つまらない女と言われたため、婚約者をぶん殴りました〜婚約破棄して武闘家になろうと思います〜

湊一桜

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大切な友を守るために

第31話

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 いつものようにフリードと食事をする。今日は筋肉を付けるため、鶏肉のササミをオーダーしていた。そして、ササミを始めとする、筋力アップメニューを堪能する。辺境伯邸の料理人は凄腕で、私がどれだけ無茶なオーダーをしても、頬がとろけるような美味しい料理を提供してくれる。今日のササミ定食だって、とても上品で美味しかった。

「ねぇ、フリード。このササミのローストチキン、すっごく美味しい」

 笑顔でフリードに告げる。

「この付け合わせの花も綺麗ね」

「その花は、食用花だ。この辺り一帯で取れるから、国外にも輸出している」

「へぇ、食べられるの!」

 こうやって、いつの間にかフリードと笑い合って食事をするようになっていた。フリードは大笑いすることはないが、口角が上がり気味だ。きっと、私との時間を楽しんでくれているのだろう。
 出会った初日に、食事中に無駄話をするなと言った人は、どこのどの人なのだろう。

「メリッサ、今日のワインは気に入ったか? 
 これはうちの領地で獲れた最高の葡萄を使用して、最高の設備で寝かせた自慢のものだ」

「うん、すっごく美味しい……」

「それなら今度、ワイン工場にも行ってみよう」

 フリードは忙しいはずなのに、こうやって私との時間も大切にしてくれる。いつの間にかこうやってフリードと過ごすことが楽しくて、フリードといることが当然になっていた。

「結婚式のゲストへのドリンクも、このワインにしようね!」

 思わず言ってしまうと、フリードは一瞬驚いた表情をする。そして、嬉しそうに目を細めて口元を緩める。その顔を見ると、フリードが好きだと改めて思う。私はいつの間に、こうもフリードに溺れていたのだろう。

「そうだな……」

 フリードは甘い声で静かに告げる。

「メリッサの好きなものは、全て盛り込みたい」

 こんなに幸せだと、逆に不安になる。この幸せが、いつか壊れてしまうのではないかと。だからフリードを信じることも嫌だったのに……それなのに、後戻り出来ないほど、フリードを好きになり始めている。
 
「メリッサ……」

 フリードが甘い声で私を呼ぶ。頬を染めて、口元をきゅっと結んで。そしてフリードは、何かを必死で我慢するような表情をしたあと、ため息をついた。
 そして頬を染め、切なげに吐き出す。
 
「悪い……キスさせてくれ」

「えっ!? 」

 動揺する私を前に、フリードは立ち上がる。そして、ゆっくりと私のほうへと歩いてくる。相変わらず笑わないフリードだが、その頬は熱く瞳は甘い。

 ドキドキドキドキ……

 座っているだけなのに、耳の奥で心臓の音が聞こえる。切なげな表情のフリードから、目が離せなくなる。

 フリードは私の前まで来ると、椅子に座る私にそっと手をかける。そしてそのままそっと顔を近付け、唇を重ねた。
 フリードの存在を強く感じるキスだった。胸が熱くて、ずっとこうしていたい……

 長いキスの後、名残惜しそうに唇が離れる。私の顔は真っ赤だが、フリードだって顔が赤い。フリードの顔を見ると、思わず笑ってしまった。すると、フリードも見たことのないような笑顔になる。その嬉しそうな顔がまた、胸をきゅーっとするのだった。

 フリードの感情を全面に出した顔を見ると、さらに深みにはまってしまう。こんなフリードを、もっともっと見たいと思ってしまう。私は、日に日にフリードを好きになっている。



「……あの……」

 不意に声が聞こえ、飛び上がった。私だけでなく、フリードまでビクリとする。
 声のほうを見ると、そこにはいつの間にかグレーと赤色の隊服を着たジルが立っていた。そして頬を染め、言いにくそうに告げる。

「フリード様……」

 ジルはいつからそこにいたのだろう。きっと、キスする前からいたのだろう。そして、話しかけられなかったのだろう。キスしているところをジルに見られた私は、恥ずかしい気持ちでいっぱいになる。真っ赤な顔で唇を押さえている。だが、フリードは明らかに怒っている。ジルを見ているためその顔は見えないが、後ろ姿だけでもとてつもないオーラを感じた。

 だが、さすが騎士団長のジルも強かった。苦笑いを浮かべながら、フリードに告げた。

「街に、急にイエティが現れました。街自体に被害はないのですが、恐らくメリッサの友人の、ヒューゴがさらわれました」

 その言葉に、

「ヒューゴが!? 」

思わず叫んでいた。恥ずかしい気持ちも一瞬で吹っ飛んでしまった。ヒューゴが、魔物にさらわれた!?

「フリード……」

 私はすがるようにフリードを見る。

「私も……行きたい」

 フリードはじっと私を見つめた。その顔はいつもの無表情だった。恐らくフリードは、私が行くと行っても聞いてくれないだろう。そして前回フリードの言いつけを無視した私は、フリードに多大な迷惑をかけた。

 無言の時間が数分にも思えた。フリードは私を見たまま、色々と考えを巡らせているのだろう。そしてようやく、ため息混じりに告げた。

「お前は行くなと行っても、行くのだろう」

 その薄い青色の瞳が、私を心配そうに捉える。

「俺から離れないと約束したら、ついてきてもいい」

「……え!? 」

 予想外の言葉に、ぽかーんとなる私。そんな私に、フリードは告げた。

「外は寒いぞ。チェーンメイルの上に、俺の防寒着を着てくるといい」

「……うん!! 」

 私は部屋に向かって駆け出していた。そして扉から出る前に、フリードを振り返る。

「ありがとう、フリード!」

 そう言うと、フリードはかすかに笑ってくれた。私が行くと、邪魔になる可能性だってある。危険に晒される可能性もある。それなのに、フリードは私の気持ちを優先させてくれたのだと思い知る。
 フリードが私を信頼して同行させてくれるのだから、私も精一杯頑張らなきゃと思った。そして、ヒューゴには無事でいて欲しいと願うばかりだ。



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