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2話目 生徒会は、狐耳の巫女に出会う
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それは、ほんの一瞬だった。
頭に響いた声に答える間もなく、身体中がなんとも言えない浮遊感に包まれた。腹の下から全身に駆け巡るむずむずとする気持ち悪さに、思わず悲鳴に近い声を上げた。
「うわあぁぁぁぁぁ」
「キャアーーーーー」
「ぎょえぇぇ!」
「ヒャン!!」
「にゃあぁぁぁぁぁぁ」
「ウッ!」
「イヤァーーー」
三者三様もとい、七者七様。咄嗟に出る悲鳴とは、可笑しなものがある事を初めて知った。身体のざわつきが治まり、固く閉じていた瞳をゆっくりと開く。
「え?」
古びた神社の境内に居たはずなのに、目の前には青々と茂る草原が広がっている。背後には、ご神木よりもさらに大きな大樹が聳え立っている。何よりも空気が違う、匂いが違う、空も、気候も自分達が知る風景ではなかった。
「何じゃこりゃあー」
太一郎の雄叫びに呆然としていた七人は、我に帰っていく。
「空に島が浮いているなんて、初めて見た」
「ナナは、あゆちゃんが居れば、何処だって大丈夫なの」
「あぁ、俺だってナナさえ居れば生きていける」
お互いの無事に安堵し抱き合う双子。何だか顔の距離もいつもより近い気がするのは、気のせいだろうか?
「異世界…転生」
「はい、厨二病は黙ろうか」
キラキラと目を輝かせ指を組んでポロリと考えたくない事をサラリと言う京子に、常識人の円が突っ込む。
「わ、私……帰らなくても良いの?」
京子の言葉にハッとした香織が、少し疑いが残っている表情で圭一を見上げる。
「帰らなくても……じゃなくて、俺たち全員帰りたくても帰れないんじゃないかな?」
圭一の言葉に、さっと香織が顔色を変えた。
「ごめんなさい、わた、私のせいで、みんなを巻き込んじゃった」
「それは、違う!」
圭一は、香織の両手を握り、顔を左右に振ってすぐさま否定をした。
「あの時、俺たち全員が、帰りたくないって望んだんだ。香織だけの願いでこんな事になったんじゃない」
香織が、圭一達全員の顔をゆっくりと見回す。誰一人として香織を責める表情は、していない事が判ったのか、その場にヘナヘナと座り込んでいった。
「おい、こっち来てみろよ」
辺りをウロウロしていた太一郎が、大樹の後ろから声をかけてきた。恐ろしいほどでかい大樹は、見上げても天辺がわからない。草原にどどんと聳え立つその姿は、自分達が知る世界には何処にもなかった。太一郎の声がする方へと歩いて行く。
「これって扉?」
「なんか、ワクワクすんな。開けてみないか?」
太一郎が見つけた扉は、大樹の幹の根元に備え付けられていた。改めて見ると大樹自体が、建物であるかの様にも見える。
「太一郎、開けて」
「ホイきた」
京子の命令には逆らわない太一郎は、コンコンと扉をノックした後、ギギっと取ってを握って手前にに引いた。
中央に吹き抜けのホールが広がり、両サイドから上に上がる階段が設置され、二階、三階へと続いている。真っ直ぐに伸びたポールを使って、一気に下へ降りることもできそうだ。
「お邪魔しまーす」
各々声を出して、扉の中に足を踏み入れる。ホールの中央にはまん丸い大玉が設置されている。七人は、お互いの顔を見合わせながらその大きな玉に近づき、右手を球に乗せた。何故だかそうしなければならないという、感覚があったのかもしれない。
「うわぁ!?」
ゾゾゾっと身体の中から何かが吸い出される感覚に思わず声を出してしまった。引っ込めた手を摩りながら何とも言えない感覚を反芻していた。
「ようこそ、いらっしゃいませ」
背後からいきなり呼びかけられ、圭一達が振り向くと、巫女の衣装を身に纏った白い髪の少女が、頭を下げお辞儀をしていた。ゆっくりと頭を上げる少女の頭の上には、三角形の大きめな獣耳が付いている。少し釣り上がった瞳のまなじりに赤い紅が挿され、下唇にも同じ色の紅が引かれている。
「お狐さま?なのかなぁ」
「……カワイイ」
こてりと首を傾げ微笑み返され、圭一はゴクリと唾を飲む。
「私は、あなた方の願いを受け、ここに呼び入れました主人様より案内人を仰せ使いました名をシラユキと申します」
シラユキという名と少女の狐を思わせる頭上の耳に既視感を感じ、先程まで居たはずの神社の風景を思い出す。坂道を上がり、安岡の街が見渡せる小さな児童公園がある。その奥にひっそりとある階段を登ると神社の境内にたどり着く。鳥居を潜ると狛犬ではなくお狐様があった。
「おきつねコンコン、コンコン粉雪」
「おきつねコンコン、コンコン粉雪」
白い息を吐きながら香織と手を繋いで、童歌を歌っていた。円や太一郎は、雪玉を作り投げ合って、京子は雪だるまや雪うさぎを何個も作っていた。歩海七海は、相変わらず抱き合いながら寒い寒いと焚き火の側から離れずにいる。
「圭ちゃん、きつねさん雪で真っ白だね」
「シラユキ…うん、シラユキだ」
その瞬間、狐の目が細められ笑ったような気がした。
「お前……神社のお狐様なのか?」
「おや?私への名付けを思い出されましたか?」
ご明察と細められた瞳が、あの時の狐の瞳と重なった。
「私もそうですが、主人様も幼少期からのあなた達をよく存じております。ですからあなた達に色をお付けになったのです」
色をつけた、要するに贔屓をしたという事らしい。圭一達の願いを汲み取って、異世界召喚とは、やりすぎ感が否めない。
「まあ、僻地に放り出されるよりはマシか?ここを拠点にして良いって事なんだろう?」
「はい、ここだけでなく、この浮き島全てをご自由にに使って構いませぬと、主人様は申しております」
異世界召喚。そう考えて間違いはないだろう。「帰りたくない」香織の言葉を思い出す。シラユキは、圭一達の願いを受けたと言った。全員が、帰りたくないと思っていたのは、そう言う意味だったのか?
「あゆちゃん、今日からナナ達、ここで暮らすだよ」
「そうだな、もう俺たちを邪魔するものは何もない」
圭一達の存在を気にせず抱き合う双子の顔が近づいていく。思わず円が、二人の後頭部を掴み、ゴチンと大きな音が鳴るくらいに額を打合せた。
悶絶する双子を放って、円はシラユキに顔を向ける。
「俺たちは、元の世界に戻れない…その認識で間違いないということですね」
「主人様は、魂ごと持ってきました故に……神隠し…と言えば伝わりますでしょうか?」
八百万の神とは、よく言ったもので、あの小さな神社にも神様は、存在していたらしい。効果があるのか知らないが、地元では縁を結ぶ神社だと触れられていた気がする。元の世界と縁は、ぶった斬られたけれど、こっちの世界に縁を結ばれたのだから、その力は、本物だろう。
「このまま朽ちる迄、七人でひっそりと暮らすのも良し、新しく他の者と交流を結ぶのも良しと主人様は、仰られております」
「俺たち以外にも人が居るって事ですか?」
「もちろん、周りにある浮き島や下の大地、あらゆる場所に人だけでなく、人外と呼ばれる者も居りますとも」
既に、圭一達の目の前に人外である狐耳を持つ巫女姿の美少女が居るのだから、シラユキが言うまでもなく、納得する事が出来た。
「質問、魔法使える?」
元気よく右手を上げ、鼻息をフンスと鳴らしながら、真剣な表情で京子が尋ねる。確かに異世界と来れば、魔法があっても良いのではないだろうか?
頭に響いた声に答える間もなく、身体中がなんとも言えない浮遊感に包まれた。腹の下から全身に駆け巡るむずむずとする気持ち悪さに、思わず悲鳴に近い声を上げた。
「うわあぁぁぁぁぁ」
「キャアーーーーー」
「ぎょえぇぇ!」
「ヒャン!!」
「にゃあぁぁぁぁぁぁ」
「ウッ!」
「イヤァーーー」
三者三様もとい、七者七様。咄嗟に出る悲鳴とは、可笑しなものがある事を初めて知った。身体のざわつきが治まり、固く閉じていた瞳をゆっくりと開く。
「え?」
古びた神社の境内に居たはずなのに、目の前には青々と茂る草原が広がっている。背後には、ご神木よりもさらに大きな大樹が聳え立っている。何よりも空気が違う、匂いが違う、空も、気候も自分達が知る風景ではなかった。
「何じゃこりゃあー」
太一郎の雄叫びに呆然としていた七人は、我に帰っていく。
「空に島が浮いているなんて、初めて見た」
「ナナは、あゆちゃんが居れば、何処だって大丈夫なの」
「あぁ、俺だってナナさえ居れば生きていける」
お互いの無事に安堵し抱き合う双子。何だか顔の距離もいつもより近い気がするのは、気のせいだろうか?
「異世界…転生」
「はい、厨二病は黙ろうか」
キラキラと目を輝かせ指を組んでポロリと考えたくない事をサラリと言う京子に、常識人の円が突っ込む。
「わ、私……帰らなくても良いの?」
京子の言葉にハッとした香織が、少し疑いが残っている表情で圭一を見上げる。
「帰らなくても……じゃなくて、俺たち全員帰りたくても帰れないんじゃないかな?」
圭一の言葉に、さっと香織が顔色を変えた。
「ごめんなさい、わた、私のせいで、みんなを巻き込んじゃった」
「それは、違う!」
圭一は、香織の両手を握り、顔を左右に振ってすぐさま否定をした。
「あの時、俺たち全員が、帰りたくないって望んだんだ。香織だけの願いでこんな事になったんじゃない」
香織が、圭一達全員の顔をゆっくりと見回す。誰一人として香織を責める表情は、していない事が判ったのか、その場にヘナヘナと座り込んでいった。
「おい、こっち来てみろよ」
辺りをウロウロしていた太一郎が、大樹の後ろから声をかけてきた。恐ろしいほどでかい大樹は、見上げても天辺がわからない。草原にどどんと聳え立つその姿は、自分達が知る世界には何処にもなかった。太一郎の声がする方へと歩いて行く。
「これって扉?」
「なんか、ワクワクすんな。開けてみないか?」
太一郎が見つけた扉は、大樹の幹の根元に備え付けられていた。改めて見ると大樹自体が、建物であるかの様にも見える。
「太一郎、開けて」
「ホイきた」
京子の命令には逆らわない太一郎は、コンコンと扉をノックした後、ギギっと取ってを握って手前にに引いた。
中央に吹き抜けのホールが広がり、両サイドから上に上がる階段が設置され、二階、三階へと続いている。真っ直ぐに伸びたポールを使って、一気に下へ降りることもできそうだ。
「お邪魔しまーす」
各々声を出して、扉の中に足を踏み入れる。ホールの中央にはまん丸い大玉が設置されている。七人は、お互いの顔を見合わせながらその大きな玉に近づき、右手を球に乗せた。何故だかそうしなければならないという、感覚があったのかもしれない。
「うわぁ!?」
ゾゾゾっと身体の中から何かが吸い出される感覚に思わず声を出してしまった。引っ込めた手を摩りながら何とも言えない感覚を反芻していた。
「ようこそ、いらっしゃいませ」
背後からいきなり呼びかけられ、圭一達が振り向くと、巫女の衣装を身に纏った白い髪の少女が、頭を下げお辞儀をしていた。ゆっくりと頭を上げる少女の頭の上には、三角形の大きめな獣耳が付いている。少し釣り上がった瞳のまなじりに赤い紅が挿され、下唇にも同じ色の紅が引かれている。
「お狐さま?なのかなぁ」
「……カワイイ」
こてりと首を傾げ微笑み返され、圭一はゴクリと唾を飲む。
「私は、あなた方の願いを受け、ここに呼び入れました主人様より案内人を仰せ使いました名をシラユキと申します」
シラユキという名と少女の狐を思わせる頭上の耳に既視感を感じ、先程まで居たはずの神社の風景を思い出す。坂道を上がり、安岡の街が見渡せる小さな児童公園がある。その奥にひっそりとある階段を登ると神社の境内にたどり着く。鳥居を潜ると狛犬ではなくお狐様があった。
「おきつねコンコン、コンコン粉雪」
「おきつねコンコン、コンコン粉雪」
白い息を吐きながら香織と手を繋いで、童歌を歌っていた。円や太一郎は、雪玉を作り投げ合って、京子は雪だるまや雪うさぎを何個も作っていた。歩海七海は、相変わらず抱き合いながら寒い寒いと焚き火の側から離れずにいる。
「圭ちゃん、きつねさん雪で真っ白だね」
「シラユキ…うん、シラユキだ」
その瞬間、狐の目が細められ笑ったような気がした。
「お前……神社のお狐様なのか?」
「おや?私への名付けを思い出されましたか?」
ご明察と細められた瞳が、あの時の狐の瞳と重なった。
「私もそうですが、主人様も幼少期からのあなた達をよく存じております。ですからあなた達に色をお付けになったのです」
色をつけた、要するに贔屓をしたという事らしい。圭一達の願いを汲み取って、異世界召喚とは、やりすぎ感が否めない。
「まあ、僻地に放り出されるよりはマシか?ここを拠点にして良いって事なんだろう?」
「はい、ここだけでなく、この浮き島全てをご自由にに使って構いませぬと、主人様は申しております」
異世界召喚。そう考えて間違いはないだろう。「帰りたくない」香織の言葉を思い出す。シラユキは、圭一達の願いを受けたと言った。全員が、帰りたくないと思っていたのは、そう言う意味だったのか?
「あゆちゃん、今日からナナ達、ここで暮らすだよ」
「そうだな、もう俺たちを邪魔するものは何もない」
圭一達の存在を気にせず抱き合う双子の顔が近づいていく。思わず円が、二人の後頭部を掴み、ゴチンと大きな音が鳴るくらいに額を打合せた。
悶絶する双子を放って、円はシラユキに顔を向ける。
「俺たちは、元の世界に戻れない…その認識で間違いないということですね」
「主人様は、魂ごと持ってきました故に……神隠し…と言えば伝わりますでしょうか?」
八百万の神とは、よく言ったもので、あの小さな神社にも神様は、存在していたらしい。効果があるのか知らないが、地元では縁を結ぶ神社だと触れられていた気がする。元の世界と縁は、ぶった斬られたけれど、こっちの世界に縁を結ばれたのだから、その力は、本物だろう。
「このまま朽ちる迄、七人でひっそりと暮らすのも良し、新しく他の者と交流を結ぶのも良しと主人様は、仰られております」
「俺たち以外にも人が居るって事ですか?」
「もちろん、周りにある浮き島や下の大地、あらゆる場所に人だけでなく、人外と呼ばれる者も居りますとも」
既に、圭一達の目の前に人外である狐耳を持つ巫女姿の美少女が居るのだから、シラユキが言うまでもなく、納得する事が出来た。
「質問、魔法使える?」
元気よく右手を上げ、鼻息をフンスと鳴らしながら、真剣な表情で京子が尋ねる。確かに異世界と来れば、魔法があっても良いのではないだろうか?
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