14 / 58
出会い編
第13話
しおりを挟む
「すまない。」
彼が一言そう言う。
その言葉によって私は理解した。
振られ···たんだ。
心の中からぶわっと何かが溢れる。
最初に彼を好きになったのは顔だったかもしれない。
けれど色んなフェルさんを知る中で、その中身も素晴らしい人だと思った。
この世界では嫌悪されてしまう顔を持っていても、自分を見失ってなどいなかったフェルさん。
一つ一つにお礼を言ってくれる律儀さも、私の自分勝手な行動にも苦笑しながら相手してくれるところも。
全部、全部好きなのに。
自分自身、こんなにも彼が好きだなんて知らなかった。
なのに、
ーーーー振られちゃったなあ。
ボロボロと瞳から涙が零れる。
「何がッ···何が駄目だったんですかあ。」
私はわんわん泣きながらフェルさんに聞いた。
フェルさんに振り向いてもらおうと沢山話し掛けた。
たくさん笑いかけた。
自意識過剰すぎだのか。
しかし、フェルさんも私に好意的だと思っていた。
フェルさんが困ったように私を見ながら答える。
「─────わからない。」
たった一言、それだけ。
それはとても曖昧な答えで、
私を諦めさせるのには不十分で、
拒絶されている訳では無いのかもしれない。
何故か私の中で、そんな考えが浮かんだ。
悪足掻きかもしれない。
ただ現実から顔をそむけたいだけなのかもしれない。
だけど私の中で何かがムクムクと大きくなるような気がした。
私、まだ努力していなかった。
過去の自分を思い返す。
その全てが努力も何も無いただの女に思えた。
一度ダメだったとしても諦めない。
私の中で強い決心が生まれる。
溢れる涙を手で拭い、私はフェルさんを真っ直ぐに見上げた。
ローブのフードでフェルさんの顔は見えない。
「フェルさん!覚悟しておいて下さい!私は絶対に貴方を振り向かせて見せますから!」
これは宣誓布告。
フェルさんへの愛の。
フェルさんが私の運命だから。
絶対に私は貴方を逃がさない。
フェルさんは呆気に捕われているようで、私の言葉をあまり理解していないようだった。
フェルさんを振り向かせるための私の猛アタックが、
本当の意味で始まる。
*****
ガシャンガシャンッ
自分の部屋の机に先程買った化粧品を広げる。
フェルさんに振られた後、私は直ぐに街の化粧品屋さんに駆け込んだ。
沢山話しかけたりしていたけど、自分自身が変わる努力をしてなかった。
そう思ったのだ。
見る限り、街の女の子達はとてもキラキラしていた。
しっかりめかしこんで好きな人に会う。
それが普通なのに、村の友人も前世の友人もそうしていたのに私はすっかり忘れていたのだ。
ギルド内の食事の時も、さっきまでのデートも一切お化粧をしていなかったことに。
思い出して欲しい。
私は童顔だが、18歳。
この世界では立派な大人なのだ。
それがすっぴんのまま好きな人を振り向かせることなどできるのか。
ーー答えは、否である。
だから私は考えたのだ。
フェルさんを振り向かせ作戦としての"イメチェン"を。
これは前世の漫画などで成功しているのを沢山見てきた。
そして多大な効果があった事も記憶している。
村の友人もたくさん努力して恋を実らせていたのも知っている。
フェルさんに振り向いてもらう為にもこれからはもっと外見に気を使おう。
そう決心して、貯めていたお金をはたいて買った化粧品。
前世とは化粧品の姿形が少し違ったが、お店の人の説明はしっかり聞いてきた。
この恋が成就しますように
そんな思いも込めて私はそっと化粧品の蓋を開けた。
彼が一言そう言う。
その言葉によって私は理解した。
振られ···たんだ。
心の中からぶわっと何かが溢れる。
最初に彼を好きになったのは顔だったかもしれない。
けれど色んなフェルさんを知る中で、その中身も素晴らしい人だと思った。
この世界では嫌悪されてしまう顔を持っていても、自分を見失ってなどいなかったフェルさん。
一つ一つにお礼を言ってくれる律儀さも、私の自分勝手な行動にも苦笑しながら相手してくれるところも。
全部、全部好きなのに。
自分自身、こんなにも彼が好きだなんて知らなかった。
なのに、
ーーーー振られちゃったなあ。
ボロボロと瞳から涙が零れる。
「何がッ···何が駄目だったんですかあ。」
私はわんわん泣きながらフェルさんに聞いた。
フェルさんに振り向いてもらおうと沢山話し掛けた。
たくさん笑いかけた。
自意識過剰すぎだのか。
しかし、フェルさんも私に好意的だと思っていた。
フェルさんが困ったように私を見ながら答える。
「─────わからない。」
たった一言、それだけ。
それはとても曖昧な答えで、
私を諦めさせるのには不十分で、
拒絶されている訳では無いのかもしれない。
何故か私の中で、そんな考えが浮かんだ。
悪足掻きかもしれない。
ただ現実から顔をそむけたいだけなのかもしれない。
だけど私の中で何かがムクムクと大きくなるような気がした。
私、まだ努力していなかった。
過去の自分を思い返す。
その全てが努力も何も無いただの女に思えた。
一度ダメだったとしても諦めない。
私の中で強い決心が生まれる。
溢れる涙を手で拭い、私はフェルさんを真っ直ぐに見上げた。
ローブのフードでフェルさんの顔は見えない。
「フェルさん!覚悟しておいて下さい!私は絶対に貴方を振り向かせて見せますから!」
これは宣誓布告。
フェルさんへの愛の。
フェルさんが私の運命だから。
絶対に私は貴方を逃がさない。
フェルさんは呆気に捕われているようで、私の言葉をあまり理解していないようだった。
フェルさんを振り向かせるための私の猛アタックが、
本当の意味で始まる。
*****
ガシャンガシャンッ
自分の部屋の机に先程買った化粧品を広げる。
フェルさんに振られた後、私は直ぐに街の化粧品屋さんに駆け込んだ。
沢山話しかけたりしていたけど、自分自身が変わる努力をしてなかった。
そう思ったのだ。
見る限り、街の女の子達はとてもキラキラしていた。
しっかりめかしこんで好きな人に会う。
それが普通なのに、村の友人も前世の友人もそうしていたのに私はすっかり忘れていたのだ。
ギルド内の食事の時も、さっきまでのデートも一切お化粧をしていなかったことに。
思い出して欲しい。
私は童顔だが、18歳。
この世界では立派な大人なのだ。
それがすっぴんのまま好きな人を振り向かせることなどできるのか。
ーー答えは、否である。
だから私は考えたのだ。
フェルさんを振り向かせ作戦としての"イメチェン"を。
これは前世の漫画などで成功しているのを沢山見てきた。
そして多大な効果があった事も記憶している。
村の友人もたくさん努力して恋を実らせていたのも知っている。
フェルさんに振り向いてもらう為にもこれからはもっと外見に気を使おう。
そう決心して、貯めていたお金をはたいて買った化粧品。
前世とは化粧品の姿形が少し違ったが、お店の人の説明はしっかり聞いてきた。
この恋が成就しますように
そんな思いも込めて私はそっと化粧品の蓋を開けた。
170
あなたにおすすめの小説
【完結】お見合いに現れたのは、昨日一緒に食事をした上司でした
楠結衣
恋愛
王立医務局の調剤師として働くローズ。自分の仕事にやりがいを持っているが、行き遅れになることを家族から心配されて休日はお見合いする日々を過ごしている。
仕事量が多い連休明けは、なぜか上司のレオナルド様と二人きりで仕事をすることを不思議に思ったローズはレオナルドに質問しようとするとはぐらかされてしまう。さらに夕食を一緒にしようと誘われて……。
◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪
◇全三話予約投稿済みです
ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。
ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。
ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。
竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。
*魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。
*お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。
*本編は完結しています。
番外編は不定期になります。
次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。
私だけ価値観の違う世界~婚約破棄され、罰として醜男だと有名な辺境伯と結婚させられたけれど何も問題ないです~
キョウキョウ
恋愛
どうやら私は、周りの令嬢たちと容姿の好みが違っているみたい。
友人とのお茶会で発覚したけれど、あまり気にしなかった。
人と好みが違っていても、私には既に婚約相手が居るから。
その人と、どうやって一緒に生きて行くのかを考えるべきだと思っていた。
そんな私は、卒業パーティーで婚約者である王子から婚約破棄を言い渡された。
婚約を破棄する理由は、とある令嬢を私がイジメたという告発があったから。
もちろん、イジメなんてしていない。だけど、婚約相手は私の話など聞かなかった。
婚約を破棄された私は、醜男として有名な辺境伯と強制的に結婚させられることになった。
すぐに辺境へ送られてしまう。友人と離ればなれになるのは寂しいけれど、王子の命令には逆らえない。
新たにパートナーとなる人と会ってみたら、その男性は胸が高鳴るほど素敵でいい人だった。
人とは違う好みの私に、バッチリ合う相手だった。
これから私は、辺境伯と幸せな結婚生活を送ろうと思います。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』
ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています
この物語は完結しました。
前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。
「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」
そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。
そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?
前世を思い出したので、最愛の夫に会いに行きます!
お好み焼き
恋愛
ずっと辛かった。幼き頃から努力を重ね、ずっとお慕いしていたアーカイム様の婚約者になった後も、アーカイム様はわたくしの従姉妹のマーガレットしか見ていなかったから。だから精霊王様に頼んだ。アーカイム様をお慕いするわたくしを全て消して下さい、と。
……。
…………。
「レオくぅーん!いま会いに行きます!」
獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。
真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。
狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。
私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。
なんとか生きてる。
でも、この世界で、私は最低辺の弱者。
7年ぶりに私を嫌う婚約者と目が合ったら自分好みで驚いた
小本手だるふ
恋愛
真実の愛に気づいたと、7年間目も合わせない婚約者の国の第二王子ライトに言われた公爵令嬢アリシア。
7年ぶりに目を合わせたライトはアリシアのどストライクなイケメンだったが、真実の愛に憧れを抱くアリシアはライトのためにと自ら婚約解消を提案するがのだが・・・・・・。
ライトとアリシアとその友人たちのほのぼの恋愛話。
※よくある話で設定はゆるいです。
誤字脱字色々突っ込みどころがあるかもしれませんが温かい目でご覧ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる