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第38話 霊峰ホワイトマウンテン

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霊峰ホワイトマウンテンは西の大陸の一番南にある山脈である。ゲームでは名前だけ登場する場所で、実際には行く事ができない場所だった。

そして俺達は、霊峰ホワイトマウンテンの一番近くの村に来ていた。ここまでは転移魔法が使えないので、ゆっくりと徒歩で移動した。馬車なんかがあればもっと楽に移動できたのだが、あいにく都合がつかなかったからだ。

まあ、濃密な1週間を亀島で過ごしたので、たまにはゆっくりするのもいいだろうという事で、ピクニック気分で南に向かったのだ。

「ふ~。とりあえず今日はここで一泊してホワイトマウンテンには明日向かうとするか。」

「そうね。それにしてもこんなに急激に気温が変わるなんて。」

「たしかにな。」

ホワイトマウンテンはその名の通り、雪に覆われた山脈だった。そして、その近くにある村も当然その影響を受けている。つまり・・・とても寒いのだ。トンネルを抜ければそこはなんとやらである。

村に近づくまでは温暖な気候で寒さもあまり感じなかったのに、村に近づくとある場所を境に一気に気温が下がったのだ。

「防寒着は買えたけど、これじゃ思うように動けないわね。」

「そうだな。さすがにこの手袋をして剣を振れる気がしないな。」

「そうね。どうする?これじゃホワイトマウンテンを登れないんじゃない?」

「だよな~。魔法は使えるけど、怖いのは雪崩だな。下手に魔法を使って上から雪が落ちてきたらさすがに死んじゃうだろうな。」

「吾輩は動けますぞ。」

「そうだな。エンキには頼る事になるとは思うけど、問題はどれぐらいの魔物が出てくるかだな。結局魔物だって雪の上じゃ自由に動けないだろうし。」

「村の人に聞いても誰も山に行った事がないからわからなかったものね。」

「ああ。あんなすぐ傍に山があるのに誰も知らないっていうのも変な感じだけどな。」

村で一泊したレイ達は朝からホワイトマウンテンへ向かっていた。そして・・・

「これどうやって登っていけばいいのかしら?それにそもそも神獣様って山の上にいるのかしら?」

「どうだろ?神獣様って言うぐらいだから山の上にいそうな気はするけど・・・さすがにこれは登れそうにないな。どこか道みたいなモノでもあればと思うが完全に雪だもんな。」

そうなのだ。俺達の目の前には白い景色が上に伸びって言っている。一面銀世界も真っ青な雪、雪、雪だった。しかもここまで来るのも雪が50㎝程積もってる所もあれば1mも積もってる所もあり、来るのですら苦労した。スキー板でも売ってれば履いて移動したのだが、あいにくそんなモノは売っていなかった。

「雪に触れずに上る事ができればいいんだけど・・・ってそうか!?」

「どうしたの?」

「ミスト?空を飛ぶ魔法ってないのか?」

「もちろんあるぞ。」

「あるのかよ。それを早く言ってくれよ。それがあれば雪の上を歩く必要がないじゃないか。」

「なるほどのぉ。言われてみればそうじゃな。気づかんかったわ。」

「マリー。なんとかなりそうだ。ミストに聞いたら空を飛ぶ魔法があるみたいだ。それを使えば雪の上を歩かなくて済みそうだ。」

「なるほど。たしかにそれは良い案ね。でもその魔法は簡単に使えるのかしら。」

「どうなんだミスト?」

「まあそれ程難しくはないじゃろ。バランスをとるのが難しいぐらいじゃな。」

ミストに空を飛ぶ魔法、フライの魔法を教えてもらい俺とマリーにそれぞれフライの魔法をかけた。

魔法が掛った瞬間、俺の体はふらふらっと宙に浮かんだ。

「おお~。宙に浮いてるぞ。これってどうやって移動するんだ。おっ、たしかにミストの言うようにバランスを取るのが難しいな。だけど、よし。なんとか移動はできそうだ。マリーはどう・・・だ?って!?」

「見てみてレイ。この魔法面白いわ。私空を飛んでるのよ。夢みたいだわ。」

俺の目の前には空をビュンビュンと飛びまわるマリーの姿があった。

「お、おい。大丈夫か。そんな飛ばして。危ないぞ。」

「大丈夫よ。ほら。こんなことだってできるわ。」

マリーはレイの前で軽く一回転した。その姿はとても安定していた。

「すごいなマリー。俺も負けてられないな。」

マリー程ではないが、フライの魔法にオレも慣れて来たので、二人で山の周りを移動して山脈の状況を調べる事にした。もしかしたら山の中を通る道や、雪が無い場所があるかもしれないと思ったからだ。

大陸の端から端まであるのではと思う程、山脈は長く連なっていた。空の移動は俺達が走って移動するぐらいの速度が出たので、山脈の周りの移動は楽なモノだった。

ただ、西の大陸の端から端までの距離の移動、更にはグルーっと裏側まで確認するのは時間がかかった。裏側は海に面していたが、ほとんどの場所は一面雪で真っ白だった。ただ・・・

「やっぱりあそこから入るないといけないんじゃないかしら?」

「だよな。ちょっと危ないけどあそこからなら山の中に入れそうだもんな。」

そうなのだ。丁度俺達がスタートした裏側ぐらいの海から山の中に入れそうな洞窟のようなモノがあったのだ。そこが山の上に通じているかははいってみないとわからないが、それ以外は全くと言って良いほど同じ景色だったので、調べようがなかったのだ。

山脈を調べるのに一日かかったため、その日は村に戻って休む事にし、翌日、俺達は見つけた海から山の中に入れる洞窟へと向かうのだった。
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