愛バラ

麻生空

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アンとイヴァンの結婚4

純白のウエディングドレスに身を包んだアンが新婦の待合室で一人窓の近くに陣取り外を眺めていた。

『等々この日が来たのね』

今までの長い道のりを思いうれい気に瞳を閉じる。

長い睫毛が影を作り静かな時間を噛み締めた。

コンコンと控えめなノックの音と共にイヴァンが入室して来る。


部屋へ一歩踏み出したイヴァンが訝しげにアンを見やる。

「付き添いの侍女はどうしたんだい?」
優しく問い掛けるイヴァンに、まさかイベントですから席を外させましたなんて言えない。
「少し一人になりたくって無理を言いました」
はかなげにそう言うとイヴァンは私を抱き締めて来た。
「あぁ。アン。とても綺麗だよ」
そう言うと触れるだけのキスをする。
「イヴァン様……」
いつも思うけど『物足りないです』なんて言えない。
「式の前だからね。我慢するよ」
そう言って私の手をとる。
「何を考えていたんだい?」
優しく問い掛けるイヴァン。
テレビのスチルそのままの笑み。
ほら。
言うのよ。
次のセリフ。
「昔の事を思い出していました」
「昔?」
きょとんとしたイヴァンに「はい。昔です」と頷く。
「イヴァン様ご家族がこちらに越して来られた時に父が私も連れてこちらを尋ねた事があるのです」
「そうだったのか……」
イヴァンが少し考える様にしている。
「あの奇跡の庭に迷いこんだ女の子が居た事を覚えていますか?」
そう問い掛けるとイヴァンが目を見開き
「あの大きなリボンを着けていた女の子か?」
と驚いたように聴いて来る。
「はい。大きなリボンを着けた女の子です。あの時はありがとうございました。あの時から私はイヴァン様をお慕いしておりました」
そう言うとイヴァンは顔に手を当てて「まさかあの時の……」と驚いている。
「どうしてもお側にいたくってこうして行儀見習いも兼ねてマリク公爵家にお世話になったのです」
そこまで言うとイヴァンが複雑な笑みを見せた。
「なら、がっかりしたのではないか?再会した私があんな顔になっていたのだから……」
『あんな』とはエマの言うところの『ブサメン』なのだろうが
「そんな事ございません。イヴァン様がどんなお顔になろうとも私の気持ちは変わりません。例えどんな姿でもあの時のイヴァン様に変わりないのですから」
少し臭いセリフを言っているのは自分でも分かる。
でも、本当にずっと好きでお慕いしていた事は事実だ。
どんな姿でも私の推しに違いはない。
だって、あのイヴァン様なのだから。

困った様にそう言えばイヴァンはこの上ない笑みを称えて口付けをして来た。
式の前にするようなキスではない、濃厚なやつだ。

こんなキス、今までされなかった。
そう思い、むさぼるようなキスを受け入れる。

化粧が落ちる?

気にもしません。

何故ならこの後の展開でイヴァンが侍女達に「アンがあまりにも可愛いから」と惚気のろけた事と私の有り様に、私は侍女達にイヴァン様の愛の深さを分からせる事が出来るのだから。
そして、セカンドシーズンで明らかになるが、イヴァンは自分の容姿が変わった事と身分から、アンがお金の為に結婚をしたと最初は思っていた事、結婚式の日に幼い頃の恋心で自分を慕っていたと判って警戒心が無くなった事をエマに話すシーンがあった。
これで私とイヴァン様の間も安泰だ。

そして、ここから公爵夫人の人生が始まるのだ。

あぁ。

ビバ、ヒロイン生活。

ビバ、愛バラの世界。

そう思い私の推し王子様であるイヴァンを堪能した。

前世から大好きです。イヴァン様。
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