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第2章 うたた寝王女絶叫編
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しおりを挟むそれから数日後、改めてルティア王女歓迎の夜会の日取りがレッシュ公爵から伝えられ、それまでの間、イアンがダンスの練習相手となる事が決まった。
………数週間後………
「ルティア様、そこのステップは足が逆です。男性が前に踏み出し、女性は後ろに一歩下がる………
そうです…だいぶ上手になって来ましたよ。」
講師は、マリアンヌ様が務めてくださっているがリザンヌ王国でのダンスのステップと真逆に踏むパートも多く、ルティアは四苦八苦していた。
………昔からダンスだけは不得意だったのよ………
まともな教師をつけてもらえなかったルティアは、ダンスも例外ではなくサラッとしかステップは教えてもらえなかった。ほとんどを独学で覚えたが、実践がものを言うダンスだけは、どうしても上達出来なかった。
王宮での夜会は極力参加せず、どうしても出席しないとマズイ夜会のみ出席をし、体調不良などを理由に人前でダンスを踊る事を避けて来たが、まさかグルテンブルク王国で初ダンスを踊ることになるとは………
ダンスって、こんなに難しいものなの?
ルティアは、正直頭を抱えてしまっていた。
「………ルティ………
足もとばかり気にしていたら、姿勢が悪くなって踊りにくくなってしまうよ。
大丈夫だから………僕の顔を見て、身を任せてご覧よ。きちんと支えてあげるから………」
イアンに腰を強く抱かれる………
………近い近い近い………
あまりの至近距離に心臓が爆発しそうだ………
何とか顔を上げイアンと顔を合わせるが、蕩けるような笑顔を見て、気恥ずかしさに俯いてしまう。
…私…今顔真っ赤よね………
あの笑顔………絶対わざとやってるわよ!
恥ずかしさで憤死しそうな私は、度々足をもつれさせてしまう。
その度に、イアンが上手に私の腰を支えステップを元に戻してくれる。
………本当にリードが上手いわ………
「はい!そこまで。
少し休憩にしましょう。」
マリアンヌ様の号令でダンスは終わり、休憩となった。
メイドがお茶の準備を始め、程なくして簡易的な3人でのお茶会が始まった。
「ルティア様、始めの頃に比べだいぶ上手になって来ましたね。これなら、夜会でも上手く行きそうですよ。
後は殿方ときちんと視線を合わせて、足もとを見ないことが大切です。イアンと練習あるのみです。
ルティア様には残念なお知らせですが、当日のパートナーは、ベイカー公爵家のリドル様に決まりました。」
「えぇ⁈イアン様ではないのですか?」
私は思わずイアンの方を見ると、困った顔でこちらを見つめていた………
「大丈夫ですよルティア様。ベイカー公爵家のリドル様はダンスの名手です。
どんなに下手な令嬢のダンスも華麗にリードされると有名な貴公子です。
イアンと踊れているルティア様ならきっと大丈夫です。後は、足もとを見ず踊りきるだけです。」
「………マリアンヌ様………」
「あぁ!忘れていたわ。これから用事がありますの。後は、イアンと一緒に練習してくださいませね。ルティア様!実践あるのみです‼︎」
マリアンヌ様は、私にエールを送ると颯爽と部屋を出て行った。
「………ルティ………そんなに心配そうな顔しないの。最後まで僕が練習相手として付き合ってあげるから………ね!」
「でも、まだステップも完璧でないし、きっとリドル様の足を踏んでしまうわ………」
「大丈夫だよ。アイツは、女性の扱いならお手のものだから………
足を踏んだところで、華麗にリードしてくれるさ………
それより、ルティは本当はダンス嫌いなんだろう?
でも………ステップなんて気にせず思いのまま踊ってみなよ。きっと楽しいから………
失敗しても全部僕が受け止めてあげる。」
私は、イアンに手をとられフロアに連れて行かれる。
いつもの曲ではなく少し早いテンポの曲が流れ出す………
イアンは私の腰を抱き踊り出す。
………クルクルクルクル………
足をもつれさせながら、回り出す………
イアンのリードに任せるしかないダンスは、何故か宙を舞っているように軽かった。
………クルクルクルクル………
ただ回っているだけなのに楽しくなっていく。
いつの間にかクスクス笑いながらイアンに身を任せ、見つめ合っていた………
私の心の奥底に火が灯る………
曲が終わり、体を離そうとした私の腰を強く引き寄せイアンは、私を見つめる。
「………ルティ………忘れないで欲しい。
僕が誰よりも貴方を想っているということを………」
………額にイアンの口づけが落とされた………
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