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5.さあて状況整理だ!
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僕は牢獄の鑑の前にしゃがんで、持参したチョークで床にさらさらと事件の概要を描く。
「晩餐会、毒殺発生、カイさんが救助……そして、即逮捕っ。ざっくりこんな感じですね」
床に描いた図を指差すと、カイはだるそうに肩をすくめた。
「…まぁ、だいたい合ってるな」
「ざっくりすぎ」とウィリアルが声をあげる。
「あと、毒殺に使われたものは分かりますか?」
僕が質問するとカイはめんどくさそうに答える。
「確か、警備局のやつから聞いたな…。あれは、東の地域から取れる希少な種子マチズを原料にしたやつらしい…。だけどそんなの輸入でもしないとまず手に入らない。あれは恐らく、英雄族管理の『聖封印庫』のもんだよ。ヴィランの手に渡るはずがない」
ほう。
僕はピンときて口を開いた。
「じゃあ、封印庫の鍵を持っているのは」
「…英雄族の貴族の中でもさらに権威を持ったやつだろうな」
そこでウィリア厶は気だるげに頭をかいてカイに口火を切った。
「カイ様~ぁ。毒殺が起きた直後、公爵令嬢のセリーヌさんが現場を誰よりも早く封鎖して、その場唯一のヴィランであるカイ様を『第一容疑者』として名指ししたんですっけ?はぁぁ…そんなのまるで、事件が起こるのを知っていたかのような迅速さですよね~」
公爵令嬢セリーヌ…?
何か、怪しい匂いがする。
カイはめんどくさそうにうなずいた。
「普通ならさ、少しは調べるだろ?あの氷血令嬢は最初から俺を疑った」
ゼオスさんは片目を閉じて確認する。
「英雄族で封印庫にアクセスできるのは王族か一部の高位貴族だね。その中でも、セリーヌの家グラディスは管理権を持つ…」
「毒を持ち出せるのは、あいつらくらいだ。……偶然じゃねぇよ」
カイは苛立ったようにため息を付いた。
アヅミは恐る恐るカイに言った。
「それに…、カイ様は過去に氷血令嬢と直接顔を合わせたことがあるんですよね…?」
カイは苦い顔でうなずく。そのリアクションからしてあまりいい出会いではなさそうだ。
「あぁ。俺も思い出した。彼女が街に降りた時『ヴィランは所詮…』と皮肉を言って、鞭打ちをしようとしている様子を俺は見たことがある。すこし度が過ぎた典型的なヴィラン嫌いの英雄族だね」
ライラさんが補足した。
「…俺、やっぱ英雄族嫌い」
カイはそっぽを向いて言う。
ん?
僕はカイの言葉に首を傾げる。
ライラさんたちが最初言っていたこととこれじゃあ辻褄が合わないな。
カイさんは――
「じゃあ、何であの晩、すぐに現場に行ったんですか?」
僕がはっきり尋ねると、カイは一瞬だけ沈黙し、視線をそらした。
「……被害を受けた英雄族のあいつには、昔ちょっと世話になったことがあるからな。放っておけなかっただけだよ。…まぁ結果は間に合わなかったけど…」
苦い顔をするカイ。
「…助けたかった」
「…―――」
これで分かった。大体ね。
カイは英雄族が嫌いだけど、どうしても奥底で優しい面がある。そして情を向ける相手は種族関係ない。
これは、僕が証明するしかないねっ!
僕は椅子に寝そべるカイに視線を合わせてしゃがみこむ。
「その気持ち受け取りました。貴方の潔白を、僕こそが勝ち取ってみせますね」
僕はゆっくり少し勝ち気に笑って檻を握った。
カイは少し沈黙してから「…あぁそう。お前も物好きだな」と言って顔を隠した。
ちょっとだけ安心したように微笑んでいたの、僕は見逃さなかったよ。
「晩餐会、毒殺発生、カイさんが救助……そして、即逮捕っ。ざっくりこんな感じですね」
床に描いた図を指差すと、カイはだるそうに肩をすくめた。
「…まぁ、だいたい合ってるな」
「ざっくりすぎ」とウィリアルが声をあげる。
「あと、毒殺に使われたものは分かりますか?」
僕が質問するとカイはめんどくさそうに答える。
「確か、警備局のやつから聞いたな…。あれは、東の地域から取れる希少な種子マチズを原料にしたやつらしい…。だけどそんなの輸入でもしないとまず手に入らない。あれは恐らく、英雄族管理の『聖封印庫』のもんだよ。ヴィランの手に渡るはずがない」
ほう。
僕はピンときて口を開いた。
「じゃあ、封印庫の鍵を持っているのは」
「…英雄族の貴族の中でもさらに権威を持ったやつだろうな」
そこでウィリア厶は気だるげに頭をかいてカイに口火を切った。
「カイ様~ぁ。毒殺が起きた直後、公爵令嬢のセリーヌさんが現場を誰よりも早く封鎖して、その場唯一のヴィランであるカイ様を『第一容疑者』として名指ししたんですっけ?はぁぁ…そんなのまるで、事件が起こるのを知っていたかのような迅速さですよね~」
公爵令嬢セリーヌ…?
何か、怪しい匂いがする。
カイはめんどくさそうにうなずいた。
「普通ならさ、少しは調べるだろ?あの氷血令嬢は最初から俺を疑った」
ゼオスさんは片目を閉じて確認する。
「英雄族で封印庫にアクセスできるのは王族か一部の高位貴族だね。その中でも、セリーヌの家グラディスは管理権を持つ…」
「毒を持ち出せるのは、あいつらくらいだ。……偶然じゃねぇよ」
カイは苛立ったようにため息を付いた。
アヅミは恐る恐るカイに言った。
「それに…、カイ様は過去に氷血令嬢と直接顔を合わせたことがあるんですよね…?」
カイは苦い顔でうなずく。そのリアクションからしてあまりいい出会いではなさそうだ。
「あぁ。俺も思い出した。彼女が街に降りた時『ヴィランは所詮…』と皮肉を言って、鞭打ちをしようとしている様子を俺は見たことがある。すこし度が過ぎた典型的なヴィラン嫌いの英雄族だね」
ライラさんが補足した。
「…俺、やっぱ英雄族嫌い」
カイはそっぽを向いて言う。
ん?
僕はカイの言葉に首を傾げる。
ライラさんたちが最初言っていたこととこれじゃあ辻褄が合わないな。
カイさんは――
「じゃあ、何であの晩、すぐに現場に行ったんですか?」
僕がはっきり尋ねると、カイは一瞬だけ沈黙し、視線をそらした。
「……被害を受けた英雄族のあいつには、昔ちょっと世話になったことがあるからな。放っておけなかっただけだよ。…まぁ結果は間に合わなかったけど…」
苦い顔をするカイ。
「…助けたかった」
「…―――」
これで分かった。大体ね。
カイは英雄族が嫌いだけど、どうしても奥底で優しい面がある。そして情を向ける相手は種族関係ない。
これは、僕が証明するしかないねっ!
僕は椅子に寝そべるカイに視線を合わせてしゃがみこむ。
「その気持ち受け取りました。貴方の潔白を、僕こそが勝ち取ってみせますね」
僕はゆっくり少し勝ち気に笑って檻を握った。
カイは少し沈黙してから「…あぁそう。お前も物好きだな」と言って顔を隠した。
ちょっとだけ安心したように微笑んでいたの、僕は見逃さなかったよ。
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