【一〇一匹モフモフ】落ちこぼれクランから追放されたGランクテイマー、獣耳少女と出会う

お茶っ葉

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10 Gランク

 ギルドの酒場で食事を摂り、英気を養った俺たちは冒険者街へと出る。
 エステルでも特に、冒険者向けの店が集まった地区で、一番活気のある場所だ。

 先日は気分転換に薬草採取へ向かうだけの暇があったのだが。
 今後は闇の聖遺物集めという目標ができた。が、すぐさま行動には移せない。
 準備不足なのもそうだが、大前提として、乗り越えるべき課題が一つあるのだ。

「主様、新しく発見されたというだんじょんへは向かわないのですか?」

「そうしたいところなんだが。残念ながら、Gランクはダンジョンへの入場を許可されていないんだ」

「それは、何故なのでしょうか? その……らんくとやらで差別を受けていらっしゃるのですか?」

 冒険者事情に詳しくないリンネが、当然な疑問を投げ掛けてくる。
 前回の一件を経て、日頃俺たちが酷い扱いを受けていると思い込んでいるらしい。
 半分は正解なのだが、もう半分は実力不足なこちらの責任でもあるので微妙なところ。

「実はGランクというのは正式な冒険者以外もそこに含まれているんだ。制限を加える代わりに一般人でも冒険者の特権を利用できるようにと。だから他のランク帯でできる事が認可されていなかったりする」 

 今では落ちこぼれの代名詞とされているが、本来は冒険者の敷居を下げる目的があった。
 というのも近年、冒険者という職業が一般的になり、各ギルドを台頭に勢力を伸ばしていた。
 様々な国の援助や商業ギルドの支援もあり、大陸各地で幅を利かせるようになっているのだが。

「……ここ数年だけでも、冒険者じゃないと入れない土地やお店が急増していて。それ以外にも、商業ギルドを通して値切りができたり、お家を安く買えたり、お得な特権も増えてきたの。……これって、普通の人からしたら不公平に思うよね……? 生まれ持った才能で区別されて、これからも格差が増していくんだから……」

 神獣であるリンネにも理解できるよう、噛み砕いてエレナが説明してくれる。
 こんなに長々と話すエレナは滅多にお目にかけない。相変わらずリンネには心を開いている。

「むぅ……我も山々を住処にしておりましたが、近年になって、人間が自然を切り拓くので、たびたび引っ越しを余儀なくされておりました――そういう事でしょうか?」

「えっと……そ、それはまた別の大きな問題だと思うけど。でも、この街にも冒険者専門街なんてものができたから似ているかも。……先にエリュシオンを訪れた開拓者たちが、あとから参入してきたよそ者に追いやられていくんだから」

「それは……不満が出てもおかしくありませんね」
 
 当時の最低ランクであったFランクでさえ、一般人の感覚ではかなり厳しい試験だった。
 それでも、冒険者である利が膨らみ過ぎて、無謀な挑戦に臨む人々も現れ死傷者が多発した。
 このままでは両者に大きな亀裂が生まれると、国とギルドが協議した結果、緩和処置がなされた。
 
 それが三年前に設けられたGランク制度。俺たちが【鍋底】を結成した時期である。
 簡単な審査とギルドへの手数料を支払う事で、誰でも冒険者の特権の一部を得られる。
 もちろん危険地帯やダンジョン探索への参加は認められないが。厳しい試験は免除されるのだ。

「なるほど。条件の緩和によって民の不満を減らそうと考えたのですか」
「わう?」
「くん?」
 
 リンネは説明を最後まで真剣に聞いて理解してくれたようだ。
 ガルムとサイロは当然ついてこれず、足元で仲良く首を傾げていた。

 基本冒険者には一定のノルマが課されており、場合によってはランク降格もあり得る。
 これまでFランクが降格すると即権利はく奪とされていたのが、Gランクという滑り止めができた。
 Gランクはその性質上、ノルマは存在しないので、犯罪を犯さない限りクビになる心配はない。
 
 幸か不幸か、この制度のおかげで俺たちは冒険者を続けていられる。
 契約獣がいなくても、血液恐怖症でも、名目上は冒険者として扱われるのだ。
 ただ、既存の冒険者たちからすこぶる評判は悪い。質の悪い人材も当然増えた訳で。

「巷ではGランクは冒険者未満と呼ばれているが、実際そういう側面もあるから言い返せなくはある。昨日の騒動を例に出すとわかりやすいが別の問題、ランク差別も横行している。こればっかりは人間の性として受け入れるしかないんだ。以前から低ランクへの風当たりは強かったと聞いているしな」

 昔はFランクがその対象だった。それがわかりやすくGランクに移行しただけだ。
 大抵、差別的なのはC~Eの中間層。このランク帯は、単純に人が多すぎるのもある。
 逆にFランクは元Gランクもかなり含まれているので、友好的な印象を受ける。例外もあるが。

「ここで話を戻すと、このままでは俺たちはダンジョンに入れない。他の手段を探す必要がある」

「恐縮ですが、主様のらんくを上げる事はできないのでしょうか?」

「……昇級試験、ついこの間あったばかりで。私たち、不参加だったの」

 ランク昇格には半年に一度行われる試験を受ける必要がある。
 残念ながら、リンネと出会う三日前に行われたばかりで次の試験は半年先だ。
 現状の実力では合格するのは難しいだろうと見送った。今となっては後悔しているが。

「一応、抜け道もあるんだ。あまりよろしくない手段だが、パーティランクはリーダーになった者のランクが基準になるので、同行者もそのランクとして同列に扱われる。検問も素通りできるようになるな」

 上位ランクはそれすらも許されないらしいが、Cランク帯の依頼までなら許可が下りたはず。

「そのような簡単な抜け道があるのでしたら、わざわざGらんくを縛る意味がないように思えますが」

「ルールは縛り過ぎると反発が生まれるもので、ある程度穴は作っておくものなんだ。もちろん推奨はされていないし、問題が生じれば誘ったパーティや本人の自己責任だと念押しされている。まっ、そもそもGランクを受け入れてくれるパーティが希少だから、言うほど簡単ではないが……」

「人の世界は複雑怪奇なのですね」

 このやり方は言わば寄生キャリーであり、同業者に忌み嫌われる行為なのだが。 
 今から馬鹿正直に半年も待っていたら、間違いなく闇の聖遺物を誰かに回収されてしまう。
 リンネの使命は俺の使命でもある。こだわるべきところと、そうじゃないところは見極めよう。

「よし、今からパーティを組んでくれる協力者探しだ」
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