最弱から最強へ【擬人化】スキルによって、僕は神話級アイテムたちに好かれました。どうやら人間の仲間は必要ないようです

お茶っ葉

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第二章

第35話 邂逅

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「誰か、た、助けてくれー! 能力喰らいスキルイーターだ!!」

「レイリア!」

「はい、急ぎましょう!!」

 その冒険者の悲鳴が聞こえたのは、四十三階を攻略している最中であった。
 【星渡りの塔】に能力喰らいが出没している情報は既にレイリアも知っていた。

 また【理の破壊者】と呼ばれる犯罪組織の情報をガーベラ王国でも掴んでいる。
 個人の犯行か、それとも組織的なものか。今回は後者である可能性が高い。

「大丈夫です!?」

「ひっ……誰だか知らないが、助けてくれ。奴に殺されそうなんだ!」

「早くお逃げください。ここは私たちが足止めをしますから」

 血塗れで怯える男を追っていたのは一人の女だった。

「そこのお嬢ちゃん方。お仕事の邪魔をしないでくれる?」

「この方を、殺められるおつもりですか……?」

「理由のない殺人は王国では許されないです!」

 レイリアとストブリは男を庇いながら、現れた女を警戒する。
 人間不信であっても、王族として民を見捨てる訳にはいかない。

 そんな使命感から病を押し隠し、目の前の犯罪者を強く睨みつける。

「お嬢ちゃんに話す理由はない。もう一度言うわ。その人間をこちらに渡しなさい」

 女の瞳は黒く濁っている。人を殺す事に慣れた者の顔付きだ。
 魔法士が好むローブを身にまとい、片手には古い杖が握られている。
 歳は二十代くらいか。長い翠髪で女にしては高身長。口元は笑みを浮かべる。

「どうやら……まともに会話も成り立たない相手のようですね。私利私欲に塗れた能力喰らいに慈悲をかけるつもりはありません。この場で処罰します」

 レイリアは説得を諦めて細剣を構える。
 どの道、能力喰らいは地上で極刑に処される。
 抵抗する相手なら、その場での処分も許されるのだ。

「もう、余計な労力を使わせないで欲しいわ。お嬢ちゃんたちは狙いじゃないの!」

「なっ」

 女の姿が消失した。透明化、もしくは高速移動。
 警戒して周囲を隈なく探る。次の出現位置を予測する。

「レイリアっ!!」

 現れたのは目の前、姿勢を下げて杖を背中に構えている。
 獣染みた身体能力。後衛の魔法士と見せかけて近接もできるらしい。
 
 素早く反応したストブリが、真横から女を蹴りつける。
 
「き、効かないです!?」

 が、身体をすり抜けてしまう。また姿を消していたのだ。

「随分と面白い子を連れているわね王女様。一体、どれだけの価値のある道具なのかしら?」

「どこまでこちらの情報を掴んでいるのですか!?」

「お嬢ちゃんたちが私たちを調べるように、私たちにも情報網があるものよ?」

 今度は後方に現れて、挑発するように指を動かしている。
 自分の素性も、ストブリが宝剣の擬人化である事も見抜かれている。

「クリエイト……!」

「あら」

 レイリアは【創造の樹杖】を振るい、女を取り囲む壁を創り出す。
 木製とはいえ重ねれば鉄並みの強度を誇る。とにかく時間を稼ぐ。

「ストブリ、今です!」

「はい、みなさんの生命力をいただきますです!」

 檻で稼いだ時間を利用して、ストブリは黒嵐を発動させる。
 風と闇の複合属性の蹴りだ。透明化ならそのままぶつければいい。
 高速移動だとしても、物質を通り抜ける事はできないはず。

「うああああああああああ!!」

 ストブリの全力の蹴りが、女を木製の檻をごと押し潰す。
 国宝級の【アイギスの神盾】と互角に渡り合った一撃だ。

「私は痛いのは嫌いなのよ」

 檻が吹き飛び、姿を現した女の前にドーム状の盾が形成されていた。
 ストブリの足がそこで止められている。ヒビが入るが威力が激減していた。

「なるほどね。その子は国宝級といったところかしら? だったらこちらも相応の道具で歓迎しなくっちゃ。例えば――神話級とか」

「……そんなっ!」

「神話級……!?」

 女の発言を聞いて、レイリアとストブリの二人に衝撃が走った。
 現存している神話級の道具は、その大半は王家が管理する大賢者の遺物だ。
 
 もちろんそれがすべてではないが。王家が管理していない物もあるが。
 大前提、神話級を所持するには大賢者の血を引く七人の王の許可が必要である。
 過去、許可を得られたのは高名な権力者であり。その名も広く知れ渡っている。

 遥か昔に何者かによって盗まれた経緯があるエリクシルを筆頭に。
 
 名も知らぬ個人が所有する神話級は盗品なのだ。
 つまり国を相手に盗み出せる巨大な組織が絡んでいる。

 事実であれば、個々で対応できる相手じゃない。

「――何をしている、無駄な時間を使う暇はないと教えてあるはずだが?」

「あーら、ごめんなさいね。面白い子たちと出会えたものだから」

 暗闇から現れたのは眼帯をした男だ。
 こちらも長身で筋肉質な腕を組んでいる。
 
「貴方も……そちらの能力喰らいの仲間ですか?」

「能力喰らいだと? ……お前は、ガーベラ王国の王女か。そして――」

「な、なんです……!」

 眼帯の男は、片目でストブリをしばらくの間見つめていた。
 そこに敵意はなく。どちらかといえば懐かしい者を見るような瞳だった。

「そうか、どうやら時間切れのようだな。……退くぞ」

「あらいいの? まだこの辺りのゴミ処分は終わっていないけど」

「俺は余計な干渉をしないと決めている」

「もう、頭が固いわね。せっかく楽しい時間だったのに」

 短い会話を交わして、二人はそのまま背中を向けてしまう。

「ま、待ちなさい!」

 レイリアは追いかけようとするが、足が石像のように固まってしまう。
 
「一つ忠告しておく」

 眼帯の男が、冷めた瞳でレイリアを見下ろしていたからだ。
 上位存在が持つとされる神威。人の身ではまともに耐えられない。

 そう、この男は人間ではないと。レイリアは理屈ではなく感覚で理解したのだ。

「……自分が正しい行いをしたと思い込んでいるのであれば、あとで後悔する羽目になるぞ」

 二人組の男女が消滅する。魔塔内での転移魔法は危険な行為だ。
 各異世界が複雑に絡み合う空間で、座標軸がズレると永劫の檻に囚われる。

 発動させたのは女の方だろうか。もしくは先程の眼帯の男か。
 安定した転移を可能にするのは、それこそ神話級の道具が必要だ。

「……レイリア。私たちの負けです?」

「ええ、どうやら命拾いをしたようね……」

 レイリアは、自分たちが見逃された事に気付いていた。
 【王女の激励】とストブリの力を合わせても勝ち目はなかった。

 自分のユニークスキルが最高峰のものだと教えられ。
 狭い世界で満足していた自分が、酷く滑稽に思えてくる。

「あ、ありがてぇ……貴女は命の恩人だ……!」

 襲われていた男がレイリアの元に駆け寄り、頭を地面に擦り付けた。

「ご無事でしたらそれでいいのです。私たちはこれで……」

 異性の、それも身体の大きい男性は、近付くだけでも抵抗がある。
 あくまで王族としての義務で動いたのであり。関わりたいとは思わない。

「ま、待ってくれ……このまま置いて行くだなんて言わないよな?」

「そ、それは……」

 助け出したまでは良かったが、そこから先の事を考えていなかった。
 ここで見捨てていけば、そもそも何故助けたのかと責められるだろう。

 四十階以降の過酷な環境に一人で生き残れる保証はない。
 だがここで足手まといが増えると、余計な時間を掛けてしまう。

 早く【星渡りの塔】を踏破して、少年に謝りたいと思っているのに。
 
「頼む、ここから二階層進んだ先に仲間が待っているはずなんだ……!」

「わかりました……しばらくの間、貴方を護衛いたします」
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