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聖騎士と異端者
第34話 - 粛清
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数日後、テオドール伯が捕まった
かどわかしの現場を押さえたことを口実に強引に家宅捜索を行ったところ、屋敷の地下に幾人もの神隠しにあった人々が囚われていたそうだ
テオドール伯は絞首刑となりヤニク家は貴族の地位を剥奪された
フレデリクがテオドールに聴取を行ったらしく、内容を聞いた
黒幕はわからなかったがオークと会話が出来るものを屋敷に雇わせ
行方が分からなくなった奥方の手がかりを見つけるために協力し、神隠しを計画したそうだ
たまに現れる男の指示通りに人を見繕い、馬車で約束の場所へ降ろす
そうやってオーク達との関係を築いて情報を得る計画だったそうだ
だが結局奥方の居場所はわからなかったらしい
利用されるだけ利用されて捨てられる、可哀想な男だった
聖騎士ギルドの応接室でフレデリクから報告を聞き、部屋を出るとオーレオンが俺を探していると呼び出された
オーレオンの屋敷に行き、応接室へ案内されると大鎧を着た男が待っていた
「エーサー、先の廃墟奪還は見事な腕前だった」
「どうも」
「貴殿の腕を見込んでもう一つ頼まれて欲しいのだがどうだろうか?」
聖騎士の最高権力者が直々に?ギルドを通せばいい話だろう
「テオドール伯の悪事を暴く手伝いをしたそうだな」
む、オーク語が喋れるという事がバレたのか?
「取引の記された小箱を聖騎士ギルドに提出したと聞いた、貴殿は目端が利くようだ」
なるほど、フレデリクがうまく伏せていてくれてるな
「たしかに、提出した」
「これはまだ私と側近たちしか知らない情報なんだが、西の遺跡に住むオーク達がいる。そこでも似たような小箱が発見された」
「なるほど、殲滅すればいいのか?」
「フッ…貴殿は強いな。そんなことを軽々と言える者は王都にはおらん。察しの通り西の遺跡にも取引があるのならばオークどもが増えるのは目に見えている。増えすぎて手に負えなくなる前に叩いてほしい」
最高権力者がその事実を知っているなら軍を派遣すればいいだろう
「最高権力者が掴んでいる情報ならなぜ自分たちで出ないんだ?」
オーレオンは目頭を押さえ、首を振る
「痛いところをつく…軍を動かすにも理由が必要だ。部下を死地に向かわせるのだから、それが貴族のしでかした後始末と知れば貴族たちへの信頼が崩れる。先日粛清したばかりで既に貴族と聖騎士の信頼関係が悪くなっている、これ以上悪くすることを避けたい」
気に入らんな
取引があり、遺跡に住み、軍が派遣できない
明らかにジェネラルクラスがいるだろう、そんなものを俺一人に任せるのか?
やってやれない事もないだろう、数を減らすくらいなら同士討ちさせればいい
だが部下を死地に向かわせる事ができなくても俺ならいいという態度が気に食わん
「俺ならいいという事か」
オーレオンはうつむいた
「気を悪くしないでくれ、聖騎士というものは国の資金と献金で運営されている。国の資金は貴族たちが捻出しており軍備の約9割が国の資金頼みだ、貴族との関係が悪くなると軍を維持できなくなってしまう。そうすればオーク討伐どころではなくなってしまうのだ」
なるほどな、貴族たちが聖騎士たちの軍備縮小を望んでしまうような事にならないようにしたいわけか
政というものだな
俺には関係ないが、話の筋は理解できる
「事情は理解した、まずは数を減らし弱らせる。時間がかかるぞ」
「構わない、結果的に数を間引けるなら殲滅などしなくともよい。貴殿は優秀な人材だ、命を大事にしてくれ」
死地に一人で向かわせたかと思えば命を大事にしろと言う
よくわからん男だ
◆ ◆ ◆
宿に戻り、マドロアと話をした
遺跡のオーク討伐参戦について
正直に言うと居てくれるほうが楽だしいざというときの回復も含めて飛躍的に楽になる
だが彼女は女だ、戦う力もそう高くない
捕まれば間違いなく穢されるだろう
だからこそ今回は彼女を参加させたくない
「マドロア、西の遺跡のオークを討伐することになった。君はついてこなくていい」
マドロアは戸惑い、激しく抗議した
「なぜですか!?足手まといだからですか!?」
後方支援としては優秀だ。野営だというのに調理されたパンが食べれるのは彼女のおかげだ
野営の準備や罠の作成などやってもらえることはいっぱいある
だが守り切れるかどうかと言われると不安なのだ
オルレオン皇国西の遺跡は広大で街が二つ丸ごと入ってしまうほど大きい
偵察や戦闘に赴く時間も当然多くなり、野営地を開ける時間が長くなる
オークの数も膨大だろう、一人でいるところを狙われる可能性だって十分にある
修道院で穢れた女たちの行く末を見た今、とても連れていける気になれない
穢されれば、君が望むなら俺は君を殺さねばならないんだぞ
「自覚はあるんだろう?」
マドロアは顔を紅潮させ、全身に力を入れ黙り込む
恥と裏切りと怒りをその目から感じる
「どうしてそんなことを言われるんですか!私だって今まで支えて来たじゃないですか!戦えなければ必要ないという事ですか!」
「自分の身を自分で守れないなら、今回はやめておけ」
マドロアは怒りに震えた後、静かに席を立って部屋に戻った
かどわかしの現場を押さえたことを口実に強引に家宅捜索を行ったところ、屋敷の地下に幾人もの神隠しにあった人々が囚われていたそうだ
テオドール伯は絞首刑となりヤニク家は貴族の地位を剥奪された
フレデリクがテオドールに聴取を行ったらしく、内容を聞いた
黒幕はわからなかったがオークと会話が出来るものを屋敷に雇わせ
行方が分からなくなった奥方の手がかりを見つけるために協力し、神隠しを計画したそうだ
たまに現れる男の指示通りに人を見繕い、馬車で約束の場所へ降ろす
そうやってオーク達との関係を築いて情報を得る計画だったそうだ
だが結局奥方の居場所はわからなかったらしい
利用されるだけ利用されて捨てられる、可哀想な男だった
聖騎士ギルドの応接室でフレデリクから報告を聞き、部屋を出るとオーレオンが俺を探していると呼び出された
オーレオンの屋敷に行き、応接室へ案内されると大鎧を着た男が待っていた
「エーサー、先の廃墟奪還は見事な腕前だった」
「どうも」
「貴殿の腕を見込んでもう一つ頼まれて欲しいのだがどうだろうか?」
聖騎士の最高権力者が直々に?ギルドを通せばいい話だろう
「テオドール伯の悪事を暴く手伝いをしたそうだな」
む、オーク語が喋れるという事がバレたのか?
「取引の記された小箱を聖騎士ギルドに提出したと聞いた、貴殿は目端が利くようだ」
なるほど、フレデリクがうまく伏せていてくれてるな
「たしかに、提出した」
「これはまだ私と側近たちしか知らない情報なんだが、西の遺跡に住むオーク達がいる。そこでも似たような小箱が発見された」
「なるほど、殲滅すればいいのか?」
「フッ…貴殿は強いな。そんなことを軽々と言える者は王都にはおらん。察しの通り西の遺跡にも取引があるのならばオークどもが増えるのは目に見えている。増えすぎて手に負えなくなる前に叩いてほしい」
最高権力者がその事実を知っているなら軍を派遣すればいいだろう
「最高権力者が掴んでいる情報ならなぜ自分たちで出ないんだ?」
オーレオンは目頭を押さえ、首を振る
「痛いところをつく…軍を動かすにも理由が必要だ。部下を死地に向かわせるのだから、それが貴族のしでかした後始末と知れば貴族たちへの信頼が崩れる。先日粛清したばかりで既に貴族と聖騎士の信頼関係が悪くなっている、これ以上悪くすることを避けたい」
気に入らんな
取引があり、遺跡に住み、軍が派遣できない
明らかにジェネラルクラスがいるだろう、そんなものを俺一人に任せるのか?
やってやれない事もないだろう、数を減らすくらいなら同士討ちさせればいい
だが部下を死地に向かわせる事ができなくても俺ならいいという態度が気に食わん
「俺ならいいという事か」
オーレオンはうつむいた
「気を悪くしないでくれ、聖騎士というものは国の資金と献金で運営されている。国の資金は貴族たちが捻出しており軍備の約9割が国の資金頼みだ、貴族との関係が悪くなると軍を維持できなくなってしまう。そうすればオーク討伐どころではなくなってしまうのだ」
なるほどな、貴族たちが聖騎士たちの軍備縮小を望んでしまうような事にならないようにしたいわけか
政というものだな
俺には関係ないが、話の筋は理解できる
「事情は理解した、まずは数を減らし弱らせる。時間がかかるぞ」
「構わない、結果的に数を間引けるなら殲滅などしなくともよい。貴殿は優秀な人材だ、命を大事にしてくれ」
死地に一人で向かわせたかと思えば命を大事にしろと言う
よくわからん男だ
◆ ◆ ◆
宿に戻り、マドロアと話をした
遺跡のオーク討伐参戦について
正直に言うと居てくれるほうが楽だしいざというときの回復も含めて飛躍的に楽になる
だが彼女は女だ、戦う力もそう高くない
捕まれば間違いなく穢されるだろう
だからこそ今回は彼女を参加させたくない
「マドロア、西の遺跡のオークを討伐することになった。君はついてこなくていい」
マドロアは戸惑い、激しく抗議した
「なぜですか!?足手まといだからですか!?」
後方支援としては優秀だ。野営だというのに調理されたパンが食べれるのは彼女のおかげだ
野営の準備や罠の作成などやってもらえることはいっぱいある
だが守り切れるかどうかと言われると不安なのだ
オルレオン皇国西の遺跡は広大で街が二つ丸ごと入ってしまうほど大きい
偵察や戦闘に赴く時間も当然多くなり、野営地を開ける時間が長くなる
オークの数も膨大だろう、一人でいるところを狙われる可能性だって十分にある
修道院で穢れた女たちの行く末を見た今、とても連れていける気になれない
穢されれば、君が望むなら俺は君を殺さねばならないんだぞ
「自覚はあるんだろう?」
マドロアは顔を紅潮させ、全身に力を入れ黙り込む
恥と裏切りと怒りをその目から感じる
「どうしてそんなことを言われるんですか!私だって今まで支えて来たじゃないですか!戦えなければ必要ないという事ですか!」
「自分の身を自分で守れないなら、今回はやめておけ」
マドロアは怒りに震えた後、静かに席を立って部屋に戻った
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