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第二章:はるでも あきでも ふゆでも すいか
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放課後、野堀くんの姿がドアガラスに映る。彼が背負っているギターもうつった。野堀くんは、教室のドアの外から、僕のクラスのホームルームががいつ終わるのか覗いていた。
僕のクラスの先生はホームルームの話が眺めだから、他のクラスが放課後を迎えてもホームルーム中、ということが多々ある。
でも、今日は、長話をしていた先生も、野堀くんの視線に気がついたみたいで、早めに切り上げてくれた。
ようやく僕らにも放課後が訪れる。
「野堀くん、ありがとうね!」
「野堀、グッジョブ!」
ドアを開けた瞬間、野堀くんに対して何人ものクラスメイトがねぎらいの言葉をかけていた。野堀くんのおかげで、いつもよりも随分と早く放課後を迎えることができた。功労者だ、という雰囲気。
野堀くんに対して随分と親しげに、ハイタッチしている子もいる。野堀くんはみんなの人気者みたいだ。
僕も彼に近づく。すると彼はぱあっと嬉しそうな表情へと変わった。
「お待たせ! 野堀くん。ごめんね。」
「ううん! 大丈夫それじゃあ、行こうか!」
僕達は学校を出て、二人並んで歩いていた。
こうして一緒に誰かと歩くのなんて随分と久しぶりだ。
あの日からずっと、音楽だけではなく、日常生活でも、人と距離を置いて過ごしていたから。
傷つくのが、誰かに何かを言われるのが怖くて。言いようのない不安に襲われていた。
「どう? この町には慣れた?」
野堀くんが話しかけてきてくれた。
「う、うん……! すごく自然がいっぱいで、なんだか落ち着くところだなあって思った……!」
「そっか……! そう言ってくれて嬉しい! 要広市に比べたらやっぱり人も店も少ないとは思うけど、自然いっぱいで、商店街もいいところだからさ、楽しんでもらえたら嬉しいよ!」
野堀くんは自分が褒められた時のように嬉しそうな表情を浮かべている。この町がすごく好きなんだなあって思った。
その後も、世間話のような軽い話をしながら、商店街に行く。高校から歩いて10分ほどで商店街の入り口に着いた。
「わあ……!」
商店街は遠目からは見ていたけれど、わいわいと活気に溢れていた。夕飯時だからか美味しい匂いと、人々の声に溢れている。あの軽快な「すいか商店街の歌」が混ざり合って楽しくあたたかな雰囲気がそこにはあった。そして、どこか懐かしさも感じる場所だった。
「じゃあ、早速行こうか!」
「う、うん……!」
野堀くんの隣を歩く。僕はきょろきょろと辺りを眺めていた。賑やかな商店街。店員さんが自分の店に呼び込む声や、買い物客と店員さんが親しげに喋る声が聞こえてくる。歌詞の通り、お肉屋さんもお魚屋さんもある。
「ああ、タイリュー。おかえり!」
30代くらいの綺麗な女の人がこちらに向かって声を掛けてきた。黒髪を一つにまとめた、凜々しい雰囲気の綺麗な女の人が店から出てきた。
歴史がありそうな建物に、習字の文字で「天羽和菓子店」と書かれている看板が取り付けられている建物から出てきた。和菓子屋さんの店員さんかな。
歌詞の通り和菓子屋さんもあるみたいだ。
「ただいま、キヌヨさん!」
「お、お知り合い?」
親しげな雰囲気を出していたから驚いて僕は小声で彼に訊ねてしまった。
「行きつけの和菓子屋さんなんだ! この人はキヌヨさん!」
僕の質問に答えた後、野堀くんはキヌヨさんに対して僕のことを「隣のクラスの宇都見くん!」と元気に紹介してくれた。
「えっと、野堀くんの隣のクラスの……う、宇都見玲と申します」
「そうなんだ! アタシはこの和菓子屋の五代目、天羽キヌヨ(あもうきぬよ)って言うの。よろしくね!」
「こ、こちらこそ……! お、お世話になります!」
僕が緊張しながら会釈をすると、キヌヨさんはにっと気の良い笑顔を浮かべた。そして「ちょっと待っててね」と言ってもう一度店に戻る。キヌヨさんは何かを持って出てきた。小さな袋二つと、大きめのビニール袋。
「ね、タイリューにウツミくん、これ、もしよかったら食べて! 新発売のパリパリクリーム大福! 自信作なの!」
「おお! ついに出来たんですね!」
「そうなの!おとんを言い負かしてね! 食べて食べて!」
キヌヨさんは僕達にかわいらしい袋に入った透き通った和菓子を一つずつ渡してくれた。水まんじゅうのような見た目をしていた。
「ありがとう!」
「あ、ありがとうございます!」
「どういたしまして! もしよかったら今度感想聞かせてね!」
僕達はキヌヨさんにお礼を言う。
「あと、タイリュー、これ、うちのおとんから邦夫じいちゃんにお見舞いって。邦夫じいちゃんが好きなせんべい」
そして、もう一つの袋を野堀くんに手渡した。
「あ、わざわざすみません。ありがとうございます」
「いえいえ。邦夫じいちゃん、早く治って、またバンド出来るといいわね」
「そうですね……」
キヌヨさんの言葉に、少し野堀くんの表情が曇ってしまった。
僕のクラスの先生はホームルームの話が眺めだから、他のクラスが放課後を迎えてもホームルーム中、ということが多々ある。
でも、今日は、長話をしていた先生も、野堀くんの視線に気がついたみたいで、早めに切り上げてくれた。
ようやく僕らにも放課後が訪れる。
「野堀くん、ありがとうね!」
「野堀、グッジョブ!」
ドアを開けた瞬間、野堀くんに対して何人ものクラスメイトがねぎらいの言葉をかけていた。野堀くんのおかげで、いつもよりも随分と早く放課後を迎えることができた。功労者だ、という雰囲気。
野堀くんに対して随分と親しげに、ハイタッチしている子もいる。野堀くんはみんなの人気者みたいだ。
僕も彼に近づく。すると彼はぱあっと嬉しそうな表情へと変わった。
「お待たせ! 野堀くん。ごめんね。」
「ううん! 大丈夫それじゃあ、行こうか!」
僕達は学校を出て、二人並んで歩いていた。
こうして一緒に誰かと歩くのなんて随分と久しぶりだ。
あの日からずっと、音楽だけではなく、日常生活でも、人と距離を置いて過ごしていたから。
傷つくのが、誰かに何かを言われるのが怖くて。言いようのない不安に襲われていた。
「どう? この町には慣れた?」
野堀くんが話しかけてきてくれた。
「う、うん……! すごく自然がいっぱいで、なんだか落ち着くところだなあって思った……!」
「そっか……! そう言ってくれて嬉しい! 要広市に比べたらやっぱり人も店も少ないとは思うけど、自然いっぱいで、商店街もいいところだからさ、楽しんでもらえたら嬉しいよ!」
野堀くんは自分が褒められた時のように嬉しそうな表情を浮かべている。この町がすごく好きなんだなあって思った。
その後も、世間話のような軽い話をしながら、商店街に行く。高校から歩いて10分ほどで商店街の入り口に着いた。
「わあ……!」
商店街は遠目からは見ていたけれど、わいわいと活気に溢れていた。夕飯時だからか美味しい匂いと、人々の声に溢れている。あの軽快な「すいか商店街の歌」が混ざり合って楽しくあたたかな雰囲気がそこにはあった。そして、どこか懐かしさも感じる場所だった。
「じゃあ、早速行こうか!」
「う、うん……!」
野堀くんの隣を歩く。僕はきょろきょろと辺りを眺めていた。賑やかな商店街。店員さんが自分の店に呼び込む声や、買い物客と店員さんが親しげに喋る声が聞こえてくる。歌詞の通り、お肉屋さんもお魚屋さんもある。
「ああ、タイリュー。おかえり!」
30代くらいの綺麗な女の人がこちらに向かって声を掛けてきた。黒髪を一つにまとめた、凜々しい雰囲気の綺麗な女の人が店から出てきた。
歴史がありそうな建物に、習字の文字で「天羽和菓子店」と書かれている看板が取り付けられている建物から出てきた。和菓子屋さんの店員さんかな。
歌詞の通り和菓子屋さんもあるみたいだ。
「ただいま、キヌヨさん!」
「お、お知り合い?」
親しげな雰囲気を出していたから驚いて僕は小声で彼に訊ねてしまった。
「行きつけの和菓子屋さんなんだ! この人はキヌヨさん!」
僕の質問に答えた後、野堀くんはキヌヨさんに対して僕のことを「隣のクラスの宇都見くん!」と元気に紹介してくれた。
「えっと、野堀くんの隣のクラスの……う、宇都見玲と申します」
「そうなんだ! アタシはこの和菓子屋の五代目、天羽キヌヨ(あもうきぬよ)って言うの。よろしくね!」
「こ、こちらこそ……! お、お世話になります!」
僕が緊張しながら会釈をすると、キヌヨさんはにっと気の良い笑顔を浮かべた。そして「ちょっと待っててね」と言ってもう一度店に戻る。キヌヨさんは何かを持って出てきた。小さな袋二つと、大きめのビニール袋。
「ね、タイリューにウツミくん、これ、もしよかったら食べて! 新発売のパリパリクリーム大福! 自信作なの!」
「おお! ついに出来たんですね!」
「そうなの!おとんを言い負かしてね! 食べて食べて!」
キヌヨさんは僕達にかわいらしい袋に入った透き通った和菓子を一つずつ渡してくれた。水まんじゅうのような見た目をしていた。
「ありがとう!」
「あ、ありがとうございます!」
「どういたしまして! もしよかったら今度感想聞かせてね!」
僕達はキヌヨさんにお礼を言う。
「あと、タイリュー、これ、うちのおとんから邦夫じいちゃんにお見舞いって。邦夫じいちゃんが好きなせんべい」
そして、もう一つの袋を野堀くんに手渡した。
「あ、わざわざすみません。ありがとうございます」
「いえいえ。邦夫じいちゃん、早く治って、またバンド出来るといいわね」
「そうですね……」
キヌヨさんの言葉に、少し野堀くんの表情が曇ってしまった。
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