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序章-1節.王都の学園に入学する事になった私は…
1. 幼馴染が寝付くまで相手しました。
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〈ゴトッ…ゴトゴトッ…ゴトゴトゴトッ〉
「あんちゃん、見えてきたぜ。」
「………ん?」
「この橋を渡ったら直ぐに検問だ。準備しときな。」
「……わかりました。」
ここは馬車の中。ほのかに薄暗く、不規則な揺れが妙に心地良い。
どうやら、馬車の揺れが心地良くて転寝してたみたいだ。
そんな馬車の旅もそろそろ終わりかと思うと、なんだか名残惜しいな。こんなに穏やかな朝は久しぶりだ。
何しろ、出発した日から連日忙しなかったからな。
***
バークレー領から王都までは、かなりの距離がある。
バークレー領そのものが、ソルランテ王国の最西端に位置している上に、王都へ続く大橋も渡る必要がある。
だから、王都を目指すとなるとどうしても長旅になってしまう。
王都までの中間地点にあたるバンデンクラット公爵領まで馬車でも1週間かかるため、王都までは半月かかる計算だ。
そして、入学手続きのためにバンデンクラット公爵の紹介状が必要となる。
だから、バンデンクラット領にいる幼馴染と待ち合わせをして紹介状を受け取ってから一般用の乗り合い馬車で王都へ出発する。それが私の考えた計画だ。
そのために、私は幼馴染のやっている商会の屋敷に来ている……のだが……
「(ギュッ)」
「………」
私は今、少女にしがみつかれている。
彼女はティアリス。待ち合わせをしてない方の幼馴染だ。
「……離してくれないかな?」
「やだ。」
しかも、しっかり関節と重心を抑えられて逃げられない。
「もうそろそろ、馬車の手配をしないといけないから……」
「そんな事より、一緒に遊ぼ?」
「私も、出来れば遊びたいよ?けど」
「じゃあ、遊ぼ?」
「そうはいかないんだよ。今日中に出発しなくちゃいけないから…」
「じゃあ、一緒に連れてって。」
「だめです。」
「(ギシッ)じゃあ、遊ぼ?」
さらに、腕に力が込められる。
参ったな。
こうなる事がわかっていたから見つからない様にして来たのに……全く、どこから嗅ぎつけたんだか。
「その辺にしてあげてくださいよ姉さん。アレクが困ってます。」
「おぉ、ハクラ。久しぶりだな。」
「えぇ、お久しぶりです。」
こいつはハクラ。本来の待ち合わせ相手で、ティアの義弟だ。さらに言えば、私やティアと同じ9歳だが、この商会を取り仕切る若旦那でもある。
「一緒にアレクを見送りましょうよ。組み手でも買い物でも食べ歩きでも、僕が代わりに相手しますから。」
「やっ!アレクも一緒が良い!!3人で遊ぼ?」
頑なだ。
ていうか、『ハクラなんかじゃ嫌!』とか『アレクの方が良い!!』とか言い出さないんだよなぁ、この子。
しかも、学園は卒業するまで3年掛かる。これまでは、月に一度は会えていたけど、王都の学園に入ってしまえばこうして頻繁に会う事も出来ない。
そうなった時、彼女がどんな行動に出るか………想像すら出来ないな。
やっぱり、今からでも入学は辞退……
「……そう言うと思いましたよ。(ピラッ)」
ハクラは一枚の書類を取り出した。
「お父さまから許可を取り付けて来ました。一緒に王都に行きましょう。」
「……え?許可??」
ちょっと待て。どういう事だ?
「ハクラ、これって……」
「最近、大橋前の町『ランパス』を介して王都との取引を始めたんです。今回は、そこへの視察という程で僕たちも同行します。」
「マジか。」
「そこにしばらく滞在して王都との交渉に移っていく……という大義名分があれば、王都とランパスを行き来する事も可能な筈です。毎日…とはいきませんが、毎週会いに行けますよ。」
「おいおい、他の仕事はどうすんだ?」
「問題ありません。向こうに既にオフィスを用意しました。視察はあくまで建前で、これはどっちかって言うと引越しなんですよ。」
「……抜かりないな。」
「えぇ。お父さまの企みを知った時から、こうなる事は確信していましたから。この日に向けて準備して来ました。」
「そいつはまた……ご苦労な事で。」
「ありがとうございます。」
ほんと、姉のためなら何でもするんだから大したもんだよ。
「それと、(チャリッ)これを。」
「これは?」
見たところ、鍵の様だが……
「勝手ながら、王都の宿はこちらで用意させていただきました。学生寮では、足繁く通えませんから。」
ほんと、抜かりないな。あの人にそっくりだ。
「馬車の手配は済ませてあります。さ、行きましょう。姉さん。」
「…………」
「…姉さん?」
変だな。てっきり大はしゃぎするかと思ったけど、さっきからずっと黙り込んでしまっている。
「どうしました?『ランパス』からでしたら、これまで以上にアレクに合う事だって出来ます。そうでしょう、アレク?」
「そうだな。せっかくだし、到着したら3人で王都を散策しようか。」
「ほら、アレクだって怒ってませんよ。早く行きましょう?」
「……ごめん、ハクラ。」
「え?」
「「「ハクラ様!大変です!!」」」
使用人の人達が飛び込んできた。
「「………」」
嫌な予感しかしないな。ハクラも同じことを思った様だ。
「………よし、1人ずつ聞こうか。どうした?」
「馬車の車輪がありません!」
「手綱もやられています!!」
「そもそも馬が居ません!!!」
「……何という事だ。」
流石のハクラも、想定外だった様だ。
「……仕方ない。それなら一般用の乗り合い馬車で……」
「(ガチャッ)ハクラ様!!大変です!!」
「オーケー。街中の『ランパス』行き乗り合い馬車だけが何故かダメになってたんだな。」
「どっ!?……どうしてそれを!?」
「勘。」
なるほど。
「(ムニィッ)…ティア?」
「……ふぁぃ。」
「………食べちゃった?」
「……(コクリ)」
この食いしん坊……やらかしたな。
「(ムニムニグニグニ)」
「ゃぁぁ……」
それはそれとして、せっかくの機会だし頬を入念に揉みほぐしておこう。
しかし、これじゃあ今日中に出発は無理だな。というか、数日間は足止めじゃないかな。馬車じゃどうやっても間に合わない。
「(パッ)……わかったよ。」
仕方ない。
「ティア、ハクラ。買い物に行こうか。」
「「えっ!?」」
「聞こえなかったか?今日中に馬車で出発は無理だ。今日一日は遊ぼうじゃないか。」
「ほんと!?」
「良いんですか?それだと入学式に……」
「言っただろ?馬車で出発は無理だって。」
「……なるほど。わかりました。」
「それで?何して遊ぶ?」
「(むにぃ)姉さぁん?」
「ひゃうっ」
「(モニモニグニグニモニモニグニグニ)二度と、馬車を食べない。わかった?」
「ごめぇんなぁ……ひぁぁい……」
今度は、ハクラがティアの頬をこねはじめた。
ほんと、仲良いよな。
「あんちゃん、見えてきたぜ。」
「………ん?」
「この橋を渡ったら直ぐに検問だ。準備しときな。」
「……わかりました。」
ここは馬車の中。ほのかに薄暗く、不規則な揺れが妙に心地良い。
どうやら、馬車の揺れが心地良くて転寝してたみたいだ。
そんな馬車の旅もそろそろ終わりかと思うと、なんだか名残惜しいな。こんなに穏やかな朝は久しぶりだ。
何しろ、出発した日から連日忙しなかったからな。
***
バークレー領から王都までは、かなりの距離がある。
バークレー領そのものが、ソルランテ王国の最西端に位置している上に、王都へ続く大橋も渡る必要がある。
だから、王都を目指すとなるとどうしても長旅になってしまう。
王都までの中間地点にあたるバンデンクラット公爵領まで馬車でも1週間かかるため、王都までは半月かかる計算だ。
そして、入学手続きのためにバンデンクラット公爵の紹介状が必要となる。
だから、バンデンクラット領にいる幼馴染と待ち合わせをして紹介状を受け取ってから一般用の乗り合い馬車で王都へ出発する。それが私の考えた計画だ。
そのために、私は幼馴染のやっている商会の屋敷に来ている……のだが……
「(ギュッ)」
「………」
私は今、少女にしがみつかれている。
彼女はティアリス。待ち合わせをしてない方の幼馴染だ。
「……離してくれないかな?」
「やだ。」
しかも、しっかり関節と重心を抑えられて逃げられない。
「もうそろそろ、馬車の手配をしないといけないから……」
「そんな事より、一緒に遊ぼ?」
「私も、出来れば遊びたいよ?けど」
「じゃあ、遊ぼ?」
「そうはいかないんだよ。今日中に出発しなくちゃいけないから…」
「じゃあ、一緒に連れてって。」
「だめです。」
「(ギシッ)じゃあ、遊ぼ?」
さらに、腕に力が込められる。
参ったな。
こうなる事がわかっていたから見つからない様にして来たのに……全く、どこから嗅ぎつけたんだか。
「その辺にしてあげてくださいよ姉さん。アレクが困ってます。」
「おぉ、ハクラ。久しぶりだな。」
「えぇ、お久しぶりです。」
こいつはハクラ。本来の待ち合わせ相手で、ティアの義弟だ。さらに言えば、私やティアと同じ9歳だが、この商会を取り仕切る若旦那でもある。
「一緒にアレクを見送りましょうよ。組み手でも買い物でも食べ歩きでも、僕が代わりに相手しますから。」
「やっ!アレクも一緒が良い!!3人で遊ぼ?」
頑なだ。
ていうか、『ハクラなんかじゃ嫌!』とか『アレクの方が良い!!』とか言い出さないんだよなぁ、この子。
しかも、学園は卒業するまで3年掛かる。これまでは、月に一度は会えていたけど、王都の学園に入ってしまえばこうして頻繁に会う事も出来ない。
そうなった時、彼女がどんな行動に出るか………想像すら出来ないな。
やっぱり、今からでも入学は辞退……
「……そう言うと思いましたよ。(ピラッ)」
ハクラは一枚の書類を取り出した。
「お父さまから許可を取り付けて来ました。一緒に王都に行きましょう。」
「……え?許可??」
ちょっと待て。どういう事だ?
「ハクラ、これって……」
「最近、大橋前の町『ランパス』を介して王都との取引を始めたんです。今回は、そこへの視察という程で僕たちも同行します。」
「マジか。」
「そこにしばらく滞在して王都との交渉に移っていく……という大義名分があれば、王都とランパスを行き来する事も可能な筈です。毎日…とはいきませんが、毎週会いに行けますよ。」
「おいおい、他の仕事はどうすんだ?」
「問題ありません。向こうに既にオフィスを用意しました。視察はあくまで建前で、これはどっちかって言うと引越しなんですよ。」
「……抜かりないな。」
「えぇ。お父さまの企みを知った時から、こうなる事は確信していましたから。この日に向けて準備して来ました。」
「そいつはまた……ご苦労な事で。」
「ありがとうございます。」
ほんと、姉のためなら何でもするんだから大したもんだよ。
「それと、(チャリッ)これを。」
「これは?」
見たところ、鍵の様だが……
「勝手ながら、王都の宿はこちらで用意させていただきました。学生寮では、足繁く通えませんから。」
ほんと、抜かりないな。あの人にそっくりだ。
「馬車の手配は済ませてあります。さ、行きましょう。姉さん。」
「…………」
「…姉さん?」
変だな。てっきり大はしゃぎするかと思ったけど、さっきからずっと黙り込んでしまっている。
「どうしました?『ランパス』からでしたら、これまで以上にアレクに合う事だって出来ます。そうでしょう、アレク?」
「そうだな。せっかくだし、到着したら3人で王都を散策しようか。」
「ほら、アレクだって怒ってませんよ。早く行きましょう?」
「……ごめん、ハクラ。」
「え?」
「「「ハクラ様!大変です!!」」」
使用人の人達が飛び込んできた。
「「………」」
嫌な予感しかしないな。ハクラも同じことを思った様だ。
「………よし、1人ずつ聞こうか。どうした?」
「馬車の車輪がありません!」
「手綱もやられています!!」
「そもそも馬が居ません!!!」
「……何という事だ。」
流石のハクラも、想定外だった様だ。
「……仕方ない。それなら一般用の乗り合い馬車で……」
「(ガチャッ)ハクラ様!!大変です!!」
「オーケー。街中の『ランパス』行き乗り合い馬車だけが何故かダメになってたんだな。」
「どっ!?……どうしてそれを!?」
「勘。」
なるほど。
「(ムニィッ)…ティア?」
「……ふぁぃ。」
「………食べちゃった?」
「……(コクリ)」
この食いしん坊……やらかしたな。
「(ムニムニグニグニ)」
「ゃぁぁ……」
それはそれとして、せっかくの機会だし頬を入念に揉みほぐしておこう。
しかし、これじゃあ今日中に出発は無理だな。というか、数日間は足止めじゃないかな。馬車じゃどうやっても間に合わない。
「(パッ)……わかったよ。」
仕方ない。
「ティア、ハクラ。買い物に行こうか。」
「「えっ!?」」
「聞こえなかったか?今日中に馬車で出発は無理だ。今日一日は遊ぼうじゃないか。」
「ほんと!?」
「良いんですか?それだと入学式に……」
「言っただろ?馬車で出発は無理だって。」
「……なるほど。わかりました。」
「それで?何して遊ぶ?」
「(むにぃ)姉さぁん?」
「ひゃうっ」
「(モニモニグニグニモニモニグニグニ)二度と、馬車を食べない。わかった?」
「ごめぇんなぁ……ひぁぁい……」
今度は、ハクラがティアの頬をこねはじめた。
ほんと、仲良いよな。
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