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「無理ぃーーーーーーー!」
頭の先から足のつま先まで鳥肌を立て、顔を左右にブルブルと何度も振り、玲は、耳をつん裂く様な絶叫を上げた。
大きな玲の声に驚き、玲に抱かれすやすやと眠っていたメルルも大きく目を見開き、丸い瞳にみるみる涙を為、「ミャーミャー」と泣き出した。
「ご、ごめん。メルル、突然大きな声を上げて……ごめん」
「父上!どうか御慈悲を!」
アレスもメルルをあやす玲をディアブロから引き離し、守る様に抱き込んで、懇願する。
「クククククッ」
ディアブロは、肩を震わせ笑い続ける。
「ディアブロ。あんたもいい加減揶揄うのは、止めなよ」
「は、母上」
気がつけば、アーシェが腰に両手を当て呆れた顔をしてその場に立っていた。
「えっと……どういうこと?」
「クククククッ。やっぱり、サトシ、君は、私を楽しませてくれる」
うっすらと目尻に浮かぶ涙を、指先で拭いながら未だ止まらない笑いを隠す事もなく、ディアブロは言った。
「そもそも、ギフトとは、細やかな贈り物。身の丈に合った願いであれば、対価も細やかな物です」
「でも、細やかな対価って言っても、俺何も持ってない!………肩たたき券でも良い?」
「ぶはっ!何ですか、肩たたき券って」
今まで上品にクスクスと笑っていたディアブロも、玲の申し出に唾を撒き散らす勢いで噴き出した。
「でも、俺金持ってないし、服もこの借りたローブ一枚だし、ケツを差し出す勇気はないし、なら、肩たたきくらいの奉仕するしかないじゃん」
「あはははっ!アーシェ。私は、笑い死ぬ。デーモン族に支払う………対価が……肩…たたき…け…んってアハハハハハハ!ダメだ、サトシに殺される!」
両膝をバタバタさせ、膝を叩き、ヒーヒーと笑い転げるディアブロ。妖艶で、美丈夫で、誰もが羨む程のイケメンが、台無しになるほど表情を歪ませ笑っていた。
「ウワッ!ウワッ!キャキャキャッ!」
メルルもすっかり涙を止めて、両手を広げながら楽しそうに笑っていた。玲自身、真剣に考えた結果での[肩たたき券]だったため、ディアブロが笑えば笑うほど唇が尖り頬を膨らませていく。
心ゆく迄ディアブロに笑っていただき、会話が再開した。
「も…もう、サ、サトシ……た……す」
「もう、サトシからは、対価を貰っています」
ディアブロは、言葉を紡ごうとすると、笑いが込み上げてきそうになり、片言で話すが、言っている意味が聞き取れない。アーシェには、ディアブロの言っている事が理解できるらしく、通訳してもらっている状態だ。
「何が、対価だったんだ?」
「……アー……ハ……グ……た」
「アーシェ、私にハンバーグの作り方を教えてくれた事が、対価だ」
コクリとディアブロは、頷いた。そして、これ以上は、笑いを堪える事が困難だとアーシェに視線を送った。アーシェは、ため息を吐いて、「わかったよ」と呟いた。
「私にハンバーグの作り方を教えてくれただろう。あれが、サトシの対価ってわけだ。しかも、お釣りが有り余る程の対価だ」
「そ、そうなの?」
「あぁ、でも肩たたき券は、欲しいらしいぞ」
「か、考えとく」
恨めしそうにディアブロを見ると、ブフフフフと噴き出された。
「け、そんなに面白かったのかよ」
「まあ、父上も悪気がある訳ではないので、許してやってください」
アレスが、眉尻を下げて申し訳なさそうにするので、玲も「まあ、良いけど」と呟いた。
「あー、あー、あー」
「どうした、メルル?」
玲に向かって何かを言いながら、小さな両手を差し出すメルルに、玲も笑顔を見せながら答え、そっとメルルの顔に右手を添えようとすると、メルルは玲の指をガッチリと掴んだ。
「あーむ」
「!!…………はぅっ」
メルルは、玲の指を咥え勢いよく吸血し始める。その、吸血の快感に襲われて、玲も甘い吐息を吐き出した。
「さてと、あとは頼んだよ、アレス」
「は、母上!」
アーシェは、笑い腰砕けになったディアブロを抱き抱えると礼拝堂を後にする。アーシェの肩越しにディアブロは、顔を出すと、アレスに親指を出して何かの合図を送った。そして、礼拝堂から立ち去って行った。
「ま、マジですか」
頬を紅潮させ、胸に項垂れかかる玲を見て、アレスは、ゴクリと唾を飲む。
「ん……くぅ……うぅん」
バンパイアの吸血は、対象者に絶頂を迎えそうなほどの快感を与える。アレスは、身悶えてその快感に耐える玲に釘付けになる。
玲を見つめ、アレス自身も理性との狭間で葛藤する。親指を立てたディアブロの顔。可愛い玲、自分の胸で喘ぐ玲、玲、玲、玲、玲。
アレスの思考は、玲のことしか考えられない程、切羽詰まっていく。
「サトシ…………」
太く長い指で玲の頬を撫で、顎を掠める。
「…………………」
玲の指をチュウチュウと音を立てて、吸血するメルルのまん丸の黒い瞳が、じっとアレスを見つめている。
無垢な瞳に見据えられ、ハァっとアレスは、太く長いため息を吐いた。
「可愛いは、正義。……本当ですね」
メルルの吸血が、終わるまでアレスは、じっと上を向いて、肩たたき券で爆笑するディアブロを思い出し、自分の欲望と闘った。
頭の先から足のつま先まで鳥肌を立て、顔を左右にブルブルと何度も振り、玲は、耳をつん裂く様な絶叫を上げた。
大きな玲の声に驚き、玲に抱かれすやすやと眠っていたメルルも大きく目を見開き、丸い瞳にみるみる涙を為、「ミャーミャー」と泣き出した。
「ご、ごめん。メルル、突然大きな声を上げて……ごめん」
「父上!どうか御慈悲を!」
アレスもメルルをあやす玲をディアブロから引き離し、守る様に抱き込んで、懇願する。
「クククククッ」
ディアブロは、肩を震わせ笑い続ける。
「ディアブロ。あんたもいい加減揶揄うのは、止めなよ」
「は、母上」
気がつけば、アーシェが腰に両手を当て呆れた顔をしてその場に立っていた。
「えっと……どういうこと?」
「クククククッ。やっぱり、サトシ、君は、私を楽しませてくれる」
うっすらと目尻に浮かぶ涙を、指先で拭いながら未だ止まらない笑いを隠す事もなく、ディアブロは言った。
「そもそも、ギフトとは、細やかな贈り物。身の丈に合った願いであれば、対価も細やかな物です」
「でも、細やかな対価って言っても、俺何も持ってない!………肩たたき券でも良い?」
「ぶはっ!何ですか、肩たたき券って」
今まで上品にクスクスと笑っていたディアブロも、玲の申し出に唾を撒き散らす勢いで噴き出した。
「でも、俺金持ってないし、服もこの借りたローブ一枚だし、ケツを差し出す勇気はないし、なら、肩たたきくらいの奉仕するしかないじゃん」
「あはははっ!アーシェ。私は、笑い死ぬ。デーモン族に支払う………対価が……肩…たたき…け…んってアハハハハハハ!ダメだ、サトシに殺される!」
両膝をバタバタさせ、膝を叩き、ヒーヒーと笑い転げるディアブロ。妖艶で、美丈夫で、誰もが羨む程のイケメンが、台無しになるほど表情を歪ませ笑っていた。
「ウワッ!ウワッ!キャキャキャッ!」
メルルもすっかり涙を止めて、両手を広げながら楽しそうに笑っていた。玲自身、真剣に考えた結果での[肩たたき券]だったため、ディアブロが笑えば笑うほど唇が尖り頬を膨らませていく。
心ゆく迄ディアブロに笑っていただき、会話が再開した。
「も…もう、サ、サトシ……た……す」
「もう、サトシからは、対価を貰っています」
ディアブロは、言葉を紡ごうとすると、笑いが込み上げてきそうになり、片言で話すが、言っている意味が聞き取れない。アーシェには、ディアブロの言っている事が理解できるらしく、通訳してもらっている状態だ。
「何が、対価だったんだ?」
「……アー……ハ……グ……た」
「アーシェ、私にハンバーグの作り方を教えてくれた事が、対価だ」
コクリとディアブロは、頷いた。そして、これ以上は、笑いを堪える事が困難だとアーシェに視線を送った。アーシェは、ため息を吐いて、「わかったよ」と呟いた。
「私にハンバーグの作り方を教えてくれただろう。あれが、サトシの対価ってわけだ。しかも、お釣りが有り余る程の対価だ」
「そ、そうなの?」
「あぁ、でも肩たたき券は、欲しいらしいぞ」
「か、考えとく」
恨めしそうにディアブロを見ると、ブフフフフと噴き出された。
「け、そんなに面白かったのかよ」
「まあ、父上も悪気がある訳ではないので、許してやってください」
アレスが、眉尻を下げて申し訳なさそうにするので、玲も「まあ、良いけど」と呟いた。
「あー、あー、あー」
「どうした、メルル?」
玲に向かって何かを言いながら、小さな両手を差し出すメルルに、玲も笑顔を見せながら答え、そっとメルルの顔に右手を添えようとすると、メルルは玲の指をガッチリと掴んだ。
「あーむ」
「!!…………はぅっ」
メルルは、玲の指を咥え勢いよく吸血し始める。その、吸血の快感に襲われて、玲も甘い吐息を吐き出した。
「さてと、あとは頼んだよ、アレス」
「は、母上!」
アーシェは、笑い腰砕けになったディアブロを抱き抱えると礼拝堂を後にする。アーシェの肩越しにディアブロは、顔を出すと、アレスに親指を出して何かの合図を送った。そして、礼拝堂から立ち去って行った。
「ま、マジですか」
頬を紅潮させ、胸に項垂れかかる玲を見て、アレスは、ゴクリと唾を飲む。
「ん……くぅ……うぅん」
バンパイアの吸血は、対象者に絶頂を迎えそうなほどの快感を与える。アレスは、身悶えてその快感に耐える玲に釘付けになる。
玲を見つめ、アレス自身も理性との狭間で葛藤する。親指を立てたディアブロの顔。可愛い玲、自分の胸で喘ぐ玲、玲、玲、玲、玲。
アレスの思考は、玲のことしか考えられない程、切羽詰まっていく。
「サトシ…………」
太く長い指で玲の頬を撫で、顎を掠める。
「…………………」
玲の指をチュウチュウと音を立てて、吸血するメルルのまん丸の黒い瞳が、じっとアレスを見つめている。
無垢な瞳に見据えられ、ハァっとアレスは、太く長いため息を吐いた。
「可愛いは、正義。……本当ですね」
メルルの吸血が、終わるまでアレスは、じっと上を向いて、肩たたき券で爆笑するディアブロを思い出し、自分の欲望と闘った。
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