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2章-3節. ヘルデス家の争族を切り抜けた私は…
1.樹海へ食料調達に向かいます。
しおりを挟む先日、ヘルデス家の争続に巻き込まれた私は、テルマ達の協力もあって無事にヘルデス邸を脱出した。
その後、夕食後のティータイム中に以前受け取っていたブローチの秘密を知り、先代当主のマサール・ヘルデスさんの思惑によってヘルデス工房とヘルデス家の全財産を相続することになってしまった。
当然、この事をヘルデス家の人間が了承する筈もないので、ほとぼりが冷めるまで……差し詰めヘルデス家の連中の貴族としての権威が失墜するまで屋敷に籠る事にした。
幸い、ヘルデス家の人柄とオルブが仕掛けた例の策のお陰で割と直ぐにほとぼりは冷め始めて来た様だ。
とはいえ、まさか3日間であそこまで失墜するとはね。
どれほどかは………差し控えさせてもらおう。
「………よし、こんなもんか。」
そして、ここはニルフォバルト樹海。早朝のため、普段より薄暗い。
オルブ経由でほとぼりが冷めて来た事を聞いたので、薬草や食材の採取をするために樹海へと来た。
先日の一件でマサールさんから遺産を受け取ったとはいえ、そう簡単には使えない。
換金や両替をすればそこから足が付くからだ。
金貨なんてそこらで見かける様な通貨じゃない。学生がそんなもので買い物をしていれば金の出所を疑われるのは必然と言えるだろう。
しかも、切羽詰まっているヘルデス一族が血眼になって消えた遺産を探している今は特に疑われやすい。
疑いが晴れたばかりなのにまた疑われるなんてまっぴらだし、後がない連中が手段を選ぶとは到底思えない。
現に、とち狂った暴漢が学園に押しかけたなんて話もオルブから聞いた。
本来なら、こうして外に出るべきではない。それはわかっている。だが、そうもいかない事情というものがあるのだ。
別にしばらく食わなくてもわたしは大丈夫だ。だが、カンナやテルマにまでヒモじい思いをさせるわけにはいかない。
それに、例えこの樹海で連中と遭遇したとしても、対処は充分に可能だ。樹海で行方不明になっても、誰も不思議に思わないからな。
遺産の用途や換金方法はそのうちどうにかするとして、またしばらくは森の恵みにあやかる生活となりそうだ。
「テルマ、そっちはどうだ?」
「ぼちぼちってとこだ。」
そして、今日はテルマにも手伝ってもらっている。
理由は2つある。一つは、この所『ヘルデス工房』に篭もりがちで不摂生だなと感じたから。
「それにしても、(キョロキョロ)全然魔物を見かけないな。」
「油断するなよ?いつ現れるかわからないからな。」
「わかってるって。」
もう一つは、今までカゴのトリだったであろうテルマにとって、こうして過ごす日々が、いい経験になれば……と思ったからだ。
かつての私が、そうだった様に。
「てか、心配すんなよ。おれも何度かこの森に入った事あるから。」
「えっ?そうなのか?」
箱入りかと思ったけど、存外やんちゃなのかもしれない。
「けど、それにしちゃぁ……警戒心が無いように思えるけど?」
「いや、まぁ……そう見えるか……ははは……」
「繰り返すが、こうして話してる間に襲われる事だって……」
…………おかしい。明らかにおかしい。
「(ガシッ)テルマ、(ヒョイッ)直ぐに引き上げるぞ。」
「へ?」
以前もそうだった。この辺りでは目ぼしい魔物を見かけない。流石にこんな事は2度も無いだろうと思って、もののついでに肉を手に入れたい……とか考えていたが、それどころではないな。
「いきなりどうしたアレク?」
背中越しにテルマの戸惑いが伝わる。そりゃあそうだ。
「この森はおかしい。私どころかテルマまで魔物と一度も遭遇しないなんてあり得ない。何か得体の知れない存在が間引いてるとしか考えられない!」
「えっ?」
「一か八か、一気に上まで駆け上がる!!」
「は………はぁっ!?」
1600メートルを一気に……
「ちょっ…!?待てアレクっ!」
「いいから口を閉じてろ!!(ググッ)舌噛むぞ!!」
「魔物が居ないのは俺のせいだ!!」
「…………は?」
テルマの思いがけない一言に、思考が一瞬静止した。
「いや、正確には俺の従魔のせいだ。多分。」
「……従魔?…多分??」
「本当は、今日迎えに行くつもりだったんだ。ずっと言いそびれてた。すまん。」
テルマの……従魔……
「取り敢えず、一旦降ろしてくれないか?」
「……わかった。(スッ)」
おぶっていたテルマを降ろす。
「それで?どういう事か、説明して貰えるか?」
「……直接見せた方が早い。一緒に来てくれないか?」
「…わかった。」
もしかしたら、テルマの従魔が原因というのがテルマの思い違いである可能性も充分に考えられる。そうなれば、私たちは別の脅威に晒される事になるだろう。
だが、それならそれでテルマの従魔が今、危険に晒されている事になる。ならば、行かなければならないだろう。
そんな事を思いながら、私はテルマに着いて行く事にした。
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