21 / 44
21話 エリアスVSイオナ①
しおりを挟むイオナから突然挑まれた手合わせ。
「イ、イオナさんっ! 彼は昨日ここへ来たばかりなんです。まだ小さい子だし、戦いなんて……危ないと思います」
アーゼルが反射的な速度で止めに入ってくれた。
いいぞ、もっとやれ。
「アーゼル、お前はコイツの実力を知っているのか?」
「いえ、まだ何も知らないですが」
「この子を仲間として迎え入れたのなら、遅かれ早かれ実力は知っていた方がよくないかい? なに、ちゃんと手加減はするさ」
「……えっと、そうですね」
え、アーゼルさん?
ちょっと押されてません?
止めに入ってくれた当初の気持ちを思い出してっ!
「ならこうしよう。コイツと手合わせさせてもらえるなら、今回渡す資材をいつもの2倍に増やそう」
「な……っ!? 2倍、ですか?」
今、完全にアーゼルの心がイオナに寄った……いやもう完全に寄り掛かった瞬間を目にしてしまった。
「そうだ、2倍だと困ったグループの子に分けてあげられるんじゃないか?」
「そ、それも……そうですね」
イオナの案に同意しつつ、チラチラと遠慮気味に俺をチラ見してくる。
「……アーゼル、分かったよ。俺のひと頑張りで他の子が救われるなら悪い話じゃないだろうしな」
よし、テキトーに戦って良いタイミングで参りましたぁ~。
これでいこう。
「エリアス、巻き込んでしまってごめんよ」
「いや、俺もお世話になる身だ。気にしないでくれ」
アーゼルは気が引けた、って様子。
彼はみんなことを思って、そんな優しい人間だ。
そのことを知ってるから俺は責めることなく、優しく寄り添うように言葉を投げた。
「じゃあ決まりだ。……あ、あと少しでも手加減したら私には分かるからね? その瞬間、資材の件はなしだ。分かったかい?」
「……」
なんだこのお婆、俺が手を抜けないよう予防線みたいなものを張ってきやがったぞ。
これじゃある程度は本気でやらなきゃダメか。
「……分かったかい?」
次は少し強めの口調で同意を求めてきた。
「……はい」
この場はそう返すしかない。
一応俺はアーゼルについて来させてもらってる身。
彼が心から欲しているその資材、それを手に入れることが多少であれどみんなの力になるのなら。
そう思って、俺は覚悟を決めた。
それからすぐイオナは武器商店に何かを取りに行ったけど、一体何持ってくるんだ?
とそんな考えを巡らせるのも束の間、時間にして1分もないほどの時間で帰ってきた。
「ほれ」
イオナはさっき武器商店へ取りに行ったある物を俺に手渡してきた。
「これ、竹刀……?」
「あぁ。剣術に興味があるのかと思ってな」
「えっと、なんでそう思ったんですか?」
「ふん、商売人の癖さ。お前がこの武器商店に入ってきてから1番初めに見てた武器、それが剣だったからね」
イオナは鼻を鳴らして興味無さそうに俺から目を逸らすが、この人おそらく……いや確実に良い武器商人だ。
俺が前世関わっていた武器商人はこう言っていた。
「ソイツを顔を見りゃ会話せずとも適性武器が分かんだよ。それが一端の武器商人ってもんだ」
このイオナという女性は俺の得意武器を会話せずとも当ててみせた。
もしかすると偶然当たっただけなんじゃないか、そうも考えられるが、この人に限ってそれはないと思う。
実力の高い人は努力できる人だ。
これは俺が常日頃思っていることだが、イオナの戦闘能力を見てそう感じた。
だからこの人が武器商人をやるってんなら、それ相応の努力をするだろう。
「……違ったかい?」
イオナは返事がないもんだからとしゃがみ込み、俺の顔を下から覗いてくる。
一見心配そうな声を出しているが、彼女の目には一切の迷いがない。
自分の出した答えは間違わない、そう言っているかのような強くギラギラした瞳だ。
「いや、さすがですよイオナさん」
この人はやはり俺の知る『一端の武器商人』だ。
そう思った俺は彼女から竹刀を受け取り、さっきの戦闘前にラニアが立っていた配置へつく。
「いいかガキ、本気で来るんだよ? 私はお前の本気を見てから力を調節する」
なるほど。
今回の手合わせ、完全に俺の実力を図りにきてるってわけか。
しかし手を抜くなと言われたが、さてどうする。
ま、俺自身、エリアスとして剣を相手に向けるなんて初めてのことだ。
どれくらいの力が出せるのか様子見していくか。
「分かりました。あとイオナさん、俺はガキじゃなくてエリアスです」
ここは指摘しておかないと。
アーゼル、ラニアは名前呼びで俺だけガキだと1人だけ子供扱いされている気がするからな。
「そうかい。エリアス、かかって来な!」
イオナは右手で握った竹刀を構える。
「はい……っ!」
ここで生半可にいくと、手を抜いているのが明らかになってしまう。
だからこそ今のエリアスの体にも負担がさほどかからない程度では攻める!
俺は全身に氣を巡らせていく。
前世での『氣』とは、人の体に巡るエネルギーのことだったが、この世界にも同じように存在していて本当に良かった。
まぁ転生してからも同じ人間、当然といえば当然なのだが。
ただ、家には魔法についての書物はたくさんあった中、氣については何一つなかった。
もしかしたら存在はすれど、認知されていないのが今の現状なのかもしれない。
俺はアルベールの頃のように氣で身体能力を上げ、一気に地面を蹴り上げる。
ダッ――
一瞬にしてイオナの眼前に迫る。
彼女の視線がこっちを向いた頃、俺はすでに彼女と同じ目線から竹刀を斜め上から振り下ろし始めていた。
「……っ!?」
イオナは驚愕しつつも瞬時に竹刀構え、俺の剣撃を防ぐ。
パシッ――
竹刀同士が生んだ短く甲高い打突音が響いた。
しかし弾かれるのは想定内。
俺は空中でバランスを取り、そのまま水平回転斬りへ移行した。
パシッ――
「……想像以上だっ!」
俺の竹刀を再び止めたイオナは、ハハッとひと笑いしながらギンギンに目を血走らせている。
この婆さん、怖いって……。
とはいえここで引けば、資材の話も無くなってしまう。
だからこそ攻めの気持ちは変えないつもりだ。
俺は一度地上へ足を下ろし再び竹刀を振るっていくが、イオナはもちろん守りの姿勢を崩さない。
つまり攻めと守りが拮抗しているのだ。
そんな均衡に退屈したのか、イオナは攻撃の合間に大きく後退した。
「エリアス、お前は強い。私が思ったよりも」
彼女はそう言って竹刀を下げた。
「そりゃどうも……」
「だが!」
イオナは強調した物言いで俺の言葉を遮る。
あまりの迫力に思わず息を呑んでしまう。
こりゃまるで蛇に睨まれた蛙みたいだが、そのくらいに勢いがあった。
「本気、じゃないだろ?」
「いや、そんなこと……」
言葉が止まってしまった。
そう、今まで俺が剣聖として戦ってきた時は必ずそこに命のやり取りがあったからだ。
そりゃその時に比べれば本気じゃないかもしれないが、ここでそんな命懸けの戦い必要ないだろうよ。
「……私がお前の本気を引き出してやるよ。エリアス!」
イオナは再び戦闘態勢に入った。
今までとは違う空気を纏って。
彼女の放つ気迫、鋭く刺すような瞳、あれは……人殺しのそれだ。
61
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる