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第6章 鎖を断ち切るために【ルティア&イアン編】

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『ルティア、君の気持ちは決まっただろうか?私もリザンヌ王国を長く留守にする訳にいかない。近々、戻る事になるだろう………
私がリザンヌ王国へ戻る前に君がベイカー公爵家のリドル殿の正式な婚約者になる事を望む。今後のリザンヌ王国の発展のため貢献する事が王女としての責任だ。良い返事を期待している。』

私はルカ王太子からの手紙を握りしめ怒りに震えていた。

そろそろあちら側からアクションを起こして来ると思っていたが………

………私には政略結婚を強いるくせに………
今に見ているがいいわ………
幸せを勝ち取るのは私よ………………


私は一通の手紙をしたため、ルカ王太子からの手紙を持ってきた従者に託した。

『わたくしの婚約に関して直接お会いしてお話させて頂けないでしょうか?
今後に関する大切なお話です。日時と場所を指定頂ければ伺いますのでご検討お願い致します。』

どうやらあちらも手紙の返事をもらってくるように言われていたのか、私にとってもルカ王太子と連絡が取れ都合が良かった。


「ルティ…怖い顔してどうしたの?」

部屋に入って来たイアンが心配そうに私の顔を覗き込む。
………イアンと一緒にいるだけで荒んだ心が癒されていく………

「ルカ王太子からの手紙を読んで気分が悪くなっただけよ………
心配してくれてありがとう。」

「ルティが大丈夫ならいいんだ。
………その手紙見せてもらってもいいかな?」

私は手元にあるクシャクシャの手紙を渡す………

「とうとうあちら側も痺れを切らしたってところかな。
ルティは何て返事を?」

「直接会って話したいと伝えたわ………」

「そう………
その会談には僕もついて行くよ………」

「えっ⁈イアンもルカ王太子に会うの?」

「あぁ…ルティがルカ王太子に何を話すかは知らないけど、あの方は一筋縄ではいかない。簡単にはこちら側の要求はのまないだろう。僕が持っている切り札が役に立つ時がくる………
ルティは一人で戦わなくてもいいんだ。
僕がずっと傍にいて君を支える………」

ゆっくりとイアンの言葉が心に染み渡る………

「ありがとう…イアン………
貴方を好きになって本当に良かった………」

イアンは涙を堪える私を優しく抱きしめてくれた………





………数週間後………

私は朝からアンナに今日の日の為の勝負服を着せてもらっていた。

白のレースの詰襟に濃紺のドレス。髪を高く結い上げてもらいお化粧は少し濃くキツめの印象を作りあげる。
肌の露出がほぼない貞淑な貴婦人に仕上がっていた。

今日は絶対、ルカ王太子にナメられる訳にいかない………
女の化粧は時として鎧になる………
必ず欲しい言葉を引き出してみせる………

「ルティア様…いよいよですね………
陰ながらご武運をお祈り申し上げております。ルティア様は一人ではありません。貴方様には沢山の方が味方についております。何よりもイアン様がついてます。
………きっと上手くいきます。
貴方様の幸せは必ずや手に入ります。」

「アンナ…本当にありがとう………
行って来るわ!」

私は立ち上がると前を見据え歩き出した。




エントランスには私を待つイアンが正装で待っていた。

「イアンお待たせ致しました………」

「ルティ…顔色は大丈夫そうだね。
では参りましょうか…ルティア王女殿下」

優雅に差し伸べられた手に手を重ね馬車に乗り込む。

イアンのいつにない硬い表情に身が引き締まる。

………勝つのは私よ………

私は馬車に揺られながらルカ王太子と対峙する覚悟を決めた。




ルカ王太子から指定された場所は初めて会談した、あの白亜の大豪邸だった。

エントランスには侍従だという男が待っていてルカ王太子が待つ部屋へ案内される。

侍従に続き部屋に入るとルカ王太子がこちらを振り向き一瞬驚いた顔をする。

「よく来たねルティア………と、レッシュ公爵家のイアン殿だね………
イアン殿には王城の夜会で会って以来だが、あの時はあまり話せなかった。
リザンヌ王国のクーデターの際には、ベイカー公爵家のハインツ殿との橋渡し役、大変世話になった。父上に代わり礼を申し上げる。」

「いえ………こちらこそお役に立てて光栄です。」

やっぱりイアンはリザンヌ王国の内情を探るために王宮に入り込んでいたのね………
通りで、グルテンブルク王国出身なのにリザンヌ王国の内情に詳しかった訳ね。


「ところで今日は何故イアン殿も一緒なのかな?私はてっきりルティアと二人で話すものと思っていたが………」

先ほどまで和やかにイアンと会話していたとは思えない程の威圧感で見据えられる………

「ルカ王太子殿下…私がルティア王女殿下に無理を言い連れて来て貰ったのですよ。私も一度ルカ王太子殿下ときちんと話をしておきたいと思っておりましてね。
………特にグルテンブルク王国における四大公爵家の力関係をルカ王太子殿下は勘違いされているのではと思いまして………」

「四大公爵家の力関係ですか………?
私は対外的な共通認識を持っているので勘違いはしていないと思いますが………」

「対外的な四大公爵家に対する認識こそが間違いだとしたら、貴方様の考えも変わるのでは………
まぁ立ち話もなんですし、長い話になりますから座ってゆっくり話しましょう。」

そして戦いの火蓋が切って落とされた………

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