえ、普段とは違う衣装でまぐわうと、それはそれで良いものですよ?」
まぐわう?
まぐわう、まぐわう、まぐわう……。
「――ッ! ッ、ッ!」
リーナは俺の背後でギュッと服を掴む。彼女の方を振り向くと、耳まで真っ赤にして……俺の背に顔をグリグリとくっつけていた。
そんな彼女の反応、まぐわうという言葉、そして休憩――と思い出して、俺はカァーッと頭に血が上る。
も、もしかしてここって……ッ!
「あ、いや、その……い、いい! 結構だ!」
「そうですか。では。今夜はお楽しみください」
最後にそう笑って、おばちゃんはひらひらと手を振る。俺は物凄く熱くなった顔を隠しつつ、リーナの手を引いて自分の部屋へ駆けこんだ。
「……桃色だな」
「今更、ですか……?」
顔を真っ赤にしながら、俯くリーナ。なるほど、最初からリーナは分かってたのか……。最初から言ってくれればよかったのに。
「いえ、ユーヤは全然聞いてくれなかったじゃないですか……うう、あうう……顔から火が出ます……」
「ぐ……すまん……」
でも恥ずかしがるリーナは可愛くて、いいな。
「ユーヤ、なんで私の顔をまじまじと見てるんですか……?」
「……えーと、まあ、いいだろ」
可愛いから――と、言いたいところだったが、やめた。リーナが可愛すぎて、何も言葉が出てこなかったのだ。
改めて、部屋を見る。天井が何故か全面鏡張りになっており、何となく可愛らしいピンクの壁紙。そして大きめのベッド……。
まごうことなく、ラブホテルですね間違いない。
(一国の王女を、ラブホテルに誘ったことになるのか……)
世が世なら、っていうか普通に不敬罪だろコレ。
そう思いつつも、リーナは頭を切り替えたのか……少し頬の朱色は残しつつも、部屋を物色しだした。何やら、少し楽しそうに。
「…………」
「………………」
「……………………」
「…………………………」
俺は無言のまま、荷物を置いたり、服をかけたりする。窓も無い、天井も……板を外せる感じもしない。取りあえず密室だろう。
ベッド以外には、小さ目なソファが一つだ。全体的に何となく薄暗いのが、逆に淫靡な雰囲気を醸し出している。
「ユーヤユーヤ、これは何ですか?」
少しワクワクしたような表情で――輪っかのついた薄い水風船を持ってくる。はは、こっちの世界にもちゃんとコンドームはあるんですね馬鹿野郎。
「あー……その、うん。水風船だ」
しれっと嘘をつくと、リーナはなるほどと頷いた。王女様の性教育くらいしておけよ。
「……ふふっ」
と、思ったらリーナが可愛らしい物を見るような目で笑う。こいつ、分かってて揶揄ったな……!?
「リーナ、オマエなぁ!」
「ふ、ふふふ! ……ご、ごめんなさい。ユーヤが、ユーヤが真剣な顔で水風船とか言うから……!」
王族つっても、コンドームは知ってるんだなぁ 。そりゃ知るべきなんだろうけどさ。楽しそうに、膝まで叩きながら笑うリーナ。照れが羞恥に進化する。あー、もう。
こんな揶揄われ方、前の世界じゃされたことが無い。そのせいで対処方法が分からず、俺は頬を膨らませてそっぽを向いた。
「やっぱムサシで寝る」
「それじゃ疲れが取れませんよ。そうだ、マッサージしてあげましょうか?」
そう言って俺の背に手を置くリーナ。さらあっ……と彼女から甘酸っぱい、それでいてどこかクラクラするような香りが漂ってきた。
それを吸い込んだ瞬間、心臓がドクンと跳ね上がる。
何とも形容しがたい良い香りが……。
(……あ、あれか? これが……あの、伝説のフェロモンってヤツか!?)
ドッドッドッ、と心臓が大暴れする。口から飛び出そう、というかもう気を抜いたら破裂してしまうだろう。
落ち着かせるために、大きく息を吸い込む。……と、彼女の香りが更に入ってきてしまった。鼻で吸い込んだ時と違い、なんか甘い味が……っ!
「ゆ、ユーヤ。そう、硬くならずに……」
なんというか、リーナがおっかなビックリという感じで腰に手を回す。
「あ、その、リーナ……離れて……」
俺が顔から火を出しながらそう言うと、リーナはハッと何かに気づいたような顔をしてからふんふんと鼻を揺らす。この子は何をしてるんでしょうか。
「その……ユーヤ」
「お、はお?」
ビクッと姿勢を正す。
「先にお風呂を頂いても良いですか? その、汗をかいてしまったので……」
「え、あ、え……あ、はい」
ドギマギしながら、すすす……と離れていくリーナを見る。彼女と目が合うと、物凄く恥ずかしそうにしながら後ずさりしていった。
でも俺の方があわあわしているのを見ると、途端にリーナは余裕を取り戻したようだ。くすっと笑ってから流し目をしてきた。
「ふふ……変なユーヤ」
変なのはお前だろ。
と、言いたいが彼女の後姿に圧倒されて何も言えなくなってしまった。
……王族的には、平民男子と二人きりでラブホに泊まることは普通なんだろうか。そういえば、レイニー婆さんの家で寝た時も別に気にして無さそうだったし……。
「……うん、俺が意識しすぎなんだ。きっとそうだ」
自分に言い聞かせるようにして、俺は立ち上がる。WRBのNPC対戦でもやっておくか。
ノーパソを開き、カタカタとやっていると……リーナが風呂を終えたらしい。ホカホカと体から湯気を出しながら風呂場から出て来た。
「ユーヤ。その……ど、どうぞ」
「え? お、ああ」
風呂上りのパジャマ姿のリーナを見ないように意識して視線を逸らしながら……風呂場に入る。なんか風呂中にいい香りがしているような……さっきの香りとはまた違う、どこかホッとする香りが……。
き、気のせい、気のせいだ。女の子からいい香りだけするのはきっと香水のせいだよ!
……と、自分に言い聞かせながら汗を流す。出来れば湯船につかりたかったが、この世界にはそういう文化は無いらしい。残念に思いながらも、少しサッパリしたので助かった。
お湯で体を流せるだけでも、人間は案外ホッとするものだ。
「ふぅ……」
なんかホテルのアメニティってビニール袋に入っておいてあるイメージだったけど、普通にバスタオルとか置いてあるんだな。
「ん?」
何故か、ふっと灯りが消える。ちょうどパジャマに着替え終えたタイミングだったから良かったが……ガスが切れたんだろうか。
部屋に戻ると、やっぱり何も見えない。困ったな。
「リーナ、燃料が切れたのか?」
「燃料はまだあると思います」
……?
「じゃあ、なんで真っ暗なんだ?」
「え……その、ユーヤは……明るい方が、好きなんですか?」
「誰だってそうだろ」
真っ暗じゃ何も見えん。
「だ、誰だって……!? ユーヤ。それは、その……ごく一部の方だけかと! 普通は、たぶん乙女はだれしも恥ずかしいと思います!」
何故乙女が唐突に出てくる。真っ暗だと足元が見えねえだろうが。
「何言ってんだよ。えーと、どこだっけ灯り」
確かベッドの方にあったような。俺は手探りでベッドの方へ歩いていくと……ごん、と膝をベッドの端にぶつける。
「おっと」
そのままベッドに倒れこむ形になってしまい……俺は全力で横に回転、ベッドの上に乗ることを阻止する。
ゴッ! とかなり大きな音が鳴ったが……と、取り敢えずベッドの上に倒れこむことは回避した。危ない、何が危ないのか分からないけど危なかった。
「ゆ、ユーヤ……凄い音がしましたけど、大丈夫ですか?」
「こうしてこけるから……灯りは大切なんだ」
「で、でももう寝るだけだから大丈夫ですよ」
……言われてみれば、もう寝るんだから別にいいか。Σを枕元に置いておけば、万が一襲われた時もすぐに対応出来るだろう。
「その通りだな。じゃあリーナ、枕だけくれ。俺はソファ……長椅子で寝るから」
「疲れが取れませんよ?」
「床よりマシだ」
「ここで寝ればいいじゃないですか。ちょうど二人用のようですし」
「だから、男女が一緒に寝たらダメだって言ってるだろ」
特にお前は王女だぞ。
しかし……それはリーナに対する返答としてマズかったのか、いきなり腕を掴まれる。
「うえっ?」
何も抵抗できないまま、俺はベッドの上に押し倒される。何だ、何が起きているんだ。
「ユーヤ」
「はい」
恐らく、三十センチ先くらいにリーナがいるのだろう。暗くてよく見えないが……目が慣れてくれば、彼女の顔が見えてくるはずだ。
……えっ、何で俺、王女様に押し倒されてるの? 何が起きてるの?
混乱する俺を他所に、何故か荒い息が聞こえてくる。怖い。
「ユーヤ」
「はい」
「……ユーヤ!」
「はい!」
なんで名前を叫ばれてるんだ俺は!
いつの間にかリーナの両腕で俺の両腕が掴まれていた。筋力が凄い、これ絶対に抜け出せない。
「……その、きっと……本当なら、私は……全く知らない貴族と、結婚することになっていたでしょう。第二王女ですから」
いきなりそんなことを言いだすリーナ。貴族ってそういうイメージあるな。王族も同様に。
「だから、こんな状況に……憧れていたんです。せめて、初めてくらいは――自分で選びたいって、そう思ってたんです」
えーと……。
王女様が俺を押し倒して、初めては自分で選びたいとか言い出した。
……何が起きてるのマジで。
「ユーヤ……貴方の気持ち、嬉しく思います。きっと打算からそういう思考に至ったんでしょう。それは分かります。だってそんなのあり得ない。でも、でも……それでも、貴方からの求婚が……私は、嬉しかったんです」
「待って待って何のはな――うっ」
むぎゅっ。
俺の唇に、柔らかいものが重ねられる。
時間にして、一秒も無かっただろう。でも、それでも――何が起きたか、なんて分かる。
「ユーヤ……」
やっと目が慣れてきた、彼女の顔をこの目でとらえられる。目の前にあるリーナの顔、この世のものとは思えない圧倒的な美貌。
元の世界にいれば、きっと一生会話することも無かった美女が俺を押し倒している。それはつまり――
(……戦争、だもんな)
明日、死ぬかもしれない。だってそう、今日だって一歩間違えれば俺は死んでいた。そして俺が死ねばきっとリーナは国を取り戻せない。
それだけは避けたいだろう、きっと。
だから、ここで楔を打ち込みたいのだ。俺が逃げないように。今日の襲撃でぶるった俺が、戦いを止めないように。
(……情けねえな)
本当に情けない。そんなことを思わせたなんて。やっぱり、俺は頼りないのだろう。彼女が不安に思う気持ちも分かる。
「リーナ。……安心してくれ」
どうやれば彼女を安心させてあげられるのか。
「そんなに思いつめる必要なんて無い。大丈夫だ、俺は――約束は守る」
俺は――あの空間があればいいんだ。
ムサシの中が、機兵の中が。
確かに――ずっと君の隣で支えたいと思っている。それは間違いない。
初めて、俺を見てくれた人。
初めて、俺を認めてくれた人。
初めて、俺に居場所をくれた人。
十七年間、誰からも貰えなかった――「頑張れ」という期待。その言葉。それを初めてくれた人。
そんなリーナを、支え続けたい、隣で。
……でも、きっと難しいだろう。彼女は王女で、俺は平民どころか異世界人で。
だから、ムサシを。あの空間だけで、俺は満足なんだ。
「リーナが俺に何かする必要なんて無いよ」
「……ユーヤ、後悔しないんですか?」
何故か残念そうな表情になるリーナ。
「私は……一生、後悔すると思います」
後悔?
……確かに、これだけの美女とキスなんて今後一生無いだろう。それは惜しい気もする。
でも――
「心残りがある方が、人間『生きよう』って思えるもんさ」
――そういうことは、好き同士がやるものだ。
俺は、人を好きになったことが無い。当然だ、誰かの心に触れることなんて人生で一度も無かったのだから。
でも、それでも……今、リーナに抱いている感情が好意であることは分かる。たった一日しか共に過ごしていない相手ではあるが……それでも。
俺は、きっと……リーナが好きだ。恋なのか、愛なのか。親愛なのか、友愛なのか――恋愛なのか。
どの感情なのかは判断がつかない。生まれて初めての感覚だから。
この愛を胸に抱いている限りは、彼女を忘れることは無いし――彼女を、支えたいという想いに陰りが来ることは無いだろう。
「きっと忘れない。だから、俺はずっと生きられる気がする」
この気持ちは、墓まで持っていくことになるだろう。でも、それがいいんだと思う。
相手は王女で、俺は平民。そういうものだ。
「でもそれだと、報酬が……」
なんでいきなり報酬の話をしだしたのか。
ムサシで戦わせてくれ、と。それが報酬だって……ちゃんと言ったんだがな。
「そんなん、終わった後でいいだろ」
「……そう、ですか」
残念そうな顔になるリーナ。口をつぐみ……目に少しだけ涙を浮かべ、笑顔を作った。
「分かりました。それが……ユーヤの望むことなら。何としてでも戦いを終わらせます。終わらせて――あなたに、報酬を」
「ああ」
少しは彼女を安心させてあげられただろうか。決戦の前――不安になる彼女を。
「……でも、ちょっと残念です」
ころん、と横に転がったリーナ。そういえば、このままだと同じベッドになっちまう。俺は立ち上がってソファに移動しようとして――彼女に、再び手首を握られた。
「ユーヤ。これくらいは……いいでしょう?」
寂しそうな声音。……一人だと、心細いのだろうか。
俺は仕方なしに、ベッドの端の方に寝転がる。
「……明日は早い。寝るか」
「はい。……おやすみなさい、ユーヤ」
「おやすみ、リーナ」
そう言って、目を閉じる。明日は日の出とともに戦いだ。
(決戦だ――)
ムサシに乗るんだ。ちゃんとムサシに乗れさえすれば――負ける気は、しない。
~~~~~~~~~~~~~~~~
夢を、見た。いや、見ていると言うべきか。
俺がいる、小さい頃の俺だ。こういう意識のハッキリする夢を……明晰夢と言うんだったか。
別に大したことが無い夢だ、小さい頃に行った……ハイキング。
蛍が見れる、って言って父親が連れて行ってくれたんだ。
『雄哉、アレが蛍だ』
『わぁ……』
修哉は塾があるとかで来なくて、その送り迎えがあるからって母親も来なくて――俺は、父親と二人きりで山奥まで行った。
後にも先にも、父親と二人きりになったのはあの日だけだったな。
『なぁ、雄哉。……お前、将来は何になりたい?』
『え? うーん……なんだろうなぁ。兄貴みたいに、何でも出来る人になりたいな』
『ははは、それはやめとけ。あの生き方は、苦しいぞ。自分を殺し続けないといけないからな』
自分を殺す、か。
そこでふと――俺は昼間の出来事を思い出す。
『そっかぁ。じゃあ……俺、ゲーム好きだからゲーム作る』
『お、いいじゃないか。ゲームを作ったら、父さんが世界中に売ってくるぞ』
『ホント!?』
俺は、人を殺した。
この手で引き金を引いて――人の人生を終わらせた。
『そのためにも、長生きしなくちゃな』
『えー、どうしたの? 別にすぐ死んじゃうわけじゃ無いでしょ?』
『そりゃもちろん、父さんだってすぐには死なないさ』
死っていうのは、覆らない。
他人の人生も一緒に滅茶苦茶にする行為だ。
『……お母さんは、好きか?』
『え? んー……もうちょっと、俺に構って欲しいなぁ』
初めて、殺した。そりゃ現代日本で普通に生きてれば人を殺すことなんて無いか。
『おっと、雄哉。その石の上に座っちゃダメだぞ?』
『なんで?』
『その下にいる虫を潰しちゃうかもしれないだろ? 見えないところにも気を遣わないと』
『あ、そっか』
……見えないところ?
俺は過去の自分を見て、ふと今日のリーナの言葉を思い出す。
『今さ――』
何のことか分からなかったが、あれはもしかして『今さら』と言おうとしたんじゃないだろうか。
今さら、今さらか。
「あ、そっか」
言われてみれば、今さらだ。俺はムサシに乗って、何体の機兵を倒しただろうか。
「ふ、ははは」
変な笑いが漏れる。
そういえば、そうだ。俺は何て馬鹿なことを。
目の前で殺すのと、ムサシで斬る。なんの違いがあるだろうか。
「……そりゃ、リーナからも優しい顔されるか」
何も分かってない、何も見えてない証拠だ。
ただ、ムサシに乗ってはしゃいでいた高校生。その程度の人間だとリーナにバレてしまったわけか。
『さて、そろそろコテージに戻ろうか』
『うん!』
『もうちょっと大人になったら、ハワイとか行って射撃練習とかしたいなぁ。銃、撃ってみたいだろ?』
『うん! やってみたい』
……でも、それでも。
俺が、ムサシに乗ったら一番強い。そしてリーナを救うためにはムサシで敵をやっつけるしかない。
だから、俺はムサシに乗る。
目の前で人を殺したからと言って、動揺してどうする。俺がやってるのは戦争なんだから。
甘かった。あの時の優しさは、俺のその甘さを指摘しないという優しさだったのだろう。
「馬鹿だな、俺は」
起きたら、リーナに謝ろう。
そしてもう一度ちゃんと言うんだ。
『迷わない』って――。
よろよろとあの場から離れ、俺達は元の宿に戻ってきていた。リーナはまだしも、俺はジャケットに大穴を開けているのだ。何か聞かれたらヤバいからさっさと部屋に戻らないと。
「(大丈夫です、追手はいません)」
「(……ああ)」
リーナが前方にのみ視線を巡らせてから、俺にそう伝えてくる。実際、誰かから視線を感じることは無い。リーナも言っているなら大丈夫だろう。
俺は一つ頷いてから、中の気配を探る。あの……雰囲気が怖い店長? とやらがいなければいいんだが。
宿屋の中に入る。この宿屋は幸い、出入口が人目につかないようになっている。理由は分からないが、今に限ってはとてもありがたい。
「あら、どうされました?」
受付のおばさんが俺たちに気づく。ジャケットに大穴を開けて、埃塗れになっている青年が『なんでもない』と言ったら、そっちの方が怪しいだろう。
かと言ってただ転ぶだけでもこんなことにはならない。だから、そうだな……
「公園で遊んでたら木に引っかけたんだ。この歳で恥ずかしいけどよ」
「あら。よろしければ裁縫道具と薬箱をお貸ししましょうか?」
「いいのか? 頼む」
俺がそう言ってその場に立ち止まると、おばさんはカウンターの下から小箱を二つ取り出した。
それを受け取り、今度こそ部屋に戻ろうとすると――
「あ、ちょっと待ってください!」
「……なんだ?」
再び呼び止められた。ああ、返すタイミングについてだろうか。
「貸衣装はどうされますか?」
「は?」
貸衣装? 何のために。
「何で貸衣装が必要なんだよ」
あまりに不釣り合いなセリフに、つい応えると、おばちゃんはニコニコと屈託がなく、それでいていやらしい笑みを浮かべる。
「いえ、普段とは違う衣装でまぐわうと、それはそれで良いものですよ?」
まぐわう?
まぐわう、まぐわう、まぐわう……。
「――ッ! ッ、ッ!」
リーナは俺の背後でギュッと服を掴む。彼女の方を振り向くと、耳まで真っ赤にして……俺の背に顔をグリグリとくっつけていた。
そんな彼女の反応、まぐわうという言葉、そして休憩――と思い出して、俺はカァーッと頭に血が上る。
も、もしかしてここって……ッ!
「あ、いや、その……い、いい! 結構だ!」
「そうですか。では。今夜はお楽しみください」
最後にそう笑って、おばちゃんはひらひらと手を振る。俺は物凄く熱くなった顔を隠しつつ、リーナの手を引いて自分の部屋へ駆けこんだ。
「……桃色だな」
「今更、ですか……?」
顔を真っ赤にしながら、俯くリーナ。なるほど、最初からリーナは分かってたのか……。最初から言ってくれればよかったのに。
「いえ、ユーヤは全然聞いてくれなかったじゃないですか……うう、あうう……顔から火が出ます……」
「ぐ……すまん……」
でも恥ずかしがるリーナは可愛くて、いいな。
「ユーヤ、なんで私の顔をまじまじと見てるんですか……?」
「……えーと、まあ、いいだろ」
可愛いから――と、言いたいところだったが、やめた。リーナが可愛すぎて、何も言葉が出てこなかったのだ。
改めて、部屋を見る。天井が何故か全面鏡張りになっており、何となく可愛らしいピンクの壁紙。そして大きめのベッド……。
まごうことなく、ラブホテルですね間違いない。
(一国の王女を、ラブホテルに誘ったことになるのか……)
世が世なら、っていうか普通に不敬罪だろコレ。
そう思いつつも、リーナは頭を切り替えたのか……少し頬の朱色は残しつつも、部屋を物色しだした。何やら、少し楽しそうに。
「…………」
「………………」
「……………………」
「…………………………」
俺は無言のまま、荷物を置いたり、服をかけたりする。窓も無い、天井も……板を外せる感じもしない。取りあえず密室だろう。
ベッド以外には、小さ目なソファが一つだ。全体的に何となく薄暗いのが、逆に淫靡な雰囲気を醸し出している。
「ユーヤユーヤ、これは何ですか?」
少しワクワクしたような表情で――輪っかのついた薄い水風船を持ってくる。はは、こっちの世界にもちゃんとコンドームはあるんですね馬鹿野郎。
「あー……その、うん。水風船だ」
しれっと嘘をつくと、リーナはなるほどと頷いた。王女様の性教育くらいしておけよ。
「……ふふっ」
と、思ったらリーナが可愛らしい物を見るような目で笑う。こいつ、分かってて揶揄ったな……!?
「リーナ、オマエなぁ!」
「ふ、ふふふ! ……ご、ごめんなさい。ユーヤが、ユーヤが真剣な顔で水風船とか言うから……!」
王族つっても、コンドームは知ってるんだなぁ 。そりゃ知るべきなんだろうけどさ。楽しそうに、膝まで叩きながら笑うリーナ。照れが羞恥に進化する。あー、もう。
こんな揶揄われ方、前の世界じゃされたことが無い。そのせいで対処方法が分からず、俺は頬を膨らませてそっぽを向いた。
「やっぱムサシで寝る」
「それじゃ疲れが取れませんよ。そうだ、マッサージしてあげましょうか?」
そう言って俺の背に手を置くリーナ。さらあっ……と彼女から甘酸っぱい、それでいてどこかクラクラするような香りが漂ってきた。
それを吸い込んだ瞬間、心臓がドクンと跳ね上がる。
何とも形容しがたい良い香りが……。
(……あ、あれか? これが……あの、伝説のフェロモンってヤツか!?)
ドッドッドッ、と心臓が大暴れする。口から飛び出そう、というかもう気を抜いたら破裂してしまうだろう。
落ち着かせるために、大きく息を吸い込む。……と、彼女の香りが更に入ってきてしまった。鼻で吸い込んだ時と違い、なんか甘い味が……っ!
「ゆ、ユーヤ。そう、硬くならずに……」
なんというか、リーナがおっかなビックリという感じで腰に手を回す。
「あ、その、リーナ……離れて……」
俺が顔から火を出しながらそう言うと、リーナはハッと何かに気づいたような顔をしてからふんふんと鼻を揺らす。この子は何をしてるんでしょうか。
「その……ユーヤ」
「お、はお?」
ビクッと姿勢を正す。
「先にお風呂を頂いても良いですか? その、汗をかいてしまったので……」
「え、あ、え……あ、はい」
ドギマギしながら、すすす……と離れていくリーナを見る。彼女と目が合うと、物凄く恥ずかしそうにしながら後ずさりしていった。
でも俺の方があわあわしているのを見ると、途端にリーナは余裕を取り戻したようだ。くすっと笑ってから流し目をしてきた。
「ふふ……変なユーヤ」
変なのはお前だろ。
と、言いたいが彼女の後姿に圧倒されて何も言えなくなってしまった。
……王族的には、平民男子と二人きりでラブホに泊まることは普通なんだろうか。そういえば、レイニー婆さんの家で寝た時も別に気にして無さそうだったし……。
「……うん、俺が意識しすぎなんだ。きっとそうだ」
自分に言い聞かせるようにして、俺は立ち上がる。WRBのNPC対戦でもやっておくか。
ノーパソを開き、カタカタとやっていると……リーナが風呂を終えたらしい。ホカホカと体から湯気を出しながら風呂場から出て来た。
「ユーヤ。その……ど、どうぞ」
「え? お、ああ」
風呂上りのパジャマ姿のリーナを見ないように意識して視線を逸らしながら……風呂場に入る。なんか風呂中にいい香りがしているような……さっきの香りとはまた違う、どこかホッとする香りが……。
き、気のせい、気のせいだ。女の子からいい香りだけするのはきっと香水のせいだよ!
……と、自分に言い聞かせながら汗を流す。出来れば湯船につかりたかったが、この世界にはそういう文化は無いらしい。残念に思いながらも、少しサッパリしたので助かった。
お湯で体を流せるだけでも、人間は案外ホッとするものだ。
「ふぅ……」
なんかホテルのアメニティってビニール袋に入っておいてあるイメージだったけど、普通にバスタオルとか置いてあるんだな。
「ん?」
何故か、ふっと灯りが消える。ちょうどパジャマに着替え終えたタイミングだったから良かったが……ガスが切れたんだろうか。
部屋に戻ると、やっぱり何も見えない。困ったな。
「リーナ、燃料が切れたのか?」
「燃料はまだあると思います」
……?
「じゃあ、なんで真っ暗なんだ?」
「え……その、ユーヤは……明るい方が、好きなんですか?」
「誰だってそうだろ」
真っ暗じゃ何も見えん。
「だ、誰だって……!? ユーヤ。それは、その……ごく一部の方だけかと! 普通は、たぶん乙女はだれしも恥ずかしいと思います!」
何故乙女が唐突に出てくる。真っ暗だと足元が見えねえだろうが。
「何言ってんだよ。えーと、どこだっけ灯り」
確かベッドの方にあったような。俺は手探りでベッドの方へ歩いていくと……ごん、と膝をベッドの端にぶつける。
「おっと」
そのままベッドに倒れこむ形になってしまい……俺は全力で横に回転、ベッドの上に乗ることを阻止する。
ゴッ! とかなり大きな音が鳴ったが……と、取り敢えずベッドの上に倒れこむことは回避した。危ない、何が危ないのか分からないけど危なかった。
「ゆ、ユーヤ……凄い音がしましたけど、大丈夫ですか?」
「こうしてこけるから……灯りは大切なんだ」
「で、でももう寝るだけだから大丈夫ですよ」
……言われてみれば、もう寝るんだから別にいいか。Σを枕元に置いておけば、万が一襲われた時もすぐに対応出来るだろう。
「その通りだな。じゃあリーナ、枕だけくれ。俺はソファ……長椅子で寝るから」
「疲れが取れませんよ?」
「床よりマシだ」
「ここで寝ればいいじゃないですか。ちょうど二人用のようですし」
「だから、男女が一緒に寝たらダメだって言ってるだろ」
特にお前は王女だぞ。
しかし……それはリーナに対する返答としてマズかったのか、いきなり腕を掴まれる。
「うえっ?」
何も抵抗できないまま、俺はベッドの上に押し倒される。何だ、何が起きているんだ。
「ユーヤ」
「はい」
恐らく、三十センチ先くらいにリーナがいるのだろう。暗くてよく見えないが……目が慣れてくれば、彼女の顔が見えてくるはずだ。
……えっ、何で俺、王女様に押し倒されてるの? 何が起きてるの?
混乱する俺を他所に、何故か荒い息が聞こえてくる。怖い。
「ユーヤ」
「はい」
「……ユーヤ!」
「はい!」
なんで名前を叫ばれてるんだ俺は!
いつの間にかリーナの両腕で俺の両腕が掴まれていた。筋力が凄い、これ絶対に抜け出せない。
「……その、きっと……本当なら、私は……全く知らない貴族と、結婚することになっていたでしょう。第二王女ですから」
いきなりそんなことを言いだすリーナ。貴族ってそういうイメージあるな。王族も同様に。
「だから、こんな状況に……憧れていたんです。せめて、初めてくらいは――自分で選びたいって、そう思ってたんです」
えーと……。
王女様が俺を押し倒して、初めては自分で選びたいとか言い出した。
……何が起きてるのマジで。
「ユーヤ……貴方の気持ち、嬉しく思います。きっと打算からそういう思考に至ったんでしょう。それは分かります。だってそんなのあり得ない。でも、でも……それでも、貴方からの求婚が……私は、嬉しかったんです」
「待って待って何のはな――うっ」
むぎゅっ。
俺の唇に、柔らかいものが重ねられる。
時間にして、一秒も無かっただろう。でも、それでも――何が起きたか、なんて分かる。
「ユーヤ……」
やっと目が慣れてきた、彼女の顔をこの目でとらえられる。目の前にあるリーナの顔、この世のものとは思えない圧倒的な美貌。
元の世界にいれば、きっと一生会話することも無かった美女が俺を押し倒している。それはつまり――
(……戦争、だもんな)
明日、死ぬかもしれない。だってそう、今日だって一歩間違えれば俺は死んでいた。そして俺が死ねばきっとリーナは国を取り戻せない。
それだけは避けたいだろう、きっと。
だから、ここで楔を打ち込みたいのだ。俺が逃げないように。今日の襲撃でぶるった俺が、戦いを止めないように。
(……情けねえな)
本当に情けない。そんなことを思わせたなんて。やっぱり、俺は頼りないのだろう。彼女が不安に思う気持ちも分かる。
「リーナ。……安心してくれ」
どうやれば彼女を安心させてあげられるのか。
「そんなに思いつめる必要なんて無い。大丈夫だ、俺は――約束は守る」
俺は――あの空間があればいいんだ。
ムサシの中が、機兵の中が。
確かに――ずっと君の隣で支えたいと思っている。それは間違いない。
初めて、俺を見てくれた人。
初めて、俺を認めてくれた人。
初めて、俺に居場所をくれた人。
十七年間、誰からも貰えなかった――「頑張れ」という期待。その言葉。それを初めてくれた人。
そんなリーナを、支え続けたい、隣で。
……でも、きっと難しいだろう。彼女は王女で、俺は平民どころか異世界人で。
だから、ムサシを。あの空間だけで、俺は満足なんだ。
「リーナが俺に何かする必要なんて無いよ」
「……ユーヤ、後悔しないんですか?」
何故か残念そうな表情になるリーナ。
「私は……一生、後悔すると思います」
後悔?
……確かに、これだけの美女とキスなんて今後一生無いだろう。それは惜しい気もする。
でも――
「心残りがある方が、人間『生きよう』って思えるもんさ」
――そういうことは、好き同士がやるものだ。
俺は、人を好きになったことが無い。当然だ、誰かの心に触れることなんて人生で一度も無かったのだから。
でも、それでも……今、リーナに抱いている感情が好意であることは分かる。たった一日しか共に過ごしていない相手ではあるが……それでも。
俺は、きっと……リーナが好きだ。恋なのか、愛なのか。親愛なのか、友愛なのか――恋愛なのか。
どの感情なのかは判断がつかない。生まれて初めての感覚だから。
この愛を胸に抱いている限りは、彼女を忘れることは無いし――彼女を、支えたいという想いに陰りが来ることは無いだろう。
「きっと忘れない。だから、俺はずっと生きられる気がする」
この気持ちは、墓まで持っていくことになるだろう。でも、それがいいんだと思う。
相手は王女で、俺は平民。そういうものだ。
「でもそれだと、報酬が……」
なんでいきなり報酬の話をしだしたのか。
ムサシで戦わせてくれ、と。それが報酬だって……ちゃんと言ったんだがな。
「そんなん、終わった後でいいだろ」
「……そう、ですか」
残念そうな顔になるリーナ。口をつぐみ……目に少しだけ涙を浮かべ、笑顔を作った。
「分かりました。それが……ユーヤの望むことなら。何としてでも戦いを終わらせます。終わらせて――あなたに、報酬を」
「ああ」
少しは彼女を安心させてあげられただろうか。決戦の前――不安になる彼女を。
「……でも、ちょっと残念です」
ころん、と横に転がったリーナ。そういえば、このままだと同じベッドになっちまう。俺は立ち上がってソファに移動しようとして――彼女に、再び手首を握られた。
「ユーヤ。これくらいは……いいでしょう?」
寂しそうな声音。……一人だと、心細いのだろうか。
俺は仕方なしに、ベッドの端の方に寝転がる。
「……明日は早い。寝るか」
「はい。……おやすみなさい、ユーヤ」
「おやすみ、リーナ」
そう言って、目を閉じる。明日は日の出とともに戦いだ。
(決戦だ――)
ムサシに乗るんだ。ちゃんとムサシに乗れさえすれば――負ける気は、しない。
~~~~~~~~~~~~~~~~
夢を、見た。いや、見ていると言うべきか。
俺がいる、小さい頃の俺だ。こういう意識のハッキリする夢を……明晰夢と言うんだったか。
別に大したことが無い夢だ、小さい頃に行った……ハイキング。
蛍が見れる、って言って父親が連れて行ってくれたんだ。
『雄哉、アレが蛍だ』
『わぁ……』
修哉は塾があるとかで来なくて、その送り迎えがあるからって母親も来なくて――俺は、父親と二人きりで山奥まで行った。
後にも先にも、父親と二人きりになったのはあの日だけだったな。
『なぁ、雄哉。……お前、将来は何になりたい?』
『え? うーん……なんだろうなぁ。兄貴みたいに、何でも出来る人になりたいな』
『ははは、それはやめとけ。あの生き方は、苦しいぞ。自分を殺し続けないといけないからな』
自分を殺す、か。
そこでふと――俺は昼間の出来事を思い出す。
『そっかぁ。じゃあ……俺、ゲーム好きだからゲーム作る』
『お、いいじゃないか。ゲームを作ったら、父さんが世界中に売ってくるぞ』
『ホント!?』
俺は、人を殺した。
この手で引き金を引いて――人の人生を終わらせた。
『そのためにも、長生きしなくちゃな』
『えー、どうしたの? 別にすぐ死んじゃうわけじゃ無いでしょ?』
『そりゃもちろん、父さんだってすぐには死なないさ』
死っていうのは、覆らない。
他人の人生も一緒に滅茶苦茶にする行為だ。
『……お母さんは、好きか?』
『え? んー……もうちょっと、俺に構って欲しいなぁ』
初めて、殺した。そりゃ現代日本で普通に生きてれば人を殺すことなんて無いか。
『おっと、雄哉。その石の上に座っちゃダメだぞ?』
『なんで?』
『その下にいる虫を潰しちゃうかもしれないだろ? 見えないところにも気を遣わないと』
『あ、そっか』
……見えないところ?
俺は過去の自分を見て、ふと今日のリーナの言葉を思い出す。
『今さ――』
何のことか分からなかったが、あれはもしかして『今さら』と言おうとしたんじゃないだろうか。
今さら、今さらか。
「あ、そっか」
言われてみれば、今さらだ。俺はムサシに乗って、何体の機兵を倒しただろうか。
「ふ、ははは」
変な笑いが漏れる。
そういえば、そうだ。俺は何て馬鹿なことを。
目の前で殺すのと、ムサシで斬る。なんの違いがあるだろうか。
「……そりゃ、リーナからも優しい顔されるか」
何も分かってない、何も見えてない証拠だ。
ただ、ムサシに乗ってはしゃいでいた高校生。その程度の人間だとリーナにバレてしまったわけか。
『さて、そろそろコテージに戻ろうか』
『うん!』
『もうちょっと大人になったら、ハワイとか行って射撃練習とかしたいなぁ。銃、撃ってみたいだろ?』
『うん! やってみたい』
……でも、それでも。
俺が、ムサシに乗ったら一番強い。そしてリーナを救うためにはムサシで敵をやっつけるしかない。
だから、俺はムサシに乗る。
目の前で人を殺したからと言って、動揺してどうする。俺がやってるのは戦争なんだから。
甘かった。あの時の優しさは、俺のその甘さを指摘しないという優しさだったのだろう。
「馬鹿だな、俺は」
起きたら、リーナに謝ろう。
そしてもう一度ちゃんと言うんだ。
『迷わない』って――。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる