最強魔導士となって国に尽くしたら、敵国王子様が離してくれなくなりました

湊一桜

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【第一章】片想い編

17. ゆるい魔導士団に勤務中

 次の日……朝早く起きて農園に行くと、農園はすでに光り輝いていた。レオン様のおかげだろうか。いや、レオン様の魔力は消耗している様子もなく、現在は宮廷の中におられるようだ。農園係がしているのだろうか。
 ホッと胸を撫で下ろす私に、農園の奥から出てきた男性が告げる。

「殿下からの伝言です。
 ローザ様は、午前中は魔導士団の活動に専念するように」

 レオン様は相変わらず優しい。こうやって、いつも私の行動に先回りしてくださるのだから。こんなレオン様に惚れないわけにはいかない……と思いつつ、首をぶんぶん振った。
 レオン様は王子様だから身分不相応だ。おまけに、最近のレオン様ときたら、私をからかってばかりいる。私の気持ちがバレているのだろうか。

 慌てて部屋に帰り、昨夜届いた魔導士団のローブに着替えた。
 緑色の真新しい半袖のローブは、私の体にぴったりだった。腹部までのローブの下には、緑色の足首までのパンツを履く。見た目以上に動きやすいし、私はこの服装が好きだ。

 ふと鏡を見ると、緑色のローブ姿の私がこっちを見ている。その姿はまさしく魔導士だった。ようやく私も魔導士なのだと実感が湧いてくる。そして教えてもらった通り、第二魔導士団の訓練施設へと向かった。




 今までは怪しい行動を慎んでいたため、部屋と農園の行き来しかしていなかった。そのため、ここへ来て初めて城内を歩く。
 立派な彫刻や大きな通路、整えられた樹木……宮廷は想像以上に大きく、迷子になってしまいそうだった。

 それでもすれ違う人は皆、緑色のローブ姿の私を見て、 

「おはようございます」

「お疲れ様です」

なんて挨拶をしてくれる。それが仲間だと認められているようで嬉しくなって、私も勇んで挨拶をした。

 陰キャの私は、挨拶なんかももちろん苦手だった。いつも俯いてボソボソと呟くだけ。そんな私が、こんなにも胸を張って笑顔で挨拶しているなんて!!




 こうして、無事に私は第二魔導士団訓練施設に辿り着いた。
 大きな訓練施設の前にはすでにリリーが待ち構えており、

「ローザ!!」

嬉しそうに私に手を振る。数日ぶりにリリーに会った私は、彼女に笑顔で手を振り返していた。

「ローザ、心配したよ?
 レオン様からローザが農園に夢中で、魔法の訓練も出来そうにないって聞いてたから」

「そうそう、忙しくしていて」

 笑顔でリリーに答えていた。

「でも、これからは魔導士団にも入ったから。よろしくね、団長」

 自分でも、こうやって陽キャのリリーと親しく話していることが信じられなかった。だが、決して無理をしている訳ではない。私は、レオン様やリリーと過ごす毎日が楽しいのだ。

 だが、私の明るい気分は、

「ローザ、魔導士団のみんなにも紹介するね」

訓練施設の中に入った瞬間に消滅することとなる。レオン様やリリーが仲良くしてくれるから忘れかけていたが、私は生粋の陰キャである。特にこういった賑やかな場所からは、消えたくなるほど苦手なのだ。



 訓練施設の中は、広い体育館みたいになっていた。その中にいる人々の視線を、私はいっせいに受ける。そしてすぐに私は囲まれてしまったのだ。

「リリー!その娘なの、新入りって?」

「珍しい黒髪をしてるね!!」

 当然だが、この人たちのコミュ力の高さに驚くばかり。見ず知らずの私に、いきなりフレンドリーに話しかけてくるなんて。
 おまけに、リリーだって仲間とわちゃわちゃして楽しそうだ。

「ねえねえ、ローザ!どんな国から来たの?」

「ローザなんだろ?俺たちをグルニア帝国から救ってくれたのって!」

 興味津々なのは分かるが、放っておいてと言いたい。もしくは、どこか陰に隠れてしまいたい。こうやって注目されるのは慣れていないし、この視線がいつか嘲笑に変わることも知っている。
 みんな、親切なのははじめだけだ。

 リリーもリリーで、

「みんな手を出しちゃダメだよ。レオン様のお気に入りなんだから!」

なんて言い始める。

 ちょ、ちょっと待って、いきなりその話題!?私は経験値ゼロゆえに、たしかにレオン様にぐらついている。でも、レオン様は私をからかっているだけだから!そもそも、王子様なんだから!!

 だが、魔導士たちはさらに興味津々になってしまう。ここはもう、私の苦手な陽キャのお祭り騒ぎと化していた。

「マジで!?殿下のお気に入りってあるの!?」

「でかした、ローザ!」

「いや、殿下はレベル高いでしょー。話しかけてもスルーされそうで……」

「それが、ローザはスルーされないんだよねー。
 あたし、レオン様に頼み込まれてるもん!ローザに変な虫が付かないように見守れって!!」

 最後の言葉はリリーのものだった。リリーもどうやらこのお祭り騒ぎに乗っかかって楽しんでいるらしい。この訓練施設は、レオン様の話題で騒然としていた。私はただ、一刻も早く逃げたいと思う。

 私としたことが、レオン様やリリーが優しいから忘れていた。魔導士団に入るということは、他の魔導士とも仲良くしなければいけないということを。私は、こんな陽キャ集団の中でやっていける自信がない。
 今さらだけど、魔導士団を辞退しようかな……なんて思った時だった。


「あれ!? ローザって、魔力交換済みなの!? 」

 近くにいた同い年くらいの魔導士が、私の右手首を見ながら驚いた声を上げる。それで、場がさらに騒然となる。私は真っ赤な顔で慌てて右手を後ろに隠したが、時すでに遅しだ。皆が興味津々で私に迫ってくる。


「マジで!? 若いのに、もうしちゃったの?」

「まさか殿下と……なはずないよね?」

 この状況で、本当のことなんて言えるはずもない。私がレオン様と魔力交換をしてしまったことを知ると、みんなはどう思うのだろう。もしかして嫉妬されたりして、いじめられるのかな……

 ふと魔導士たちの手首を見るが、同年代で魔力交換をしている人なんて、ほとんどいないことを思い知る。普通は軽々しく魔力交換なんてしないものなのだ!

「もう!みんなその話はいいから!!」

 この混乱を鎮めてくれたのは他ならぬリリーだったが、リリーだって真っ赤な顔をしている。リリーには後々質問責めに遭いそうだ。

「そういう訳で、訓練の時間が大幅に過ぎちゃったけど、これから訓練始めるね!!」

 リリーは笑顔でみんなに告げた。



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