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挨拶
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ざわざわと、しかし優雅なさざめきがこだまする会場をベルトランのエスコートで歩く。私が歩く側から会話が消え、私が通り過ぎた後にまた会話が始まる。それは仕方ない。つい最近公のパーティ会場で婚約破棄を宣言された令嬢が、新しい婚約者を連れて歩いているのだ。噂されても仕方ないものもあるだろう。
…と、思っていたのだけど。
「…シルヴェーヌ、勘違いだったら悪いんだけどさ、あそこの机でワイン飲んでるあの男…」
「…勘違いではないですね。エルヴェ様です」
顔を赤くして、何事かをぶつぶつ呟きながらワインをぐびぐび飲んでいるのは、私の元婚約者、エルヴェ・アレオン公爵令息だった。隣にはミリーさんを連れている。なるほど。婚約破棄した側とされた側が同じパーティにいる。しかもされた側は新しい婚約者連れ。そんな修羅場、私でも噂する。
「…婚約したという話は聞きませんでしたが…」
「聞かなくていいよそんな話。というか、あれだけの醜態晒しておいて、パーティに招待されるなんてことあるんだね。王家主催でしょ、これ」
ベルトランが呆れ声を出すが、私には少しだけ心当たりがあった。
「…まぁ、後で分かると思います。王家への挨拶はアレオン公爵家の少し後ですから、呼ばれるまで少し離れて待っていましょうか」
「シルヴェーヌ・ウィールライト侯爵令嬢。ベルトラン・ヴァルター侯爵子息」
ベルトランに私が言ったその瞬間に私たちの名前が呼ばれた。嘘でしょう。公爵家の挨拶も終わってない、両親も呼ばれていないのに。
「…シルヴェーヌに何があっても僕が守るからね。いざとなればうちの国に亡命しよう」
何を考えたのか引き攣った笑顔でベルトランが言う。
「…別に王家直々に断罪されるなんてことは無いと思いますが…。とにかく急ぎましょう」
できる限り急足で、でもできるだけ優雅に。王家の方々の前に来て恭しく礼をする。ベルトランは合わせてくれたのかこの国式の挨拶をしてくれた。
「久しぶりね、シルヴェーヌ。婚約したって聞いたのに、挨拶にも来てくれなくて寂しかったわ」
「…お久しぶりです、カトリナ様。挨拶が遅れましてすみません」
友人であるカトリナ王女は悠然と私に微笑みかけた。
…と、思っていたのだけど。
「…シルヴェーヌ、勘違いだったら悪いんだけどさ、あそこの机でワイン飲んでるあの男…」
「…勘違いではないですね。エルヴェ様です」
顔を赤くして、何事かをぶつぶつ呟きながらワインをぐびぐび飲んでいるのは、私の元婚約者、エルヴェ・アレオン公爵令息だった。隣にはミリーさんを連れている。なるほど。婚約破棄した側とされた側が同じパーティにいる。しかもされた側は新しい婚約者連れ。そんな修羅場、私でも噂する。
「…婚約したという話は聞きませんでしたが…」
「聞かなくていいよそんな話。というか、あれだけの醜態晒しておいて、パーティに招待されるなんてことあるんだね。王家主催でしょ、これ」
ベルトランが呆れ声を出すが、私には少しだけ心当たりがあった。
「…まぁ、後で分かると思います。王家への挨拶はアレオン公爵家の少し後ですから、呼ばれるまで少し離れて待っていましょうか」
「シルヴェーヌ・ウィールライト侯爵令嬢。ベルトラン・ヴァルター侯爵子息」
ベルトランに私が言ったその瞬間に私たちの名前が呼ばれた。嘘でしょう。公爵家の挨拶も終わってない、両親も呼ばれていないのに。
「…シルヴェーヌに何があっても僕が守るからね。いざとなればうちの国に亡命しよう」
何を考えたのか引き攣った笑顔でベルトランが言う。
「…別に王家直々に断罪されるなんてことは無いと思いますが…。とにかく急ぎましょう」
できる限り急足で、でもできるだけ優雅に。王家の方々の前に来て恭しく礼をする。ベルトランは合わせてくれたのかこの国式の挨拶をしてくれた。
「久しぶりね、シルヴェーヌ。婚約したって聞いたのに、挨拶にも来てくれなくて寂しかったわ」
「…お久しぶりです、カトリナ様。挨拶が遅れましてすみません」
友人であるカトリナ王女は悠然と私に微笑みかけた。
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