【一〇一匹モフモフ】落ちこぼれクランから追放されたGランクテイマー、獣耳少女と出会う

お茶っ葉

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外伝1 ガルムとサイロ

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 ピヨピヨ、ピヨピヨ

「……っ!」

 小鳥のさえずりが部屋に届いてくる。扉奥の廊下からは足音が。
 白い耳を小刻みに動かし、ガルムは大きな欠伸をして、目を覚ました。

「うぅー! へっへっへっ、わう~わお~ん!」

 ベッドから飛び降りると、ガルムは元気いっぱいに床を駆け回る。
 たくさん眠って力が溢れていたのだ。椅子や机の脚を避けながら転がっていく。
 尻尾を振って、その尻尾を追いかけて。コツンっと、何かにぶつかった。大きな袋だ。

「わう」

 何だろう? 気になってガルムは袋に顔を突っ込んだ。
 すると、自分のではない匂いがあった。すぐに誰の物かに気付く。

「がぶがぶ」

 口に咥えて引っ張り出すと、それはオルガが昨日着ていた服だった。
 いい物を見つけたと、瞳を輝かせ、ガルムはベッドの上に戻る。
 ころころと転がって、ガルムは服に自分の匂いを擦り付けていく。

「わうぅ♪」

 ある程度で満足したガルムは、周囲の様子を伺う。まだ誰も起きてくれない。
 今度はオルガとリンネが使っている毛布の中へと侵入していく。早く誰かに構って欲しい。

 ――コツン。
 また何かにぶつかった。

「わう?」
「へっへっ、わうっ!」

 困り眉と前足の黒い毛が特徴的な白い狼、サイロだった。
 ガルムの鼻を舐めてくる。ガルムも挨拶代わりに鼻をくっつける。

「わうわお!」
「くぅ~ん」

 サイロはリンネとオルガに挟まれる形で眠っていたようで。いいでしょと自慢げに語る。
 ガルムはいいないいなと、場所代わってと訴える。だが、サイロはここは自分の場所だと言う。

「わうわん! わううっ!」
「う~、わう~!」

 ずるいずるいとその場で回るガルム。サイロはやだやだと抵抗する。
 両者、お気に入りの寝床を巡って、短い前足で相手の身体を押し合った。
 熱中し過ぎたサイロの黒い輪っか状の毛が輝いた。瞬間、【神腕】が発動する。

「きゃうん!?」

 ごろごろごろごろごろごろごろ、パタン。
 ガルムはベッドの隅まで飛ばされて、仰向けになった。
 すぐにサイロがやってきて、ごめんね……。と鳴きながら謝ってくる。

「わう」

 大丈夫だよっと、ガルムは答えた。
 サイロは使っていいよと、お詫びに場所を明け渡すが。

「わう~♪」

 ガルムはこっちにおいでと、自分の寝床に案内した。
 すぐに仲直りして、今度は一緒にオルガの服の上に寝そべる。
 袖を噛んで引っ張り、伸ばして遊ぶ。二匹とも悪戯が好きなのだ。

「むにゃむにゃ……主様……」

「わう?」
「くん?」

 寝言のうるさいリンネが、ベッドの中央を大きく占拠している。
 いつも野外で眠っていた彼女は、寝相が悪く、ガルムもよく巻き込まれていた。

「う、う~ん。狭い……」

 そして今は、オルガが壁に追いやられ寝苦しそうだ。

「わうぅ……」

 サイロがそんな様子を眺めながら、狭くて可哀想だとガルムに伝える。
 ガルムもそうだねと頷く。二匹は使命感に駆られ立ち上がり、行動を開始する。

 ベシべシベシベシベシベシ

「わふっ……あ、頭が……もう毒キノコは……嫌ですぅ」

 ガルムとサイロが後ろ足を高速で動かし、リンネを何度も蹴りつけ動かしていく。
 昔に毒キノコを食べて三日三晩寝込んだ記憶が蘇ったのか、リンネは眉をひそめ苦しむ。

「わう~!」

 蹴る、蹴る、蹴り続ける。ベッドの端まで追い詰めていく。
 もう少し、あともう少しといったところで――リンネが逆襲してきた。

「わぎゅんっ!?」

 反転して転がってきたリンネに、ガルムが押し潰されたのだ。
 サイロが慌てて【神腕】を発動させる。思いっ切り体当たりした。

「ふにゃっ!? ……ぐふっ……ぐぅ……すぅ」

 ついに大魔王リンネは床へと落っこちた。悲鳴をあげてまた眠りに落ちてしまった。

「わうっ!」
「へっへっへっ」

 サイロはガルムを助け起こし、そして毛布を床から持ってくる。
 オルガを優しく中央まで引っ張って、毛布を被せてあげたのだった。
 
「わう~♪」
「わうわん!」

 リンネ討伐という一仕事を終えて、その場で飛び跳ね喜びを表す二匹。
 なんだかまた眠くなってきたので、今度は服ではなく主様の傍で眠る事にした。

「……ぐぅ」
「わうぅ……」

 二匹くっついて丸まり、寝息を立てる。その表情は満足げだった。

 ◇

 目を覚ますと俺はベッドの真ん中に転がっていた。毛布も掛けられている。
 おかしいな。昨晩は凄まじく寝相が悪かったリンネに場所を明け渡したのだが。
 正直、変な姿勢で眠っていたので身体が凝り固まっているのだが。それでもまだマシな方だ。

 先にリンネが目を覚まして、場所を譲ってくれたのかと思ったが――彼女は床に転がっていた。

「……おーい、大丈夫か。そんな所で転がってたら風邪を引くぞ」

「むにゃむにゃ……蹴らないで……ください」

 変な夢でも見ているのか、リンネはずっと呻いていた。
 ベッドに連れ戻そうとして上半身を起こすと、腕にモフモフが当たる。
 ガルムとサイロだ。俺のすぐ横で、仲良く並んで眠っている。シャツを下敷きにしていた。

「衣装袋から昨日の服を持ってきたのか。悪戯っ子だな。うりうり」

 ほっぺをつつくと、ガルムとサイロは反射的にぺろぺろと舌で指を舐めてくる。
 可愛い。この子たちが俺だけの契約獣なのだと、一晩経ってやっと実感が湧いた。
 クランからの追放、リンネとの出会い、自らの境遇。折り重なる不安が和らいでいく。

「お前たちも、これからよろしくな」
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