穢れの螺旋

どーん

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可哀想な村娘

第13話 - 村娘

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翌日

結局宿は10連泊で様子を見る事にした
本来朝食と風呂つきで一泊銀貨200枚くらいらしいが金貨一枚で朝食と風呂つきの一番良い部屋をそのまま使っていいと言ってくれた

そんなに安売りしていいのかと聞いたがそもそもそんな高い部屋に泊まる人がそうそういないらしく普通は朝食も風呂も無しで狭い部屋の銀貨50枚なんだそうだ

今朝リンネが朝食に呼びに来ると見知らぬ娘がもう一人いた

「エーサーさん、今日はあたしの友達が来てるの」

友人の娘はそばかすのあるタレ目の小さな背丈の女だった

「初めまして、あたしクベアと言います。リンネに連れてこられちゃって…」
「なっ…あんたが話聞いたら会ってみたいって言ったんじゃないの~。もしかして照れてる?」
「ちょっとやめてよリンネ」

初々しい娘だ
冒険者に憧れを持った村娘というところだろうか、俺もそういう時期はあった
夢を壊さないといいが

「俺はエーサーだ、昨日冒険者になった。よろしく」
「あ…はい。こちらこそ…」

クベアは顔を赤らめ解りやすい反応をする娘だった

「せっかくだから一緒に朝食でもどうだ?リンネも。お代は払う」
「え!?いいんですか?やったー!クベア、あんたも手伝って」

二人はパタパタと厨房に降りて行った
それから二人のの話を聞きながら朝食を食べ、オークを倒したときの話をした
二人は同じ年で18歳、俺のオークを倒した話を食い入るように聞きながら
すごいすごいと目を輝かせて聞いていた

正午を過ぎる頃クベアと冒険者ギルドへ報酬を取りに行くと金貨4枚を受け取った
解体費を差し引いた額だそうだ
それもクベアは卒倒しそうな顔をしながら冒険者ってすごいと言っていた

この街では一日働いてクベアは銀貨50枚ほどだそうだ
そう思うと冒険者の稼ぎは命を賭ける分随分割高だ
銀貨は1,000枚で金貨1枚というのもクベアに教わった
流民時代はお金など持ったことがなかったので知らない事ばかりだ

ギルドから報酬をもらった後は兵器ギルドへ向かった
クベアはもう当たり前のようについてくるようになった

ハーベイが俺に気づくと義手を携えて寄ってくる

「今日はお嬢さんを連れて散歩かい?片腕無くてもいい男はモテるんだねぇ」

クベアはわかりやすく顔を赤らめそっぽを向く
そんなに俺が気に入っているんだろうか?今日が初対面だろう

「ほっとけ、義手を着けてみたいんだが」
「おぉ、早速着けてくれるか。これだ」

左肩までかかる革の紐を着け、右腕の肘までかかる義手をはめ込んだ
義手は四本の支柱を使ったリング状の筒に鉄の板を何枚も張り合わせた手の甲
いくつもの杭で支えられた指がついている

結構精巧な作りだ

「サイズは丁度いいようだな。昨日言った通り指は動かせない」
「それでいい。義手に印を入れたい、この形の印を腕の内側に彫ってくれ」

オークシャーマンの呪印の書を取り出し、操作の印を見せた

「なんだこりゃ、文字もなんて書いてあるかわかりゃしない。あんた魔法の心得があるのか?」
「いや、これはオークの呪印だ」
「オーク!?あんたオークの言葉がわかるのか??」
「縁があってな、オーク狩りをするのに役に立つ」

ハーベイは初めてそんな事をする人間を見るようで大げさに驚きながら話しを進めていく

「へぇ~、一日で五匹もオークを狩る男は違うねぇ、オーク語で何するんだい?」
「五匹で噂になってるのか…オークの言葉が解れば拠点の位置なんかも聞き出せるし拷問もできる」
「はぁ~…考える事が違うねぇ。まぁ俺には関係ないから好きにやってくれ。印はすぐ刻むから少し待て」

お前が興味深そうに聞いたんだろう…
操作の呪印がどこまで効くのかわからないが彫ってもらったら早速試そう

◆ ◆ ◆

呪印を刻んだ義手を貰い、宿に戻る
操作の呪印の項をよくよく読んで使い方を学ぶ

「《操作の呪印は刻んだモノの操作を可能にする、考えただけで物体を操作することができ、近い物ほど操作する力が強くなる。呪印の力を強化するためには人間の血を垂らし、乾かすと定着する》」

フルーフと戦った砦の司祭も狂戦士の呪印と儀式って言ってたな
血を使う事で呪印が強くなるのか

俺の胸に刻まれた呪印もあの時はフルーフの血によって強くなったんだろう
強力な力を発揮することができたが強烈な飢餓感と抑えようのない怒りは扱いに困る
どのように扱うべきなのかヒントが無いかと狂戦士の呪印についても調べた

どうやらフルーフは嘘をついていたようだ
戦意高揚の呪印だと言っていた気がするが実際は狂戦士の呪印だった

「《狂戦士の呪印は印すだけでは効果を発揮しない、呪印に血を飲ませ呪印の主にも血を飲ませる事で一時的に飛躍的な筋力の向上と再生力の向上、痛覚を取り除く効果がある。女の血を吸わせることでより強い力を発揮する》」

フルーフは死ぬ気でいたんだろうか…まるで自分が死ぬことを知っていたかのような仕組みだ。あの強い憎悪は何が彼女をあそこまで駆り立てたのだろうか
俺を狂戦士として、自分の血を飲ませる事を想定してまで殺したい相手だったようだ

フルーフの事を思い出して悲しくなった
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