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7話 ボルスタ村
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ボルスタは森を切り開いた小さな平地に家々が立ち並ぶ質素な村だ。
バーバル大陸を支配する国家アルトバラン。王都アイリアを目指す為には様々な経路があるのだが。
その中でも一番安全で、多くの旅人たちが活用する馬車道が村を越えた先にあるのだ。
「さっそく宿に向かいますかね。道中慣れない運動をしたから。こりゃ明日は筋肉痛確定だな」
「お疲れ様です。宿についたらマスターのお肩をお揉みしますね。ピヨピヨ」
「気持ちは嬉しいが、一気に老けて孫ができた気分だ。ところで、いつまで小鳥を連れ回すつもりだ?」
フランは頭に小鳥を乗せながら、村の中を走り回っている。
微笑ましい光景だが、ここの住人は見向きもしない。本物の孫がいそうな老人ですらだ。
この村を訪れるのはこれで二度目だ。
一度目は冒険者ギルドがある街に向かう為に立ち寄ったのだが。
その時は一日だけの滞在だったが、そりゃ驚いたもんだ。
誰も俺の事を見ようとしないのだ。宿の主人ですら。客商売の癖に。
どうやらよそ者を嫌っているらしい。冒険者と頻繁に揉め事を起こしたとかで。
近くにあの碌でもないギルド長が運営している冒険者ギルドがあるのだから、納得はできる。
無視されるだけで嫌がらせをしてくる事もないので。特に害がある訳じゃない。
ちなみにここで採れるタケノコは癖が強いが中々の絶品だ。
当然だが宿の食事に出てくる事はなく。殆どが街へと出荷される。
「……残念です。タケノコ食べたかったです」
それを聞いてフランがとても残念がっていた。
剣精は意外と食いしん坊なのだ。大人の俺と遜色ないくらい飯を食べる。
一人増えるだけで旅費がかなり苦しいのだが。彼女がいないと俺は何もできないに等しい。
可能な限りフランには悲しい想いをさせたくない。
「そう言うだろうと思ってな。あらかじめ用意しておいたぞ」
「こ、これは……?」
「ボルスタ村名産のタケノコの煮物だ。旨いぞー?」
旅立つ前におっさん――――いやオッサに頼んで作って貰ったものだ。
アイツはあれで結構料理が上手いのだ。材料と金さえ払えば文句も言わないしな。
もしかしたら、料理系のスキルでも持っていたのだろうか。
「とても嬉しいです! 大切にいただきますね!」
「そうかそうか。とりあえず食べるのは宿に入ってからにしような」
ほくほく顔で煮物が入った袋を受け取るとフランは俺のななめ後ろを歩き出す。
最近になって気付いたが、フランはこうやって俺専属の従者のような振る舞いをする。
はっきり言って俺はマスターの器ではないと思っているし。フランとは対等の立場でありたい。
「……友人がいないのにこんな小さな子を従えて、俺って周りから見たらすげぇ嫌な奴じゃん」
これまで散々スキル無しだと罵倒され続けて、今さら何を取り繕う必要があるのかと思うが。
フランの前でだけは格好をつけたい俺がいるのだ。彼女の期待に応えたいという。
きっとミノタウロスと戦えたのだって、そういう男の意地が働いたんだろう。
「一泊宿を借りたい。大人一人に子供一人だ」
カウンター越しにおばちゃんに話しかける。
酷い不愛想顔だった。これを見ると愛想笑いでも笑顔は大事だなと思う。
無言のまま一枚の紙を出してくる。色々な注意事項などが書かれてあった。
「あぁ大丈夫。ここに泊まるの二度目だから」
「……そうかい」
少し驚いた顔でおばちゃんが返事をする。
まぁ普通の人ならこんな対応されれば二度と来ないだろうし。
だが俺には通用しない。寧ろ、変に馴れ馴れしいよりかは助かる。
『あんたのスキル教えなさいよ』とか。返答に困る質問を受ける心配はないからな。
そうして案内された部屋は、ベッドが置かれてあるだけの本当に寝る為だけの一室。
せめて机と椅子ぐらいは欲しかったが。小さな村だし、設備もこんなものなんだろう。
「マスター、私が床で寝ますね。コロコロ」
タケノコを存分に味わい。
幸せそうな顔を見せながら、フランは毛布に包まって床に転がった。
なんとなくそう言うだろうなとは予想していた。ここでわかったと答えれば俺は駄目な男になる。
「何を言っているんだ。床は俺の物だぞ。フランはその狭いベッドに眠るんだ!」
「マスター? 何を言って……」
「俺は床で眠る方が好きなんだよ! きらいなベッドはお前にくれてやる!!」
そうして強引に床に転がる。
フランは終始、頭に疑問符を浮かべていた。
――その日の夜。
俺は筋肉痛と床の硬さに痛みを覚えて助けを求めた。
結局、最終的に二人でベッドに転がる事になったのだった。
バーバル大陸を支配する国家アルトバラン。王都アイリアを目指す為には様々な経路があるのだが。
その中でも一番安全で、多くの旅人たちが活用する馬車道が村を越えた先にあるのだ。
「さっそく宿に向かいますかね。道中慣れない運動をしたから。こりゃ明日は筋肉痛確定だな」
「お疲れ様です。宿についたらマスターのお肩をお揉みしますね。ピヨピヨ」
「気持ちは嬉しいが、一気に老けて孫ができた気分だ。ところで、いつまで小鳥を連れ回すつもりだ?」
フランは頭に小鳥を乗せながら、村の中を走り回っている。
微笑ましい光景だが、ここの住人は見向きもしない。本物の孫がいそうな老人ですらだ。
この村を訪れるのはこれで二度目だ。
一度目は冒険者ギルドがある街に向かう為に立ち寄ったのだが。
その時は一日だけの滞在だったが、そりゃ驚いたもんだ。
誰も俺の事を見ようとしないのだ。宿の主人ですら。客商売の癖に。
どうやらよそ者を嫌っているらしい。冒険者と頻繁に揉め事を起こしたとかで。
近くにあの碌でもないギルド長が運営している冒険者ギルドがあるのだから、納得はできる。
無視されるだけで嫌がらせをしてくる事もないので。特に害がある訳じゃない。
ちなみにここで採れるタケノコは癖が強いが中々の絶品だ。
当然だが宿の食事に出てくる事はなく。殆どが街へと出荷される。
「……残念です。タケノコ食べたかったです」
それを聞いてフランがとても残念がっていた。
剣精は意外と食いしん坊なのだ。大人の俺と遜色ないくらい飯を食べる。
一人増えるだけで旅費がかなり苦しいのだが。彼女がいないと俺は何もできないに等しい。
可能な限りフランには悲しい想いをさせたくない。
「そう言うだろうと思ってな。あらかじめ用意しておいたぞ」
「こ、これは……?」
「ボルスタ村名産のタケノコの煮物だ。旨いぞー?」
旅立つ前におっさん――――いやオッサに頼んで作って貰ったものだ。
アイツはあれで結構料理が上手いのだ。材料と金さえ払えば文句も言わないしな。
もしかしたら、料理系のスキルでも持っていたのだろうか。
「とても嬉しいです! 大切にいただきますね!」
「そうかそうか。とりあえず食べるのは宿に入ってからにしような」
ほくほく顔で煮物が入った袋を受け取るとフランは俺のななめ後ろを歩き出す。
最近になって気付いたが、フランはこうやって俺専属の従者のような振る舞いをする。
はっきり言って俺はマスターの器ではないと思っているし。フランとは対等の立場でありたい。
「……友人がいないのにこんな小さな子を従えて、俺って周りから見たらすげぇ嫌な奴じゃん」
これまで散々スキル無しだと罵倒され続けて、今さら何を取り繕う必要があるのかと思うが。
フランの前でだけは格好をつけたい俺がいるのだ。彼女の期待に応えたいという。
きっとミノタウロスと戦えたのだって、そういう男の意地が働いたんだろう。
「一泊宿を借りたい。大人一人に子供一人だ」
カウンター越しにおばちゃんに話しかける。
酷い不愛想顔だった。これを見ると愛想笑いでも笑顔は大事だなと思う。
無言のまま一枚の紙を出してくる。色々な注意事項などが書かれてあった。
「あぁ大丈夫。ここに泊まるの二度目だから」
「……そうかい」
少し驚いた顔でおばちゃんが返事をする。
まぁ普通の人ならこんな対応されれば二度と来ないだろうし。
だが俺には通用しない。寧ろ、変に馴れ馴れしいよりかは助かる。
『あんたのスキル教えなさいよ』とか。返答に困る質問を受ける心配はないからな。
そうして案内された部屋は、ベッドが置かれてあるだけの本当に寝る為だけの一室。
せめて机と椅子ぐらいは欲しかったが。小さな村だし、設備もこんなものなんだろう。
「マスター、私が床で寝ますね。コロコロ」
タケノコを存分に味わい。
幸せそうな顔を見せながら、フランは毛布に包まって床に転がった。
なんとなくそう言うだろうなとは予想していた。ここでわかったと答えれば俺は駄目な男になる。
「何を言っているんだ。床は俺の物だぞ。フランはその狭いベッドに眠るんだ!」
「マスター? 何を言って……」
「俺は床で眠る方が好きなんだよ! きらいなベッドはお前にくれてやる!!」
そうして強引に床に転がる。
フランは終始、頭に疑問符を浮かべていた。
――その日の夜。
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結局、最終的に二人でベッドに転がる事になったのだった。
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