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第2話
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第二話
十月二十二日。今日は俺と一護の誕生日だ。そろそろ自分の将来についても決めなければならない時期でもある。
バース系に効果のある抑制剤の効きが悪くなり始めるから。フォークか、ケーキか、どちらかを選ばなければならない。どちらを選んだとしても俺にとっては地獄なのは変わらない。
だから二十歳の誕生日なんて本当は嫌で嫌で仕方がなかった。一護と一緒に過ごしたら少しは前向きになれるかもしれないと思って一護からの招待を受けることにした。楽しい気分のまま今日が終えれたらどんなにいいだろうか。
門の前に設置してあるブザーを押すと、いつもとは違う女性の声だった。
「桃里様ですね。一護様が中でお待ちです。そのまま中にお進み下さいませ」
この前のお手伝いさんじゃないみたいだな。一護の家はよくスタッフが変わる。だからまた変わったんだなぐらいにしかその時は思わなかったのだが…………。
玄関の巨大なドアが自動的に開く。そのまま中へ進むと、初めて見かける初老の男性執事がいた。
「桃里様初めまして。倉田と申します」
丁寧にお辞儀をした。
「えっ? 執事さんも変わったんですか? お手伝いさんも変わっていたし……」
こんなにスタッフがコロコロ変わるのは何か原因があるのだろうか。
「ここに務めておりました執事でしたら、海外の出張に同伴して不在でございます」
淡々とした声色でそう言う執事の倉田。
そうか……一護やその家族の方がいじめたりして辞めてしまったんじゃないんだ。そうだよな。一護に限ってそんなことあるわけない。
「今日の誕生日パーティの会場は別館となっておりまして、左の渡り廊下からお入り頂けます」
「ありがとうございます。ではそちらに行きます」
「桃里様、一護様がこの誕生日の帽子を被って会場に入ってほしいと申しておりまして……被っていただいてもよろしいでしょうか」
倉田が差し出したのは三角のとんがり帽で黄色と赤のラインが入ったものだ。おおかた誕生日の主役の一人であることを示したものなのだろう。
「分かりました」
倉田はホッとした表情で、俺の髪に帽子をピンで固定したが、僅かに指先が震えていた。
僕はその事に少し違和感を覚えたのだが、深くは考えなかった。
そこで倉田とは別れ、先に進んだ。渡り廊下の先にある別館は本館よりも先に作られたようだが、刺繍の入った黒い絨毯のせいなのかどことなく不気味な雰囲気を感じさせている。
観音扉になっている大きなドアをノックする。
「一護! 来たよ、入るぞ」
そう声をかけ、ギギギと音を立てながらドアを開く。部屋の中を見渡すと、三角形の誕生日を祝うフラッグが、壁に飾り付けてある。広い室内なのにあるのは中央に置かれた大きな丸いテーブルと椅子が四脚。既に左右に二人着席している。
「えっ? 何をしているんだ……」
頭が混乱した。中央の丸いテーブルの後ろにイチゴのかぶりものをした一護がいて、両側に同じくイチゴのかぶりものをさせられた男が二人、椅子に座らされている。しかも全員全裸だ。
真ん中にあるケーキには大きな四本の蝋燭が立てられ、炎をゆらゆらと揺らしながら燃えていた。
それは明らかに異常な事態だった。左側の男は恐怖でブルブルと震えているのだが、首や指先から出血をしている。
「一護、これは何の真似だ」
焦った桃里は、大声で一護に問いただした。
十月二十二日。今日は俺と一護の誕生日だ。そろそろ自分の将来についても決めなければならない時期でもある。
バース系に効果のある抑制剤の効きが悪くなり始めるから。フォークか、ケーキか、どちらかを選ばなければならない。どちらを選んだとしても俺にとっては地獄なのは変わらない。
だから二十歳の誕生日なんて本当は嫌で嫌で仕方がなかった。一護と一緒に過ごしたら少しは前向きになれるかもしれないと思って一護からの招待を受けることにした。楽しい気分のまま今日が終えれたらどんなにいいだろうか。
門の前に設置してあるブザーを押すと、いつもとは違う女性の声だった。
「桃里様ですね。一護様が中でお待ちです。そのまま中にお進み下さいませ」
この前のお手伝いさんじゃないみたいだな。一護の家はよくスタッフが変わる。だからまた変わったんだなぐらいにしかその時は思わなかったのだが…………。
玄関の巨大なドアが自動的に開く。そのまま中へ進むと、初めて見かける初老の男性執事がいた。
「桃里様初めまして。倉田と申します」
丁寧にお辞儀をした。
「えっ? 執事さんも変わったんですか? お手伝いさんも変わっていたし……」
こんなにスタッフがコロコロ変わるのは何か原因があるのだろうか。
「ここに務めておりました執事でしたら、海外の出張に同伴して不在でございます」
淡々とした声色でそう言う執事の倉田。
そうか……一護やその家族の方がいじめたりして辞めてしまったんじゃないんだ。そうだよな。一護に限ってそんなことあるわけない。
「今日の誕生日パーティの会場は別館となっておりまして、左の渡り廊下からお入り頂けます」
「ありがとうございます。ではそちらに行きます」
「桃里様、一護様がこの誕生日の帽子を被って会場に入ってほしいと申しておりまして……被っていただいてもよろしいでしょうか」
倉田が差し出したのは三角のとんがり帽で黄色と赤のラインが入ったものだ。おおかた誕生日の主役の一人であることを示したものなのだろう。
「分かりました」
倉田はホッとした表情で、俺の髪に帽子をピンで固定したが、僅かに指先が震えていた。
僕はその事に少し違和感を覚えたのだが、深くは考えなかった。
そこで倉田とは別れ、先に進んだ。渡り廊下の先にある別館は本館よりも先に作られたようだが、刺繍の入った黒い絨毯のせいなのかどことなく不気味な雰囲気を感じさせている。
観音扉になっている大きなドアをノックする。
「一護! 来たよ、入るぞ」
そう声をかけ、ギギギと音を立てながらドアを開く。部屋の中を見渡すと、三角形の誕生日を祝うフラッグが、壁に飾り付けてある。広い室内なのにあるのは中央に置かれた大きな丸いテーブルと椅子が四脚。既に左右に二人着席している。
「えっ? 何をしているんだ……」
頭が混乱した。中央の丸いテーブルの後ろにイチゴのかぶりものをした一護がいて、両側に同じくイチゴのかぶりものをさせられた男が二人、椅子に座らされている。しかも全員全裸だ。
真ん中にあるケーキには大きな四本の蝋燭が立てられ、炎をゆらゆらと揺らしながら燃えていた。
それは明らかに異常な事態だった。左側の男は恐怖でブルブルと震えているのだが、首や指先から出血をしている。
「一護、これは何の真似だ」
焦った桃里は、大声で一護に問いただした。
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