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第二章
第45話 休息日
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「それじゃあ【星渡りの塔】攻略を祝して、乾杯だよ! みんな長い間お疲れ様!」
僕はそう宣言して、水の入ったグラスで祝杯を挙げる。
合わせて全員が声をあげて腕を伸ばした。今日は慰労会だ。
「んー流石は私様のデータを参考に作り上げた会場です。並びが完璧ですねぇ」
鼻息荒くライブラさんが拠点内を空中から眺めていた。
飾り付けから、机の配置、料理の種類まで。全部が彼女主導だ。
僅かなズレも許さず。手伝ったコクエンが疲労困憊になっていたけど。
僕は王だからといった理由で手伝いを許されなかった。
途中でアイギスたちも参加していたけど。重労働だったと思う。
「コクエンもお疲れ様。新人なのに一番大変な仕事をさせてごめんね。これからも頼りにしているから。今日はゆっくり休んで」
「あぁ、ご主人様の労いのお言葉をいただけただけで、頑張った甲斐がありました。しくしく」
鼻をつまみながらコクエンは泣いてしまう。
そんな彼女の角付き頭を撫でて、僕は自分の席に戻る。
「ご、ごごごご主人様の手が……わわわわわ私めの頭を……これは夢? あひぃ」
「こくえんさん……癒しの水!」
途中で奇声を発して倒れる音がしたけど。
エルが即座に治療していた。そろそろ慣れて欲しい。
「みなさん、お味の方はどうでしょうか? ここまでの量を作るのは私も初めてですので……」
並べられた料理もすべてライブラさんが考案したもの。
それをレイリアとストブリが独自の解釈でアレンジしてくれた。
【情報板】には冒険者のデータばかりが揃っていて。
そして冒険者は変わり者も多いから。味覚も大雑把だったりする。
味なんて度外視で、安全に食べられたらそれでいいとする人もいるから。
提出されたレシピも、よくわからない食材ばかりを要求されていた。
「ライブラの毒にも薬にもならないレシピを、よくぞここまで美味しく作り直せたわね?」
見た目も味も以前食べたお鍋とは比較にならない。
それをよく知るアイギスが料理人の二人を褒め称える。
「離宮で引き籠っている間、時間だけはありましたので。料理の勉強を少しばかり。お気に召していただけたのなら幸いです。誰かに披露するなんてストブリ以外では初めてです」
そう言って、遠慮しがちにレイリアが僕の方を見ていた。
返事代わりにたくさんお皿に取り分けた。とっても美味しいよ。
「レイリアは王女ながら家事全般が上手なのです。どこに出しても恥ずかしくない淑女なのです!」
「も、もう褒めすぎですよ。その分、王族としては落第生なのですから」
「……淑女か。私も家事を覚えたらマスターに喜んでもらえるのかしら……その、教えてくれない?」
「ええ、私でよければ。アイギスさんでしたら喜んで」
「料理なら私もお教えできますです! レイリアの傍に居て覚えたです!」
レイリアがアイギスと何やら真剣に話し合っている。
そこにストブリも混ざって、男の僕には入り辛い空気だ。
「あのお姫様はいつまで残るつもりなのでしょうか。むむむ、アイちゃんまで手懐けて……!」
何故かライブラさんがレイリアを警戒しているけど。
確かに王族がいつまでも自由を許されるとは思えない。
「レイリアは今回で王族の義務を果たせたけど。王都にはいつ頃戻る予定なの?」
「既に王家の使いの者には報告を済ませています。しばらくすれば迎えが訪れるはずですが……」
そこで一瞬、寂しそうな表情を浮かべる。
「できる事なら時間が許す限り、友人の貴方と一緒に過ごしたい。……駄目でしょうか?」
「ううん、僕は大歓迎だよ。何度でも、王都に戻ってからも、いつでも遊びに来ていいからね」
立場上、一度王都に戻ってしまえば難しいとは思うけど。
どんな時でも友人を迎え入れる準備はしているよと伝える。
「は、はい。……ロロア、ありがとう。私の大切な人」
僕の手を優しく握って、何度も指で撫でてレイリアは涙ぐんでいた。
「――なんですかこの甘ったるい空気は。一ヵ所だけ明らかに固有結界が張られています」
「レイリアはわかりやすいです。たった一人の人間の友人ですから仕方ないです」
「ロロアと若干温度差があるように見えるけど。まぁ歳の差もあるからこんなものよね。……健全な付き合いである間は私も黙って見守る事にするわ。仮にも王族が無理に迫る真似はしないでしょうし」
「それにしたって十八歳が十二歳に色目を使うだなんて犯罪的ですよ! コクエンちゃん、間に挟まりに――」
「はいはい。変態冷血無粋妖精は黙りましょうね。貴女のデータにある常識では違法でも、この世界では別にこれくらいの歳の差は普通なのよ」
「ご主人様……私めはこうして陰から眺めているだけで十分です。しくしく」
「鼻血を流しながら泣いてるです。コクエン様は器用です」
ライブラさんを中心に向こうの席も盛り上がっている。
時折複数の視線を感じるけど。生暖かい目で見守られていた。
「……ぐぅ」
「とろんさん、あーん」
「おいし」
「おかわりです。あーん」
「おいし、おいし」
隣でエルがトロンに料理を食べさせてあげていた。
まるで餌付けみたいだ。二人は随分と仲良くなったなぁ。
「そういえばレイリア――」
「……あっ」
振り返ると、レイリアがスプーンを落としていた。
何故か僕の手前に転がって、誤魔化すように戻してしまう。
「……ごめんなさい。私ったら不器用みたいで」
「あるじさまも、あーん」
エルがトロンにするように僕にも食べさせてくれる。
「どうですか?」
「毎日食べたいくらい美味しいよ」
「えへへ。よかったです」
花のような笑顔でエルは自分の分も口に含んでいた。
「う、羨ましい……私も……あの子のように……もう少し勇気を振り絞って……」
レイリアが難しい顔で自分のスプーンと睨めっこする。
僕もエルのように彼女にもしてあげた方がいいのだろうか。
「……あぁ、私様の王が人間の女の魔の手に……アイちゃんは許せるのですか!?」
「落ち着きなさい。まだ今のところは健全よ。健全なのよ健全……きっとそう」
「レイリア、頑張るのです! 応援してますです!」
「興奮して鼻血が止まらないです……早く治療を受けないと、死にそう」
――何だかあとが怖い気がしたので今日は大人しくしておこう。
僕はそう宣言して、水の入ったグラスで祝杯を挙げる。
合わせて全員が声をあげて腕を伸ばした。今日は慰労会だ。
「んー流石は私様のデータを参考に作り上げた会場です。並びが完璧ですねぇ」
鼻息荒くライブラさんが拠点内を空中から眺めていた。
飾り付けから、机の配置、料理の種類まで。全部が彼女主導だ。
僅かなズレも許さず。手伝ったコクエンが疲労困憊になっていたけど。
僕は王だからといった理由で手伝いを許されなかった。
途中でアイギスたちも参加していたけど。重労働だったと思う。
「コクエンもお疲れ様。新人なのに一番大変な仕事をさせてごめんね。これからも頼りにしているから。今日はゆっくり休んで」
「あぁ、ご主人様の労いのお言葉をいただけただけで、頑張った甲斐がありました。しくしく」
鼻をつまみながらコクエンは泣いてしまう。
そんな彼女の角付き頭を撫でて、僕は自分の席に戻る。
「ご、ごごごご主人様の手が……わわわわわ私めの頭を……これは夢? あひぃ」
「こくえんさん……癒しの水!」
途中で奇声を発して倒れる音がしたけど。
エルが即座に治療していた。そろそろ慣れて欲しい。
「みなさん、お味の方はどうでしょうか? ここまでの量を作るのは私も初めてですので……」
並べられた料理もすべてライブラさんが考案したもの。
それをレイリアとストブリが独自の解釈でアレンジしてくれた。
【情報板】には冒険者のデータばかりが揃っていて。
そして冒険者は変わり者も多いから。味覚も大雑把だったりする。
味なんて度外視で、安全に食べられたらそれでいいとする人もいるから。
提出されたレシピも、よくわからない食材ばかりを要求されていた。
「ライブラの毒にも薬にもならないレシピを、よくぞここまで美味しく作り直せたわね?」
見た目も味も以前食べたお鍋とは比較にならない。
それをよく知るアイギスが料理人の二人を褒め称える。
「離宮で引き籠っている間、時間だけはありましたので。料理の勉強を少しばかり。お気に召していただけたのなら幸いです。誰かに披露するなんてストブリ以外では初めてです」
そう言って、遠慮しがちにレイリアが僕の方を見ていた。
返事代わりにたくさんお皿に取り分けた。とっても美味しいよ。
「レイリアは王女ながら家事全般が上手なのです。どこに出しても恥ずかしくない淑女なのです!」
「も、もう褒めすぎですよ。その分、王族としては落第生なのですから」
「……淑女か。私も家事を覚えたらマスターに喜んでもらえるのかしら……その、教えてくれない?」
「ええ、私でよければ。アイギスさんでしたら喜んで」
「料理なら私もお教えできますです! レイリアの傍に居て覚えたです!」
レイリアがアイギスと何やら真剣に話し合っている。
そこにストブリも混ざって、男の僕には入り辛い空気だ。
「あのお姫様はいつまで残るつもりなのでしょうか。むむむ、アイちゃんまで手懐けて……!」
何故かライブラさんがレイリアを警戒しているけど。
確かに王族がいつまでも自由を許されるとは思えない。
「レイリアは今回で王族の義務を果たせたけど。王都にはいつ頃戻る予定なの?」
「既に王家の使いの者には報告を済ませています。しばらくすれば迎えが訪れるはずですが……」
そこで一瞬、寂しそうな表情を浮かべる。
「できる事なら時間が許す限り、友人の貴方と一緒に過ごしたい。……駄目でしょうか?」
「ううん、僕は大歓迎だよ。何度でも、王都に戻ってからも、いつでも遊びに来ていいからね」
立場上、一度王都に戻ってしまえば難しいとは思うけど。
どんな時でも友人を迎え入れる準備はしているよと伝える。
「は、はい。……ロロア、ありがとう。私の大切な人」
僕の手を優しく握って、何度も指で撫でてレイリアは涙ぐんでいた。
「――なんですかこの甘ったるい空気は。一ヵ所だけ明らかに固有結界が張られています」
「レイリアはわかりやすいです。たった一人の人間の友人ですから仕方ないです」
「ロロアと若干温度差があるように見えるけど。まぁ歳の差もあるからこんなものよね。……健全な付き合いである間は私も黙って見守る事にするわ。仮にも王族が無理に迫る真似はしないでしょうし」
「それにしたって十八歳が十二歳に色目を使うだなんて犯罪的ですよ! コクエンちゃん、間に挟まりに――」
「はいはい。変態冷血無粋妖精は黙りましょうね。貴女のデータにある常識では違法でも、この世界では別にこれくらいの歳の差は普通なのよ」
「ご主人様……私めはこうして陰から眺めているだけで十分です。しくしく」
「鼻血を流しながら泣いてるです。コクエン様は器用です」
ライブラさんを中心に向こうの席も盛り上がっている。
時折複数の視線を感じるけど。生暖かい目で見守られていた。
「……ぐぅ」
「とろんさん、あーん」
「おいし」
「おかわりです。あーん」
「おいし、おいし」
隣でエルがトロンに料理を食べさせてあげていた。
まるで餌付けみたいだ。二人は随分と仲良くなったなぁ。
「そういえばレイリア――」
「……あっ」
振り返ると、レイリアがスプーンを落としていた。
何故か僕の手前に転がって、誤魔化すように戻してしまう。
「……ごめんなさい。私ったら不器用みたいで」
「あるじさまも、あーん」
エルがトロンにするように僕にも食べさせてくれる。
「どうですか?」
「毎日食べたいくらい美味しいよ」
「えへへ。よかったです」
花のような笑顔でエルは自分の分も口に含んでいた。
「う、羨ましい……私も……あの子のように……もう少し勇気を振り絞って……」
レイリアが難しい顔で自分のスプーンと睨めっこする。
僕もエルのように彼女にもしてあげた方がいいのだろうか。
「……あぁ、私様の王が人間の女の魔の手に……アイちゃんは許せるのですか!?」
「落ち着きなさい。まだ今のところは健全よ。健全なのよ健全……きっとそう」
「レイリア、頑張るのです! 応援してますです!」
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――何だかあとが怖い気がしたので今日は大人しくしておこう。
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