婚約破棄されたら、隣国の侯爵に求婚されました。 『理屈屋と感覚派』

しぎ

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騒声

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「カトリナ王女!公爵家の私を差し置いて、その侯爵家の溝鼠と歓談とは。交友関係を疑いますね!隣国に逃げるその鼠より、俺と話をしてくれませんかねぇ?」
酒で若干濁ったような声。未だに口を開けば私を馬鹿にするのはエルヴェ様だった。隣にはミリーさんを連れている。ミリーさんは若干顔を引き攣らせているが、エルヴェ様は何故かにやにやと笑っていた。
「王太子殿下がいらっしゃいませんが、どこに居られますか?いらっしゃらないのなら、貴女にお聞きしますが、私の職の取り消しとは一体どういうことですか?私は今後王宮で誠心誠意勤めることを楽しみにしていたんですがねぇ。まさか俺がそこの鼠と婚約破棄したから友人の王女殿下が口利きしたなんてことありませんよねぇ?王女が王宮での政治に口出しなんてまさかしていませんよねぇ?」
何故かカトリナ王女の弱みでも握ったような顔でエルヴェ様はにやにや笑い続けている。
「王家とウィールライト侯爵家は癒着している。それをこの場で口にされたくなければ俺に便宜を計らえ、みたいなことかなぁ」
小声でニコラ公爵令息が言ったことで多少は納得する。自分勝手な考えを事実だと思い込んでしまうことも、それをこの王家主催のパーティの場で大声で言ってしまうのも、エルヴェ様のエルヴェ様たるところだ。パーティの場は静まり返っている。まるで、私が婚約破棄されたあの日のように。
「…シルヴェーヌを鼠、溝鼠と言ったな、エルヴェ公爵令息」
静かな声でカトリナ様が言う。
…怒っている。多分エルヴェ様が話しかけてくる前から、きっと。
「…少し離れましょうベルトラン」
好奇の目はもう散々受けた。私たちは下がっていてカトリナ様にお任せしよう。
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