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マリー視点2

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姫様とキース様が踊り出してから、私はマゼンダ様の動向を探るべく招待客にふんして接近しています。

「折角の金蔓かねづるを逃すものですか」

ウェイターから幾つものグラスを取りやけ酒するマゼンダ様。

人の金だと飲みまくるという情報は正しいようね。

「例の媚薬は手に入って?前金を取ったのだから手に入らなかったなんて事は許さなくてよ」
そう言うと、近くにいたウェイターから小瓶を一つ受け取る。

「フフフフ……上出来ですわ」

マゼンダ様はそう言うと機嫌良く目の前の酒と料理を頬張り始めた。

「今夜は長丁場よ」

媚薬を使って長丁場ってあなた……。

取り敢えず、気付かれないように私も料理を食べ始める。

そして、先程のウェイター……新顔ね、後で調べてみましょう。

ホールの中央を見ると丁度姫様とキース様のダンスが始まっていた。

今日のキース様の衣装には見覚えがある。
そうか、あれは現ウイナルド公爵閣下が結婚式の時に着ていた服にそっくり。

もうこれは公爵家が結婚を意識しての演出としか思えないな。

あ~姫様のあのお顔は、また変な妄想にふけっておられるのね。
本当に困ったお方だわ。

そろそろ曲が終わりますわね。
姫様に一旦マゼンダ様の動向をお知らせしておこうかしら?
そう思っていたら、姫様はキース様の手を離さずニコリと微笑まれた。
間髪置かず二曲目が始まると、キース様は遠目でも分かるように嫌なお顔をされ舌打ちなさった。

あーー。

やっぱり。

キース様は今日がどういう日で姫様のエスコートをされているか理解していないようね。

フフフフ。
残念。
キース様は仕事馬鹿で優秀ですが、姫様の事だけは情報不足。

ただのエスコート役だと思ってお引き受けしたのかもしれませんが、今日は姫様のお誕生日。
それも、20歳の……ですわ。

これは陛下の方が一枚上手でしたわね。

さてさて、姫様へのご報告は後にして、私はマゼンダ様の動向を探らせて頂きましょうか。

私はその後、宮廷料理を堪能しつつマゼンダ様を尾行いたしました。

大変食べまくっていた私をマゼンダ様は一切気にする気配さえなく楽にお仕事出来ましたわ。
あぁ。
満腹満腹。
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