愛バラ

麻生空

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アンとイヴァンの結婚7

ゾクリとする程の魔力がセドリックの内から漏れ出して来た。


多分これをアニメやゲームなどの二次元の映像で表現すれば、黒いオーラが辺りを包んでいるのだろうか。
そう思う位の鳥肌が立つような魔力だ。


セドリックの先程の空っぽの瞳は、今や紫紺色に変色し私達を見据えている。


「セ……セドリック?」
誰?
こんな人知らない。
恐ろしいまでの畏怖の存在感。
一瞬の沈黙を破ったのは硬質なまでのセドリックの声だった。
「やぁ。こんばんは。レディ達」
顔も声もセドリックの物なのに、喋り方が違うとここまで別人に思えるものなのか?
私を何時も優しく包んでいたあのオーラは今は何も感じない。

震える足を。

震える手を。

己の思念でこらえる。

「エマ。どうしたのかな?今日は素敵な夜会なのに婚約者の私をほったらかしにしておいて、友人と庭で何をしているの?」

何時もと違う。
非難しているのでも責めているのでもない。
私に何の感心もない声が頭上に降り注ぐ。

「今日は兄夫婦のめでたい席なのだから、ホールへ行って皆と祝おうじゃないか」

そう言いながら手を差し伸べて来る。

違う違う。
これはセドリックじゃない。

「貴方は誰?」
なけなしの勇気を振り絞ってそう問い掛ける。
「何を言っているの?私はセドリック・アイマロン。このアイマロン国の第一王子にして君の婚約者じゃないか」
そう言うとクスリと笑う。

違う違う。
やっぱり違う。

「貴方はセドリックじゃないわ」
セドリックが差し伸べた手を払いのけ、自身の腕を無意識に握り締めながらそう言うとセドリックは露骨に嫌な顔をした。

今まで嫌な顔をしたことはあるけど、ここまで露骨に嫌悪感を含ませる所なんて見たこともない。

「私の婚約者殿。今日は体調が良くないので此処で失礼するよ」
気分が悪いと言外に言うセドリックは、それだけ言うとすっと虚空に消えた。

セドリックが消えるとそこに漂っていた瘴気の様な魔力が薄まる。


恐怖と安堵の均衡が崩れ、ガクガクとキャサリンと共に地面に座りこんだ私は意識を手放した。


「ライアン……助けて……ライアン」
キャサリンの悲痛な声が何処か遠くに聞こえた様に思う。
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