龍の子と旅の子は全てを謳歌する

やのう ユト

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二人の出会いと約束

愛と覚悟

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 天候は吹雪。周りは氷山で囲まれた場所。
 大地が震える程の咆哮をあげるドラゴンとそれを見据える男と女がいた。どちらも深手を負っており、女の方は凍傷でぐったりしてる子供を抱きしめ回復魔法をかけている。
 竜の周りには鉤爪で切り刻まれた者や氷漬けにされた者達が雪の上に転がっていた。
 大分まずいこの状況下で覚悟を決めた男は言う。

「同胞もやられ、どちらも深手を負った。どのくらい保つかわからない」

 男の言葉に女は答える。

「……そうね、もう潮時だわ。」
「ああ」
「でも私達の子が死ぬのは嫌。だから……カイハだけは助けるわ」
「考えることはやはり同じだ。俺も息子が死ぬ姿を見たくない。守り抜こう」

 二人は親としての覚悟を決める。
 子供を愛おしそうに見つめ、母親はまだ意識がある子供へ微笑み呟く。

「カイハ。あなたはとても綺麗な魔力を持ってるからいつか素晴らしい魔術師になるのかしら?あなたの成長を最後まで見ながら旅を続けたかったわ」
「……かあさん?」

 弱々しく母と呼ぶ声を聞き、泣きながら優しくカイハの頬に手を添える。

「ごめんねカイハ。三人で逃げきるのは難しそうなの。だからあなただけでも助けるわ。世界の色んなものを見て長生きしてね」

 最後に母親は子供の耳元で伝える。

「愛してるわカイハ。私達の子になってくれてありがとう」

 カイハを父親の手に託し、竜を見ながら杖を構える。

「凍傷はある程度回復させて体も温めた。私が足止めするからカイハをお願い」
「すまん、すぐにお前のところに戻る。待っていてくれ」

 父親はカイハの体を抱き、すぐに雪の上を走り出す。目指すは川がある方向へ。
 男も深い傷を負った状態。傷口からは血が流れ出し呼吸も荒くなりはじめる。それでも手には力がこもりカイハを離すまいと抱える。そしてカイハに最後の想いを伝える。

「カイハすまない。守ることも出来ず怪我をさせた。痛いだろう」

 男の謝罪にカイハは何かを伝えようと手を伸ばす。その痛々しい姿を見て男の顔が歪む。後悔の念を押し殺しながら続ける。
 
「母さんと共にいると約束した。その約束を違えたくないという父親の我儘を許してくれ。だが最後まで俺もお前を守ろう。お前を一人にすることを申し訳ないと思うが生きてほしい」

 そして川へとたどり着く。父親は川岸に足を踏み入れカイハへ魔法を唱える。  

金色の加護ゴルデナーシュッツ

 金色の球体がカイハを包み込む。父親は祈りを捧げ球体を川へ流そうとした。
 そんな父親の様子に何かを察したのか、カイハはほんの少し口を開く。
 
「いか……な…………いで」

 その言葉にハッとし、動きが止まり躊躇する。 
 だが背後の大きな衝撃音に我に返り、次は躊躇わずに球体を優しく川へ下ろした。川の流れに沿って球体が流されていく。

「優しい者がきっと助けてくれる。生きてくれカイハ。たくさんの仲間と出会い、そして強くなれ。愛しい俺の子よ」

 一筋の涙を流しながら父親は叫ぶ。流される子供を見届けてから男は女のいる場所に急いで戻っていった。
 カイハは背を向け走る父親の姿を見ながら金色の球体の中で涙を流す。そして小さく許さないと呟き意識を手放した。







 全身傷だらけになりながらもこの先へは行かせないという固い意志を持ち、女は杖を振る力を緩めない。

(カイハはもう大丈夫かな)

 そんな考えをしている最中、竜は口元にたくさんの魔力を集中させた。

(ブレスがくる。もう限界ね)

 女は困ったように笑う。
 全てをその身に受けようと目を閉じた瞬間背後に温かいぬくもりを感じた。ヒューヒューと荒い呼吸音が聞こえる。男が女の元へ戻ってきたのだ。男の温もりに女は安堵する。

「……カイハは?」
「ヒュー……カイハは………加護を与えた………ヒューヒュー…もう大丈夫だ」
「…ありがとう。私達の旅もここまでね」
「ひ……とりで、ヒューヒュー……頑張らせて…悪かった…………ありがとう」

 泣きながら男の手に自分の手を重ね、互いの存在を確かめ合う。そしてとうとう二人に目掛けてブレスが解き放たれ体を貫いた。二人は雪の上に倒れ込む。
 ブレスを吐き終えた竜は大きな翼をはためかせ大空へと飛んでいく。
 男はすぐに息を引き取った。女の方はまだ息をしており、中々死ねないこの状態を苦しいなと笑う。
 だんだん目蓋が閉じていく。視界がかすれ始めた時に人影が見えた気がしたがそこで意識が途絶えた。




 
 

 
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