最強魔導士となって国に尽くしたら、敵国王子様が離してくれなくなりました

湊一桜

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【第一章】片想い編

35. 私の魔力はチートです

 しばらく歩いた先に、グルニア帝国軍はいた。煌々と輝く太陽の下、その赤い鎧が毒々しく光っている。

 グルニア帝国軍を見ると、あの悪夢の時間を思い出さずにはいられなかった。私はグルニア帝国に軟禁され、人間的な扱いを受けなかった。そして挙げ句の果てに、戦場に投げ棄てられた。個人的にも、グルニア帝国には恨みがある。


 グルニア帝国軍は、拡声器みたいな機械を持っていた。そして、姿は見えないのだが、ドミニクの声が平地に鳴り響いた。

「我らは、グルニア帝国軍。
 ロスノック帝国よ。我らと戦いたくなかったら、『伝説の魔導士』を差し出せ」

 その予想外の言葉に、

「えっ!?」

驚きを隠せなかった。

 私はてっきり、彼らが雲発生機を壊した報復にやってきたのだと思っていた。だから、戦いは避けられないのだと。それなのに、彼らの要求は『伝説の魔導士』を差し出すことだ。そこまでして、私が欲しいの!? 私の力を過大視しているのではないの!?

 私は、ロスノック帝国が大好きだ。レオン様やリリー、魔導士団のみんなが大好きだ。だから、私が犠牲になれば、みんなを助けることが出来るのだ。グルニア帝国には二度と戻りたくなかったが、私を手に入れたら……

 こんな私の思考は、

「断る」

最前線から発せられる、レオン様の声によって掻き消された。

「『伝説の魔導士』は、我が妻となる女性だ。
 貴様らは、ロスノック帝国の民を困窮に追いやったうえ、我が妻にまで手をかけるつもりか。
 我々は、貴様らを断じて許さない!」

 胸が痛い。私を差し出してしまえば国を救えるのに、レオン様は私を手放すつもりはないのだ。

「ローザ、行っちゃ駄目だよ」

 隣にいるリリーが言う。

「俺たち、全力でローザを守るからさ」

 カイトだって言う。

「みんな……」

 こんなに優しくて大切な仲間を、私だって守るから!




 戦いの火蓋が切られた。
 グルニア帝国は、例のドローンみたいな機械をたくさん飛ばしてくる。それと共に、赤色の鎧の騎士たちが襲いかかる。
 その最前線で、レオン様は剣を振るう。レオン様の剣からは白い閃光が迸り、次々と敵が倒れていく。

 私だって、必死で魔法を使った。
 第二魔導士団の訓練で教わったよう、防御係がしっかりとバリアーを張ってくれる。その中で、ありったけの魔法をぶっ放した。

 もともと、私の魔力は桁外れに大きいらしい。野菜をたくさん食べていたため、私の魔力は満タンに近い。そこに、レオン様との魔力交換により、カリスマの域に達した光属性魔法が加わる。その力は、想像以上だった。

 私の魔法は大地を揺るがし、敵を次々と失神させていく。そして、ドローンみたいな戦闘機械を撃墜させた。

 以前私は、戦場で力を暴走させた。あの時は、知らず知らずのうちに敵をなぎ倒していた。だけど、今の私は違う。力をコントロールし、確実に的を狙えるようになっていた。大地に鋭い閃光が走り、グルニア帝国軍はパニックを起こして散り散りに走った。

 もちろん、この戦いで活躍したのは私だけではない。リリーは小さな体からは想像できないほどの火炎を放ち、敵は恐怖で逃げ惑う。
 カイトはしっかりとバリアを張り、敵の攻撃を寄せ付けない。
 そしてレオン様は最前線で剣を振い、その姿は……紛れもなく、ゲームで見たラスボスのレオン様だった。
 無敵のレオン様を前に、グルニア帝国軍は怯え命乞いをする。稀に立ち向かう勇敢な敵は、ゲーム中のレオン様の必殺技、『閃光斬切』とも思える技で吹っ飛ばされる。

 明らかにロスノック帝国の優勢だった。そして、勝利も間近だった。


 
 だが……

「えっ、何!?」

隣でリリーの声が聞こえる。とっさに横を見た私は、視界の端に第一魔導士団の黄緑色のローブを見た気がした。そして次の瞬間、体に衝撃が走る。頭がぼーっとして意識が遠のいていくのが分かった。

「ローザ!!」

 遠くでレオン様の叫び声が聞こえた気がした。
 
 グルニア帝国に勝利して、嬉々として帰れると思ったのに……私は、どうなってしまうのだろう。




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