最強魔導士となって国に尽くしたら、敵国王子様が離してくれなくなりました

湊一桜

文字の大きさ
21 / 78
【第一章】片想い編

21. 王子の視察は大変だ

「ローザ、おはよう!!」

「お、おはよう!」

 次の日の朝、私は魔導士団に出勤していた。もちろん、農園に魔力を送ってそれなりに消耗した後に、だ。
 魔導士団のみんなは、昨日と同様私を明るく迎え入れてくれ、私もかなり頑張って挨拶を返す。
 こんな私、今日は右手首にさりげなくスカーフを巻いている。というのも、人々の視線が気になって仕方なかったからだ。魔力交換しているか否かは、この国の人々にとって予想以上に重要なことのようだ。

 そして、今日はさらなる不安材料がある。昨日、レオン様が、魔導士団の視察に行くと言ったことだ。レオン様はここへ来て、一体何をするつもりなのだろうか。
 レオン様の魔力を探ってみるが、どうやらまだ場内にいるらしい。ホッと胸を撫で下ろした。




「みんなー!今日は防御魔法をするよー!」

 リリーの元気な声が、訓練施設に響いていた。
 防御魔法、もちろん知っている。だが、魔法の花形は攻撃魔法であって、私はそればかり練習していた。だから、防御魔法に関してはほぼ素人だ。頭の中を不安がよぎった。だが、リリーのひとことによって、さらにその不安が大きくなったのだ。

「ローザとカイト、前に出て」

 言われたままに前に出ると、カイトと呼ばれた男性も同じく前に出たところだった。カイトは私と同じくらいの年齢で、ダークブラウンの髪をした快活そうな青年だった。その明るい表情を見る限り、私の苦手な陽キャだろう。カイトを前に、居心地の悪い私は俯いた。

「カイトがローザに攻撃魔法をかけて、ローザはそれを防いでみて!」

 いきなりそんなことを言われても、どうやって防御すればいいのか分からない。
 だけど、ふと思い出した。私は度々防御魔法を目にしてきた。レオン様が戦場で私を守ってくれた時や、レオン様に攻撃魔法をかけてみた時だ。レオン様は軽々と魔法を跳ね飛ばしていた。こんな時ですらレオン様のことを考えて赤くなる私は、まんまとレオン様の罠にはまっているのだろう。

「カイト、ローザに手加減してあげてね」

「もちろんだ」

 カイトはそう言って、私に爽やかに告げた。

「いくよ、ローザ!」

 カイトは私に狙いを定める。そして、指先に魔力を込めた。その瞬間、私の近くで魔力が渦巻くのが分かる。私はレオン様の防御魔法を思い出し、必死にイメージした。私の周りに、光のバリアーみたいな壁を作るのだ。

 魔力の渦は大きくなり、旋風となって私に襲いかかる。私は身体中にまとった光の壁で、それを跳ね返していた。カーンと魔力同士がぶつかる音がする。そして、跳ね飛ばされた旋風は、さらに大きいものとなってカイトへと襲いかかり始めたのだ。
 カイトは驚きと恐怖の入り混じった顔で旋風を見ていて……助けなきゃ、と私は思った。そしてカイトへ襲いかかる旋風めがけて、新たな魔法を飛ばしていた。旋風よ、どうか消えてと思いながら。

 旋風は、閉じられたカイトの目の前ですっと消えた。ごーごーと渦巻く風の音が消えた訓練施設は、しーんと静まり返っている。私は信じられない思いでカイトを見ていた。
 今の、何?私は旋風を消したの?

 ぽかーんとする私に、リリーが驚いたように教えてくれる。

「ローザって、聖属性の魔法も使えるの!?」

「……え!?」

 聖属性の魔法。それはゲーム中の話であるなら、私も知っている。聖属性の魔法は別名白魔術と呼ばれ、聖職者のみが使えるのだ。いわゆる『黒魔術』を使用する魔導士は、白魔術を使えない。

「い、今の!光属性の魔法じゃなくて!? 」

 思わず聞き返すが、リリーは驚いた表情のまま教えてくれる。

「光属性なら、光が見えるはずだもん! 
 ものを消したり、人を回復させたり、息の根を止める魔法は、聖属性だよ」

 訓練施設の中がざわざわし始める。どうやら、魔導士が聖属性の魔法を使えるなんて、前例がないらしい。私は想像以上に型破りな存在だったのだ。
 ざわざわする訓練施設の中で、カイトはにこにこして私に歩み寄る。そして、ぎゅっと私の手を握った。

「ローザ、助けてくれてありがとう!
 ローザって、すごいや!!」

 私は目立とうとしてやったわけではない。ただ、カイトを助けたくてがむしゃらにやっただけだ。こんな私を、カイトは素直に褒めてくれる。それが嬉しくて、私は微笑んでいた……



 そんななか……
 

「皆の者、ロスノック帝国第二王子レオン様が、魔導士団の視察に来られた」

 不意に聞き覚えのある声がして、思わず扉を見た。扉の前にはマリウス様と数人の護衛がおり、その奥にレオン様がいる。レオン様と視線がぶつかり、私は慌てて目を逸らした。そして、カイトはばばっと握っていた私の手を離す。
 私としたことが、レオン様のことをすっかり忘れていた。レオン様が視察に来るということを。おまけに、カイトと手を握り合っていたところを見られてしまった。

「みんな、整列してレオン様に敬礼!」

 リリーの声で、魔導士団員は列を正す。そして胸の前で右手を握りしめた。私は列の隅っこに行き、見よう見まねで右手を握りしめる。かあっと顔を紅くさせたまま。

 そんな魔導士団員たちをレオン様は一瞥し、静かに告げる。

「楽にしてください」

 それで皆は、握りしめた右手を下に下ろした。私はレオン様を見ることが出来ず、紅くなって俯く。こんな私たちの前で、レオン様は話し始めた。

「私が今日ここへ来たのは、皆に一つ頼み事をしたかったからだ。それは皆の想像通り、ローザのことだ」

 私は顔を上げることが出来ないが、レオン様の視線をひしひしと感じる。それだけではなく、魔導士団のみんなも、レオン様の話こそ聞いているが、私が気になって仕方がないのだろう。

「ローザはどういうわけか故郷を離れ、この地に迷い込んだ。そして迷い込んだこの地で、我が軍を救ってくれた。
 誰も成し遂げられなかった野菜の栽培も、その高い魔力によって成功させることが出来た」

 いきなり、こんな功績を話すのはやめて欲しい。私がロスノック帝国を救ったのは偶然だし、野菜の栽培をしたのも興味があったから。なにも、もてはやされるためにした訳ではない。

「私は、散々身を粉にしてきた彼女に、これ以上無理をしないで欲しかった。
 だが、彼女は魔導士団に入って国に貢献したいと言って聞かないのだ」

 確かに私は魔導士団に入りたいと駄々をこねた。だが、私が望んでいるのは、こういった特別扱いではない。魔導士団の隅で、目立たずひっそり過ごしたいのだ。

 顔を上げると、レオン様と視線がぶつかった。私は真っ赤な顔のまま、きっとレオン様を睨む。だが、レオン様は勝ち誇った顔のまま告げるのだ。

「ローザ。私が来たら、きっと君は怒ると思っていた。だが、私は君が城内を自由に行き来出来るのも、不安に思っている。
 君の魔力が強大すぎるから、グルニア帝国も君を手に入れたいと思っているだろう」

……え!?

「だから私は、皆に直々に頼みに来た。
 ローザが敵の手に渡らないよう、守って欲しい。そして、故郷を離れ独りになったローザと、仲良くして欲しい。

 ……ローザがグルニア帝国の手に渡ったら、我らを待ち構えるのは敗北だ」

 ちょっと、大袈裟過ぎるでしょう!しかも、レオン様は、私がレオン様のものだと見せつけに来るのではなかったの!?それなのに、私を守れ、私と仲良くしろと言いに来たのだ。どちらにせよ、特別扱いもいいところだ。

 レオン様はシャツの袖を軽くたくし上げている。そして軽く腰に添えた右手首には、くっきりと魔力交換の痣が見える。何やってるの!!見せつけないでよ!!わざとやっているんだ!!
 私はひたすら、皆がそれに気付かないことを祈るのみだった。



感想 1

あなたにおすすめの小説

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

アラフォー幼女は異世界で大魔女を目指します

梅丸みかん
ファンタジー
第一章:長期休暇をとったアラフォー独身のミカは、登山へ行くと別の世界へ紛れ込んでしまう。その場所は、森の中にそびえる不思議な塔の一室だった。元の世界には戻れないし、手にしたゼリーを口にすれば、身体はなんと6歳の子どもに――。 ミカが封印の箱を開けると、そこから出てきたのは呪いによって人形にされた大魔女だった。その人形に「大魔女の素質がある」と告げられたミカは、どうせ元の世界に戻れないなら、大魔女を目指すことを決心する。 だが、人形師匠はとんでもなく自由すぎる。ミカは師匠に翻弄されまくるのだった。 第二章:巷で流れる大魔女の遺産の噂。その裏にある帝國の侵略の懸念。ミカは次第にその渦に巻き込まれていく。 第三章:異世界で唯一の友人ルカが消えた。その裏には保護部屋の存在が関わっていることが示唆され、ミカは潜入捜査に挑むことになるのだった。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。