薬師の名門ブレルスクに入学した私は、退学するまで暴れます。〜少年アレクの倫理で殴る学園ファンタジー〜

鮒捌ケコラ

文字の大きさ
31 / 191
1章-1節.薬師の名門ブレルスクに入学した私は…

22.最後の日まで通います。

しおりを挟む
 退学予告されて6日目。登校した私は、掲示板で呼び出しを受けていた。

「…………」

 ここは理事長室。正面に居るのはこの学園の理事長代理。

 肩書きに代理と着いてはいるが、実質的なこの学園のトップであり、マスルーツ家の当主補佐役の一人でもある。

 要するに、この骨の髄まで腐った状況を作り上げ、増長することに加担した元凶バカという事だ。

「まず、君が何故ここに呼ばれたか、理由はわかっているかね?」

 やはり、ツァリアリを縛って放置した事だろうか。

 ああいう男が、自分の醜態を口外するとは思えないが……考えが甘かったかな。

 とにかく、どんな理由であろうと貴族に危害を加えたのだから、こうして呼び出されるのは当然だろう。場合によっては明日を待たずしてこの場で退学を言い渡されるかもしれない。それは寧ろ望む所だが、テルマにまで飛び火するのは避けたい。

 そうなると、うまく話を誘導して責任の所在を私に向けないとならないな。

 間違っても、テルマの名が出る事がない様に気を付けなければ。

 当然、テルマを庇っていると悟られるのも御法度だ。

 そうなると、まずはシラを切ってみるとするかな。

「いいえ、さっぱりわかりません。」
「……白々しい。君がやった事がとんでもない違法行為であった自覚はあるのかね?全く、教員に対して生徒があんな……」

 ……教員?

「……あの、何の事を言ってるんですか?」
「とぼけるな。先週の授業ジャックの話だ。」
「先週……」

 先週の話を今するのか?だとしたら、対応が遅すぎる。

 ……もしかして、教員達が退学までの期間を1週間より速められなかった理由って、理事長(代理)の対応が遅すぎて1週間以内に話が進まないから?

 ……いや、そんな事は今はどうでも良い事だ。

「単刀直入に聞く。教員に代わって講義をしたというのは事実か?」
「いえいえ、講義なんて大層なものではありませんよ。そもそも、講義とは教員の資格を有する……」
「屁理屈はいい。教壇に立って他の生徒に教えたのだろう?」
「…えぇ、まぁ………教えました。」
「何故、そんな事をしたのかね?」

 さて、少し想定とは違うが、ここが退学云々の決め手とはなる事は確かだろう。ならば、ここは嘘偽りなく話すとしよう。

「はい。端的に申しますと、かの教員に強い憤りを感じたからです。」
「なに?」
「厳密には、かの教員が大した理解もしていない状態で既知を装った態度が許せなかったのです。知らない事を知っているふりをする。これは嘘をつく事と同義です。教員教える側にあるまじき愚行だと思いませんか?」
「だから、授業を乗っ取ったと?」
「いいえ、私は乗っ取りなんてしていません。ただ間違いを指摘しただけですよ。」
「では、何故そこから君が授業をする話になるのだね?」
「代講を頼まれたんですよ。『そこまで言うならやってみろ』と。私も最初は戸惑いました。いきなり授業をしろと言い出したのですから。」
「つまり、あくまでも仕方なく授業をしたと?」
「はい、そうです。」
「では、何故教員を追い出した?」
「……何か誤解がある様ですが、私は追い出したりなんてしてません。あの教員が勝手に出て行ったのです。」
「同じ事だ。しかも、その後も君は教壇で他の生徒に講義の続きをしたらしいじゃぁないか?」
「だから、講義なんて大層なものはしてませんよ。ただ、教員が戻って来るまで授業の予習と復習をみんなとしてただけです。教員が来れば、直ぐに授業に戻るつもりでしたよ?」
「なるほど……では、続けて答えて貰おうか。君はその後の1週間、他の教員達に対しても同じ様な事を繰り返して来たそうじゃないか?これは事実か?」

 一応認知されていたのか。行動が遅いだけで耳は早い方なのかな。……いや、それはないか。ツァリアリの話が出てくる様子がないもんな。まぁ、眼中に無い可能性もあるけど。だとすればあまりに滑稽だ、ツァリアリ。

「えぇ、お陰で同級生からは『先生』なんて呼ばれてしまっていますよ。」
「何故そんな事をしでかした?」

 さっきと同じ問いが来た。

 本当は、授業を放棄して勧誘してきたから撃退したんだけど、こう言っておくか。

「そんなの決まってます。他の教員達にも同様の憤りを抱いていたからです。」
「なに?」
「誰も彼もが教員としては問題がありました。故にその問題点を指摘しました。
「つまり、全ての授業で教員達の過ちを指摘したという事か?」
「えぇ、そうなりますね。」
「なるほどなるほど……(バンッ!!)その行いが!我々の品位を貶めたとは思わないのか!」

 さっきの落ち着いた様子とは一変して怒鳴り散らして来た。豹変振りが鮮やかだな。

「貴様のせいで!教員達がどんな日々を過ごしているか!考えた事はあるかっ!!自らの行動が!我が学園を侮辱したとは思わないのかっ!!」
「思いません。あくまで私は、浮き彫りにしただけです。それでどんな目に遭おうと、完全な自業自得ではありませんか。そもそも、生徒に指摘される教員側に問題があるのでは?」
「……なに?」
「かの教員…ベルモンドは、自己研鑽を怠けた結果、自らの過ちを10年間王都に流布した。ダルガンは、偉人達の栄誉をかさどるばかりで何も功績をあげず、あまつさえ自分が功績をあげたつもりになって何も努力しなかった。あるものは己の能力に慢心し、あるものは学園の運用資金に手をつけ、あるものは聞くに耐えない言動で周囲に醜態を流布した。いずれあなた方の顔に泥を塗ると知っていながら、誰も彼もが自己研鑽をすることなく怠惰に時間を貪るばかりだった。その結果として、今回あなた方の品位にヒビを入れたんです。どう言い繕っても、それが変わらない事実なんです。あなたは、その事実から目を逸らすのですか?」
「っ………」
「それだけじゃありません。生徒間で囁かれている噂に、どんなものがあるかご存知でしょうか?私はその噂を元に、今回の教員達の問題を浮き彫りにしました。」

 そう。学生にすら気取られる程教員達馬鹿共の言動は露骨だったという事だ。

「もちろん、お気付きでしたよね?バイトと勉学の両立で忙しい私にすら出来たのですから。」
「………」

 そんな訳ないな。出来ていれば、こんな事態には陥ってない筈なのだから。

「つまり、遅かれ早かれこの事態は起こり得たのです。それが、たまたま今回だっただけなんですよ。」
「………」   
「私の話を信じるかどうかは皆さんにお任せします。しかし、どんな経緯があろうと教員達馬鹿共が授業中に教室を抜け出した事は事実です。どんなに取り繕うとも、一介の学生に自身の任された仕事を押し付けた……自らの任せられた仕事を途中で放り出した事実は変わりません。」
「………」
「そんな彼らの味方をするおつもりなら、勝手にどうぞ。私は、停学なり退学なりあなた方のお気が済むように罰を受けましょう。」

 出来れば、このまま退学にしてくれればありがたい。

「ただ、一つだけ言わせてもらいます。私の行動は、私が正しいと思ったから行ったのです。後悔はありません。だから、自主退学の勧告は無駄だと思ってくださいね?」

 念押しすれば、いけそうだ。

「…もう良い。下がれ。」
「はい。失礼いたしました。」

 よし、これで退学は間違いないな。

「(バタン)……ふぅ。」
「お疲れ。どうだった?」
「先週、アイツが職務放棄した事について聞かれた。詳しくは教室で話すよ。」
「そうか……わかった。」

 少なくとも、これでヘイトは私に向かうよな。さっさと教室に戻って授業の続きを始めよう。

 今日こそは、カンナさん来てるかな?

 そんな事を考えながら、理事長室を後にした。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

処理中です...