勘違いで白馬の王子様に陥れられた令嬢は案外愛されています

麻生空

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よくよく考えてみると、私のあの家での食事で一番栄養価の高かった時期は赤ちゃんのミルクの時だと思う。


2歳まではたまにお肉の欠片位は食べれていたけど、それも2歳以降はない。

私を除く公爵家の人々は以前と変わらぬ肉や魚の料理を食べていたので年々切り詰められる厨房は、気付けば野菜や卵は自給自足になっていた。

裏の庭園の片隅に作られた野菜畑は、今では裏一面の広さに拡張されていたし、納屋倉庫の脇には庭鶏小屋2棟立っており1棟は繁殖用に雄と雌が暮らしており、もう一棟が雌だけの卵生産小屋となっていた。
勿論食材が不足して来る月末には一羽、また一羽とその姿を消していたのはあまり良い記憶ではない。

前世の記憶がある為か、なかなか鶏を殺す作業に慣れなかった。

基本的に鶏を殺す役はヨキムさんか、庭師のベンさんがやっており、私達女性陣はその羽をむしったりと、下処理をしていた。

毎回泣きたい気持ちでやっており、どうしても慣れない作業のひとつでもあった。

けど、そんな思いをした鶏を私達が食べる事はなかった。

むしろ、食べろと言われても食べれたかどうかは分からない。

けど、今目の前にある食材は私が下処理した鶏ではないので食べれる。

そう、食べられるのだ。

人間っ不思議な生き物だよね。

それに、自給自足の生活も慣れると楽しい事もいっぱいあった。

丹精込めて育てた野菜が実を成らせた時とか、それを収穫した時。
鶏が初めて卵を産んだ時。
とても感動した事を思い出す。

お庭だって、薔薇ではお腹は膨れないけど、庭師に頼んで庭の薔薇を市場で売ってもらい、家計の赤字埋めにした事とか。
あの時は、あれで小麦粉を買ったんだっけ。

執事もそれを見て見ぬふりをし、その場しのぎの収入で何とかやり繰りをしていたし。

何せ、収入は決まっているのに、出費が半端なくって。

気付けば先代が積み立てしていた資金にまで手をつける有り様。

まぁ、愛人が4人もいればお金は幾らあっても足りないだろう。

ルミナは教養や品性と言っていたが、ルミナとその両親の品性を保つ為に使っているお金は、領地収入を上回っていた。

ドレスだって一度着たらもう着ないし、アクセサリーも一度着けた物は二度と着けない。

流石に出費が酷かったので、侍女達と一緒に多少はリメイクをして誤魔化した事もあったけど、リメイクした事は一度もバレた事はない。

二人とも素晴らしい慧眼であると言えよう。
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