輪廻血戦 Golden Blood

kisaragi

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第七章 Lunar Eclipse

第四接触 月が地球の本影から完全に出た瞬間

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 きらきら光る花火。
 街の光。
 まるで見分けが出来なくなりそうだ。

 大きな時計と月が無いならば。

 銀色のセスナは花火の中を飛んでいた。

「なんて地味な引退セレモニーだ」

 操縦席から顔を出したマリリンはヘルメットを投げ捨て落とす。ふわり、と桃色に輝く銀髪が月夜に光った。

「ふざけないで下さいよ。ここまでの段取りにどれだけの手間と借りが出来たと思いですか」

 ユリウスはぼろぼろの甲冑の頭を外した。

 強かった。強いだろう、とは思っていたが、想像は遥かに越えていた。

「やはり、日本のサムライはすごいです。あれは静の剣でした」
「静の剣?」

 マリリンの問いにユリウスは首肯く。

「己の剣など、ただの動き回る動の剣です。その一瞬を見定め、的確に少ない最も効率的な動きだけで相手を仕留めるのが静の剣です」
「それって、つまり暗殺術も同義じゃない」
「ええ。それをあの長刀でやってのけるのです。敵いませんよ。清々しいぐらいには」

 一息吐いてユリウスは花火で彩られた夜空を見た。

「綺麗ですね。日本の花火は初めて見ました」
「全く、あのタヌキめ。鐘よりいいモノがありますよ、ってこれかよ」

 花火のせいで誰もセスナの存在には気が付かない。

「いいではないですか。彼らの望みを叶えるぐらい。女神なんでしょう?」
「そりゃ、妹の望みなら叶えてやりたいさ。……けど、あの男は」
「いいんじゃないですか。納得するまで向き合えば。ま、嫌われても責任取りませんよ」


 ユリウスはカンッとセスナの上に立った。銀色の甲冑の騎士の黒いマントが鮮やかに舞う。

「ちょ、どこ行くんだ! ユーリー!」
「どこって、仕事です。今回の後処理です」

 叫ぶマリリンを無視してユリウスは街のビルを中を飛び去った。

 彼らにとって、生きることと死ぬことは等価値なのですね。
 そこまでの真理に辿り着くまで、一体何年かかったのだろう。


 ロンドンのオフィス街をユリウスは二丁のガンブレードを自在に使い飛び回る。
 後を追う気配が消えないのはこちらを扇動しているのか。

 ユリウスはオフィス街の一角の屋上の上に立つ。半壊したビルの窓のガラスは割れている。
 気配で侍が後ろに立ったのも分かった。

 ユリウスは振り向く。ボロボロの甲冑を外して落とすとコンッと落ちて歪な回転で転がる。

「その殺気、収納は出来ませんか?」
「面白いジョークだ」

 青年は緩やかに刀を抜く。黒く長い刃が月明かりに光った。

「やはり、被り物の正体は君だったね」
「これには、訳が!!」
「良いよ。説明は結構。その体に直接聞くよ!!」

 動きに、迷いがない。
 ユリウスと愁一の距離は約数メートル。一気に積めて来た。速い。一歩、一歩に無駄がなく、飛び最大のショートカットで刃物をこちらに振りかざす。

 当然、ユリウスも持っているガンブレードで対応すべきだ。

 しかし、この刃はあの刀の一撃には耐えられない。盾には成り得ない。ここは交わすのが得策だ。

 月影を利用し、もう片方のガンブレードでフェイントをかける。その一閃に衝突する一閃にユリウスは刃を捨てて愁一の視覚に入った。

 その間、汗が玉になって落ちる。

「やるね」

 月明かりを背にしても黒い袴。所々焦げた白い羽織り。月影に光る真紅の瞳。

 気が付けばユリウスは壁に寄りかかり肩で息をしていた。

「これが……これが刀の屍」

 ユリウスは刃の折れたガンブレードを握る。

 チャンスは一度。

 突くのは油断。

 月明かりが動き、愁一に影が落ちる。

 瞬間、ユリウスは動いた。

 折れたガンブレードの刃で愁一目掛けて突きを放つ。
 その刃は届かない。
 この状態でも微動だにしない殺気には恐れ入る。

 しかし、それだけではない。

 ユリウスは引き金を引く。

 ガシャン、と折れた刃が発射した。

 流石に愁一は驚いたのか、バックステップでこれを交わす。
 やはり簡単には受けない。それは悪手と知っている。相当な手練れだ。
 更に、相手の攻撃した瞬間が一番の油断。
 愁一は迷わず居合いの構えで空気を断つ速さでこちらに向かう。

 鋼の刃では防ぎきれない。

 ユリウスはとっさの判断で引き金を引いて剣を出した。

「なるほど。それが君の血統だね。『名も無き剣士の屍』か」
「ええ。そうです。そういうあなたは、差し詰め『刀の屍』と言ったところか」

「悪くない」

 刀は真っ直ぐ天井に掲げられる。

 光る漆黒の刃は月明かりを反射し、屈折し、その刃は美しい白銀に輝いた。

「申し遅れました。私はユリウス・クリストフォンス。名すらない。過去の武勇を築いた戦士の血統を持つ狩師です」
「俺は断罪の刃。持つのは狂いかけの魂。名は獅道愁一!」

 ユリウスが引き金を弾いた瞬間、ガンブレードを刀の様に構えれば数多の血統が解放する。
 ユリウスはそれを銃弾のように操った。

「いいね! 面白い!」

 それは一閃だった。

 銃弾のように放たれる刃。
 それを一瞬で凪ぎ払ったのだ。

 カンッと刀を振り回し。
 飛んでくる刀は簡単に斬れ。
 なけなしにガンブレードでフェイントをかけても愁一の持つ打刀で弾かれた。

 そんな所にまで仕込みが……と思った瞬間、ユリウスの蟀谷には白銀の刃がユリウスの深緑の瞳を発射し光る。

 その間。ピチョン、と汗が落ちた。

「貴方、俺を殺す気無いですね?」

 月明かりが傾く。

「ご名答。君の事が知りたかったんだ」

 その言葉にユリウスは若干怒りが湧く。
 こちら生きるか、死ぬかの瀬戸際に!!

「あの!!」
「でも、良く分かったよ! 君、凄いねぇ!! 特定の血統がない。いいや、たくさんの血統が操れるんだ」

 売って変わって、愁一は瞳をきらきらさせてユリウスに詰め寄る。

「え、えっと低級なら……ってそういう貴方こそ!! 自分が自分の血統!?」
「え……?」
「無自覚かー!!! 千年を繰り返し生き、刃をも黒く染まった剣士それが貴方です」
「……あ! ねぇねぇ、君も狩師だよね? 王女様のコレって本当??」

 愁一の質問にユリウスの表情は強張る。

「ねぇねぇ、やっぱり女王様って美人? 綺麗? スタイルいい?」
「……まさか、追って来たのって……っていうか知って……」
「安心して! 俺、イギリス防衛、戦闘員担当だから!! 困った時はお任せのLunar Eclipsだからね!」

「じゃあ、何で戦ったんですかー!!」
「趣味!!」
「はぁー!!」

 ユリウスはドン引きで叫んだ。



 Let's meet next night.
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