輪廻血戦 Golden Blood

kisaragi

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第十一章 Month Living In Seclusion

第二夜 立待月

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 これではっきりしたことが一つある。

 何者かが確実に上杉の地上管理プログラムにハッキングしている、ということだ。
 あれから寧斗との連絡は取れない。

 この一件、もしかしたら泉姉妹の魂の消失と何かしら関係があるかもしれない。

 一度上杉の本家に全員集まってはみたが既に内部に侵入されているとなると特定は難しい。
 寧斗を欠いた上杉家は六人となる。祖父、父、尋也、公貴、英治、純太。それぞれ監視に付きまとわれている状態ですっかり窶れている。元々過労だったのだ。

「しっかし、寧斗とはまた微妙なやつを……」

 尋也は頭を掻きながら言った。
 上杉寧斗は俳優だ。上杉家に置いて唯一警察組織に属しておらず、芸能界の監視が彼の仕事だった。上杉家と並べば特徴は金髪の長髪ぐらいでむしろ希薄である。だからこそ色々な役になる事が出来るのだ。本人も本来ならば温厚で家庭的かつ庶民的な性格をしている。影が薄いと冗談で言われる位だ。

「で、兄貴は?」
「あー、俺ね。一応、あんとき調査した刀飾のデータを調べてはみたが実行班の記録が強すぎて無理。桜小路に渡してはみた。そんで、英治の監視は一時解除。代わりにイッチーが側にいるって」
「……この監視地獄は終わらない訳ね」

 公貴は窶れた顔で言った。彼の監視は朝倉宗滴。何でも性格的に相性最悪らしい。同じ眼鏡なのに。しかも同じ雷を起源としているのに。プラスとマイナスのように意見が合わないと嘆いていた。

「参ったのう。こんなこと今までは無かったのじゃが」

 祖父は言った。

「無かった、だけだ。いずれは起こり得た。上杉は永遠ではない」

 そう。地球が、宇宙が、永遠ではないのと同じことである。地球があり、人がいて、生死の概念、天国、地獄が生まれたのだ。永々無窮ではない。ゆっくり、確実に破滅へ向かっているに過ぎない。

 上杉は全員、理解していた。

 我々の管理が永遠ではないということに。

 しかし、世界が先か。上杉が先かは予測不可能だった。
 世界が先ならばそれはいい。世界が滅びれば上杉も滅びる。

 問題なのは逆なのだ。

 上杉の地上管理プログラムが滅びる。
 それは世界の混沌を意味する。
 崩壊でも破滅でもない。

 乱された秩序。

 生死、善悪、地上がありながら地上が滅びる。

 それこそ世界の終末である。


「どっちにしろ、俺らじゃ限界があった。少なくとも『心』っていう概念が付いた時点で公平性は失われる。冥界も我々の存在管理に手をこまねき放置しているに過ぎない」

 英治は言った。だからこそ、本来はもっと組織的だった魂送師を解放したのだ。上杉の権力を最も低レベルの状態まで落としたのだ。

「ま、我々の処罰なんてイッチーにしかどうにも出来ねぇーってのは変わらねぇけど」
「……そんなことをして……イッチーは大丈夫なの?」

 純太の問いに全員が黙る。

 それは分からないのだ。何故なら、今まで誰一人としてそんなことをした人間はいないから。

 獅道愁一は既にその因果に絡まれ、ただの善悪の判断の域を越えた存在である。

「普通の人として生きて、死にたい……か。なんつう、願いだ。そんな……そんなことすら……」

 尋也は言った。普通の人間が、本来ならば普通に与えられる権利。

「嘆いても仕方ねぇ。今回は確かにイレギュラーだ。しかし、まだ我々は地上管理プログラムとして機能している。している以上、最悪の結末だけは避けなければならない」
「早急に刀飾の発見と追放か」

 英治は頷いた。

「やれやれ、困ったもんだ。我々一族、どうしてこうかねぇ。もっと適当に生きれれば苦労はしなかったろうに」

 祖父は言う。

「結局、人間が好きなんだろ」


 だからこそ、中途半端には出来ない。



 英治の通信用のネクタイピンから通信が入る。

『済まない。上杉寧斗の担当をしていた一ノ宮月臣だ。そこまで来ているのだが、訪問して構わないだろうか?』

 玄関のチャイムの音が鳴った。



「いや、中々壮観」

 月臣は相変わらずだ。上杉全員を前にしても臆することなく堂々と一席に座る。
 そして潔く謝罪した。

「まず、こちらの不手際を謝罪しよう」

 彼は卓上に円形のネクタイピンを置いた。様子を見るに全魂送師と繋がっている。

「そうは言っても、君は寧斗とそこまで仲が良かった訳でも知人だった訳でもないのだから……」

 公貴は気不味い様子に見かねて言う。

「それは言い訳だ。確かに俺は上杉寧斗という存在を見くびっていた。他に監視すべき刀飾の生き残りが居たからだ。それも言い訳だ」
 月臣は神妙な面持ちで言う。
「……他に?」
「五十嵐逢瀬。彼女の姉は刀飾で上杉尋也により捕まっている」
「……ああ、あの歌手の妹か!!」

 尋也は叫ぶ。

「そうだ。彼女は何故か俺に対して異常な執着があった。それが刀飾と関係しているのか、ただ単に彼女自身の意思なのか判断しなければならなかったんだ」

 月臣は憂いを帯びた表情でお茶を飲んだ。

「先輩の人間不振が加速してしまいましたね」

 月臣を知る英治は頷いた。彼は本来ならばとても注意深い。一時、彼の従者が戻ってからはしばらく安楽に教師をしていたと桂一は言っていた。しかしその表情を見るに気苦労が伺える。

「それはいい。しかしどうにも判断が難しくてな。彼女自身でさえ分からないと言われてはどうしようもない」
「分からない? って、聞いたんすか?」
「聞いたとも。ストレートに。君の俺に対するその執着は何処から来ているのか。純粋な好意か。それとも邪心か。それとも別の何かか」

 その余りの堂々とした言葉に流石の上杉も全員黙る。

「本来、好意ならば応える気は無かった」

 つまり、五十嵐逢瀬は告白する前に告白され、告白する前に振られたことになる。

「な、……何故ですか?」

 一応、英治は尋ねた。今回が原因で一人の女性が失恋したとなるとそれはそれで申し訳ない。

「何故だろうな。彼女の瞳から本来ならば感じる愛情を感じなかったからだ」
「愛情……」
「愛情と執着は違うと思うからな。俺に執着することで存在意義を見出だしていたのであればそれは恋愛ではない。愛情とは時に別れを受け入れるものだ。追うだけではない」
「そ、……それ、言ったんすか? 本人に?」

 月臣は首肯く。


「本人はしばらく呆然としていた。しかし、数分考えて言った。じゃあ、恋愛とは何か、と」


 その言葉に全員黙る。

「先輩は何て?」
「その言葉が出る時点でそれは恋愛ではない、としか言えなかった。俺とて詳しい訳ではない。何かを慮る心が恋だと説くのは簡単だ。しかし簡単ではないのが愛、恋だと思うが、違うか?」
「いいえ。先輩は何一つ間違えていません」
「結局、彼女を白か黒か判断するにまでは至らなかった。同時に日々、姿、形が変わる上杉寧斗の本質を見抜くことも不可能だった」

 明らかに、月臣に対して与えられた責務が多すぎる。誰が彼を責めるのだろう。確かに彼は優秀で注意深い。更に賢く、物事の側面を見る力もある。

「寧斗兄さんの本質は分からない。それは家族、いえ、同じプログラムの我々ですら分からなかったのです。先輩の責任ではありません」
「いいや。俺が心から上杉寧斗を信用していなかったからこうなったのだろう。だからこそ、彼は愁一という保険を付けた。君たちが信じていた上杉寧斗は確かにあったはずだ」

 耐えられず、といった様子で尋也が立ち上がる。

「……分かった。何がどうあれ、俺らはアンタを恨みもしないし、蔑みもしない。謝罪も求めない」
「……は?」

 月臣は海色の瞳を大きく見開いた。

「何故だ?」
「……な、ぜ、だー!? どういう性格してんだ、コイツ!!」
「先輩はそういう人です」

 何かが尋也の琴線に触れたらしく、尋也は月臣の胸ぐらを掴んだ。

「アンタ、アンタなぁ!! 何で俺らがアンタを怒れる!! お前は何一つ間違ってねぇよ!! 良く頑張りました! むしろ迷惑かけてごめんなさい!!」
「……え??」

 月臣はきょとーん、と尋也を見上げた。

「だから、そもそも俺が安易に刀飾に関わったのが原因だろうが!! お、れ、ら、が、アンタに迷惑かけてんの。そこ分かってる?」
「いや、そもそも刀飾の調査は必要だっただろう? 責める方が筋違いだ」
「ちっがーうの!! どんだけいい子ちゃんか、コイツ!!」
「何だと!?」
「……月からの来訪者よ」

 尋也は急に声色を変える。

「……はい」
「貴殿の行いは今日に至るまで何一つ穢れていない。美しく潔白です。我々一族に誠意に尽くし、その正義を貫いた。何故、咎めるのでしょう」
「……はい」

 月臣は相変わらず、驚いた様子で尋也を見つめている。

「今回の不手際は我々の不手際です。貴方の責務ではありません。よって、今後、このことに関して謝るな。申し訳ねぇ、とか自分のせいで、とか何か思ったら容赦なく殴るからな!!」
「……はい。……えぇえええ???? それは困る。俺はここに謝罪しに来たんだぞ……っ痛!!」

 尋也は容赦なく月臣をぶん殴った。

 英治から見るに、どうにも尋也は尋也で己の行動に責任を感じていたらしい。確かに刀飾を調査するには安易だった。あの時、愁一の力が完全に復活したことで油断していた。
 捕獲した刀飾に対する措置が甘かったのは確かなのだ。

「え……どうして俺は殴られたんだ?」
「先輩は何も悪くないのに謝罪したからです」
「む……そうなのか?」

「そうなの! お前、教師だな? 桂一の後輩ってことだな、あの野郎!!」
「ちょ、いたい! いたい!」

 今度はデコピンだ。よっぽど尋也の堪忍に触ったらしい。不思議な組み合わせだ。

「いい子ちゃんなのは結構。だけどな。その自虐的性格は問題あるぜ。自分が悪いとして他人を許せば済むと思うなよ!!」
「な、何故だ……」
「な、ぜ、だー!? それは甘やかしているのと同じだ。罪を罪とせず罰していないのと同じだよ!! 結局本人の為になってないんだよ!!」
「……本人の為になってない」
「そうだ。アンタはその時、救われるかもしれない。善人だと誰しもが思うかもしれない。だけどな、それだけじゃ駄目なの。アンタはいい子ちゃんだから余計に分からないんだよ」
「……それは……そうなのか」
「そうなの。悪いことは悪いって叱らないのも問題ある訳。分かるだろう?」
「それは……分かるが」
「もう、今回のことはどうでもいい。誰が悪いかなんて陳腐な話をしている場合じゃねぇんだよ。分かったか?」
「……はい?」

 月臣はまだ首を傾げていたが、渋々頷いた。

「……駄目だ、こりゃ。コイツ、何て言ったっけ?」
「一ノ宮月臣先輩ですけど」
「何でこんななの?」
「おそらく、先輩はいい人過ぎるので性格に問題があると誰も分からなかったのではないかと」
「ふーん。お前も分からなかった、と」

 英治は頷いた。

「よし。担当変更。コイツは俺。桂一はどっか好きにさせとけ」
「え……えぇえええ!???」
「俺が徹底的に悪とはなんたるかを教えてやる」
「それはいいけど、無駄だと思うぜ」
「何で」
「尋也と一ノ宮先輩は簡単に言えば火と水。相性的問題」
「いーや、絶対にお兄ちゃん的教育が必要だ!!」
「……好きにすれば」

 英治は思った。つまり、あれだ。不良と優等生。お互いに理解しあい、友情たる何かが生まれるとは到底考えられない組み合わせだ。
 しかし、ここで放置して更に月臣の自虐的性格と人間不信度が増してもそれはそれで困る。今回は著明に出てしまったが、本来ならば月臣はもっと豪胆だし堂々とした性格をしている。今回のことを多少でも己の不手際だと思っているのならばしばらく尋也に任せるのはありだろう。


 しかしそうなると結局、尋也に苦情が来るのは間違いない。月臣を慕う人は多い。桂一にしても、月臣の従者にしてもそうだ。

 当然、尋也と桂一は喧嘩した。
 藤堂高校職員室。月臣を挟んで左右で真っ向から完全対立である。

 そもそもこの二人、同年代かつ地位にしても近いのだが仲が悪い。相性以前の問題として。

「貴方が彼を咎める権利など無いと思いますが」
「そーやってお前が甘やかすから駄目なんだよ!!」
「いいえ。貴方の数百倍は善人です。咎める理由がありません」


 さて、このやり取りも何度目だろうか、と月臣はコーヒーを飲んだ。月臣にしても、もう気にした所でどうにもならないのでどうとも思っていないのだ。その人間不信と自虐的性格を直せと言われるとそれはそれで困る。元々持っている本人の資質なんてそう変わるものではないし、月臣が思う今一番近くにいて大切な従者であるみさきに何かを言われたことは一度もない。自身の生徒に苦情が来たこともない。しかし、確かに尋也の言うことも分からなくはないので心に止めて置こう。

「と、いうことでいいかな?」

『はぁ!?』

 もう二人の言い争いは当人同士の問題だ。

「つまり、善所しよう。もうそのことに関してどうこう言うことはどうでもいいと思うのだが」
「……どうでもいい」
「どうでもいい」
「……聞いたか、桂一!! ツッキーがどうでもいいだって!!」
「……私も少し驚きました」

「……え?」

 何故、二人に驚かれているのか月臣には理解出来なかった。

「私が思うに、貴方はもっと気にしているのではないかと思っていました」
「してはいたが、自分がどうこう言うことを他人がどうこう言っているのを見るとどうもどうでもいい気がしても来るのだが」
「……何ソレ」
「ま、とにかく今回は君たち上杉が早く安楽になるよう尽力しよう」

 窓から月を眺める月臣の表情はとても穏やかだった。

「アンタ、帰りたい、とか思わないの?」
「……ちょっと! 何てことを聞いて……」
「ないな」

 月臣は言い切った。

「この地に来て何年経ったかも忘れたが、帰りたいと思ったことはない。この地はとても鮮やかでいい。しかし、君たちは俺を神だ何だと言うがただのよそ者だ。侵略者だ。昔から、君たちは俺に対して何かを願う。崇める。祭る。不思議な話だ」

 その月臣の言葉を聞いて、尋也は色々と諦めた。もう性根が違うのだ。何故、彼が侵略者ではなく神として崇められるのか分かっていない。

「そういう性格だから、みんなアンタが好きなんだろうよ」
「……ん?」
「そういうことですね。そもそも、貴方はこの地に来たときに、滅ぼそうと思えばこの地をどうとでも出来たのです。しかし、それをしなかった」
「そう言われても……必要無かったしなぁ」
「それだけ邪心がなけりゃ、神にもなるさ」
「……ん????」

 関わることを一度辞めて、離れて。自分たちの責任から逃れようとしたが結局これだ。
 尋也は溜息を吐く。

「結局、英治の考えてることって我々上杉共通の認識なんだよ。もー疲れた」
「その様だな。気持ちは分からなくはない」
「さて、どうなることでしょうね。確かに、このままの状態が永遠と続くとは考えがたい」
「全ては獅道愁一に委ねられる。しかし、彼が己一人の願いを願うような性格ならばいいが」
「自分だけが救われる。そんな願いをイッチーがするとは思えねぇんだよ」


「したって構わない。それだけの罪を彼は背負ってしまっているのに」



「それは……君たちが一周回っても善であり中立であるからだろう。その一部である我々も当然そうなのさ」

 月臣は月明かりの下、上杉尋也、そして鳩里桂一を見ていった。その姿は正しく月の使者と呼ぶに相応しい。


「……は?」

「分かっていないな。確かに君たちは地獄によって作られた。人ではない。しかし初めから心が無かったとは思わない。ケイ嬢はきっかけなのさ。君たちは今、この地上をバランスを崩さぬまま維持するプログラムとして最も相応しい心を持っていた、というだけだ。君たちの言う通りこれは決して永遠ではない。俺の命が永遠ではないように。しかし、その滅びの先は我々が関与する所ではない」

「……そうかもな」

 尋也は否定しなかった。
 確かに、滅び、そして新たな何かが生れたとしてもそれは今を管理している上杉の管轄外になる。その世界が超宇宙であろうが、超未来であろうが、魔法が存在しようが。もうそれは知った世界ではないのだ。

「いつか来る、滅びを受け入れる覚悟があり、尚今を管理するその決意、確かに確認した」

「……何」

「言っただろう。俺、ないし我々は上杉の安泰な管轄の普及に善所する、と」

「……上杉寧斗の居場所が分かったのですね?」
「当然。しかし、少し厄介だぞ。上杉家全員に言えるがな」
「分かった? いつの間に……」
「月の使者を舐めてもらっては困る。月の光とは何処にも平等に降り注ぐのさ」

 一羽の烏が彼の肩に止まる。三本の足の烏が。

「確かに獅道愁一は決断する。しかし同時に君たちも受け入れる覚悟をしなければならない」
「……その決断、をか」

「その通り。それが死であっても、生であっても」

 海色の瞳は深く、波紋さえ見えない水の底の様だった。上杉尋也はやれやれ、と月臣を見つめる。管理している気ではいたが、むしろ逆だったな、と今更思った。上杉尋也は丁寧にその使者に膝を付いた。

「ええ。どんな決断であれ、我々上杉は受け入れましょう」
「そうか。上杉が受け入れる、ということは我々も受け入れるということだ。間違いないな? 桂一」

「構いませんよ。私は元々どうなろうと良かったのですから。私は私として存在する意味があるのなら、どこかなんて些細な問題です」
「結構。上杉寧斗の居場所を提示しよう。君たちが君たちを疑い合い、殺し合いの始まりだ」

「……なん、」

「何故ならば、君たちは『個』であるがゆえ、『個』を信用出来ない。刀飾が逃げたのは結局上杉のサーバーなのさ」

「考えましたね。さすが、自らの滅びを利用して管理サーバーに侵入するとは」
「伊達に刀飾ではない、ということだ。つまり本当に君達は甘く見過ぎていたな。刀飾が上杉と同じようにして違った管理プログラムを展開する時間はもうほどんどない」
「……ちょっと待って、それはどういう……」
「偽造管理プログラムだ。どうやら、君達が本来持つプログラムをベースに作られた現代プログラム。つまりこれだな」

 月臣はコン、とパソコンを叩いた。

「なっ……だって!!」

「俺はコレについて詳しくないから、どこまで偽造したのかは分からない」
「それにしても、インターネットを利用するとは痛い手段ですね。インターネットはそれこそ宇宙のような情報量です。そこから刀飾という個人プログラムの発見なんて全人類総動員しても不可能です」

「寧斗は……」

「あらゆる人格の核として利用されている可能性が高い。つまり、上杉英治、及びあの指輪は囮だったのさ。おそらく、何かしら動きがある。泉姉妹は発端だ。全人類をコレで管理するような、何か大きな影響が」

「それを……止める方法は……」
「どう発動するかが分からない以上、発動の阻止は難しい。今の人類は皆、平等にコレと繋がる手段を持っている。鏡一狼と考えたが、発動してから内部侵入して叩く方法しかない。上杉の強制遮断が弱っている以上、愁一に頼んでその癌を削除する方法他ない」


「……マジか」


「全、人類をかけた全面大戦の始まりだな」
「最悪、最後の手段が桜小路による自爆とはなんたる皮肉な……」
「それ、本人も言っていたぞ。怪しいのは世紀が変わった瞬間に発動する全人類保管管理プログラム」
「そりゃ、完全警察管轄外の小企業がやっていたプログラムだろう?」
「刀飾のバックアップで急に企画が拡大化したと考えるなら頷ける。全人類の血による情報保管。上杉の偽造管理プログラムと同類となるだろう。生徒の間で流行っているよ。献血ついでに、って話でね」

「我々に関与されながら、そこまで調べていたのですか?」
 桂一の言葉に月臣は頷く。
「当然だ。今回の失態の一部に俺の上杉寧斗の管理ミスがあるのだから。ただのんびり君達の喧嘩を眺めていた訳ではない。みさき、規模は?」

 烏は青年の姿に戻る。

「不味いっすね。若者を中心にかなり広まってます。烏天狗組を使って調べましたが、本来ならインターネットがそこまで普及していない田舎でも携帯電話を持っていない学生はいませんし」

「だ、そうだ。もう合戦は目の前だ。今はどう相手が動くか見定める方が重要だ。俺の個人どうこうの話の前に」
「……仰有る通りです」

 月臣は尋也と同じ目線の高さまで屈む。

「ま、そういう所が我々が君達上杉に加担する理由なんだがな」

 してやったり、という様子で月臣は片目を瞑った。




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