売れ残り男爵令嬢は、うたた寝王女の愛ある策略に花ひらく

湊未来

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第2章 うたた寝王女絶叫編

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私がレッシュ公爵家にお世話になって、数日が過ぎた。

相変わらず、目を覚ますとイアンの顔面アップに毎朝ビックリするが、それも少しずつ慣れてきていた。

今日は、以前からお誘いされていたマリアンヌ公爵夫人とお茶をすることになっている。

マリアンヌ公爵夫人は、グルテンブルク王の妹と言うこともあり、周辺諸国の状況もすべて把握されていて、もちろん私が置かれていた状況も理解されていた。

家族にも顧みられる事のなかった私にとって、レッシュ公爵家での数日はとても温かいものだった。

朝食は家族皆でとり、レッシュ公爵様やイアンが王城に行く時は必ずマリアンヌ様が見送りに立たれる。

マリアンヌ様は、私にも度々お菓子の差し入れや、退屈しのぎの本や刺繍セットを手配したりと、とても良くしてくださっていた。

まだレッシュ公爵家での生活に慣れない私に配慮し、適度な距離感にて接してくださるマリアンヌ様とふたり切りでのお茶会………

緊張とわずかばかりのワクワク感を持ってのぞむこととなった。




「マリアンヌ様、今日はお誘いありがとうございます。お話出来る事、とても楽しみにしておりました。今日はよろしくお願い致します。」

「ルティア様、あまり緊張なさらないでくださいね。今日は、ふたりだけのお茶会です。気楽に楽しくお話しましょうね。」

レッシュ公爵邸が誇る色とりどりの薔薇が咲く庭の一画にお茶の席が用意されていた。

「………こちらのお庭はとても美しいですね………薔薇がこんなに咲き誇る庭は初めて見ました………」

「ありがとうございます。わたくし薔薇がとても好きですの。こんなに綺麗な薔薇にも刺がある………言い替えると刺があるからこそ薔薇は綺麗に咲き誇れるのです。
綺麗なだけの花はいつか潰されてしまう………刺という名の武器を持つ事の大切さをこの花は教えてくれました。」

「ルティア様は、どんな刺を内に秘めてらっしゃるのでしょうか………?」

「………」

………やはりただの優しいご婦人ではないようね………
さすが、一国の王女だっただけのことはある………

「…まぁ。そんな事よりお茶に致しましょうルティア様。」

私達はお茶の席につき、メイドが入れてくれたお茶とお菓子を食べながら色々な話をした。

マリアンヌ様はとてもお話が上手………いえ、話を聞き出すのが上手で私もいつのまにかリザンヌ王国での身の上や立場、先のクーデターでの王宮の状況、この度正式に立太子した兄上の事など話をしてしまっていた。

私もこれでも一国の王女………誰にでも話して良い話題でない事は十分にわかっていた。しかし、今後グルテンブルク王国の一員となり、何処かの公爵家へ嫁ぐ身としたら、強力な伝手は今後必要になる。マリアンヌ様を味方につける事は私にとって、とても重要な事だった。

………生き抜く為には、自身の不幸な身の上も利用する強かさも必要よ………


「ルティア様は、わたくしが想像していた以上に大変な人生を歩まれていたのですね。」

………マリアンヌ様が涙を拭いながら同情してくださる………

「マリアンヌ様…わたくしレッシュ公爵家にお世話になり初めて家族団欒とはどういうものか知りましたの。
レッシュ公爵家の皆さまは、とても温かい………リザンヌ王国では知らなかった家族の温かさを教えてくださりとても感謝しております。」

「………ルティア様!わたくし決めました。我が国とリザンヌ王国では、習慣はもちろんマナーやダンスまで違う点が多々あります。
しかし、グルテンブルク王国に嫁入りなさるルティア様は、我が国の貴族とも今後付き合って行かなくてはなりません。
どの国でも貴族というものは、相手を蹴落とすか媚び諂うかしか考えてない魑魅魍魎共です。
わたくしが、ルティア様を再教育させて頂き、グルテンブルク王国でも太刀打ち出来る立派な淑女にしてみせます。
ルティア様、わたくしと一緒に頑張ってみませんか?」

…私は、この国でひとり目の味方を手に入れることが出来た………

「マリアンヌ様………ありがとうございます。精一杯頑張りますのでよろしくお願い致します。」

「早急に何とかしないとマズイのは、ダンスよね………近々、ルティア様歓迎の夜会が開かれると聞いたし………」

「えっ⁈夜会ですか?」

「そうですルティア様。一国の王女様を我が国に迎えるのです。貴族達への披露目の夜会が必ず開かれるはずです。
その時、ルティア様は必ず誰かとファーストダンスを踊らなくてはなりません。
おそらく………ルティア様の婚約者候補であるベイカー公爵家のリドル様か………
我家のイアンとです………」




「………ルティア様………イアンとはリザンヌ王国では、どのような関係でしたの?
………イアンが毎朝、勝手にルティア様の自室にお邪魔しているようですが………」

「…‼︎‼︎」

「………あの………イアン………イアン様とは決してやましい関係ではございません。図書館友達と言いますか………」

私は結局、マリアンヌ様にイアンとの出会いから、イアンが私の寝顔を観るのが趣味だった事まで話さざる負えなくなっていた。

「………ふふふ………イアンがルティア様の寝顔をねぇ………うふふふ………
あの子も前途多難のようね………」


「…へぇっ?」

マリアンヌ様が肩を震わせ笑ってらっしゃる………

「何でもないのよルティア様………
………ダンスの講師をどうしましょう。
わたくしでも女性パートは教えられるけど、実践で男性と踊った方が覚えは早いわよね。でも、口の固い身元がしっかりした講師ね………
………あっそうだ!イアンにお願いしましょう~♪
ルティア様も知り合いの方が気が楽でしょうし………うふふ………」

「………えっ‼︎えぇ~」

私は、楽しそうなマリアンヌ様の前ではしたなくも大絶叫してしまった。
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