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第3章 思惑は交錯する【ミリア編】
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しおりを挟む………言ってしまった………
リドル様の不意打ちの言動に、ポロっと言ってしまった………
「ミリアは…好きな人いるのか?」
まさか聞かれるとは思っていなかった…
リドル様専属の侍女になってから、徐々にリドル様との関係も変わりつつあった。
休憩時間のお茶に付き合ったり、たまに街に連れ出されたり、最近は王城へ出勤する服装を私に選ばせてくれるようにもなっていた。
初めてふたりで街に行ってから私の心に灯った炎は日が経つにつれ、徐々に大きくなっている。
身分違いだと、リドル様への初恋は心の奥底に閉まったはずなのに………
毎日接すれば接するほど、リドル様への恋心は抑えられなくなっていく。
私はリドル様から初めて貰ったプレゼントのネックレスを無意識に触っていた。
あの日以降肌身離さず付けているネックレスを………
………数日後………
「ミリア…数週間前からリザンヌ王国のルティア王女が我が国へ来ているのは知っているか?
近々、王城でルティア王女歓迎の夜会が開かれる事となった。」
「左様でございますか………
リドル様も出席されるのですか?」
「俺は………ルティア王女のエスコート役にて出席する予定だ。」
「えっ⁈………エスコート役ですか?」
リドル様がエスコート役………どういう事なの…?
確かルティア王女は未婚の女性だったはず………未婚の女性をエスコートするのは、親族か婚約者………
………まさか⁈
「あぁ………俺はルティア王女の婚約者候補になっている………
ベイカー公爵家お抱えの宝石商に、ルティア王女の瞳の色と同じ紫色のアメジストでブローチとカフスボタンを作るように依頼してくれ。
執事のアーサーに言えば手配してくれるだろう………」
「………かしこまりました………」
私は深々と頭を下げ、リドル様の私室をあとにした。
扉から出ると足早に自室に向かう………
………リドル様がルティア王女の婚約者候補………
目の前が真っ暗になる程の衝撃だった………
部屋に入ると、耐えきれず扉に寄りかかり泣き崩れる………
『…私はしがない男爵令嬢………
公爵家の跡取りと結ばれようなんておこがましいのよ………
リドル様とルティア王女………
身分的にも申し分ないお姫様………私なんかが太刀打ち出来るはずない………
深みにハマる前に分かって良かったのよ………
リドル様と私は………主人と侍女………』
心が急速に死んでいくのを感じながら、呪文のように言い聞かせていた。
あの日………リドル様がルティア王女の婚約者候補と知った日から………
リドル様とは、専属侍女になったばかりの頃のような関係に戻っていた。
侍女としてのスタンスを崩さず日々を過ごす………
リドル様と一線を引く事で、私の心は平穏を取り戻していった。
そして今夜はルティア王女歓迎の夜会………
私は朝から準備に追われ、先ほどギリギリ間に合ったブローチとカフスボタンを宝石商から受け取った。
中を確認すると、紫色のアメジストがキラキラ輝いている。
ルティア王女の瞳の色と同じアメジストが………
パートナーの色を纏うという事は特別な意味を持つ………
私は自身の心が軋むのを無視するかのように、ブローチとカフスボタンの入った箱を閉めた。
「リドル様、とても良くお似合いです。」
夜会用のタキシードを着て、いつもは前髪をおろしているリドル様だが、今日は前髪を後ろに流している。
溢れ出す色気に、準備を手伝っていた若いメイドが頬を染めている。
………天性の人たらしだわ………
「先程、宝石商から届きましたブローチとカフスボタンです。テーブルの上に置いておきますね。」
私は箱をテーブルの上に置き、静かに退室した。
程なくして、エントランスが騒がしくなる。
………そろそろ行かれるのね………
私は2階の手摺りからエントランスを見る………
紫色のブローチを着けたリドル様が出発する姿が見える。
………私は涙を堪え、その場を立ち去った………
それから数日後………
リドル様とルティア王女が婚約するらしいという噂を私は耳にすることとなった。
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