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1章
002 黒い執事からの依頼
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「私は、セバスチャンと申します 以後お見知り置きを願います」
ロマンスグレイのオールバックがよく似合うダンディなおじ様が、作業服を着た俺に深々とお辞儀をした。
トンネルの先は、コンビニだったはずなのに、気が付けば散らかり放題の汚部屋化とした汚神殿。夢でも見ているのかと、頬をつねってみる。
「……痛い」
「清水様、些か驚かれたとは思いますが、これは現実で御座います。一方通行ではございますが、時間と条件さえ設定すれば、この神殿までを繋ぐことができますので、それを利用しております」
素晴らしい彫刻が施された真っ白な石柱を支えに作り上げられた神殿は、何処かギリシャのパルテノン神殿に様式が似ていた。ファンタジーな神殿に散りばめられたゴミ(ガラクタ)の数々。
「清水様の世界とは、少し次元が異なる世界でして、解りやすく説明をするなら、ここは魔法などが存在する異世界となります」
突拍子もない説明に、大きく両目を開き瞬かせると、セバスチャンは右手に水の塊、左手に小さな炎を出現させて見せた。
「うわぉ! ほ、ホンモノか!?」
「これくらい容易い事」
驚く総司の表情を確認し、セバスチャンは、片眉と口角を上げニヤリと笑みを見せる。
「もっと、見たい!」
「かしこまりました それでは、しばしの間お楽しみ下さいませ」
セバスチャンが、右手を上げて指を鳴らすとぼんっと総司の背後に椅子が現れる。「立ち見も何ですから」と着席を流され、そっと腰を下ろした。
そして、一度会釈をしたセバスチャンは、引き続き、マジックショー改め魔法のデモストレーションを始めたのだった。
様々な魔法を見せられて、一気にテンションが上がる。総司は、両手を叩いて拍手喝采、大喜び。演者ことセバスチャンは、ポーズを決めた後、右手を前に、左足を後ろに交差させ、腰を折ってお辞儀をした。
「いやぁ、凄い経験をさせてもらいました」
セバスチャンは、そっと、総司に右手を差し出す。
「それでは、応接室までご案内いたします」
「あ、どうも」
セバスチャンに連れられて、総司は神殿の奥へと歩を進める。足元はガラクタ三昧で足の踏み場もない状態なのだが、セバスチャンが、一歩足を出すと半径1メートルのガラクタが、スッと消えて行く。そして少し離れた所で、ガラガラと音を立てて、ガラクタが積み上げられている。
「ぶほっ!ゲフンゲフン」
「清水様、如何なさいましたか?」
掃除機のように吸いこんで、直様、心太状態で、別の場所に押し出されるガラクタの山を目にして、思わずツボにハマった総司。咳払いをしつつ誤魔化した。
イカにもタコにもパーフェクトな雰囲気を醸し出しておきながら、あまりものダメっぷりに肩が震えてくる。仕草が完璧であればある程、ダメさ加減が可愛らしい。
神殿の応接室に通されて、ソファーへの着席を促される。何処からかティーカップとティーポットを取り出して、優雅な所作で香り高い紅茶を注いでくれた。
応接室は、汚部屋化していなかった。
「現在、我が主人は、旦那様の元で過ごされているため、この神殿には私一人が残されております。いつもなら、私の管理する空間にそこらにある物を全て保管しているのですが、先日ついに許容範囲を超えてしまいました」
執事の仕事は、日常生活をサポートする事だ。具体的には、スケジュール管理のほか、掃除・洗濯をはじめとする家事全般や料理の管理など多様なスキルが求められる。
片付け下手のセバスチャンは、とにかく自分が管理する空間に物を詰めて詰めて誤魔化し続けたらしい。
「主人がお戻りになる前に、新しく従者を雇う事も検討したのですが、神殿の惨状を見てしまうと皆が皆断りを申し入れて来るのです」
物悲しく項垂れるセバスチャン。騙されてはいけない。いくら仕事の出来るオーラを醸し出そうとも、清潔感溢れる出立で迎え入れようとも、この誤魔化しきれない職場環境では、待ち人一人すら表れないに違いない。
すっと差し出されたお茶請け。総司は、綺麗な小皿に盛られたクッキーを一つ摘んで、口の中に放り込む。ほろほろと優しい歯応えで、甘さ控えめで何枚でも食べれそうだ。香りの良い紅茶との相性も抜群で、庶民の味覚である総司であっても、一流品だと理解できた。
「私目の手作りでございます」
「あ、大変美味しゅうございました」
総司の感想に満足気なドヤ顔をして見せるセバスチャンは、本当に残念な執事だなと思ってしまった。
「清水様、どうか主人が戻って来るまでに、神殿の片付けを手伝って頂けませんか?」
残念な執事が、見事な所作で土下座をする。土下座マニュアルが有れば、見本として掲載されること間違いなし。
総司は、ソファーから立ち上がり、セバスチャンに駆け寄って、両肩に手をかける。
「セバスチャンさん、頭を上げてください」
ダンディで残念なセバスチャンは、眉毛を八の字にして顔を上げた。
「ご主人様は、いつお戻りになるのですか?」
「清水様!では…では…」
総司は、にっこりと微笑む。
「お任せ下さい 完璧にお片付けしてみせますよ」
「ありがとうございます 我が主人は、十日後にお戻りになる予定ですので、よろしくお願いします」
ギリギリまで、放置してたんだ、ダメ執事。
ロマンスグレイのオールバックがよく似合うダンディなおじ様が、作業服を着た俺に深々とお辞儀をした。
トンネルの先は、コンビニだったはずなのに、気が付けば散らかり放題の汚部屋化とした汚神殿。夢でも見ているのかと、頬をつねってみる。
「……痛い」
「清水様、些か驚かれたとは思いますが、これは現実で御座います。一方通行ではございますが、時間と条件さえ設定すれば、この神殿までを繋ぐことができますので、それを利用しております」
素晴らしい彫刻が施された真っ白な石柱を支えに作り上げられた神殿は、何処かギリシャのパルテノン神殿に様式が似ていた。ファンタジーな神殿に散りばめられたゴミ(ガラクタ)の数々。
「清水様の世界とは、少し次元が異なる世界でして、解りやすく説明をするなら、ここは魔法などが存在する異世界となります」
突拍子もない説明に、大きく両目を開き瞬かせると、セバスチャンは右手に水の塊、左手に小さな炎を出現させて見せた。
「うわぉ! ほ、ホンモノか!?」
「これくらい容易い事」
驚く総司の表情を確認し、セバスチャンは、片眉と口角を上げニヤリと笑みを見せる。
「もっと、見たい!」
「かしこまりました それでは、しばしの間お楽しみ下さいませ」
セバスチャンが、右手を上げて指を鳴らすとぼんっと総司の背後に椅子が現れる。「立ち見も何ですから」と着席を流され、そっと腰を下ろした。
そして、一度会釈をしたセバスチャンは、引き続き、マジックショー改め魔法のデモストレーションを始めたのだった。
様々な魔法を見せられて、一気にテンションが上がる。総司は、両手を叩いて拍手喝采、大喜び。演者ことセバスチャンは、ポーズを決めた後、右手を前に、左足を後ろに交差させ、腰を折ってお辞儀をした。
「いやぁ、凄い経験をさせてもらいました」
セバスチャンは、そっと、総司に右手を差し出す。
「それでは、応接室までご案内いたします」
「あ、どうも」
セバスチャンに連れられて、総司は神殿の奥へと歩を進める。足元はガラクタ三昧で足の踏み場もない状態なのだが、セバスチャンが、一歩足を出すと半径1メートルのガラクタが、スッと消えて行く。そして少し離れた所で、ガラガラと音を立てて、ガラクタが積み上げられている。
「ぶほっ!ゲフンゲフン」
「清水様、如何なさいましたか?」
掃除機のように吸いこんで、直様、心太状態で、別の場所に押し出されるガラクタの山を目にして、思わずツボにハマった総司。咳払いをしつつ誤魔化した。
イカにもタコにもパーフェクトな雰囲気を醸し出しておきながら、あまりものダメっぷりに肩が震えてくる。仕草が完璧であればある程、ダメさ加減が可愛らしい。
神殿の応接室に通されて、ソファーへの着席を促される。何処からかティーカップとティーポットを取り出して、優雅な所作で香り高い紅茶を注いでくれた。
応接室は、汚部屋化していなかった。
「現在、我が主人は、旦那様の元で過ごされているため、この神殿には私一人が残されております。いつもなら、私の管理する空間にそこらにある物を全て保管しているのですが、先日ついに許容範囲を超えてしまいました」
執事の仕事は、日常生活をサポートする事だ。具体的には、スケジュール管理のほか、掃除・洗濯をはじめとする家事全般や料理の管理など多様なスキルが求められる。
片付け下手のセバスチャンは、とにかく自分が管理する空間に物を詰めて詰めて誤魔化し続けたらしい。
「主人がお戻りになる前に、新しく従者を雇う事も検討したのですが、神殿の惨状を見てしまうと皆が皆断りを申し入れて来るのです」
物悲しく項垂れるセバスチャン。騙されてはいけない。いくら仕事の出来るオーラを醸し出そうとも、清潔感溢れる出立で迎え入れようとも、この誤魔化しきれない職場環境では、待ち人一人すら表れないに違いない。
すっと差し出されたお茶請け。総司は、綺麗な小皿に盛られたクッキーを一つ摘んで、口の中に放り込む。ほろほろと優しい歯応えで、甘さ控えめで何枚でも食べれそうだ。香りの良い紅茶との相性も抜群で、庶民の味覚である総司であっても、一流品だと理解できた。
「私目の手作りでございます」
「あ、大変美味しゅうございました」
総司の感想に満足気なドヤ顔をして見せるセバスチャンは、本当に残念な執事だなと思ってしまった。
「清水様、どうか主人が戻って来るまでに、神殿の片付けを手伝って頂けませんか?」
残念な執事が、見事な所作で土下座をする。土下座マニュアルが有れば、見本として掲載されること間違いなし。
総司は、ソファーから立ち上がり、セバスチャンに駆け寄って、両肩に手をかける。
「セバスチャンさん、頭を上げてください」
ダンディで残念なセバスチャンは、眉毛を八の字にして顔を上げた。
「ご主人様は、いつお戻りになるのですか?」
「清水様!では…では…」
総司は、にっこりと微笑む。
「お任せ下さい 完璧にお片付けしてみせますよ」
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ギリギリまで、放置してたんだ、ダメ執事。
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