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第4章
あれから【リアム視点】
爽やかな風が窓から入り、カーテンを揺らす。柔らかな陽の光を受け、窓辺で本を読んでいたリアムはゆっくりと顔を上げた。
窓から外を眺めれば、海岸を囲むように建てられた色とりどりの家々が見える。そして、その先には、夕日に照らされキラキラと輝く海。この光景を見るたびに思い出す。アイシャと旅した船旅のことを。
幸せな思い出。
あの旅で、自分の想いに応えてくれたアイシャ。しかし、それを裏切ったのは自分だ。
開け放たれた窓から吹き込む潮風にカーテンがユラユラと揺れる。
「もうこんな時間か……」
ウェスト侯爵家の領地に来てから一年が経とうとしていた。
海の見える丘の上に建てたれた邸宅に、リアムは信頼のおける数名の使用人と住んでいる。海岸沿いに広がる港町からも、この邸宅までは馬車で一時間はかかる。ひっそりと建つ、この邸宅を訪れる者はいない。
突然、姿を消したリアム。社交界でも、様々な噂が飛び交った。『誰かと、駆け落ちをしたのではないか?』『婚約者が逮捕され、ショックで病に伏せっている?』『死んだのではないか?』ウェスト侯爵が口を閉ざしたことも、その噂に拍車をかけた。しかし、一年も経てば、リアムの存在は、社交界から忘れ去られた。
静かな邸宅での暮らしは、穏やかに過ぎていく。社交界の噂すら届かないここでの生活は、目醒めない彼女と暮らすには丁度良かった。
あの日……、キースに叱責されたあの日。リンベル伯爵家へと向かったリアムは、アイシャへの想いの丈をぶちまけた。
彼女の事を心の底から愛していると。
自分がアイシャの側にいる事で、彼女が目醒めるのなら、どんな事でもすると。
眠り続けるアイシャを前に、思いの丈をぶちまけた己を鬼の形相で罵倒したリンベル伯爵。許されるとは思っていなかった。それほどの罪を自分は犯してしまった。
リアムの命を助けるために、白き魔女の力を使い、深い眠りに落ちたアイシャ。
リンベル伯爵にとって自分は、愛するアイシャを奪い傷つけた相手。許せるはずもない。しかし、キースの言葉が愚かな己を奮い立たせる。
『アイシャがこの世に戻って来るかどうかは、リアムお前の行動にかかっている』
自分がアイシャの側にいることで、彼女が目醒める可能性が少しでも上がるのであれば……
ウェスト侯爵家の領地へアイシャを連れて行きたいと頭を下げるリアムを殴り飛ばしたリンベル伯爵だったが、少しでも彼女が目醒める可能性があるのならと言う夫人の言葉に絆され、最後はアイシャを預けてくれる事を了承してくれた。
あれから一年。
あらゆる伝手を使い、可能性のある手段を試みて来たが、アイシャが目醒める気配はない。
目醒めぬ彼女と過ごす穏やかな日々。
一日の大半をアイシャが眠る部屋で過ごし、彼女に語りかける。
愛していると……
読んでいた本を閉じ、座っていた椅子から立ち上がり歩き出す。アイシャの眠るベッドへと近づき、潮風で乱れ頬へとかかった金色の髪を優しく払う。
温かい……
こうして、日に何度も彼女に触れ、生きていると確かめねば、安心出来ない。
ゆっくりと唇にキスを落とす。
「――――、アイシャ…戻って来てくれ…………」
「……うっ…んぅ………………」
「…………っ!?」
「……リアム…なのぉ…………?」
衝撃が走る。
ガバッと顔をあげ彼女を見つめると、閉じられていた瞼がゆっくりと開き、煌めくアクアマリンを思わせる瞳がリアムを見つめ、微笑む。
「――――ただいま、リアム」
勝手に涙が溢れ出す。
「泣かないで、私の愛しい人。…………リアム、愛しているわ」
言葉にならなかった。
ただただ、歓喜に震える心のままに、アイシャの唇を深く奪っていた。
窓から外を眺めれば、海岸を囲むように建てられた色とりどりの家々が見える。そして、その先には、夕日に照らされキラキラと輝く海。この光景を見るたびに思い出す。アイシャと旅した船旅のことを。
幸せな思い出。
あの旅で、自分の想いに応えてくれたアイシャ。しかし、それを裏切ったのは自分だ。
開け放たれた窓から吹き込む潮風にカーテンがユラユラと揺れる。
「もうこんな時間か……」
ウェスト侯爵家の領地に来てから一年が経とうとしていた。
海の見える丘の上に建てたれた邸宅に、リアムは信頼のおける数名の使用人と住んでいる。海岸沿いに広がる港町からも、この邸宅までは馬車で一時間はかかる。ひっそりと建つ、この邸宅を訪れる者はいない。
突然、姿を消したリアム。社交界でも、様々な噂が飛び交った。『誰かと、駆け落ちをしたのではないか?』『婚約者が逮捕され、ショックで病に伏せっている?』『死んだのではないか?』ウェスト侯爵が口を閉ざしたことも、その噂に拍車をかけた。しかし、一年も経てば、リアムの存在は、社交界から忘れ去られた。
静かな邸宅での暮らしは、穏やかに過ぎていく。社交界の噂すら届かないここでの生活は、目醒めない彼女と暮らすには丁度良かった。
あの日……、キースに叱責されたあの日。リンベル伯爵家へと向かったリアムは、アイシャへの想いの丈をぶちまけた。
彼女の事を心の底から愛していると。
自分がアイシャの側にいる事で、彼女が目醒めるのなら、どんな事でもすると。
眠り続けるアイシャを前に、思いの丈をぶちまけた己を鬼の形相で罵倒したリンベル伯爵。許されるとは思っていなかった。それほどの罪を自分は犯してしまった。
リアムの命を助けるために、白き魔女の力を使い、深い眠りに落ちたアイシャ。
リンベル伯爵にとって自分は、愛するアイシャを奪い傷つけた相手。許せるはずもない。しかし、キースの言葉が愚かな己を奮い立たせる。
『アイシャがこの世に戻って来るかどうかは、リアムお前の行動にかかっている』
自分がアイシャの側にいることで、彼女が目醒める可能性が少しでも上がるのであれば……
ウェスト侯爵家の領地へアイシャを連れて行きたいと頭を下げるリアムを殴り飛ばしたリンベル伯爵だったが、少しでも彼女が目醒める可能性があるのならと言う夫人の言葉に絆され、最後はアイシャを預けてくれる事を了承してくれた。
あれから一年。
あらゆる伝手を使い、可能性のある手段を試みて来たが、アイシャが目醒める気配はない。
目醒めぬ彼女と過ごす穏やかな日々。
一日の大半をアイシャが眠る部屋で過ごし、彼女に語りかける。
愛していると……
読んでいた本を閉じ、座っていた椅子から立ち上がり歩き出す。アイシャの眠るベッドへと近づき、潮風で乱れ頬へとかかった金色の髪を優しく払う。
温かい……
こうして、日に何度も彼女に触れ、生きていると確かめねば、安心出来ない。
ゆっくりと唇にキスを落とす。
「――――、アイシャ…戻って来てくれ…………」
「……うっ…んぅ………………」
「…………っ!?」
「……リアム…なのぉ…………?」
衝撃が走る。
ガバッと顔をあげ彼女を見つめると、閉じられていた瞼がゆっくりと開き、煌めくアクアマリンを思わせる瞳がリアムを見つめ、微笑む。
「――――ただいま、リアム」
勝手に涙が溢れ出す。
「泣かないで、私の愛しい人。…………リアム、愛しているわ」
言葉にならなかった。
ただただ、歓喜に震える心のままに、アイシャの唇を深く奪っていた。
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