囚☆人☆無☆双~史上最悪のスキル「囚人」でモンスターだらけの世界を切り拓く~

逢神天景

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二章 不死の街を切り拓け

7話 森との別れ-2

「ええ、アンタにピッタリでしょう?」

「これ以上無いくらい着慣れた服だがそうじゃねえだろ!」

 オレは出来上がった鎧を手に取ってみる。まるで羽のように軽い……が、引っ張っても突っついても破けるような気配はない。そしてポンとグローブも渡される。バッティンググローブのようなデザインだ。

「これ……ああ、オレがお願いしてた電気を通さないグローブ」

「おう。雷魔法が通らなきゃいいんだろ? バッチリエンチャントしといたぜ。ワイバーンの鱗がそもそも相当硬いから、エンチャントは要らなかったかもしれねえけどな」

 しかもサイズはピッタリ。本当にいい仕事するな……。

「ワイバーンとオークから、使える素材は全部使って作ったゼ」

「でもこの見た目は無いだろ……」

「ですが重一、素晴らしいと思いますよ。あとは首輪と鎖を……」

「つけねぇからな!?」

「というか、『職』の都合上どうしようもないじゃない」

「そりゃそうかもしれんが……! 囚人服の上から着るようなものを想像してたからさぁ……」

「これ一本あれば、マグマの中にだって入れるぜ!」

「そうですか凄いっすね入らないけど!」

 マグマなんて人生で入る機会があってたまるか。
 エルリンたちが着て見ろというので、オレは今着ている服の上からワイバーンの鱗鎧バージョン囚人服を着てみる。凄いフィット感、動きやすいし、何より安心感が凄い。
 でも、囚人服だ。

「……どこまでもオレは囚人の運命から逃げられないのか」

「ま、まあ……普通に生きてたら実際に囚人になることって少ないだろうし」

「なら、ちゃんと形から入らないといけませんからね」

 オレの背後にまわって、いそいそと首輪をつけるアイラ。鏡を見ると……うん、どこからどうみても囚人だな、ちくしょう。

「でも防御力はピカイチだぜ?」

「そりゃ、あいつと戦ったからそれは分かるけどよ」

「あと、アイラの嬢ちゃんにはこいつだ」

 バサッとシーツを外すオサゲルさん。サファイア色の、キラキラ輝く鎧が出て来た。いわゆるフルプレートと呼ばれるタイプで、全身をすっぽり覆う甲冑だ。ぶっちゃけ、西洋の騎士が着ていてもおかしくない雰囲気で、凄くかっこいい。

「オレもソッチが良い!」

「ダメです、これは私のものです」

「それにサイズ合わないぜ」

「くそお……」

 こんこん、と鎧を叩いてみる。物凄い硬度だ、オークモナークの投石くらいじゃビクともしないだろう。
 そう考えると、なんでオレたちは殆ど裸みたいな恰好でオークを討伐しに行ったんだろうな。こんな鎧をナチュラルで纏ってる化け物ばっかとか、相手になるわけないじゃねえか。

「これは素晴らしいですね……羽のように軽いです」

 実際に羽のあるアイラが言うとなんか面白いな。彼女は試着してみると、その場でくるっと回転する。

「似合いますか?」

「おう、似合う似合う」

「鎧が似合う女の子ってどうなんでしょう」

「いやそこは疑問に思うなよ」

 そもそも自分から聞いてきたんだろうが。

「で、エルリンにはこっちだ。囚人の兄ちゃんと同じように、動きを阻害しないように作ったぜ」

 そう言ってエルリンに渡されたのは、緑青色のワンピース型の鎧。エルリンのものよりも露出は多いが、それでも確実に重要な臓器なんかは守られている。

「可愛いわね」

「わしはデザインにも凝るからな」

 それはオレの囚人服を見ればよく分かる。
 エルリンも新しい装備を着けたので、三人とも新装備だ。こうしてみると、さっきまでと違ってなんか『戦士』って感じが全員に出たな。

「ただの金属で作る鎧よりよっぽど軽くて強いからな。いい素材を持ってきてくれたぜ。久しぶりに加工してて楽しかった」

「普通の金属よりも固いって、どうやって加工したんだ?」

「ワイバーンの爪と牙で研いだんだよ。っとと、忘れてた」

 そう言って出てくるのは、三本のナイフと弓、そして斧と盾。肌色に近い白色で、どれも妖しい光沢がある。ちょっとだけ考えて……オレはポンと手を打った。

「これ、ワイバーンの爪で作ったのか?」

「おう。苦労したぜ、それだけの形を削り出すのは。あとはこっちの手甲もな」

 ごとっ、と手甲もおかれる。これはオレ用だろうか。手に取ってつけてみると、サイズはピッタリ。ちょうど囚人服鎧の上からつけられるようになっているらしい。

「ナイフは一本ずつか?」

「もちろん。ああ、切れ味がヤベェから無暗に振り回すなよ?」

「へぇ」

 ナイフを手に取って、ひゅんと軽く振ってみる。すると、何の抵抗もなく木のテーブルを切断してしまった。
 がしゃん、と情けない音を立てて真っ二つになるテーブル。からんからん……とその上に乗っていた工具などが、虚しい音をたてた。

「…………いや何やってるのよジューイチ!?」

「い、今無暗に振り回さないようにと言われたばかりじゃないですか!」

「誰もこんなことになると思ってねぇだろ! 熱したバターより簡単に切れちまったぞ!?」

 微塵も力を込めてなかったのに……なんて切れ味だ。しかしとうのオサゲルさんは怒るどころか嬉しそうだ。

「おお……! 流石はオレの最高傑作! いい切れ味だ!」

 それでいいのか。

「いや良くないでしょ。ごめんなさい、オサゲルさん。この阿呆にはよく言って聞かせますから……」

「お前はオレのなんなんだ」

「嫁よ」

 どん! と胸を張って宣言される。そういえばそうでしたね。

「はっはっは。そんな怒らなくていいぜ、エルリン。まぁ、後で我が家のまき割りでもやってもらうかな」

「ああ、それくらいでいいなら」

「重一は、自分では常識人みたいな顔をしてますが、大概ぶっ飛んでると思いますよ」

「いや今のは事故だろ……」

 オレだってまさかこんなにヤバい代物だって知っていれば、簡単に振ったりしなかった。
 とはいえ、これは強力な武器になることは間違いない。オレの場合は『電気椅子』や『絞首刑』、そして新しい『職スキル』も武器を召喚するタイプだから戦闘で咄嗟に使う場面は少ないかもしれないけどな。

「私の斧も、注文通りスコップとしてもツルハシとしても使えますね」

 彼女の言う通り、二十七インチテレビと同じくらいありそうな刀身を持つ斧の後ろには、シャベルとツルハシがついている。モンスターを倒すだけじゃなくて、穴を掘ったりもできるな。

「旅の途中で雨風をしのぐ場所が無かった時に、洞窟を掘ったりできますよ」

「なるほどな、そいつは良い。んで、オサゲルさん、代金なんだが……」

「いやいや、村の英雄に金を払ってもらう必要はねえよ。こいつはわしからのお礼だ」

 そう言ってニッと笑うオサゲルさん。なんと太っ腹か。

「あとこんな行き遅れを貰ってくれたお礼も兼ねて――あべふっ!」

 スパァン! とエルリンのチョップがオサゲルさんに直撃する。いやいや、死んだんじゃねえか?

「しかしこれで準備も完了ですね」

 そう言って笑うアイラ。ほんの少しだけ寂しそうな目をしているのを、オレは見逃さない。

「もうちょっといたって良いんだぞ?」

「何を言っているんですか。私はこれが使命なのですから。……エルリンさんにそのセリフは言うべきでしょう」

「あたしは別に。だって帰ってこようと思えば帰ってこれるだろうし。せいぜい二十年か三十年くらいでしょ?」

「何百年も生きるエルフからすれば一瞬なのか……」

「そうよ。だからアンタが先に死んじゃったら、あたしは余生をこの村で過ごすんだし。むしろ一秒でも早く外に出て、いろいろ体験しておきたいわ。アンタとアイラさんが生きてるうちに」

 そう言ってはじけるような笑顔になるエルリン。彼女の覚悟が出来ているなら、オレからは何も言うことはない。一か月も過ごした村だから、やや愛着も出来てきたころだが……これ以上いると、それこそ旅に出られなくなっちまうからな。

「それでアイラ、結局どっちへ行くんだ?」

「天賦のボールレーダーによると」

「ド〇ゴンボールレーダーみたいに言うんじゃねえよ」

 ってか何で女神がドラ〇ンボールを知ってるんだ。

「東の方に反応がありますね。ただ本当に薄い反応なので、行ってみないと詳細は分かりません」
「今度はモンスターの中じゃないと良いんだが」

「ふふふ。重一は心配性ですね。あんなイレギュラー、めったにありませんよ」

「どうしてかしら、今のセリフのせいで次の『天賦の玉』もモンスターの中にあるような気がするわ」

「奇遇だなエルリン。オレも同じことを思った」

「なっ……ふ、二人とも酷いですよ。本当にイレギュラーなのですから、そもそも器でも無い生き物がほいほいと『天賦の玉』を取り込めるはずがありません。次の『天賦の玉』がモンスターに取り込まれていたら、私は重一と普通にエッチしますよ」

「良かったわね、ジューイチ。確約貰えたじゃない」

「喜んでいいのかこれは」

 その場合は、あのワイバーンレベルの化け物と戦わないといけないわけで……。そんなの、いくら命があっても足りないぞ。

「ま、その約束は絶対に果たしてもらうとして、だ。東の方にはエルフの村みたいに、ヒトは誰か住んでないのか」

「そうね。確か東の方にはダイノリッチっていう街があったはずよ」

「へぇ、どんなところなんだ?」

「凄いところよ。ベアッグっていう著名な剣士がいて、その人がずっと守ってくれてるから、数少ないモンスターに怯えなくていい街なの」

「おお、それは凄い」

「平和な街ですか……。この世界でそんな場所があるんですね」

 アイラも本気で驚いた顔をしている。

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