勘違いで白馬の王子様に陥れられた令嬢は案外愛されています

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1日の大半を厨房で過ごしていたある日、とうとう私の部屋は失くなってしまった。

「普段使っていないんだから部屋なんていらないでしょう」

実際、部屋に居たくても汚すからと厨房へ預けられていた。
寝るためだけの部屋だったが、あそこが唯一自分がここの娘であると自覚させてくれる場所でもあった。

私の部屋が失くなった理由は、妹のアデルの衣装部屋にするとの事だった。

まだ２歳の妹は沢山の衣装やアクセサリーや人形や玩具を持っている。

愛人に貢いでいる父に対抗してか、お義母様の金遣いは荒いようだ。
自身もドレスだアクセサリーだとまるで外で遊ぶ旦那に当て付けのように毎日散財している。
そんなお義母様の浪費に流石の御父様も堪忍袋の緒が切れたようで、先日お金の事で盛大に夫婦喧嘩になり、お義母様の金切り声は屋敷の端にあるこの厨房まで響き渡った。

私のお母様をほっぽって愛し合ったあの二人の愛は、知らない内に若い愛人達の方へと流れて行ったらしい。

因みに愛人は更にもう一人増えているそうだ。

そろそろどちらかの愛人が身籠っても良い頃だと思うが、そう言った話はまだ聞いていない。

今日も今日とて私は大人しく厨房の片隅で絵本を見ている。

勿論こんな環境で字を教えて貰う教師はいない。

運が良い事に厨房のヨキムさんが字が読めるようで、料理の合間に教えてくれた。

今は子供向けの絵本を見て字を覚えている。

前世の記憶は曖昧だが、絵本の中の絵が何の事かは理解出来る。

この調子で字も読めたら楽だったのに、そのことだけは残念でならない。

さて、今の私の生活は厨房が中心になっている。

部屋が失くなって困っていた私にヨキムさんは常温で保管する食料庫で使わなくなった部屋を改造してくれて今はそこに住んでいる。

何でも、財政難な我が家は代々受け継がれてきた高級な食器や壺を売ってしまったらしいのでそれを入れていた家具も要らなくなったと売ってしまったのだ。

それでスペースが出来たので、荷物をまとめ私の捨てられそうになっていたボロいベッドを運び入れたのだ。

使用人が使っているベッドより質素なベッドを見た厨房の方達が私を哀れんでくれ、気づいたら邸で使わなくなった古い家具も設置されていた。

しかし、私にはその家具に入れる荷物が殆どない。

下着と衣類は交換用に一枚づつしかないので、わざわざタンスに仕舞う必要もないのだ。

だって、乾いたらそのに日直ぐに交換するのだから。

お陰で生地はいたるところがスケスケ状態だ。

そろそろ体も大きくなって来たし、もう少し大きめの下着や服が欲しいと切に思う。

成長期の子供なめんなよ。