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第四章
上条アキラの疑惑
友介と美奈子が、そんなしあわせ気分を感じているとき、
上条アキラは、出先から自宅に帰って来るところであった。
美奈子にデートをフラれてしまったため、今日は一日、中学時代の
友人たちと会っていたのだ。
中二の途中まではバスケット部に所属していて、その時の仲間だ。
父親の死により、バスケ部を辞め、勉強一本に絞って
特待生として聖愛学園に入学した。
辞めて以来の出会いだったが、体育会系らしく、以前と
変わらぬ雰囲気で迎えてくれて、気分が一新でき、
ついつい遅くなってしまった。
母親には、夕食の時間に帰るよう、珍しく強く言われて
いたのだが、21時くらいになってしまった……
そもそも、昨夜彼を悩ませていた事実がいけないのだ。
その事を考えて続けて、寝不足のまま出かけたら
「何、元気のねぇ面してんだ ! 未来のW大生さまが ! 」
と、無理やり連れまわされたのだ。
おかげで、アキラとしてもいつまでも一人で悩むのがバカバカしく
なり、存分に楽しんで、母親の言いつけも忘れてついつい遅く
なってしまった。
LIMEや電話で、催促を受けながら……
前夜アキラを悩ませた事実というのは、木曜日に神崎陽菜に
忠告された葛城美奈子の事に他ならない。
「それに、他の人に目移りすることだって……」
「例えば身近な先生とか……」
その言葉に引っかかった……
デートの約束ができていれば違ったかもしれないが。
キモ友なんて中年教師と、あの可愛い美奈子とだなんて、不釣り合い
過ぎて、全く話にもならない。
一笑に付すべき話だし、自分もそう思っていた。そのはずなのに……
キモ友は美奈の担任で、今回の大学推薦では、色々アドバイス
してくれて感謝はしていた。
特に「生徒会から同時に、しかも同じW大に推薦なんて」という理解し難い
言いがかりで紛糾した選考会議で、異議を唱えてくれ、学力評価で
決めることになったと聞いている。だから二人でテストを頑張り、無事に
推薦を勝ち取った。
喜び合った時に、美奈からキモ友への感謝の言葉もあった気がする……
でも、それだけだ。年末に先生の手伝いをすることになった際も、かなり
嫌々なトーンだったし……自分も、何も心配しなかった……
今更ながら、あのころ、自分のバイトへの出発で偶然駅で出会ったあたりから、何か
おかしかった気がする。
駅で出会ったのは、本当に偶然なのか。
あの時、見送る二人の姿に違和感を覚えた気がする……
美奈が手伝いの時に、先生に伝えた?? 何のために ?
ちょっと生徒からバイト先の話を聞いたからって、すぐに予約を取って
そこに来るだろうか……いくら独身だからといって……
まあそれはいい。
問題は、「初詣で、キモ友と美奈子が一緒にいる時に会った」という陽菜の証言だ。
どうしてそれを自分に言わない ?
神社でばったり会った、取るに足らない出来事だったから ?
それにしたって、泊まりに来た日に、
「キモ友もホテルに来てる」という話題の際に、言わなかったのは?
そういえば、あまり驚いていなかったような気もする……
いやいや、そもそも美奈は葛城家の正月で忙しかったんじゃないのか?
ご両親もいなくて名代とかなんだとか……
それなのに、一人で初詣に行って、そこでキモ友にばったり出会ったって ??
やっぱり変だ。おかし過ぎる……
約束して、二人で初詣というならしっくり……いや、何でキモ友と !?
年末の手伝い期間中に、急接近したって ? ……そんなバカな。
美奈は、感謝はしていても、キモ友自身に対しては以前から
好感を持ってる素ぶりなんて一切なかった。
推薦の話以外で、話題になったこともない……
ここから先は、考えたくもないが……
どうしてキモ友と同じ僕の大嫌いなタバコの匂いがしたのか……
金山で、自分がちょっといない間に、二人でどこかにいたのはなぜなのか
早朝に、6階になぜいたのか。キモ友の部屋しかないあたりに。
しかも、僕のプレゼントしたネックレスをしていなかった……
まあ、そこは曖昧だけど。
出入り管理が厳重なホテルに、デリヘルとか呼べるわけない。
澤井さんなんかがフロントで目を光らせている。
外で見つけたパパ活女子を連れ込むってのも……そんなあからさまな中年男の所業
したら目立って仕方ないし、できはしないはずだ……
もともと館内にいた女性相手でもなきゃ、無理………って、そんな !!
でも、生真面目な美奈が「キモ友が女を」という話題に全然反応
しなかったのは、なぜだ ??
あそこは、あの時は、本当に違和感があった。
自分は、「お客様の個人情報を……」なんて真面目な注意をされたから、
「やれやれ怒られちゃった。美奈は真面目だなぁ、相変わらず」なんて、
ついまぎれてしまったけど、今までの美奈だったら絶対に
「信じられない ! 男の人って、本当にそんなことするの ?
アキラくんは違うわよね」
とか言って、女を連れ込んだというところに、むしろ過剰なまでに反応したと
思う……
しかし、しかし、もしキモ友の部屋の女が美奈だとしたら、
だとしたら…………
美奈は、僕とエッチした時、確かに処女だった。
そんな美奈が一週間後に……あり得ない。やっぱりあり得ない。
妄想もいい加減にしないと……
初詣は、確かに行ったかもしれない。年末の手伝いのどこかで話題にでもなって。
でもそれだけ。それだけの取るに足らない話だから、彼女にとっては一瞬の出来事
だから、僕にも言わなかった……そっちの方が、よっぽどしっくりくる。
気にしなきゃいけないのは、神崎に注意された
「付き合ってる男女なのに、全然会ってない」ことだ。
ずっとバイトバイトで放っておいて、思い出したようにデートに誘って断られたからって、
それで文句を言ったら罰が当たるか。
高一の頃から憧れていた美奈と恋人同士になれ、
エッチまでしたから安心しちゃってたのかな……
美奈も怒ってるよな、内心。やっぱり毎日夜勤はやり過ぎたか。
それも、春休みに美奈とDランドデートを存分に楽しむためなんだ。
美奈、覚えてるかなぁ。
お邪魔だけど、サトルとクルミも連れて行って、みんなで楽しむんだ目一杯。
あぁ、でもその計画の話なんて細かくしたことなかったな。
そもそも、そのためにバイト増やしたとか……
やっぱり会わないのはダメだ。LIMEじゃ話が広がらない。
んー、デートしたかったな
昨夜は、こうした想いが、ぐるぐると渦巻き、ある時は堂々巡りで、
疑惑が膨らんだり自己嫌悪したり……アキラの心を悩ませていた。
そんな想いも、多少はスッキリして帰宅したのだ。
「ただいまー、ごめん遅くなって」
そう言って入った玄関には、見慣れない革靴があった。
ととっと、クルミが現れる。
「お兄ちゃん、おかえりなさい。遅かったねぇ、お母さん怒ってるよ。
あとね、お客さん来てるから」
「えっ ? お客 ? 」
上条アキラは、出先から自宅に帰って来るところであった。
美奈子にデートをフラれてしまったため、今日は一日、中学時代の
友人たちと会っていたのだ。
中二の途中まではバスケット部に所属していて、その時の仲間だ。
父親の死により、バスケ部を辞め、勉強一本に絞って
特待生として聖愛学園に入学した。
辞めて以来の出会いだったが、体育会系らしく、以前と
変わらぬ雰囲気で迎えてくれて、気分が一新でき、
ついつい遅くなってしまった。
母親には、夕食の時間に帰るよう、珍しく強く言われて
いたのだが、21時くらいになってしまった……
そもそも、昨夜彼を悩ませていた事実がいけないのだ。
その事を考えて続けて、寝不足のまま出かけたら
「何、元気のねぇ面してんだ ! 未来のW大生さまが ! 」
と、無理やり連れまわされたのだ。
おかげで、アキラとしてもいつまでも一人で悩むのがバカバカしく
なり、存分に楽しんで、母親の言いつけも忘れてついつい遅く
なってしまった。
LIMEや電話で、催促を受けながら……
前夜アキラを悩ませた事実というのは、木曜日に神崎陽菜に
忠告された葛城美奈子の事に他ならない。
「それに、他の人に目移りすることだって……」
「例えば身近な先生とか……」
その言葉に引っかかった……
デートの約束ができていれば違ったかもしれないが。
キモ友なんて中年教師と、あの可愛い美奈子とだなんて、不釣り合い
過ぎて、全く話にもならない。
一笑に付すべき話だし、自分もそう思っていた。そのはずなのに……
キモ友は美奈の担任で、今回の大学推薦では、色々アドバイス
してくれて感謝はしていた。
特に「生徒会から同時に、しかも同じW大に推薦なんて」という理解し難い
言いがかりで紛糾した選考会議で、異議を唱えてくれ、学力評価で
決めることになったと聞いている。だから二人でテストを頑張り、無事に
推薦を勝ち取った。
喜び合った時に、美奈からキモ友への感謝の言葉もあった気がする……
でも、それだけだ。年末に先生の手伝いをすることになった際も、かなり
嫌々なトーンだったし……自分も、何も心配しなかった……
今更ながら、あのころ、自分のバイトへの出発で偶然駅で出会ったあたりから、何か
おかしかった気がする。
駅で出会ったのは、本当に偶然なのか。
あの時、見送る二人の姿に違和感を覚えた気がする……
美奈が手伝いの時に、先生に伝えた?? 何のために ?
ちょっと生徒からバイト先の話を聞いたからって、すぐに予約を取って
そこに来るだろうか……いくら独身だからといって……
まあそれはいい。
問題は、「初詣で、キモ友と美奈子が一緒にいる時に会った」という陽菜の証言だ。
どうしてそれを自分に言わない ?
神社でばったり会った、取るに足らない出来事だったから ?
それにしたって、泊まりに来た日に、
「キモ友もホテルに来てる」という話題の際に、言わなかったのは?
そういえば、あまり驚いていなかったような気もする……
いやいや、そもそも美奈は葛城家の正月で忙しかったんじゃないのか?
ご両親もいなくて名代とかなんだとか……
それなのに、一人で初詣に行って、そこでキモ友にばったり出会ったって ??
やっぱり変だ。おかし過ぎる……
約束して、二人で初詣というならしっくり……いや、何でキモ友と !?
年末の手伝い期間中に、急接近したって ? ……そんなバカな。
美奈は、感謝はしていても、キモ友自身に対しては以前から
好感を持ってる素ぶりなんて一切なかった。
推薦の話以外で、話題になったこともない……
ここから先は、考えたくもないが……
どうしてキモ友と同じ僕の大嫌いなタバコの匂いがしたのか……
金山で、自分がちょっといない間に、二人でどこかにいたのはなぜなのか
早朝に、6階になぜいたのか。キモ友の部屋しかないあたりに。
しかも、僕のプレゼントしたネックレスをしていなかった……
まあ、そこは曖昧だけど。
出入り管理が厳重なホテルに、デリヘルとか呼べるわけない。
澤井さんなんかがフロントで目を光らせている。
外で見つけたパパ活女子を連れ込むってのも……そんなあからさまな中年男の所業
したら目立って仕方ないし、できはしないはずだ……
もともと館内にいた女性相手でもなきゃ、無理………って、そんな !!
でも、生真面目な美奈が「キモ友が女を」という話題に全然反応
しなかったのは、なぜだ ??
あそこは、あの時は、本当に違和感があった。
自分は、「お客様の個人情報を……」なんて真面目な注意をされたから、
「やれやれ怒られちゃった。美奈は真面目だなぁ、相変わらず」なんて、
ついまぎれてしまったけど、今までの美奈だったら絶対に
「信じられない ! 男の人って、本当にそんなことするの ?
アキラくんは違うわよね」
とか言って、女を連れ込んだというところに、むしろ過剰なまでに反応したと
思う……
しかし、しかし、もしキモ友の部屋の女が美奈だとしたら、
だとしたら…………
美奈は、僕とエッチした時、確かに処女だった。
そんな美奈が一週間後に……あり得ない。やっぱりあり得ない。
妄想もいい加減にしないと……
初詣は、確かに行ったかもしれない。年末の手伝いのどこかで話題にでもなって。
でもそれだけ。それだけの取るに足らない話だから、彼女にとっては一瞬の出来事
だから、僕にも言わなかった……そっちの方が、よっぽどしっくりくる。
気にしなきゃいけないのは、神崎に注意された
「付き合ってる男女なのに、全然会ってない」ことだ。
ずっとバイトバイトで放っておいて、思い出したようにデートに誘って断られたからって、
それで文句を言ったら罰が当たるか。
高一の頃から憧れていた美奈と恋人同士になれ、
エッチまでしたから安心しちゃってたのかな……
美奈も怒ってるよな、内心。やっぱり毎日夜勤はやり過ぎたか。
それも、春休みに美奈とDランドデートを存分に楽しむためなんだ。
美奈、覚えてるかなぁ。
お邪魔だけど、サトルとクルミも連れて行って、みんなで楽しむんだ目一杯。
あぁ、でもその計画の話なんて細かくしたことなかったな。
そもそも、そのためにバイト増やしたとか……
やっぱり会わないのはダメだ。LIMEじゃ話が広がらない。
んー、デートしたかったな
昨夜は、こうした想いが、ぐるぐると渦巻き、ある時は堂々巡りで、
疑惑が膨らんだり自己嫌悪したり……アキラの心を悩ませていた。
そんな想いも、多少はスッキリして帰宅したのだ。
「ただいまー、ごめん遅くなって」
そう言って入った玄関には、見慣れない革靴があった。
ととっと、クルミが現れる。
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