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「えっと、アレスちゃん、あの赤い石のついた装飾品は、魔術具の一種ってこと?」
「はい、ドーリンは錬金術師でも有り、彼が作成した錬金アイテムということです」
アレスは、ドミニクから聞いたドーリンの素性と赤い石のついたチョーカーについてペルセポネーとメルルに説明する。装飾品となる魔術具は、ただのアクセサリーとは異なり使用者に対して何らかの効果を発揮する。
「サトシのいない時を狙って私たちに教えるって事は、アレスちゃんの見立てではヤバイんでしょ?」
玲は、今宵もドーリンの部屋へ呼び出された。玲は、良くも悪くも正直過ぎる。赤い石の秘密を知って、ドーリンに今まで通り接する事は出来ないと思った。
「ペル…ちゃん、流石と言いますか鋭いですね。レッドタウンの約八割の者が、この装飾品を身に着けています。坑夫は新人以外は全員、ドーリンの配下の者の半数、そして色街で働く娼館の姫たち」
「監視係は、付けていなかったわよ」
「キュッキュ」
「監視係は、ドーリンの叔父が率いる親衛隊に所属しており、親衛隊は全員この装飾品は纏っていません」
聞けば聞くほどきな臭いとペルセポネーは「プヒッ」と鼻を鳴らす。メルルは、色街の意味がわからないと首を傾げる。
「あー、色街ってのはね……アレスちゃん、出番よ!」
「俺ですか!」
「キュ」
ペルセポネーに振られ、ビクッと身体を硬直させるアレス。改めて色街について説明を求められても説明し辛い。「あー、うー」と的を得た言葉が出てこない。ペルセポネーが、鼻先でアレスを早くしろと突いてくるが、勘弁して欲しいと思う。
「せ、性欲を解消する為の街のことです」
顔を赤らめ、詳細が知りたいのであれば、「父上に聞いてください」とディアブロに丸投げをした。
「私は、従属の魔術具ではないかと考えています」
身体に影響を与える魔術具は、数多く存在する。身体強化や体力回復など補助的な役割を果たす魔術具もあれば、精神支配や呪いを付与した使用者が意図としない魔術具も存在する。
「坑夫たちは、監視係の理不尽な仕打ちに絶対服従だったこと、監視係より上の立場であるはずのドミニク殿も監視係には何も言えなかったこと。状況から考えて、精神支配系の魔術具だと俺は推察する」
宰相という地位に在りながら、ドミニクは監視係に対して何一つ言わなかった。さらに、客人である玲に対しても横柄な態度のままだ。「ドーリンのお気に入り」ドーリンと良好な関係であるからこそ、玲の要望を無限にしないだけだ。
従属の魔術具だと仮定すれば、今は良好な関係であってもドミニクや坑夫たちは玲の敵となることもあり得る。
「早くレッドタウンから立ち去ることが、一番の得策だと俺は思うのだが……」
絶対に玲が首を縦には振らないだろうと、アレスたちは深いため息を吐いた。
「圧倒的に人手が足りない」
第一現場だけでも底いっぱいな現状。まして、従属の魔術具の存在、そして絶対に帰る気のないであろう玲。簡単に窮地に陥る状況にアレスは如何したら玲守ることが出来るのかと頭を抱える。
「キューキュキュ、キュキュキュー」
「メルルちゃん、それって、孤児たちを味方にするってこと?」
「キューキュー」
メルルがモフモフした頭を縦に振る。味方がいないのであれば、作れば良い。言うは簡単だけど、戦力としては期待出来ない。
「でも、孤児たちは、赤い石のチョーカーは装着していなかったわよ?」
「キューキュ、キューキュ」
「確かに、サトシならば、簡単に孤児たちを掌握できると思いますけど……やってみる価値はある……か?」
「うん、うん!俺も子供たちについて気にはなっていたんだ。ドミニクさん、俺、子供たちにも食事を用意しても良いかな?」
「かしこまりました。ドーリン様に確認しておきましょう。返答は、明日でもよろしいですか?」
ドーリンの元から戻ってきた玲に、メルルが思い出すように相談を持ちかけた。レッドタウンに到着した日、町中に徘徊していた孤児たちの姿。玲も手を差し伸べられるなら差し伸べたいと考えていた。
「炊き出しって行って、孤児だけでなく、食事に困っている人たちにも振る舞ってあげようじゃないの」
肩をストレッチしながら、にっこりと白い歯を見せて笑った。
「はい、ドーリンは錬金術師でも有り、彼が作成した錬金アイテムということです」
アレスは、ドミニクから聞いたドーリンの素性と赤い石のついたチョーカーについてペルセポネーとメルルに説明する。装飾品となる魔術具は、ただのアクセサリーとは異なり使用者に対して何らかの効果を発揮する。
「サトシのいない時を狙って私たちに教えるって事は、アレスちゃんの見立てではヤバイんでしょ?」
玲は、今宵もドーリンの部屋へ呼び出された。玲は、良くも悪くも正直過ぎる。赤い石の秘密を知って、ドーリンに今まで通り接する事は出来ないと思った。
「ペル…ちゃん、流石と言いますか鋭いですね。レッドタウンの約八割の者が、この装飾品を身に着けています。坑夫は新人以外は全員、ドーリンの配下の者の半数、そして色街で働く娼館の姫たち」
「監視係は、付けていなかったわよ」
「キュッキュ」
「監視係は、ドーリンの叔父が率いる親衛隊に所属しており、親衛隊は全員この装飾品は纏っていません」
聞けば聞くほどきな臭いとペルセポネーは「プヒッ」と鼻を鳴らす。メルルは、色街の意味がわからないと首を傾げる。
「あー、色街ってのはね……アレスちゃん、出番よ!」
「俺ですか!」
「キュ」
ペルセポネーに振られ、ビクッと身体を硬直させるアレス。改めて色街について説明を求められても説明し辛い。「あー、うー」と的を得た言葉が出てこない。ペルセポネーが、鼻先でアレスを早くしろと突いてくるが、勘弁して欲しいと思う。
「せ、性欲を解消する為の街のことです」
顔を赤らめ、詳細が知りたいのであれば、「父上に聞いてください」とディアブロに丸投げをした。
「私は、従属の魔術具ではないかと考えています」
身体に影響を与える魔術具は、数多く存在する。身体強化や体力回復など補助的な役割を果たす魔術具もあれば、精神支配や呪いを付与した使用者が意図としない魔術具も存在する。
「坑夫たちは、監視係の理不尽な仕打ちに絶対服従だったこと、監視係より上の立場であるはずのドミニク殿も監視係には何も言えなかったこと。状況から考えて、精神支配系の魔術具だと俺は推察する」
宰相という地位に在りながら、ドミニクは監視係に対して何一つ言わなかった。さらに、客人である玲に対しても横柄な態度のままだ。「ドーリンのお気に入り」ドーリンと良好な関係であるからこそ、玲の要望を無限にしないだけだ。
従属の魔術具だと仮定すれば、今は良好な関係であってもドミニクや坑夫たちは玲の敵となることもあり得る。
「早くレッドタウンから立ち去ることが、一番の得策だと俺は思うのだが……」
絶対に玲が首を縦には振らないだろうと、アレスたちは深いため息を吐いた。
「圧倒的に人手が足りない」
第一現場だけでも底いっぱいな現状。まして、従属の魔術具の存在、そして絶対に帰る気のないであろう玲。簡単に窮地に陥る状況にアレスは如何したら玲守ることが出来るのかと頭を抱える。
「キューキュキュ、キュキュキュー」
「メルルちゃん、それって、孤児たちを味方にするってこと?」
「キューキュー」
メルルがモフモフした頭を縦に振る。味方がいないのであれば、作れば良い。言うは簡単だけど、戦力としては期待出来ない。
「でも、孤児たちは、赤い石のチョーカーは装着していなかったわよ?」
「キューキュ、キューキュ」
「確かに、サトシならば、簡単に孤児たちを掌握できると思いますけど……やってみる価値はある……か?」
「うん、うん!俺も子供たちについて気にはなっていたんだ。ドミニクさん、俺、子供たちにも食事を用意しても良いかな?」
「かしこまりました。ドーリン様に確認しておきましょう。返答は、明日でもよろしいですか?」
ドーリンの元から戻ってきた玲に、メルルが思い出すように相談を持ちかけた。レッドタウンに到着した日、町中に徘徊していた孤児たちの姿。玲も手を差し伸べられるなら差し伸べたいと考えていた。
「炊き出しって行って、孤児だけでなく、食事に困っている人たちにも振る舞ってあげようじゃないの」
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