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ep9
ep9『ナイト・オブ・ファイヤー』 誰かの為に生きられたら
確かにそうだな。
概史の言葉がストンと胸の奥に落ちてきた気がした俺は頷く。
「なんかオレ、兄貴に昔、教わった事とか思い出したんスよ」
概史は遠くの空を見た。
どんな事だよ?と俺が訊き返すと──────概史はこう答えた。
「『人は自分以外のもののために生きられるようになって はじめて生のスタートを切る』って言葉なんスけど、その時は意味わかんなくて」
だけど、と概史は続けた。
「今はめっちゃわかります。その言葉。鈴木先輩もそうだし────────」
俺もそうありたいなって、ちょっと思ったんスよね、と言う概史の頬は夕焼けに照らされて少し赤く染まっている。
─────────人は自分以外のもののために生きられるようになって はじめて生のスタートを切る。
俺はその言葉を反芻した。
それからもう一度、概史の横顔を見る。
年下の筈の概史の顔はどこか大人びていて、少し遠い存在に思えた。
人のために生きるってのは大人になるって事なんだろうか。
それとも。
大人になったら人のために生きられるようになる?
どちらにせよ────────俺にとっては遥か遠い彼方の世界の話に感じられた。
俺だけが童貞で、世の中のことを何もわかってなくて。
いつまで経っても子どもでしかないんだろう。
少し絶望的な気分に浸りながらも俺は必死で煙草をふかした。
気にしてないフリをするのに必死だった。
まあでもwと概史が少し茶化しながらこう言う。
「これって個人の能力だけじゃなくてw相性とかその他の条件もありますよね。例えば──────鈴木先輩のとこはお互いがお互いにベタ惚れって感じじゃないスか?」
気持ちや熱量が一方通行だと成立してないスよね、という概史の分析は的確なように思えた。
どちらか片方が気乗りしてない結婚生活ってのはきっと長続きしないんだろう。
「なるほど。そうだな」
俺が相槌を打つと概史は満更でもなさそうな表情でこう続ける。
「それと思ったんですけどw家族の手伝いがあるってのも大きいっスよね。鈴木先輩のトコだとお婆ちゃんスよね」
そもそも、と概史は更にヒートアップしたような様子で続けた。
「ネットとかSNS見たら、世の中の大人たちって常に限界ギリギリじゃないスか。子育てしてる人なんて特に顕著で。旦那が育児や家事を手伝わないとか、ワンオペ育児つらいとか」
でもそれって、人手か金かその両方があったら解決しそうっスよね、と概史は俺に同意を求めてくる。
「実家の爺ちゃん婆ちゃんか、もしくは自分たちの親か─────────人手がありゃストレスも溜まんないだろうし、金がありゃベビーシッター的なの頼めるじゃないスか?」
なるほど。
一理ある気もする。
身内でもプロでも、誰かが頻繁に助けてくれりゃ負担は減るもんな?
「だから、婆ちゃんが頻繁に子守りしてくれる鈴木先輩の家庭って上手く回ってるって印象ですよね。やっぱ若いうちに地元で結婚しとけば親や身内も若いじゃないスか。近くに住んでるだろうし。そこんとこは有利っスよね。羨ましいっスよ」
なんでだよ、お前も若いじゃねぇか、と俺が訊き返すと概史は自虐的にこう答える。
「だってww俺んちは親も爺さん婆さんも居ないしww撫子の家も親が居ないしww頼みの綱の爺さんはヨボヨボだしww」
俺らの子どもが生まれるまで長生きしてくれりゃいいんスけどね、とやや照れながら話す概史はやっぱり遠い。
近くに居るのになんで遠くて眩しいんだろう。
守るものがある人間ってのはこんなにも強くなれるものなんだろうか。
俺は概史が心底、羨ましくて堪らなくなってしまった。
概史の言葉がストンと胸の奥に落ちてきた気がした俺は頷く。
「なんかオレ、兄貴に昔、教わった事とか思い出したんスよ」
概史は遠くの空を見た。
どんな事だよ?と俺が訊き返すと──────概史はこう答えた。
「『人は自分以外のもののために生きられるようになって はじめて生のスタートを切る』って言葉なんスけど、その時は意味わかんなくて」
だけど、と概史は続けた。
「今はめっちゃわかります。その言葉。鈴木先輩もそうだし────────」
俺もそうありたいなって、ちょっと思ったんスよね、と言う概史の頬は夕焼けに照らされて少し赤く染まっている。
─────────人は自分以外のもののために生きられるようになって はじめて生のスタートを切る。
俺はその言葉を反芻した。
それからもう一度、概史の横顔を見る。
年下の筈の概史の顔はどこか大人びていて、少し遠い存在に思えた。
人のために生きるってのは大人になるって事なんだろうか。
それとも。
大人になったら人のために生きられるようになる?
どちらにせよ────────俺にとっては遥か遠い彼方の世界の話に感じられた。
俺だけが童貞で、世の中のことを何もわかってなくて。
いつまで経っても子どもでしかないんだろう。
少し絶望的な気分に浸りながらも俺は必死で煙草をふかした。
気にしてないフリをするのに必死だった。
まあでもwと概史が少し茶化しながらこう言う。
「これって個人の能力だけじゃなくてw相性とかその他の条件もありますよね。例えば──────鈴木先輩のとこはお互いがお互いにベタ惚れって感じじゃないスか?」
気持ちや熱量が一方通行だと成立してないスよね、という概史の分析は的確なように思えた。
どちらか片方が気乗りしてない結婚生活ってのはきっと長続きしないんだろう。
「なるほど。そうだな」
俺が相槌を打つと概史は満更でもなさそうな表情でこう続ける。
「それと思ったんですけどw家族の手伝いがあるってのも大きいっスよね。鈴木先輩のトコだとお婆ちゃんスよね」
そもそも、と概史は更にヒートアップしたような様子で続けた。
「ネットとかSNS見たら、世の中の大人たちって常に限界ギリギリじゃないスか。子育てしてる人なんて特に顕著で。旦那が育児や家事を手伝わないとか、ワンオペ育児つらいとか」
でもそれって、人手か金かその両方があったら解決しそうっスよね、と概史は俺に同意を求めてくる。
「実家の爺ちゃん婆ちゃんか、もしくは自分たちの親か─────────人手がありゃストレスも溜まんないだろうし、金がありゃベビーシッター的なの頼めるじゃないスか?」
なるほど。
一理ある気もする。
身内でもプロでも、誰かが頻繁に助けてくれりゃ負担は減るもんな?
「だから、婆ちゃんが頻繁に子守りしてくれる鈴木先輩の家庭って上手く回ってるって印象ですよね。やっぱ若いうちに地元で結婚しとけば親や身内も若いじゃないスか。近くに住んでるだろうし。そこんとこは有利っスよね。羨ましいっスよ」
なんでだよ、お前も若いじゃねぇか、と俺が訊き返すと概史は自虐的にこう答える。
「だってww俺んちは親も爺さん婆さんも居ないしww撫子の家も親が居ないしww頼みの綱の爺さんはヨボヨボだしww」
俺らの子どもが生まれるまで長生きしてくれりゃいいんスけどね、とやや照れながら話す概史はやっぱり遠い。
近くに居るのになんで遠くて眩しいんだろう。
守るものがある人間ってのはこんなにも強くなれるものなんだろうか。
俺は概史が心底、羨ましくて堪らなくなってしまった。
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